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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 06-01
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所変わって天来号、酒月利英の研究室。
「ふほ、ほ」
部屋の主こと利英は、ぐったりと机に突っ伏していた。まぁ特注品である冥の転移術式を、この短時間でRフィールドを抜けられるよう調整したのだ。無理はない。
「実際大したもんだよ、酒月」
「なぁーに、こんなこともあろうかと、ってヤツさ」
震える腕でサムズアップする利英。何のかんのでまだ余裕はあるようだ。
「それにしても、何かこう、すごいお部屋ですね」
部屋をぐるりと見回して、風葉は率直な感想を述べる。
元は割と広い部屋だったのだろう、天井の大きさでそれは分かる。
しかし視点を少しでも下げれば、待っているのは本やら薬品やらが納められた棚の群れ、巨大なモニタ、何だか良く分からない紙束、床にケーブルを這わせまくっているパソコン、用途の見えない怪しい機材の群れ、等々。
ガラクタと、ガラクタ予備軍と、研究機材と、その他諸々色んなモノが、全方位から室内を圧迫しているのだ。唯一部屋の中央にあるパソコンデスクの周囲だけはそれなりに開けているので、必然的に室内の全員がパソコンの周りに集合していた。
「さて。死にそうなところで悪いが、まだまだ働いて貰うぞ酒月」
四角い机の端に手をかけながら、冥は満面の笑みで酒月を見下ろす。
「うわぁサディスティックぅ」
「褒めるなよ、照れちゃうじゃないか」
飄々と言いつつ、壁際のパネルを操作して冥はモニタを起動。映りだした大画面の向こうから、真剣な面持ちの巌が室内を見回した。
『ああ、繋がったか。冥、そっちの状況はどうだ?』
「問題ないよ、ちょいとトラブルはあったがな」
『オウガローダーを跳ばした事か? それならこっちでも把握して……』
「や、それもあるんだがな」
つい、と指差す冥。はて、と視線を移す巌。
「あの、その、ごめんなさい」
パソコンデスクを挟んだ反対側。未だ軽く痙攣している利英の隣で、風葉が縮こまっていた。
『そうか、辰巳が避難させたんだったな。で、道に迷ってしまった訳かい』
「はい、おっしゃる通りです」
ますます縮こまる風葉に、巌はうっすら笑う。
『はっは、いや構わないさ。それより、日乃栄に発生したRフィールドに関してだが――』
「ふほ、ほ」
部屋の主こと利英は、ぐったりと机に突っ伏していた。まぁ特注品である冥の転移術式を、この短時間でRフィールドを抜けられるよう調整したのだ。無理はない。
「実際大したもんだよ、酒月」
「なぁーに、こんなこともあろうかと、ってヤツさ」
震える腕でサムズアップする利英。何のかんのでまだ余裕はあるようだ。
「それにしても、何かこう、すごいお部屋ですね」
部屋をぐるりと見回して、風葉は率直な感想を述べる。
元は割と広い部屋だったのだろう、天井の大きさでそれは分かる。
しかし視点を少しでも下げれば、待っているのは本やら薬品やらが納められた棚の群れ、巨大なモニタ、何だか良く分からない紙束、床にケーブルを這わせまくっているパソコン、用途の見えない怪しい機材の群れ、等々。
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「さて。死にそうなところで悪いが、まだまだ働いて貰うぞ酒月」
四角い机の端に手をかけながら、冥は満面の笑みで酒月を見下ろす。
「うわぁサディスティックぅ」
「褒めるなよ、照れちゃうじゃないか」
飄々と言いつつ、壁際のパネルを操作して冥はモニタを起動。映りだした大画面の向こうから、真剣な面持ちの巌が室内を見回した。
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「問題ないよ、ちょいとトラブルはあったがな」
『オウガローダーを跳ばした事か? それならこっちでも把握して……』
「や、それもあるんだがな」
つい、と指差す冥。はて、と視線を移す巌。
「あの、その、ごめんなさい」
パソコンデスクを挟んだ反対側。未だ軽く痙攣している利英の隣で、風葉が縮こまっていた。
『そうか、辰巳が避難させたんだったな。で、道に迷ってしまった訳かい』
「はい、おっしゃる通りです」
ますます縮こまる風葉に、巌はうっすら笑う。
『はっは、いや構わないさ。それより、日乃栄に発生したRフィールドに関してだが――』
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