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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 05-05
しおりを挟むつい今し方、霊力装甲を突き破って着弾した、一抱えもある氷塊。それに爆ぜ跳ばされた装甲の破片が、辰巳の下腹部に突き刺さったのだ。
「こ、のっ」
震える手で、辰巳はどうにか鉄片を引き抜く。
同時にスーツの生命維持システムが起動、仕込まれていた治癒術式が出血と傷口をすぐさま塞ぐ。
だが、これはあくまで応急措置だ。治癒術式と言っても、これは人体が元から持っている再生能力を増幅する代物でしかない。故に、再生に応じた体力をごっそりと持っていくのだ。
「く、ぁ」
ともすれば飛びそうになる意識に手綱をかけ直し、辰巳はオウガを立ち上がらせる。
「ほう、まだ動けるのですねぇ。関心感心。そうでなくては私も目的を果たせません」
兜の奥。光る瞳に哄笑を浮かべながら、オーディン・シャドーはマントの内側に手を入れる。
そのまま、何も無い筈の場所から、ずるりと引き出す。
己の身の丈ほどもある、巨大な長槍を。
「さて。試し振りくらいはしましょうかねぇ」
やはり甲冑と同じ純白をした、長くしなやかな柄。その感触を確かめるように、オーディン・シャドーは槍をぐるりと回す。
たったそれだけで、爆発的な霊力がオウガに叩きつけられた。
「――っ!」
未だ残留する痛覚を揺さぶられ、それでも歯を食いしばって踏み止まる辰巳。それが見えているのかいないのか、とにかくオーディン・シャドーは校庭に石突を打ち下ろす。
Rフィールドが、震えた。
地面を覆う赤色がみしみしとたわみ、余波が環状にどこまでも広がっていく。
「おおっと、いけませんねぇ。軽くしたつもりなんですが、どうにも加減が難しい」
楽しげな口調で白々しいセリフを言いながら、オーディン・シャドーは穂先を見上げる。
黄金に輝く切っ先をたたえた、長大な円錐形の刃を。
「まぁレプリカとはいえ、それだけ強力だと言う事ですねぇ。この――グングニルは」
主神オーディンが用いた、あまりにも有名な槍の名をギノアは明かす。
対する辰巳に驚きはあまりない。ああやっぱりか、と思った程度だ。
「さぁて。それでは準備も整ったところで、私の目的を果たさせて頂きますよ」
言いつつギノアは純白の長槍――グングニルを水平に構え、穂先をオウガに突きつける。
「ファントム4、その命とEマテリアルをもらい受けます。抵抗はご自由にどうぞ」
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