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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 04-06
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「どうしたんですサトウさん? ……えっ、あらら。そうですか流れ弾が天井に」
いぶかしむ辰巳を余所に、ギノアはサトウと話し込みながら空を見る。ギノアを蜘蛛の巣ごと日乃栄高校へ送り込んだ青い円陣型の術式は、未だそこに輝いていた。
その輝きの示す通り、青い術式はまだレイキャビクのアパートに繋がっている。これこそグレンがフォースアームシステムを用いて歪めた空間の境界だ。
そこへ偶然辰巳の流れ弾が入り込み、レイキャビクのアパートには天井に穴が開いてしまったのだ。
エッケザックスが動き出した以上、あのアパートは直に嗅ぎ付けられるだろう。なのでサトウ達は用が済んだらすぐ撤収する予定だったのだが、弾痕という余計な痕跡が残ってしまった。
「……なので、どうやら遊んでいる余裕はなさそうですねぇ。幸い術式の起動に必要な霊力も集まりましたし、手早く済ませてしまいましょう」
「そうかい」
端的に、辰巳は言葉と自動拳銃を同時に捨てる。
ギノアが何をしたいのかは知らないが、足場の術式がキモであるのは間違いない。
ならば。
「セット。モード、ヴォルテック」
『Roger Vortek Buster Ready』
口元に寄せた左掌を中心に、渦を巻き始める青い光。身体を包む装甲の上、手足の青いラインが脈動しながら霊力を掌へ送り込み、収束。
その名のごとく、渦を巻く青い光。それを、辰巳は弓のように引き絞る。
そして、放つ。
「ヴォルテェェェックッ! バスタァァァァ!!」
裂帛の気合いが、回転する霊力の奔流が、烈風となってギノアと蜘蛛の巣に直撃する。
爆煙。轟音。激震。
バイザーを下ろしてその全てをやり過ごしながらも、辰巳はギノアがいた方向の凝視を止めない。
「……」
やった、とはどうにも思えない。ヴォルテック・バスターが着弾するその瞬間まで、ギノアは薄ら笑いを止めなかったからだ。
大技の余熱が冷めない義手を構え直し、油断無く黒煙を見据える辰巳。
果たして、その疑念は現実となった。
「ハハハハハ! アッハハハハハハハハ!! 無駄ですよ! もう止まらない! 止められない! 誰にもねぇ!」
一瞬で吹き払われる爆煙。現れたギノアは無傷、かつ今まで以上の高笑いを上げており、更に足下の術式は今までに無く激しく明滅している。
明らかに、何かが発動しようとしている。
いぶかしむ辰巳を余所に、ギノアはサトウと話し込みながら空を見る。ギノアを蜘蛛の巣ごと日乃栄高校へ送り込んだ青い円陣型の術式は、未だそこに輝いていた。
その輝きの示す通り、青い術式はまだレイキャビクのアパートに繋がっている。これこそグレンがフォースアームシステムを用いて歪めた空間の境界だ。
そこへ偶然辰巳の流れ弾が入り込み、レイキャビクのアパートには天井に穴が開いてしまったのだ。
エッケザックスが動き出した以上、あのアパートは直に嗅ぎ付けられるだろう。なのでサトウ達は用が済んだらすぐ撤収する予定だったのだが、弾痕という余計な痕跡が残ってしまった。
「……なので、どうやら遊んでいる余裕はなさそうですねぇ。幸い術式の起動に必要な霊力も集まりましたし、手早く済ませてしまいましょう」
「そうかい」
端的に、辰巳は言葉と自動拳銃を同時に捨てる。
ギノアが何をしたいのかは知らないが、足場の術式がキモであるのは間違いない。
ならば。
「セット。モード、ヴォルテック」
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口元に寄せた左掌を中心に、渦を巻き始める青い光。身体を包む装甲の上、手足の青いラインが脈動しながら霊力を掌へ送り込み、収束。
その名のごとく、渦を巻く青い光。それを、辰巳は弓のように引き絞る。
そして、放つ。
「ヴォルテェェェックッ! バスタァァァァ!!」
裂帛の気合いが、回転する霊力の奔流が、烈風となってギノアと蜘蛛の巣に直撃する。
爆煙。轟音。激震。
バイザーを下ろしてその全てをやり過ごしながらも、辰巳はギノアがいた方向の凝視を止めない。
「……」
やった、とはどうにも思えない。ヴォルテック・バスターが着弾するその瞬間まで、ギノアは薄ら笑いを止めなかったからだ。
大技の余熱が冷めない義手を構え直し、油断無く黒煙を見据える辰巳。
果たして、その疑念は現実となった。
「ハハハハハ! アッハハハハハハハハ!! 無駄ですよ! もう止まらない! 止められない! 誰にもねぇ!」
一瞬で吹き払われる爆煙。現れたギノアは無傷、かつ今まで以上の高笑いを上げており、更に足下の術式は今までに無く激しく明滅している。
明らかに、何かが発動しようとしている。
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