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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 04-04
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「して、今日はどんなご用件ですかな? 正直最近徹夜が長すぎて周りの照明がピンク色に見えるんですよねヒャッホー!」
「なら喜べ、緊急事態だ。何せ巌が直々に指名したからな」
満面の笑みを浮かべながら、利英はパキンと指を鳴らす。
「ほほう! ソイツぁタダゴトじゃなさそうですのう! お茶党からコーヒー党に鞍替えしたとか!?」
「確かにそれはそれでアレだが、あいにくそうじゃない。とにかくまずは連絡だ」
「なるほど分かり申した! ならば俺の研究室にお越し下さい! 汚いトコですがねヘヒヒ!」
「あ、ゴミ置き場じゃなかったんだ」
さりげなくひどい風葉のつぶやきなど聞こえるはずもなく、高笑いを上げながら元来た道を戻る利英。冥は少し呆れ顔で、風葉は他のアテも無いので怖ず怖ずと、作務衣の背中に続く。
そうして利英が研究室の扉を開けようとした直前、冥の懐から鋭いコール音が響く。通信機が鳴ったのだ。
金切り声のようなその音色に、冥はすぐさま呆れを打ち消す。
「これは……!」
この着信音を設定しているのは一件のみ。
発信者は辰巳。それ以外は絶対に居ない。
なぜならばこのコールは、オウガローダーの緊急発進要請だからだ。
即座に通信機を取り出し、冥は通話ボタンを押す。
『……信じられんかもしれんが、日乃栄高校にRフィールドと神影鎧装が現れた。オウガローダーを送ってくれ、大至急だ』
ノイズが混じった辰巳の声は、途方も無い緊急事態を告げていた。
◆ ◆ ◆
赤く、渦を巻いている。
さながら、排水溝の内側に叩き込まれたかのような。
それが、辰巳が最初に受けたRフィールドの印象だった。
実際、その印象は間違いでは無い。幻燈結界の内側を蝕むように現れた赤い檻は、今もなお霊力の枠組みを循環させながら拡大している。規模こそ違えど、かつて資料映像で見たRフィールドの内部そのものだ。
ざっと眺めた限り、高さは2~300メートル。半径は多分1キロはあるだろう。現在展開中の幻燈結界がそれ以上に広いのは、せめてもの幸いではあるか。
軸となっているのは、やはり先程現れた新たなギノア・フリードマン。それに付随して現れた奇妙な術式だ。
十中八九、今度のギノアは分霊ではない。恐らく本体であるはずだ。
――ギノアに関わらず、魔術師自身が戦場に赴く事はそうそう無い。
術式、分霊、使い魔。その他諸々の手駒を用い、安全圏から戦況を把握する指揮者。純粋な魔術師とは基本的にそれだ。
それでももし当人が現れたとすれば、それは必勝を期した時か、背水の陣を敷いている時のどちらかだ。今のギノアは、不本意ながら前者なのだろう。
「なら喜べ、緊急事態だ。何せ巌が直々に指名したからな」
満面の笑みを浮かべながら、利英はパキンと指を鳴らす。
「ほほう! ソイツぁタダゴトじゃなさそうですのう! お茶党からコーヒー党に鞍替えしたとか!?」
「確かにそれはそれでアレだが、あいにくそうじゃない。とにかくまずは連絡だ」
「なるほど分かり申した! ならば俺の研究室にお越し下さい! 汚いトコですがねヘヒヒ!」
「あ、ゴミ置き場じゃなかったんだ」
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そうして利英が研究室の扉を開けようとした直前、冥の懐から鋭いコール音が響く。通信機が鳴ったのだ。
金切り声のようなその音色に、冥はすぐさま呆れを打ち消す。
「これは……!」
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即座に通信機を取り出し、冥は通話ボタンを押す。
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◆ ◆ ◆
赤く、渦を巻いている。
さながら、排水溝の内側に叩き込まれたかのような。
それが、辰巳が最初に受けたRフィールドの印象だった。
実際、その印象は間違いでは無い。幻燈結界の内側を蝕むように現れた赤い檻は、今もなお霊力の枠組みを循環させながら拡大している。規模こそ違えど、かつて資料映像で見たRフィールドの内部そのものだ。
ざっと眺めた限り、高さは2~300メートル。半径は多分1キロはあるだろう。現在展開中の幻燈結界がそれ以上に広いのは、せめてもの幸いではあるか。
軸となっているのは、やはり先程現れた新たなギノア・フリードマン。それに付随して現れた奇妙な術式だ。
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――ギノアに関わらず、魔術師自身が戦場に赴く事はそうそう無い。
術式、分霊、使い魔。その他諸々の手駒を用い、安全圏から戦況を把握する指揮者。純粋な魔術師とは基本的にそれだ。
それでももし当人が現れたとすれば、それは必勝を期した時か、背水の陣を敷いている時のどちらかだ。今のギノアは、不本意ながら前者なのだろう。
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