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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 04-03
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「君は確か霧宮風葉だったな。どうしてここに?」
「当然、例の物が完成した祝福をしに来てくれたのだよ」
白い歯を輝かせる坊主の戯言に、風葉は全力で首を振る。
「違うの。道に迷って偶然ここに来ちゃっただけなの」
「だろうな。それ以外に君がここへ来る理由が無い」
「何と――! それでは僕の歓喜をどうすればいいのだね具体的に!?」
「太陽へ向かって投棄しろ、全力で」
深々と溜息をつく冥。その背後に回りながら、風葉は怖ず怖ずと聞いた。
「あの、ローウェルくん。このひと、何なの?」
「ああ、コイツは酒月利英。見ての通り変人で、困った事に天才だ」
ややげんなりした顔で坊主――もとい、利英の名を呼ぶ冥。
そうして紹介された利英は、今更のように風葉へ頭を垂れる。
「どうも、はじめましてコンバンワ。酒月利英と申します。趣味と仕事は術式の開発です」
斜め四十五度、的確な角度のお辞儀であった。
「あ、はぁ、どうも。霧宮風葉です」
打って変わった利英のテンションに、風葉は冥へ耳打つ。
「あの、ローウェルくん」
「冥でいいよ。そのかわり、僕も名前で呼んで良いかな」
「あ……うん。じゃあ、冥、くん」
「なんだい風葉」
にこりと微笑む冥。何の変哲も無い、社交辞令の笑顔。
だというのに、風葉は高鳴る胸を押さえてしまう。
それは間近で見た冥の肌が、予想以上に真っ白だったからだろうか。それとも、その唇が血のように真っ赤だったからだろうか。
「おおう! 女子高生とファントム3の絡み! コイツぁタマリマセンなぁ!!」
空気を読まない外野が居なければ、きっと風葉は耳まで真っ赤になっていただろう。
どうあれ平常心に戻った風葉は、利英を指差しながら冥に聞いた。
「あの、冥くん。このひとホントに天才なの?」
「そうなんだよ、信じられない事に。風葉の知ってるところで言えば、辰巳が使ってる術式やオウガの起動は、コイツが居なければ出来なかっただろうな」
「嘘!?」
「マジです! オウガは私が再起動させました! だが正直に言えばロケットパンチをつけたかった所存でございますよ!」
セリフさえなければ雑誌広告に出せそうなくらいイイ笑顔を見せる利英。
「マジですか」
どうにも信じられない風葉だったが、残念ながら本当の話だ。
二年前、鹵獲直後のオウガと辰巳はブラックボックスの塊だった。敵組織の虎の子だったのだから当然ではある。
十重二十重の複雑な暗号化が施された辰巳とオウガの術式。それをどうにか解析し、隊の運用を可能とするまでこぎ着けられたのは、巌の手腕と利英の解析能力があったからこそなのだ。
「当然、例の物が完成した祝福をしに来てくれたのだよ」
白い歯を輝かせる坊主の戯言に、風葉は全力で首を振る。
「違うの。道に迷って偶然ここに来ちゃっただけなの」
「だろうな。それ以外に君がここへ来る理由が無い」
「何と――! それでは僕の歓喜をどうすればいいのだね具体的に!?」
「太陽へ向かって投棄しろ、全力で」
深々と溜息をつく冥。その背後に回りながら、風葉は怖ず怖ずと聞いた。
「あの、ローウェルくん。このひと、何なの?」
「ああ、コイツは酒月利英。見ての通り変人で、困った事に天才だ」
ややげんなりした顔で坊主――もとい、利英の名を呼ぶ冥。
そうして紹介された利英は、今更のように風葉へ頭を垂れる。
「どうも、はじめましてコンバンワ。酒月利英と申します。趣味と仕事は術式の開発です」
斜め四十五度、的確な角度のお辞儀であった。
「あ、はぁ、どうも。霧宮風葉です」
打って変わった利英のテンションに、風葉は冥へ耳打つ。
「あの、ローウェルくん」
「冥でいいよ。そのかわり、僕も名前で呼んで良いかな」
「あ……うん。じゃあ、冥、くん」
「なんだい風葉」
にこりと微笑む冥。何の変哲も無い、社交辞令の笑顔。
だというのに、風葉は高鳴る胸を押さえてしまう。
それは間近で見た冥の肌が、予想以上に真っ白だったからだろうか。それとも、その唇が血のように真っ赤だったからだろうか。
「おおう! 女子高生とファントム3の絡み! コイツぁタマリマセンなぁ!!」
空気を読まない外野が居なければ、きっと風葉は耳まで真っ赤になっていただろう。
どうあれ平常心に戻った風葉は、利英を指差しながら冥に聞いた。
「あの、冥くん。このひとホントに天才なの?」
「そうなんだよ、信じられない事に。風葉の知ってるところで言えば、辰巳が使ってる術式やオウガの起動は、コイツが居なければ出来なかっただろうな」
「嘘!?」
「マジです! オウガは私が再起動させました! だが正直に言えばロケットパンチをつけたかった所存でございますよ!」
セリフさえなければ雑誌広告に出せそうなくらいイイ笑顔を見せる利英。
「マジですか」
どうにも信じられない風葉だったが、残念ながら本当の話だ。
二年前、鹵獲直後のオウガと辰巳はブラックボックスの塊だった。敵組織の虎の子だったのだから当然ではある。
十重二十重の複雑な暗号化が施された辰巳とオウガの術式。それをどうにか解析し、隊の運用を可能とするまでこぎ着けられたのは、巌の手腕と利英の解析能力があったからこそなのだ。
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