神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

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#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 01-02

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 再度タブレットを操作し、冥はギノアの資料を呼び出す。
「ヤツが死霊術師リッチになったと思われるのは1930年頃。世界恐慌が始まって、金融市場が阿鼻叫喚の地獄になった辺りだな」
「地獄か。馴染み深いのう」
「そうだな。で、ヤツはどうやら魔術研究と平行して、大なり小なり色々とやらかしていたようだ」
「具体的には?」
「魔術を用いた暗殺、密輸、違法取引、等々。いわゆる後ろ暗い仕事だな。アイスランド侵攻から独立までの際、何か一枚噛んでいた形跡もあった」
 ――1944年、当時アメリカ統治下にあったアイスランドは、6月17日に独立宣言を行った。
 アメリカ人ながらアイスランドで魔術を学んでいたギノアは、パイプの一本として魔術師であるなしを問わずに重宝された存在だったようだ。
「なるほどの」
 冥の手元の資料を斜め読む雷蔵だが、どうにも理解が追いつかないので止めた。
「して、ギノアはその金を何の研究に使っとったんじゃ?」
「研究か。それもあるが、一番は家族のためさ」
 しれりと放たれた一言に、雷蔵は思わず目をしばたかせる。
「……ギノアは死霊術師、人間を止めた輩では無かったのか?」
「ああ、確かにな。だが生前、ヤツは妻子をもうけていてな。妻は病死した後、残った男子に結構な愛情を注いでいたようだ。名前はディーンという」
 タブレット画面をスライドし、ギノアは一枚の写真を呼び出す。
 スキャンしたらしいモノクロ写真には、葬列の中で立ち尽くすディーン少年が拡大されていた。
 妻の死亡当時とするなら、五歳くらいだろうか。利発そうな眼差しは、しかし大粒の涙に濡れていた。
「ははあ、読めたぞ。死霊術師として影ながら息子を助けていたワケか」
「ビンゴ。その後息子は会社を作り、トントン拍子で業績を拡大させていった。恐らくは親父のサポートを受けながらな」
「じゃが1962年を境目に落ちぶれた、と言ったところかの?」
 ギノアが生死不明となった第一次Rフィールド収束作戦が実行された年を、雷蔵は先んじる。
「そういう事だ。ちなみに息子は1970年に自殺している。膨大な借金を背負っていたからな」
「世知辛い話じゃのう。しかし、そんなヤツが再び動き出したとなれば、目的は……」
 ふと、雷蔵はそこで口をつぐむ。
 ファントム・ユニットの司令室前へ辿り着いている事に気付いたからだ。
「まぁ、続きはいわおの考察も交えながらにしよう。資料自体は一足先に送ってるし、巌の方もキクロプスの交戦記録を中心に色々洗ってるから――」
 雷蔵を見上げながらドアノブに手を伸ばす冥の手は、しかし自動ドアでも無いのに空を切った。
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