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#1 レツオウガ起動
Chapter02 凪守 02-06
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「そう、この鎧装を使った術者は普通じゃ無い。だからこそ、炙り出た下手人の名前に信憑性が持てるんだよねー」
「名前……えっ!? ど、どこ!?」
反射的に視線を落とし、書類の文章を流し読む風葉。目当ての名前はすぐさま見つかった。
ギノア・フリードマン。
横文字の名前が示す通り、出身は日本では無くアメリカ。
祖国で魔術の基礎を学んだ後、アイスランドに渡って北欧神話系の秘蹟を習熟した、らしい。
「日乃栄高校地下の霊地に残ってた魔術の痕跡、辰巳から貰った戦闘記録、特に肉声。そういった情報を凪守のデータベースに照合してみたら、案外サックリ出て来たんだよねー」
「って、ここまで分かってるなら早く捕まえてくださいよ!」
思わず声を荒げてしまう風葉だったが、巌は緩んだ態度を崩さぬまま首を振る。
「そーできればこっちとしても楽だったんだけどねー。もう少し読んでみてくんない?」
「……?」
憮然としながらも書類に視線を戻し、風葉は資料の残りを読み進める。
素人なので功績や戦績の意味はさっぱり分からないが、それでも最後の項目に書かれていた表記は、風葉の目を止めた。
1962年11月3日、第一次Rフィールド殲滅作戦において、戦死。
「戦……えぇっ!?」
がば、と大きく顔を上げる風葉に、巌は小さく頷く。
「そういうコト。死体そのものは当時に確認済らしいよー。だから悪霊って名乗ったのは、案外マジなのかもねー」
「当時に何らかの魔術を使って、自分の魂をどこかに移していた、って事か?」
コメカミをつつく辰巳の疑問に、巌はもう一度頷く。
「多分ねー。で、逆説になるけどこれで鎧装を使えてた説明がつくよ。肉体を捨てて、魂だけの存在になってたワケだ。だから人のカタチを無視した鎧装を着込めたんだねー。でもこれじゃ、悪霊ってよりも死霊術師だねー」
はっは、と緩やかに笑う巌に、雷蔵は桜餅をかじる手を止める。
「ふぅむ。理屈は通ったが、それでも第三者の影は見えんな。そも、半世紀近く前の死に損ないを引っ張って来た理由は何だ?」
「さーて、その辺は何ともねー。その辺を掴ませないための鉄砲玉なんだろーし」
飲み終えた湯飲みを手の中でもてあそびつつ、巌はそれとなく付け足す。
「……あるいは、僕ら自体に用があるのかもね」
ぴく、と動きを止める辰巳。
それをあえて無視するかのように、雷蔵は腕を組む。
「だが、スティレットは――」
「名前……えっ!? ど、どこ!?」
反射的に視線を落とし、書類の文章を流し読む風葉。目当ての名前はすぐさま見つかった。
ギノア・フリードマン。
横文字の名前が示す通り、出身は日本では無くアメリカ。
祖国で魔術の基礎を学んだ後、アイスランドに渡って北欧神話系の秘蹟を習熟した、らしい。
「日乃栄高校地下の霊地に残ってた魔術の痕跡、辰巳から貰った戦闘記録、特に肉声。そういった情報を凪守のデータベースに照合してみたら、案外サックリ出て来たんだよねー」
「って、ここまで分かってるなら早く捕まえてくださいよ!」
思わず声を荒げてしまう風葉だったが、巌は緩んだ態度を崩さぬまま首を振る。
「そーできればこっちとしても楽だったんだけどねー。もう少し読んでみてくんない?」
「……?」
憮然としながらも書類に視線を戻し、風葉は資料の残りを読み進める。
素人なので功績や戦績の意味はさっぱり分からないが、それでも最後の項目に書かれていた表記は、風葉の目を止めた。
1962年11月3日、第一次Rフィールド殲滅作戦において、戦死。
「戦……えぇっ!?」
がば、と大きく顔を上げる風葉に、巌は小さく頷く。
「そういうコト。死体そのものは当時に確認済らしいよー。だから悪霊って名乗ったのは、案外マジなのかもねー」
「当時に何らかの魔術を使って、自分の魂をどこかに移していた、って事か?」
コメカミをつつく辰巳の疑問に、巌はもう一度頷く。
「多分ねー。で、逆説になるけどこれで鎧装を使えてた説明がつくよ。肉体を捨てて、魂だけの存在になってたワケだ。だから人のカタチを無視した鎧装を着込めたんだねー。でもこれじゃ、悪霊ってよりも死霊術師だねー」
はっは、と緩やかに笑う巌に、雷蔵は桜餅をかじる手を止める。
「ふぅむ。理屈は通ったが、それでも第三者の影は見えんな。そも、半世紀近く前の死に損ないを引っ張って来た理由は何だ?」
「さーて、その辺は何ともねー。その辺を掴ませないための鉄砲玉なんだろーし」
飲み終えた湯飲みを手の中でもてあそびつつ、巌はそれとなく付け足す。
「……あるいは、僕ら自体に用があるのかもね」
ぴく、と動きを止める辰巳。
それをあえて無視するかのように、雷蔵は腕を組む。
「だが、スティレットは――」
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