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#1 レツオウガ起動
Chapter01 邂逅 04-03
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「そ、それよりも! ……なんなの、あれ」
「多分キクロプスだな、ギリシャ神話に出て来るヤツだ。妙な飾りがついてる辺り、何かしら改変されてるとは思うが」
風葉の心情など知る由もない辰巳は、バイザーを下ろしてセンサーを起動。すぐさま赤色の巨人――キクロプスの解析を開始する。
表面を軽く見ただけでも分かる通り、あのキクロプスは霊力の塊だ。入れ違いに中庭の光柱が消えている辺り、スペクターは霊地から引き出した霊力全てを用いて、あの巨体を構成したのだろう。
「ひょっとして、あのおっきいのも、フェンリルとかいう悪者が取り憑いてるの?」
「まさか、ヤツ自体はさっき倒したさ。あれはただの自動操縦だよ。ウチに帰るためのな」
「ウチに、って……わぁ!?」
ぶわ、と吹き付ける風が風葉の口を塞いだ。僅か一メートル先の廊下をすり抜けたキクロプスの巨体が、それだけで空気を掻き回したのだ。
もしも幻燈結界が無ければ、一体どうなっていたろうか。何にせよ赤色の巨人は日乃栄高校北校舎をすり抜け、校庭の方へとまっすぐに歩いて行く。
その歩みに、こちらと戦う意志は見られない。というよりも、最初からこちらの存在に気付いている素振りがない。
「ひょっとして、近眼なのかな」
「そりゃまたユニークな発想だな。だが、そうじゃない。あのデカブツは、ハナからこっちと戦う気がないのさ」
そう言った辰巳は、未だ意識が戻らない泉をおもむろに抱え上げ、キクロプスの後を追うように二年二組の扉をすり抜けた。
「……ええー」
眼前でまたもや超常現象を見せられた風葉は、意を決して扉に飛び込む。
「てぇ、やっ!」
キツく目を閉じ、ジャンプ、着地。
そうして恐る恐る目を開ければ、室内では二時限目である歴史の真っ最中だった。
薄墨色の教卓の上では、歴史の矢沢先生がテストの出題範囲に赤チョークで丸をつけていた。が、それを見ていられる余裕は今の風葉には無い。
真正面、校庭を見下ろす窓の外。一年生が体育の準備運動をしている隣で、キクロプスが巨大な拳を振り上げていたのだ。
「ちょっ、待っ――」
風葉の声など届くはずもなく、容赦なく打ち下ろされる拳は、無慈悲に目標へと叩き付けられた。
「多分キクロプスだな、ギリシャ神話に出て来るヤツだ。妙な飾りがついてる辺り、何かしら改変されてるとは思うが」
風葉の心情など知る由もない辰巳は、バイザーを下ろしてセンサーを起動。すぐさま赤色の巨人――キクロプスの解析を開始する。
表面を軽く見ただけでも分かる通り、あのキクロプスは霊力の塊だ。入れ違いに中庭の光柱が消えている辺り、スペクターは霊地から引き出した霊力全てを用いて、あの巨体を構成したのだろう。
「ひょっとして、あのおっきいのも、フェンリルとかいう悪者が取り憑いてるの?」
「まさか、ヤツ自体はさっき倒したさ。あれはただの自動操縦だよ。ウチに帰るためのな」
「ウチに、って……わぁ!?」
ぶわ、と吹き付ける風が風葉の口を塞いだ。僅か一メートル先の廊下をすり抜けたキクロプスの巨体が、それだけで空気を掻き回したのだ。
もしも幻燈結界が無ければ、一体どうなっていたろうか。何にせよ赤色の巨人は日乃栄高校北校舎をすり抜け、校庭の方へとまっすぐに歩いて行く。
その歩みに、こちらと戦う意志は見られない。というよりも、最初からこちらの存在に気付いている素振りがない。
「ひょっとして、近眼なのかな」
「そりゃまたユニークな発想だな。だが、そうじゃない。あのデカブツは、ハナからこっちと戦う気がないのさ」
そう言った辰巳は、未だ意識が戻らない泉をおもむろに抱え上げ、キクロプスの後を追うように二年二組の扉をすり抜けた。
「……ええー」
眼前でまたもや超常現象を見せられた風葉は、意を決して扉に飛び込む。
「てぇ、やっ!」
キツく目を閉じ、ジャンプ、着地。
そうして恐る恐る目を開ければ、室内では二時限目である歴史の真っ最中だった。
薄墨色の教卓の上では、歴史の矢沢先生がテストの出題範囲に赤チョークで丸をつけていた。が、それを見ていられる余裕は今の風葉には無い。
真正面、校庭を見下ろす窓の外。一年生が体育の準備運動をしている隣で、キクロプスが巨大な拳を振り上げていたのだ。
「ちょっ、待っ――」
風葉の声など届くはずもなく、容赦なく打ち下ろされる拳は、無慈悲に目標へと叩き付けられた。
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