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#1 レツオウガ起動
Chapter01 邂逅 01-06
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ようやくこの異常に気付いてくれた相手へ、風葉は一直線に駆け寄った。変な目で見ているクラスメイトもいるだろうが、生憎と今の風葉に形振り構っていられる余裕はない。
「おはよう五辻くん!」
「おはようございます。えぇーと」
不安、驚き、期待。色々な感情を顔一杯に浮かべた風葉とは対照的に、辰巳は真顔のまま口を開いた。
「どちらさんでしたっけ?」
思わずズッコケそうになる風葉。真顔を崩さない辺り、どうやら本気で言っているらしい。
「……風葉だよ、霧宮風葉。こんな髪になってるけど、同じクラスの」
「あー。そうだっけか」
「そうだっけ、ってそんな初対面みたいに」
呆れる風葉とは対照的に、辰巳は真顔のままぽりぽりと頬をかく。
「いやぁ、物覚えの悪さには自信があってね。特に人の名前と顔」
「捨てようよそんな自信」
「はっは、ごめんよ」
軽く笑いながら、辰巳は鞄を棚の上に置く。
「で、だ。俺の目に間違いがなければ、霧宮さんの頭が大変なことになってるんだが」
「あ、うん、そうなの。それで……」
はた、と風葉は思い至る。焦ってばかりいたため、そこから先をまるっきり考えていなかったのだ。
「……それで、どうしよう?」
「そうだな、とりあえず廊下に出ようか。わりかし視線が痛い」
「ふぇ?」
思わず振り返ってみれば、男女問わず大半のクラスメイトが風葉達を見ていた。突然の急接近を目の前で見せられれば、まぁこうもなるだろう。
言葉が出ない風葉。その空白を、娯楽に飢えた若人達が見逃すはずもなかった。
「おい五辻! どういうことだ!」「風葉っちってば一体何のハナシ? ひょっとしてあんなハナシ?」「もしかするとこんなハナシかもよ?」「ソイツは許されねぇなぁ!」「ホントのトコどうなの?」「おでんたべたい」「誰か新聞部呼んでこい!」
等々。各々好き勝手に騒ぎ立てるクラスメイト達に、風葉はぶんぶんと首を振る。
「ち、違うってば! そういうのじゃないからね!」
「そうとも、ちょっとした秘め事ってだけな話だ」
さらりと言ってのける辰巳に、風葉を含めたクラスの全員が硬直した。
今にも粉微塵になりそうな空気のなか、油の切れた歯車のようにぎこちない動きで、風葉は辰巳に向き直る。
「い、いつつじ、くん?」
「まぁ、それはそれとしてちょいと失礼」
先ほど言った通り廊下へ出ながら、風葉を手招きする辰巳。ぎくしゃくとその後に続いて廊下に出た風葉は、後ろ手に二年二組のドアを閉める。
直後、歓声が爆発した。
「おはよう五辻くん!」
「おはようございます。えぇーと」
不安、驚き、期待。色々な感情を顔一杯に浮かべた風葉とは対照的に、辰巳は真顔のまま口を開いた。
「どちらさんでしたっけ?」
思わずズッコケそうになる風葉。真顔を崩さない辺り、どうやら本気で言っているらしい。
「……風葉だよ、霧宮風葉。こんな髪になってるけど、同じクラスの」
「あー。そうだっけか」
「そうだっけ、ってそんな初対面みたいに」
呆れる風葉とは対照的に、辰巳は真顔のままぽりぽりと頬をかく。
「いやぁ、物覚えの悪さには自信があってね。特に人の名前と顔」
「捨てようよそんな自信」
「はっは、ごめんよ」
軽く笑いながら、辰巳は鞄を棚の上に置く。
「で、だ。俺の目に間違いがなければ、霧宮さんの頭が大変なことになってるんだが」
「あ、うん、そうなの。それで……」
はた、と風葉は思い至る。焦ってばかりいたため、そこから先をまるっきり考えていなかったのだ。
「……それで、どうしよう?」
「そうだな、とりあえず廊下に出ようか。わりかし視線が痛い」
「ふぇ?」
思わず振り返ってみれば、男女問わず大半のクラスメイトが風葉達を見ていた。突然の急接近を目の前で見せられれば、まぁこうもなるだろう。
言葉が出ない風葉。その空白を、娯楽に飢えた若人達が見逃すはずもなかった。
「おい五辻! どういうことだ!」「風葉っちってば一体何のハナシ? ひょっとしてあんなハナシ?」「もしかするとこんなハナシかもよ?」「ソイツは許されねぇなぁ!」「ホントのトコどうなの?」「おでんたべたい」「誰か新聞部呼んでこい!」
等々。各々好き勝手に騒ぎ立てるクラスメイト達に、風葉はぶんぶんと首を振る。
「ち、違うってば! そういうのじゃないからね!」
「そうとも、ちょっとした秘め事ってだけな話だ」
さらりと言ってのける辰巳に、風葉を含めたクラスの全員が硬直した。
今にも粉微塵になりそうな空気のなか、油の切れた歯車のようにぎこちない動きで、風葉は辰巳に向き直る。
「い、いつつじ、くん?」
「まぁ、それはそれとしてちょいと失礼」
先ほど言った通り廊下へ出ながら、風葉を手招きする辰巳。ぎくしゃくとその後に続いて廊下に出た風葉は、後ろ手に二年二組のドアを閉める。
直後、歓声が爆発した。
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