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#1 レツオウガ起動
Chapter01 邂逅 01-03
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「――」
一筋、風葉の頬を汗が伝い落ちる。
オカルト関連についてはサッパリな風葉ではあったが、それでも今の光景から導き出せる回答は、一つしかなかった。
「ゆ、幽――」
霊、と風葉が言いかけた直前、洗面所の扉が音を立てて開いた。
「うひゃあ!?」
「おわっ!? 何事……って、なんだ風葉じゃん。おはよ」
「お、おはようございます泉さん!?」
扉を開けた張本人こと、隣部屋の鹿島田泉は、どうにか頭を隠そうとわたわたしている風葉をジト目で見る。
「なに、ホントにどしたの? てか、なんで敬語なのさ。学年同じっしょ?」
「いや、その、何ていうか」
ちらちらと横目で鏡を見る風葉。その様子に首を傾げつつ、泉は風葉に歩み寄る。
「ふぅむ?」
じっと顔を近付け、器用にも片眉を吊り上げる泉。いきなり近付いた友人の顔に、風葉は違った意味でドキリとする。
寝起き直後なので乱れ気味だが、それでもこざっぱりとしたショートカット。
そんな髪型にキリッとした顔立ちと、平均より高めな背丈が合わさっているため、角度によっては美男子っぽく見える時もあるのだ。例えば今のように。
とはいえ、鹿島田泉は紛れもなく女性である。視線を下ろせば、泉が寝間着代わりにしている小豆色のジャージが、身体のラインを浮き彫りにしていた。
特に、ファスナーが上がりきらない胸周りを。
当人いわく、中学時代の運動着なので一回り小さいらしい。
だが、だからこそ強調されるそれを直視した風葉は、全ての異変を忘れて自分の胸を押さえた。
ぺったりしていた。そして、がっかりした。
そんな風葉をじっと見つめていた泉は、不意に風葉の髪を一筋つまむ。
「お、枝毛発見」
「……えだげ?」
「ちゃんとしないとダメだぞ風葉。何ならいいシャンプー教えよっか?」
確かに泉の指は枝毛をつまんでいた。銀色に輝いている枝毛を。
「それは、うれしいんだけど。あの、えーっと、それだけ?」
「ん? もっと探して欲しいのか?」
「そうじゃなくて、その」
意を決し、風葉は聞いてみた。
「私の髪、変じゃないかな?」
一筋、風葉の頬を汗が伝い落ちる。
オカルト関連についてはサッパリな風葉ではあったが、それでも今の光景から導き出せる回答は、一つしかなかった。
「ゆ、幽――」
霊、と風葉が言いかけた直前、洗面所の扉が音を立てて開いた。
「うひゃあ!?」
「おわっ!? 何事……って、なんだ風葉じゃん。おはよ」
「お、おはようございます泉さん!?」
扉を開けた張本人こと、隣部屋の鹿島田泉は、どうにか頭を隠そうとわたわたしている風葉をジト目で見る。
「なに、ホントにどしたの? てか、なんで敬語なのさ。学年同じっしょ?」
「いや、その、何ていうか」
ちらちらと横目で鏡を見る風葉。その様子に首を傾げつつ、泉は風葉に歩み寄る。
「ふぅむ?」
じっと顔を近付け、器用にも片眉を吊り上げる泉。いきなり近付いた友人の顔に、風葉は違った意味でドキリとする。
寝起き直後なので乱れ気味だが、それでもこざっぱりとしたショートカット。
そんな髪型にキリッとした顔立ちと、平均より高めな背丈が合わさっているため、角度によっては美男子っぽく見える時もあるのだ。例えば今のように。
とはいえ、鹿島田泉は紛れもなく女性である。視線を下ろせば、泉が寝間着代わりにしている小豆色のジャージが、身体のラインを浮き彫りにしていた。
特に、ファスナーが上がりきらない胸周りを。
当人いわく、中学時代の運動着なので一回り小さいらしい。
だが、だからこそ強調されるそれを直視した風葉は、全ての異変を忘れて自分の胸を押さえた。
ぺったりしていた。そして、がっかりした。
そんな風葉をじっと見つめていた泉は、不意に風葉の髪を一筋つまむ。
「お、枝毛発見」
「……えだげ?」
「ちゃんとしないとダメだぞ風葉。何ならいいシャンプー教えよっか?」
確かに泉の指は枝毛をつまんでいた。銀色に輝いている枝毛を。
「それは、うれしいんだけど。あの、えーっと、それだけ?」
「ん? もっと探して欲しいのか?」
「そうじゃなくて、その」
意を決し、風葉は聞いてみた。
「私の髪、変じゃないかな?」
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