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第1章「転生しました!」

第04話「スライムって実は最強じゃね?」

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 スライムに転生してどれくらい経ったのだろうか。
 彼は、とんでもないスライムに成長していた。

(おおっ、こりゃ便利!)

 それまでゴブリンやオークなど、倒したものはそのまま吸収していた。
 着衣や装備などである。
 最初はそのままというのはためらわれたが、いちいち消化せずに吸収できることがわかってからは気にせず吸収していた。消化には時間がかかるため、短時間で吸収できるのは、他から襲われる危険性も減るからである。

(オークの持っていた短剣とか、残しておけば狩りも楽だったのにな)

 それまでは罠にかけた後、頭を覆って窒息させたり、首を締め上げてトドメをさしていたのだけれど、手先の器用さが上がった今なら、短剣とか使えるんじゃないかと考えた訳だ。
 すると体内に何か異物がある気がして、吐き出そうとしたら短剣が出た。
 これにはビックリ。
 手入れもされていない、汚れや錆の浮いたような短剣ではあったが、まごうこと無き武器であった。
 そして早速、活用する。

 罠で捕縛、短剣でトドメ、吸収。
 この繰り返し。

 狩りは非常に楽になったが、今度はいくら吸収しても進化しない。

(上位種になれば、もっと大量の『栄養』が要るとはいえ、さすがに遅くないか?)
(‥‥待てよ? この短剣、この身体のどこに入っていたんだ?)
(鉄も銅も消化してしまう消化液に耐えて入っていたのか? それとも消化しないまま入っているとか?)

 試しに吸収した大トカゲを出してみようとした。
 そうしたら、本当に出た。

(なんてこった! 取り込んだだけで消化していなかったのか!)
(ってゆーか、この身体より大きな大トカゲ、どこに入っていたんだ?!)
(コレはアレか? ファンタジー小説でよくある、マジックバッグ的な何かなのか?)
(スライムはこんな能力が元からあったという事か?)

 さすがにこの大きさを消化吸収するのは時間がかかる。
 彼は「中に吸収したまま消化できないかな」と考え、何となくやってみた。
 そうしたら、本当に出来た。
 続いて未消化だったものを次々と消化していく。

<ピコーン!>
<ピコーン!>
<ピコーン!>
<ピコーン!>

 連続で進化したらしい。
 彼の身体はさらに大きくなっていた。

(あ、失敗した!)

 うっかりゴブリンやオークの、武器や防具や衣服もまとめて消化してしまったらしい。
 かろうじて使用していた短剣だけ、取り出していたので残っている。

 器用度もさらに上がったようだ。
 さらに「触手が手の形に出来れば、もっと使えるのに」と思っていたら、本当に手の形に変形できた。器用度様サマである。
 そしてそれは、逞しいオークの腕だった。

(ん? という事は?)

 オークの全身を模してみたら、オークになったようだ。鏡が無いので頭以外を見た感じだが。おそらくオークに変形しているのだろう。
 ゴブリンも試してみたが、ちゃんとゴブリンだった。
 ‥‥大きさ以外は。

 スライムの体積が増えたため、オークはそれなりだが、えらい大きなゴブリンに変形してしまっていたのだ。これはイカンということで、何とかしようと試行錯誤していたら、自分の身体を内部に吸収することで小さくなることに成功した。

 そんな訳で。

●力が強い ●武器が使える ●変形できる ●多くの物を収納できる ●消化したものに変身できる 
 そして何より知能のあるスライムがここに誕生していた。

(これ‥‥このまま進化を続けたら、この森で最強になれるんじゃないか?)

 さすがにこの森の全てを知っている訳ではないので、さすがにそれは大げさだとは思うが、スライムとは思えない強さを手にしたことは実感できた。
 単体相手とはいえ、オークや大トカゲを倒せるスライムがどこの世界に居るのだろうか。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ある程度の自信がついたので、生まれ場所であるこの沼を離れることにした。
 その前に。

「この沼を吸収しておくか?」

 オークたちの言葉から、この沼には魔力を回復させたり、傷を治したりする効果があるとのこと。
 オークの用いる言葉は、オークを何体か消化すると自動的に習得できたようだ。これがスライム由来の特性か彼自身の特殊な能力かはわからないが、味覚や視覚、嗅覚、聴覚なども得られたことから、ほぼ間違いないだろう。
 そういえば転生の時に「特別な能力が与えられる」と彼は聞いたが、それが結局どの能力なのか、今にしてみればスライム固有の能力と判別はつかなくなってしまっている。
 言葉といえばゴブリンたちも何か会話していたが、とても言葉とはいえない稚拙なものであった。指を指して「やる?」「うん」みたいな、最低限の意思疎通といった感じ。おそらくそれだけ知能が低いという事なのだろう。
 ちなみにオークも大して賢くはない。せいぜいが人間の幼児程度の知能であり、言語能力である。
 ともあれ吸収だ、と彼は沼に手を突っ込んだ。

「うげ、マズぅ‥‥」

 良薬口に苦しとは言うが、苦い渋い辛い酸っぱいと、この世の不味さを詰め合わせたような味わいだ。
 何とかオークの味覚を切って、スライムの味覚で吸い取ることにした。
 どれだけの量を吸収できるのかわからなかったが、沼の泥は全て吸収できた。スライム体の何十倍もの吸収とか、相変わらず底の見えない能力に嘆息するしかない。


「さて、行くか!」

 彼はとりあえず、ここから近いと思われるゴブリンの集落を目指した。
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