上 下
6 / 12
第1章:本物の魔女だった?

第5話 魔王様と対面ですか!

しおりを挟む


 心を通わせ、極上の幸せを抱きしめて寝た、翌朝。
 嬉し恥ずかしな目覚めを経て、朝食を摂った。
 勤務が時間に不規則なこともあり、女中さんがそこそこの食材を揃えてくれているそうだ。独り暮らしが長いこともあって、ミラは料理も得意とのこと。ちなみに、料理は祐二も同じで、そこそこ出来る。
 その朝食の席で、昨夜も話した今後の予定と今日の予定を確認する。
「我が団でも色々と意見を求められると思う。なので状況を知っていてもらいたい」
 なのでミラの執務室で色んな資料や報告書を読み漁る予定。
 ‥‥‥‥だったのだが。


 第7軍ビル、ミラの私室に転移し、執務室に入るなり何かに気付くミラ。
 そしてため息。
「陛下からお呼び出し。耳が早いったら」
 机の上の書状を読み、呆れたように祐二に告げる。お疲れさん、とか祐二が思っていると。
「ユージを連れて来いですと」
「え? 何で?」
 素で返してしまった。


 ゼファール連合王国の国王。つまりはこの世界における魔王様。
 てっきり謁見室とかに出向くのかと思ったら、執務室でした。
 第7軍のビルからは専用の転移室を通り、王城の玄関ホールへと出た。そこで祐二だけ衛兵のチェックを受け、ホールから階段を上って3階にその部屋がある。
「第7軍副団長、ミラです」
 執務室のドア前で、両脇を固める衛兵に会釈をすると、ミラはドアをノックしてそう告げた。
「入れ」
 しばらくの間があり、返事があったのでミラは「失礼します」とドアを開けた。
 思ったより部屋は狭い。とはいえ大きなテーブルとソファーといった来客セットがあって、大きな執務机、たくさんの書棚が並んでいて、20畳程の広さだが狭く感じるような状態だ。
 床は赤く装飾されたフカフカのじゅうたん。壁や天井は金細工で彩られ、かなり豪華な印象。
 そんな部屋の奥、執務机で書類と格闘している少女と、その少女に付き添う30代くらいに見える男性が居た。

「そちらが召還したという賢者殿か?」
 男性が問う。執務机から少し離れた場所から、少女に向けて立っていたミラがそうです、と返す。
 祐二はミラの後ろに控えるように、同じように立っている。ひざまずくとかはしないようだ。
「ですが、あまり軍師には向きません。技術とか魔法の指導は望めます」
 昨夜、詳しく打ち合わせた通り、ミラはそう告げる。
 またここに来る際、求められるまで話すなと言われたので、祐二は黙ってミラに任せていた。
「そうなのか? 名は何という?」
「ユージと申します」
「ふむ‥‥種族は人族か?」
「そうです」
 ミラと男の質疑応答を聞いていた祐二は、机に座る少女は何者だろうとか、横に立つ男と対話しているが、男は角も無いから魔族じゃないよなぁとか、そんな事を考えていた。
 すると。
「ユージ殿と個人的に話がしたい。ミラは下がってくれ」
 とか男が言い出した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

忘れられた妻

毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。 セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。 「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」 セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。 「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」 セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。 そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。 三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

処理中です...