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夜
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大量の魔法陣から放たれた虹の光弾。それは真っ直ぐに光の如き速さで瑠奈を貫こうとするが、瑠奈は予め自身を黒き海で覆い隠していた。
「フハハッ、吾輩を前に防戦一方となって良いのか!?」
「『黒星流』」
腰に手を当てて高笑うアステラスに、黒い海の一部が一直線に伸びる。水鉄砲のように放たれたそれにアステラスは驚きつつも、飛び退いて回避した。
「防戦一方はどっちかな!」
「面白いッ、もうそこまで操れるようになっていたとはな!」
更に一本の黒い海が放たれるも、アステラスは回避する。二本となった黒い海の一部は、触手のようにうねり、鞭を打つようにアステラスを襲う。
「これなら遅くも無いし、本体も同時に守れるでしょ!」
「確かにそうだが……」
黒い海をローブのように纏い、顔以外を覆い隠す瑠奈に、アステラスはニヤリと笑った。
「攻撃としては、いささか温いな!」
アステラスの姿が転移によって掻き消え、遥か上空に現れる。
「吾輩は偉大なる星の魔術師だ、天に立つなど容易いことよ」
エコーがかかったように響く声、あの位置まで黒い海を伸ばすのは難しいだろう。
「フハハッ、見せてみろッ! お前にここまで届く力があるかッ!」
「『流星矢』」
瑠奈が弓を引くような動作で流星のような光の矢を放つ。しかし、それは同じ見た目をした魔術に撃ち落とされる。
「吾輩の教えただけの力で吾輩に勝つことは出来ぬッ! 当然であろうッ!!」
アステラスは杖を天に向け、遂に詠唱を始めた。
「『我こそは黒き世界の王、闇に満ちし天上を統べる者』」
「『月の導き、銀遮の一瞥』」
しかし、瑠奈は焦る様子も無く詠唱を合わせる。
「『混沌の果て、宵闇は来たる』」
「『踊る星々行く道塞ぎ、月の光は指し示す』」
魔力の光が魔法陣を描き、夜空に広がっていく。
「『遍く星々、金烏と玉兎。万象一切我が下にあり』」
「『月神の瞥視』」
先に詠唱を完成させた瑠奈。空から青白い光が差し、アステラスを照らし出す。
「『夜』」
その瞬間、世界に夜が満ちていく。空の上にあった筈の夜が、地上まで侵食し、全てを闇で覆い隠していく。
まるで宇宙空間に放り出されたかのように、星の光と青白い光を帯びたアステラスだけが浮かんでいる。
「これは……」
瑠奈の使った魔術は対象の転移魔術の禁止と持続的な位置の特定だ。確かにアステラスを追い詰めるには必須のステップではあるが、その代償は高くついたようだ。
「フハハハハハッ! これぞッ、吾輩の切り札よッ! 只今よりここは星天ッ、黒き宙の一端ッ!」
正に、全てを夜に塗り替える魔術。アステラスの能力が最大限発揮されるフィールド、しかし厄介なのは、これが結界では無いことだ。この魔術を解除するのはかなり難しいだろう。
「さぁ、星を見るが良いッ!」
言葉と同時に、無数の魔法陣が夜を埋め尽くしていく。その数は優に千を超えているだろう。
「フハハハハッ、やはり吾輩の魔術は美しいなッ!」
放たれるは虹色の光の群れ。流れ星のようなその光たちは全て瑠奈へと向かって行くが、黒い海が瑠奈を覆う球体となり、虹の光は一つ残さず呑み込まれて消えた。
「『祈りと目覚め、光と微笑み』」
黒い球体となった星の海の中、瑠奈の声が響く。
「『狂い月』」
黒い球体が開き、そこから黄金の光を纏った瑠奈が現れた。
「フハハッ、吾輩を前に防戦一方となって良いのか!?」
「『黒星流』」
腰に手を当てて高笑うアステラスに、黒い海の一部が一直線に伸びる。水鉄砲のように放たれたそれにアステラスは驚きつつも、飛び退いて回避した。
「防戦一方はどっちかな!」
「面白いッ、もうそこまで操れるようになっていたとはな!」
更に一本の黒い海が放たれるも、アステラスは回避する。二本となった黒い海の一部は、触手のようにうねり、鞭を打つようにアステラスを襲う。
「これなら遅くも無いし、本体も同時に守れるでしょ!」
「確かにそうだが……」
黒い海をローブのように纏い、顔以外を覆い隠す瑠奈に、アステラスはニヤリと笑った。
「攻撃としては、いささか温いな!」
アステラスの姿が転移によって掻き消え、遥か上空に現れる。
「吾輩は偉大なる星の魔術師だ、天に立つなど容易いことよ」
エコーがかかったように響く声、あの位置まで黒い海を伸ばすのは難しいだろう。
「フハハッ、見せてみろッ! お前にここまで届く力があるかッ!」
「『流星矢』」
瑠奈が弓を引くような動作で流星のような光の矢を放つ。しかし、それは同じ見た目をした魔術に撃ち落とされる。
「吾輩の教えただけの力で吾輩に勝つことは出来ぬッ! 当然であろうッ!!」
アステラスは杖を天に向け、遂に詠唱を始めた。
「『我こそは黒き世界の王、闇に満ちし天上を統べる者』」
「『月の導き、銀遮の一瞥』」
しかし、瑠奈は焦る様子も無く詠唱を合わせる。
「『混沌の果て、宵闇は来たる』」
「『踊る星々行く道塞ぎ、月の光は指し示す』」
魔力の光が魔法陣を描き、夜空に広がっていく。
「『遍く星々、金烏と玉兎。万象一切我が下にあり』」
「『月神の瞥視』」
先に詠唱を完成させた瑠奈。空から青白い光が差し、アステラスを照らし出す。
「『夜』」
その瞬間、世界に夜が満ちていく。空の上にあった筈の夜が、地上まで侵食し、全てを闇で覆い隠していく。
まるで宇宙空間に放り出されたかのように、星の光と青白い光を帯びたアステラスだけが浮かんでいる。
「これは……」
瑠奈の使った魔術は対象の転移魔術の禁止と持続的な位置の特定だ。確かにアステラスを追い詰めるには必須のステップではあるが、その代償は高くついたようだ。
「フハハハハハッ! これぞッ、吾輩の切り札よッ! 只今よりここは星天ッ、黒き宙の一端ッ!」
正に、全てを夜に塗り替える魔術。アステラスの能力が最大限発揮されるフィールド、しかし厄介なのは、これが結界では無いことだ。この魔術を解除するのはかなり難しいだろう。
「さぁ、星を見るが良いッ!」
言葉と同時に、無数の魔法陣が夜を埋め尽くしていく。その数は優に千を超えているだろう。
「フハハハハッ、やはり吾輩の魔術は美しいなッ!」
放たれるは虹色の光の群れ。流れ星のようなその光たちは全て瑠奈へと向かって行くが、黒い海が瑠奈を覆う球体となり、虹の光は一つ残さず呑み込まれて消えた。
「『祈りと目覚め、光と微笑み』」
黒い球体となった星の海の中、瑠奈の声が響く。
「『狂い月』」
黒い球体が開き、そこから黄金の光を纏った瑠奈が現れた。
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