247 / 335
夜
しおりを挟む
大量の魔法陣から放たれた虹の光弾。それは真っ直ぐに光の如き速さで瑠奈を貫こうとするが、瑠奈は予め自身を黒き海で覆い隠していた。
「フハハッ、吾輩を前に防戦一方となって良いのか!?」
「『黒星流』」
腰に手を当てて高笑うアステラスに、黒い海の一部が一直線に伸びる。水鉄砲のように放たれたそれにアステラスは驚きつつも、飛び退いて回避した。
「防戦一方はどっちかな!」
「面白いッ、もうそこまで操れるようになっていたとはな!」
更に一本の黒い海が放たれるも、アステラスは回避する。二本となった黒い海の一部は、触手のようにうねり、鞭を打つようにアステラスを襲う。
「これなら遅くも無いし、本体も同時に守れるでしょ!」
「確かにそうだが……」
黒い海をローブのように纏い、顔以外を覆い隠す瑠奈に、アステラスはニヤリと笑った。
「攻撃としては、いささか温いな!」
アステラスの姿が転移によって掻き消え、遥か上空に現れる。
「吾輩は偉大なる星の魔術師だ、天に立つなど容易いことよ」
エコーがかかったように響く声、あの位置まで黒い海を伸ばすのは難しいだろう。
「フハハッ、見せてみろッ! お前にここまで届く力があるかッ!」
「『流星矢』」
瑠奈が弓を引くような動作で流星のような光の矢を放つ。しかし、それは同じ見た目をした魔術に撃ち落とされる。
「吾輩の教えただけの力で吾輩に勝つことは出来ぬッ! 当然であろうッ!!」
アステラスは杖を天に向け、遂に詠唱を始めた。
「『我こそは黒き世界の王、闇に満ちし天上を統べる者』」
「『月の導き、銀遮の一瞥』」
しかし、瑠奈は焦る様子も無く詠唱を合わせる。
「『混沌の果て、宵闇は来たる』」
「『踊る星々行く道塞ぎ、月の光は指し示す』」
魔力の光が魔法陣を描き、夜空に広がっていく。
「『遍く星々、金烏と玉兎。万象一切我が下にあり』」
「『月神の瞥視』」
先に詠唱を完成させた瑠奈。空から青白い光が差し、アステラスを照らし出す。
「『夜』」
その瞬間、世界に夜が満ちていく。空の上にあった筈の夜が、地上まで侵食し、全てを闇で覆い隠していく。
まるで宇宙空間に放り出されたかのように、星の光と青白い光を帯びたアステラスだけが浮かんでいる。
「これは……」
瑠奈の使った魔術は対象の転移魔術の禁止と持続的な位置の特定だ。確かにアステラスを追い詰めるには必須のステップではあるが、その代償は高くついたようだ。
「フハハハハハッ! これぞッ、吾輩の切り札よッ! 只今よりここは星天ッ、黒き宙の一端ッ!」
正に、全てを夜に塗り替える魔術。アステラスの能力が最大限発揮されるフィールド、しかし厄介なのは、これが結界では無いことだ。この魔術を解除するのはかなり難しいだろう。
「さぁ、星を見るが良いッ!」
言葉と同時に、無数の魔法陣が夜を埋め尽くしていく。その数は優に千を超えているだろう。
「フハハハハッ、やはり吾輩の魔術は美しいなッ!」
放たれるは虹色の光の群れ。流れ星のようなその光たちは全て瑠奈へと向かって行くが、黒い海が瑠奈を覆う球体となり、虹の光は一つ残さず呑み込まれて消えた。
「『祈りと目覚め、光と微笑み』」
黒い球体となった星の海の中、瑠奈の声が響く。
「『狂い月』」
黒い球体が開き、そこから黄金の光を纏った瑠奈が現れた。
「フハハッ、吾輩を前に防戦一方となって良いのか!?」
「『黒星流』」
腰に手を当てて高笑うアステラスに、黒い海の一部が一直線に伸びる。水鉄砲のように放たれたそれにアステラスは驚きつつも、飛び退いて回避した。
「防戦一方はどっちかな!」
「面白いッ、もうそこまで操れるようになっていたとはな!」
更に一本の黒い海が放たれるも、アステラスは回避する。二本となった黒い海の一部は、触手のようにうねり、鞭を打つようにアステラスを襲う。
「これなら遅くも無いし、本体も同時に守れるでしょ!」
「確かにそうだが……」
黒い海をローブのように纏い、顔以外を覆い隠す瑠奈に、アステラスはニヤリと笑った。
「攻撃としては、いささか温いな!」
アステラスの姿が転移によって掻き消え、遥か上空に現れる。
「吾輩は偉大なる星の魔術師だ、天に立つなど容易いことよ」
エコーがかかったように響く声、あの位置まで黒い海を伸ばすのは難しいだろう。
「フハハッ、見せてみろッ! お前にここまで届く力があるかッ!」
「『流星矢』」
瑠奈が弓を引くような動作で流星のような光の矢を放つ。しかし、それは同じ見た目をした魔術に撃ち落とされる。
「吾輩の教えただけの力で吾輩に勝つことは出来ぬッ! 当然であろうッ!!」
アステラスは杖を天に向け、遂に詠唱を始めた。
「『我こそは黒き世界の王、闇に満ちし天上を統べる者』」
「『月の導き、銀遮の一瞥』」
しかし、瑠奈は焦る様子も無く詠唱を合わせる。
「『混沌の果て、宵闇は来たる』」
「『踊る星々行く道塞ぎ、月の光は指し示す』」
魔力の光が魔法陣を描き、夜空に広がっていく。
「『遍く星々、金烏と玉兎。万象一切我が下にあり』」
「『月神の瞥視』」
先に詠唱を完成させた瑠奈。空から青白い光が差し、アステラスを照らし出す。
「『夜』」
その瞬間、世界に夜が満ちていく。空の上にあった筈の夜が、地上まで侵食し、全てを闇で覆い隠していく。
まるで宇宙空間に放り出されたかのように、星の光と青白い光を帯びたアステラスだけが浮かんでいる。
「これは……」
瑠奈の使った魔術は対象の転移魔術の禁止と持続的な位置の特定だ。確かにアステラスを追い詰めるには必須のステップではあるが、その代償は高くついたようだ。
「フハハハハハッ! これぞッ、吾輩の切り札よッ! 只今よりここは星天ッ、黒き宙の一端ッ!」
正に、全てを夜に塗り替える魔術。アステラスの能力が最大限発揮されるフィールド、しかし厄介なのは、これが結界では無いことだ。この魔術を解除するのはかなり難しいだろう。
「さぁ、星を見るが良いッ!」
言葉と同時に、無数の魔法陣が夜を埋め尽くしていく。その数は優に千を超えているだろう。
「フハハハハッ、やはり吾輩の魔術は美しいなッ!」
放たれるは虹色の光の群れ。流れ星のようなその光たちは全て瑠奈へと向かって行くが、黒い海が瑠奈を覆う球体となり、虹の光は一つ残さず呑み込まれて消えた。
「『祈りと目覚め、光と微笑み』」
黒い球体となった星の海の中、瑠奈の声が響く。
「『狂い月』」
黒い球体が開き、そこから黄金の光を纏った瑠奈が現れた。
21
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説

元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで
あれい
ファンタジー
田代学はデブ男である。家族には冷たくされ、学校ではいじめを受けてきた。高校入学を前に一人暮らしをするが、高校に行くのが憂鬱だ。引っ越し初日、学は異世界に勇者召喚され、魔王と戦うことになる。そして7年後、学は無事、魔王討伐を成し遂げ、異世界から帰還することになる。だが、学を召喚した女神アイリスは元の世界ではなく、男女比が1:20のパラレルワールドへの帰還を勧めてきて……。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

ダンジョン配信スタッフやります!〜ぼっちだった俺だけど、二次覚醒したのでカリスマ配信者を陰ながら支える黒子的な存在になろうと思います〜
KeyBow
ファンタジー
舞台は20xx年の日本。
突如として発生したダンジョンにより世界は混乱に陥る。ダンジョンに涌く魔物を倒して得られる素材や魔石、貴重な鉱物資源を回収する探索者が活躍するようになる。
主人公であるドボルは探索者になった。将来有望とされていたが、初めての探索で仲間のミスから勝てない相手と遭遇し囮にされる。なんとか他の者に助けられるも大怪我を負い、その後は強いられてぼっちでの探索を続けることになる。そんな彼がひょんなことからダンジョン配信のスタッフに採用される。
ドボルはカリスマ配信者を陰ながら支えようと決意するが、早々に陰謀に巻き込まれ危険な状況に陥る。絶体絶命のピンチの中で、ドボルは自分に眠る力を覚醒させる。この新たな力を得て、彼の生活は一変し、カリスマ配信者を陰から支え、奮闘する決意をする。果たして、ドボルはこの困難を乗り越え、配信を成功させることができるのか?

ダンジョンが出現して世界が変わっても、俺は準備万端で世界を生き抜く
ごま塩風味
ファンタジー
人間不信になり。
人里離れた温泉旅館を買い取り。
宝くじで当たったお金でスローライフを送るつもりがダンジョンを見付けてしまう、しかし主人公はしらなかった。
世界中にダンジョンが出現して要る事を、そして近いうちに世界がモンスターで溢れる事を、しかし主人公は知ってしまった。
だが主人公はボッチで誰にも告げず。
主人公は一人でサバイバルをしようと決意する中、人と出会い。
宝くじのお金を使い着々と準備をしていく。
主人公は生き残れるのか。
主人公は誰も助け無いのか。世界がモンスターで溢れる世界はどうなるのか。
タイトルを変更しました

底辺ダンチューバーさん、お嬢様系アイドル配信者を助けたら大バズりしてしまう ~人類未踏の最難関ダンジョンも楽々攻略しちゃいます〜
サイダーボウイ
ファンタジー
日常にダンジョンが溶け込んで15年。
冥層を目指すガチ勢は消え去り、浅層階を周回しながらスパチャで小銭を稼ぐダンチューバーがトレンドとなった現在。
ひとりの新人配信者が注目されつつあった。

劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる