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影傑
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赤い骨の刃。腕から伸びたそれは、影となったオレをも十分殺し得る武器であると、真眼によって分かった。
「能力は……浸蝕か?」
「正確には、感染ってところだね」
あの骨に貫かれれば、体内から蝕まれて終わりだ。その上、アレは影化じゃ避けられない。呪術的な側面が強いからだろうな。ただ物理的に攻撃を回避するだけの影化は無意味だ。
「この骨に貫かれれば、君に流れる血は僕の血に入れ替わる……そうすれば、君という自我は死に、僕に忠実な眷属になる」
「つまり、ゾンビウィルスか」
「俗な言い方だね。真祖の崇高な能力に対してさ」
言いながらも、セッシは笑っている。
「さて、始めようか」
瞬間、セッシの姿が消えた。透明化じゃない、単なる高速移動だ。
「ッ、速すぎだろうが」
「そりゃ、僕は真祖を超えた吸血鬼だからね」
だが、まだ何とかなる。オレの棍棒と打ち合えば麻痺を食らう以上、相手も雑に攻め切ることは出来ない。
「うん、ダブルで行こうか」
セッシのもう片腕が赤い骨の刃となり、両腕ともが刃に変化した。五十センチ程度の刃は取り回しが良さそうで、速攻を仕掛けるのに向いているだろう。
「さぁ、耐えきれるかな?」
「ッ!」
真眼のお陰で、目では追える。だが、どうしても体が追い付かない。ただ迎え撃つだけじゃ限界がある。
「良いね。的確だ」
棍棒と槍で迫る双刃を往なし、それでも擦り抜けて向かってきたものは闇の翼から影の刃を伸ばして弾く。
「シャドウッ!」
「グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
セッシの背後からオレごと呑み込む勢いで突っ込んできた影の龍。だが、セッシは焦った様子も無く転移で逃れた。
「んー、鬱陶しいね」
セッシはシャドウの方を向き、両腕が変化した骨の刃を更に大きく、凶悪なモノに成長させた。
「……やるなら、今しかないか」
材料は、ある。もう少しで、完成させられる。
「先ずは、魔力だ」
オレは影から青く光る綺麗な石を取り出し、そのまま呑み込んだ。すると、即座に体の奥底が燃え上がるような感覚と共に、身体中に大量の魔力が流れ始める。
「グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
「再生能力持ちか……血が通ってない相手は面倒臭いね」
空中で激しく戦っているシャドウとセッシ。翻弄されるように身体中を切り刻まれ、至る所を血で貫かれても持ち前の耐久力によって何とか耐えている。
そして、オレはそんなシャドウの他にもう一体使い魔を作ろうとしていた。出発までに完成は間に合わず、あと一割程度で止まっていた。
「荒削りだが……調整は後だ」
漆黒に染まった剣と、黄金色に光る文字が細かく刻まれた黒い紙。そして、宇宙を思わせるような黒い石。内側には紫色の光が無数に浮かんでいる。
「…………」
影の上に並べた素材を前に膝を突き、深く集中する。既に構想は出来ている。後は、形作るだけだ。どうすればこいつが動くのか。どうすればこの式が正常に働くのか。それを、今から考える。
「『獅子の手、毒蛇の牙、熊の足』」
既にある素材を溶かして消費し、魔術式で繋ぎ合わせる。やり方はシャドウの時と丸っきり同じじゃないが、それでも何とかなる。
「『命を翳せ。輝く御霊も作り物』」
ボスに習ったことは、全て覚えている。だが、習っていない部分は……予想するしかない。詠唱は、今更止められない。
「『良質な使い魔の作成』」
あぁ、オレの頭が良くて良かった。残り一割が、十秒程度で出来ちまった。
「『影傑』」
オレの影から、ぬらりと男が立ち上がった。全身が暗く染まったそれは、表情も無く、人の姿をしているにも関わらず無機質だ。
「残念だけど、終わりだよ」
「グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
シャドウが全身を血に覆われ、溶けながら地面に墜ちていく。
「『影戻し』」
シャドウは地面に墜ちるより先に、影となって消えた。
「消えたね。なら、残すところは……ん、増えた?」
「あぁ、増えたぜ。急造にして、とっておきだ」
全身が漆黒に染まった、影の男。その形状は、ボスそっくりだ。
「これは、オレが知る限り一番強い男の影だ」
「それは興味深いね」
オールドはボスを……老日勇をモデルに創った使い魔だ。その性能は、対人性能に限ればシャドウを凌駕する筈だ。
「オールド」
『あぁ』
くぐもった声が響き、オールドがオレの前に立つ。
「主を守れるか、試してあげるよ」
一瞬で距離を詰めて来るセッシ。しかし、オールドが持つ漆黒の剣が血骨の刃を受け止めた。
「へぇ」
『『死影斬』』
逆にセッシへと斬りかかるオールド。セッシはそれを紙一重で回避するが、その首に黒い線が走り、血が噴き出した。
「ッ、なるほどね……影か」
セッシはその斬撃の正体に気付き、口角を上げた。
『『影分身』』
オールドの体が二つに分かれ、それぞれがセッシに剣を向けた。
「面白いね……ッ!」
二体の剣士を相手にするセッシに稲妻の槍を投擲するも、霧となってセッシは空中に逃れた。
「こうなったら、しょうがないね」
空を舞うセッシ。その背から、無数の赤い骨が羽のように生え伸びた。
「第二形態って奴さ」
「いい加減くたばれよ。中ボス野郎」
贅沢に第二形態なんざ用意してんじゃねえよ。
「能力は……浸蝕か?」
「正確には、感染ってところだね」
あの骨に貫かれれば、体内から蝕まれて終わりだ。その上、アレは影化じゃ避けられない。呪術的な側面が強いからだろうな。ただ物理的に攻撃を回避するだけの影化は無意味だ。
「この骨に貫かれれば、君に流れる血は僕の血に入れ替わる……そうすれば、君という自我は死に、僕に忠実な眷属になる」
「つまり、ゾンビウィルスか」
「俗な言い方だね。真祖の崇高な能力に対してさ」
言いながらも、セッシは笑っている。
「さて、始めようか」
瞬間、セッシの姿が消えた。透明化じゃない、単なる高速移動だ。
「ッ、速すぎだろうが」
「そりゃ、僕は真祖を超えた吸血鬼だからね」
だが、まだ何とかなる。オレの棍棒と打ち合えば麻痺を食らう以上、相手も雑に攻め切ることは出来ない。
「うん、ダブルで行こうか」
セッシのもう片腕が赤い骨の刃となり、両腕ともが刃に変化した。五十センチ程度の刃は取り回しが良さそうで、速攻を仕掛けるのに向いているだろう。
「さぁ、耐えきれるかな?」
「ッ!」
真眼のお陰で、目では追える。だが、どうしても体が追い付かない。ただ迎え撃つだけじゃ限界がある。
「良いね。的確だ」
棍棒と槍で迫る双刃を往なし、それでも擦り抜けて向かってきたものは闇の翼から影の刃を伸ばして弾く。
「シャドウッ!」
「グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
セッシの背後からオレごと呑み込む勢いで突っ込んできた影の龍。だが、セッシは焦った様子も無く転移で逃れた。
「んー、鬱陶しいね」
セッシはシャドウの方を向き、両腕が変化した骨の刃を更に大きく、凶悪なモノに成長させた。
「……やるなら、今しかないか」
材料は、ある。もう少しで、完成させられる。
「先ずは、魔力だ」
オレは影から青く光る綺麗な石を取り出し、そのまま呑み込んだ。すると、即座に体の奥底が燃え上がるような感覚と共に、身体中に大量の魔力が流れ始める。
「グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
「再生能力持ちか……血が通ってない相手は面倒臭いね」
空中で激しく戦っているシャドウとセッシ。翻弄されるように身体中を切り刻まれ、至る所を血で貫かれても持ち前の耐久力によって何とか耐えている。
そして、オレはそんなシャドウの他にもう一体使い魔を作ろうとしていた。出発までに完成は間に合わず、あと一割程度で止まっていた。
「荒削りだが……調整は後だ」
漆黒に染まった剣と、黄金色に光る文字が細かく刻まれた黒い紙。そして、宇宙を思わせるような黒い石。内側には紫色の光が無数に浮かんでいる。
「…………」
影の上に並べた素材を前に膝を突き、深く集中する。既に構想は出来ている。後は、形作るだけだ。どうすればこいつが動くのか。どうすればこの式が正常に働くのか。それを、今から考える。
「『獅子の手、毒蛇の牙、熊の足』」
既にある素材を溶かして消費し、魔術式で繋ぎ合わせる。やり方はシャドウの時と丸っきり同じじゃないが、それでも何とかなる。
「『命を翳せ。輝く御霊も作り物』」
ボスに習ったことは、全て覚えている。だが、習っていない部分は……予想するしかない。詠唱は、今更止められない。
「『良質な使い魔の作成』」
あぁ、オレの頭が良くて良かった。残り一割が、十秒程度で出来ちまった。
「『影傑』」
オレの影から、ぬらりと男が立ち上がった。全身が暗く染まったそれは、表情も無く、人の姿をしているにも関わらず無機質だ。
「残念だけど、終わりだよ」
「グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
シャドウが全身を血に覆われ、溶けながら地面に墜ちていく。
「『影戻し』」
シャドウは地面に墜ちるより先に、影となって消えた。
「消えたね。なら、残すところは……ん、増えた?」
「あぁ、増えたぜ。急造にして、とっておきだ」
全身が漆黒に染まった、影の男。その形状は、ボスそっくりだ。
「これは、オレが知る限り一番強い男の影だ」
「それは興味深いね」
オールドはボスを……老日勇をモデルに創った使い魔だ。その性能は、対人性能に限ればシャドウを凌駕する筈だ。
「オールド」
『あぁ』
くぐもった声が響き、オールドがオレの前に立つ。
「主を守れるか、試してあげるよ」
一瞬で距離を詰めて来るセッシ。しかし、オールドが持つ漆黒の剣が血骨の刃を受け止めた。
「へぇ」
『『死影斬』』
逆にセッシへと斬りかかるオールド。セッシはそれを紙一重で回避するが、その首に黒い線が走り、血が噴き出した。
「ッ、なるほどね……影か」
セッシはその斬撃の正体に気付き、口角を上げた。
『『影分身』』
オールドの体が二つに分かれ、それぞれがセッシに剣を向けた。
「面白いね……ッ!」
二体の剣士を相手にするセッシに稲妻の槍を投擲するも、霧となってセッシは空中に逃れた。
「こうなったら、しょうがないね」
空を舞うセッシ。その背から、無数の赤い骨が羽のように生え伸びた。
「第二形態って奴さ」
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