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吸血鬼の庭園
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六体の真祖が現れた瞬間、老日は瞬きよりも速くそれら全てを葬り去った。
「ッ!? 一瞬で――――」
目を見開く東方。しかし、その言葉の途中で老日を残した全員がその場から消え去った。
「老日勇、排除します」
「……動きを止めている? チャンスだが要警戒だ」
代わりに現れた二人の少年少女が動かない老日に襲い掛かった。
♦
……どうなってんだ、これ。
「カァ、どこだよ」
美しく整えられた広い庭園のような場所。辺りを見回すも、オレしか……いや、見つけた。
「なぁ、教えてくれよ。見えてんぞ?」
オレがそう言うと、それらはぬらりと姿を現した。
「ふふ、眼が良いようだな」
「だが、気付かれようと結果は変わらん」
「鳥風情が人の真似事か? 滑稽だな」
吸血鬼が三体。恐らく、全員が最高位吸血鬼だ。
「……本当にな」
そういえばオレ、元はただのカラスなんだよな。なのに、気付けばこんな化け物を三体も同時に相手取ることになってるなんて……
「ハハッ、面白いな。生きてて良かったぜ」
断言できるな。オレ以上に愉快な一生を歩んでるカラスは居ない。
「つー訳で、まだ死ねないんだよオレは」
余裕の表情を浮かべている三体の吸血鬼。オレは腕を大きく広げた。
「『暗き天翼』」
オレの背から、闇の翼が広がる。
「行くぞ」
「あぁ、殺してやる」
放たれるは血の槍。音速を超えるそれは、オレの胸を貫いて向こう側まで飛んでいった。
「影か」
「影化だ」
オレは答えながら、巨大な闇の翼から大量の鴉を生み出す。影で作られた鴉はプルソンの権能によって使い魔化し、一体一体が強化されている。
「ッ、面倒だな……!」
「おい、さっさと本体を殺すぞ」
襲い掛かった鴉の群れは、吸血鬼の攻撃を影となって回避しながら迫るも、三体の吸血鬼は蝙蝠の群れの間を抜けて接近してきた。
「カァ、オレが何の為にヒトの姿をしてると思う?」
オレは突き出される血の槍を影化で擦り抜けつつ、両手を左右に伸ばした。
「『我は神奴に非ず。神の頭蓋を穿ちて砕く』」
魂に刻み込まれた詠唱は、息をするように紡ぐことが出来た。
「『撃退する雷鳴の棍、追放する稲妻の槍』」
稲妻が迸る棍棒と槍。それを握る手の甲には逆向きの五芒星が輝いていた。
「どうだ、中々良いだろ? 借り物みたいなもんだが」
「神器……カラス如きが生意気なッ!」
吸血鬼の一体が手を掲げると、燃え上がる血の鞭が現れた。茨みたいに刺々しくて、当たったら痛そうだ。
「あー、当たらねぇな」
敵の攻撃は影となることで避けられるが、オレの攻撃も中々当たらない。棍棒や槍の触れる部分だけを霧に変えて避けられるのだ。
「こっちは影で、そっちは霧か」
「だが、我らの力は尽きることはなく、お前のそれはいつか尽きる。このまま行けば負けるのはお前の方だ」
確かに、向こうの霧は種族としての力でオレの影は魔術だ。魔力が尽きれば回避も出来なくなる。
「言っとくが、まだオレは試してるだけだぜ?」
初めての本格的な実戦だからな。本領はまだまだここからだ。
「『激震雷鳴』」
オレは思い切り棍棒を地面に叩き付けた。すると、破裂するような音が響き渡り、周囲一帯の空間を埋め尽くす程の雷撃が迸った。
「ぐッ」
「『貫雷閃』」
雷撃に反応出来ず、麻痺した吸血鬼。その心臓を稲妻を纏う槍が貫いた。その瞬間に吸血鬼の全身に雷が迸り、轟音と共に消滅した。
「クソ、一人やられたかッ!」
続けて、目の前に現れた吸血鬼に棍棒を振り下ろすも、霧となって避けられる。そのまま影で呑み込もうとしたが、逃げられた。
「『封千魔――――』」
「させねぇよ」
プルソンの権能を使用し、相手の詠唱を掻き消す。
「ッ、魔術が使えなければ殺せんぞッ!」
「落ち着け、奴は詠唱を掻き消すだけだ。陣のみの血の魔術であれば問題ない」
「『獅子の手、毒蛇の牙、熊の足』」
空中に描かれる血の魔法陣に遠くから棍棒を振るうと、大気が振動し、轟音と共に魔法陣が割れる。
「ッ、血の魔術も破られたぞッ!」
「もう一度やれッ、私が邪魔をする」
「『命を翳せ。輝く御霊も作り物』」
再び描かれていく魔法陣。再び棍棒を振るおうとするオレの前に吸血鬼が迫り、そいつから溢れた血で視界が覆われる。
「『良質な使い魔の作成』」
オレの翼から影が溢れ出し、空へと昇りながら形を成していく。
「『雷影龍』」
それは、宙を舞う漆黒の龍だ。百メートルを超える巨体の全身には雷が迸っている。
「こいつはオレが初めてマトモに作った使い魔だ。つっても、不安定すぎて毎回再構築しないといけないんだが……」
「死ねッ!」
乱雑に突き出された剣を避け、雷の槍を振るう。迸る雷が霧となった吸血鬼の一部を焼く。
「シャドウ」
「グォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
空から落ちてきた影の龍が、霧を丸ごと呑み込んだ。
「ッ!? 一瞬で――――」
目を見開く東方。しかし、その言葉の途中で老日を残した全員がその場から消え去った。
「老日勇、排除します」
「……動きを止めている? チャンスだが要警戒だ」
代わりに現れた二人の少年少女が動かない老日に襲い掛かった。
♦
……どうなってんだ、これ。
「カァ、どこだよ」
美しく整えられた広い庭園のような場所。辺りを見回すも、オレしか……いや、見つけた。
「なぁ、教えてくれよ。見えてんぞ?」
オレがそう言うと、それらはぬらりと姿を現した。
「ふふ、眼が良いようだな」
「だが、気付かれようと結果は変わらん」
「鳥風情が人の真似事か? 滑稽だな」
吸血鬼が三体。恐らく、全員が最高位吸血鬼だ。
「……本当にな」
そういえばオレ、元はただのカラスなんだよな。なのに、気付けばこんな化け物を三体も同時に相手取ることになってるなんて……
「ハハッ、面白いな。生きてて良かったぜ」
断言できるな。オレ以上に愉快な一生を歩んでるカラスは居ない。
「つー訳で、まだ死ねないんだよオレは」
余裕の表情を浮かべている三体の吸血鬼。オレは腕を大きく広げた。
「『暗き天翼』」
オレの背から、闇の翼が広がる。
「行くぞ」
「あぁ、殺してやる」
放たれるは血の槍。音速を超えるそれは、オレの胸を貫いて向こう側まで飛んでいった。
「影か」
「影化だ」
オレは答えながら、巨大な闇の翼から大量の鴉を生み出す。影で作られた鴉はプルソンの権能によって使い魔化し、一体一体が強化されている。
「ッ、面倒だな……!」
「おい、さっさと本体を殺すぞ」
襲い掛かった鴉の群れは、吸血鬼の攻撃を影となって回避しながら迫るも、三体の吸血鬼は蝙蝠の群れの間を抜けて接近してきた。
「カァ、オレが何の為にヒトの姿をしてると思う?」
オレは突き出される血の槍を影化で擦り抜けつつ、両手を左右に伸ばした。
「『我は神奴に非ず。神の頭蓋を穿ちて砕く』」
魂に刻み込まれた詠唱は、息をするように紡ぐことが出来た。
「『撃退する雷鳴の棍、追放する稲妻の槍』」
稲妻が迸る棍棒と槍。それを握る手の甲には逆向きの五芒星が輝いていた。
「どうだ、中々良いだろ? 借り物みたいなもんだが」
「神器……カラス如きが生意気なッ!」
吸血鬼の一体が手を掲げると、燃え上がる血の鞭が現れた。茨みたいに刺々しくて、当たったら痛そうだ。
「あー、当たらねぇな」
敵の攻撃は影となることで避けられるが、オレの攻撃も中々当たらない。棍棒や槍の触れる部分だけを霧に変えて避けられるのだ。
「こっちは影で、そっちは霧か」
「だが、我らの力は尽きることはなく、お前のそれはいつか尽きる。このまま行けば負けるのはお前の方だ」
確かに、向こうの霧は種族としての力でオレの影は魔術だ。魔力が尽きれば回避も出来なくなる。
「言っとくが、まだオレは試してるだけだぜ?」
初めての本格的な実戦だからな。本領はまだまだここからだ。
「『激震雷鳴』」
オレは思い切り棍棒を地面に叩き付けた。すると、破裂するような音が響き渡り、周囲一帯の空間を埋め尽くす程の雷撃が迸った。
「ぐッ」
「『貫雷閃』」
雷撃に反応出来ず、麻痺した吸血鬼。その心臓を稲妻を纏う槍が貫いた。その瞬間に吸血鬼の全身に雷が迸り、轟音と共に消滅した。
「クソ、一人やられたかッ!」
続けて、目の前に現れた吸血鬼に棍棒を振り下ろすも、霧となって避けられる。そのまま影で呑み込もうとしたが、逃げられた。
「『封千魔――――』」
「させねぇよ」
プルソンの権能を使用し、相手の詠唱を掻き消す。
「ッ、魔術が使えなければ殺せんぞッ!」
「落ち着け、奴は詠唱を掻き消すだけだ。陣のみの血の魔術であれば問題ない」
「『獅子の手、毒蛇の牙、熊の足』」
空中に描かれる血の魔法陣に遠くから棍棒を振るうと、大気が振動し、轟音と共に魔法陣が割れる。
「ッ、血の魔術も破られたぞッ!」
「もう一度やれッ、私が邪魔をする」
「『命を翳せ。輝く御霊も作り物』」
再び描かれていく魔法陣。再び棍棒を振るおうとするオレの前に吸血鬼が迫り、そいつから溢れた血で視界が覆われる。
「『良質な使い魔の作成』」
オレの翼から影が溢れ出し、空へと昇りながら形を成していく。
「『雷影龍』」
それは、宙を舞う漆黒の龍だ。百メートルを超える巨体の全身には雷が迸っている。
「こいつはオレが初めてマトモに作った使い魔だ。つっても、不安定すぎて毎回再構築しないといけないんだが……」
「死ねッ!」
乱雑に突き出された剣を避け、雷の槍を振るう。迸る雷が霧となった吸血鬼の一部を焼く。
「シャドウ」
「グォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
空から落ちてきた影の龍が、霧を丸ごと呑み込んだ。
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