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真祖を超えるのは
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一瞬にして身体能力が強化された俺は、先ず背後から襲ってきた吸血鬼を聖なる力を帯びた剣で斬り殺し、続けて魔術を詠唱した。
「『過速、時間移転』」
瞬間、俺の速度が何十倍にも加速する。周囲の時間が止まったかのような錯覚に陥りながらも、俺は真祖達の首を一つずつ斬り落とした。
「ぐッ」
「なッ」
驚愕の声を短く上げながら死んでいく真祖の吸血鬼達。その様子を見ながら、俺の視界は黒く染まった。
十秒後、そこには崩壊した館と二体の吸血鬼が立っていた。
「……選択を誤ったな」
使い魔達が生きているのは魂の繋がりを通じて分かるが、通信などが来ないところを見るに異空間や結界の中に居る可能性が高い。
「何故突っ立っているのかは分かりませんが、その障壁については分かってきました」
「起きたようだ。警戒しろ、セプティーニ」
時間移転。この魔術は、言わば時間の前借りだ。真祖を相手に何か行動されるのは不味いと考え、この魔術を使ったんだが……結果から言えば、失敗だったな。失った十秒の間に、仲間達は全員何処かに消えていた。
「真祖、か?」
「答える必要はありませんね」
白い髪の少年と少女、感じる気配は真祖を超えている。
「アストアニ、これを使って下さい。障壁を突破出来ます」
「分かった」
どうやら、俺が止まっている間にこいつらは俺の背理の城塞の解析を進めていたらしい。赤く平べったい血の剣が渡される。表面には青い紋様が走っている。
「速いな」
過速の副作用である効果終了後のデバフもあるが、それを抜きにしても速い。
「チッ、攻撃が当たらなければ障壁を突破出来ても無意味だ」
「支援します、アストアニ」
セプティーニと呼ばれた少女が腕を伸ばすと、少年の体に青い紋様が走った。
「これでどうだ、人間」
「……急がないとな」
速度を増した少年の剣を躱しつつ、俺は呟いた。
「『冥死線』」
「ぐ、ッ」
黒紫色の光線が、少年の胸を貫いた。効果は即死だが、高い生命力からか抵抗出来ている。しかし、死に至るのは時間の問題で……
「ッ、アストアニッ!」
「言ってる場合か?」
少女によって死亡効果が解除された少年。しかし、その間に俺は少女の下に迫り、聖なる力を帯びた剣を振り下ろす。
「――――やめてもらおうか」
俺の剣を受け止めていたのは、白髪を生やした老年の男だった。
「あぁ、アンタが……」
「そうとも、私がニオス・コルガイだ」
やっぱり、そうか。間違いない。こいつは、世界の敵だ。
「『大敵の滅殺』」
「ふふ、心外だな」
世界の敵。目の前のそれが、人々にとっての大敵であれば、俺はより強い力を発揮することが出来る。
「お父様、私達にお任せください。さっきので相手の速度は理解しました」
「俺も、今のは油断していただけだ」
前に出ようとする二人の肩をニオスは引き留める。
「やめておきなさい。この男は、君たちでは勝てない」
「何故ですか? 私達は真祖をも超える真の吸血鬼です。それを一番理解しているのはお父様では……」
俺は会話する三人を前に、小声で魔術を紡いだ。
「『無限加速』」
「おっと、また魔術を使われてしまったか」
ニオスは目を細めて俺を見る。
「『冥死線』」
「言っておくが、ここは私の場所だ」
黒紫色の光線が、空中で散り果てた。
「『血の世界』」
赤色が広がり、白く凍えた世界を塗り替えていく。
「あぁ、ここ以上に私が有利な場所は無いだろうな。強いて言うなら、月の上くらいだろう」
「……魔術は使えないか」
とは言え、無限加速は既に発動できている。常に速度が上昇していく以上、ジリ貧にはならない筈だ。
「しかし、出てきて良かったのか? 何か小細工でもしているのかと思っていたが」
「ふふ、セプティーニとアストアニには死んで貰う訳にはいかないからね。私の可愛い子供で、私の大事な研究成果だ」
やっぱり、そういう奴か。お父様なんて呼び方は相当臭いと思ったが。
「という訳だ。二人とも、休眠槽で眠っていなさい。それに……根源との同化は、もう少しで完了するからね」
「……分かりました」
ニオスが指を鳴らすと、二人の姿が消え去った。完全に、一対一の構図になる。
「聞き捨てなら無い言葉があったな」
「根源との同化かな?」
俺は頷き、剣を向ける。
「ふふ、血の根源には凄まじい力がある。あの二人も、根源を利用して作ったんだ。生後数週間で真祖以上の強さだ。凄いだろう?」
「確かに凄いが、それと同化するっていうのは見過ごせないな」
根源との同化、それはつまり、アカシアの死を意味する可能性がある。
「『過速、時間移転』」
瞬間、俺の速度が何十倍にも加速する。周囲の時間が止まったかのような錯覚に陥りながらも、俺は真祖達の首を一つずつ斬り落とした。
「ぐッ」
「なッ」
驚愕の声を短く上げながら死んでいく真祖の吸血鬼達。その様子を見ながら、俺の視界は黒く染まった。
十秒後、そこには崩壊した館と二体の吸血鬼が立っていた。
「……選択を誤ったな」
使い魔達が生きているのは魂の繋がりを通じて分かるが、通信などが来ないところを見るに異空間や結界の中に居る可能性が高い。
「何故突っ立っているのかは分かりませんが、その障壁については分かってきました」
「起きたようだ。警戒しろ、セプティーニ」
時間移転。この魔術は、言わば時間の前借りだ。真祖を相手に何か行動されるのは不味いと考え、この魔術を使ったんだが……結果から言えば、失敗だったな。失った十秒の間に、仲間達は全員何処かに消えていた。
「真祖、か?」
「答える必要はありませんね」
白い髪の少年と少女、感じる気配は真祖を超えている。
「アストアニ、これを使って下さい。障壁を突破出来ます」
「分かった」
どうやら、俺が止まっている間にこいつらは俺の背理の城塞の解析を進めていたらしい。赤く平べったい血の剣が渡される。表面には青い紋様が走っている。
「速いな」
過速の副作用である効果終了後のデバフもあるが、それを抜きにしても速い。
「チッ、攻撃が当たらなければ障壁を突破出来ても無意味だ」
「支援します、アストアニ」
セプティーニと呼ばれた少女が腕を伸ばすと、少年の体に青い紋様が走った。
「これでどうだ、人間」
「……急がないとな」
速度を増した少年の剣を躱しつつ、俺は呟いた。
「『冥死線』」
「ぐ、ッ」
黒紫色の光線が、少年の胸を貫いた。効果は即死だが、高い生命力からか抵抗出来ている。しかし、死に至るのは時間の問題で……
「ッ、アストアニッ!」
「言ってる場合か?」
少女によって死亡効果が解除された少年。しかし、その間に俺は少女の下に迫り、聖なる力を帯びた剣を振り下ろす。
「――――やめてもらおうか」
俺の剣を受け止めていたのは、白髪を生やした老年の男だった。
「あぁ、アンタが……」
「そうとも、私がニオス・コルガイだ」
やっぱり、そうか。間違いない。こいつは、世界の敵だ。
「『大敵の滅殺』」
「ふふ、心外だな」
世界の敵。目の前のそれが、人々にとっての大敵であれば、俺はより強い力を発揮することが出来る。
「お父様、私達にお任せください。さっきので相手の速度は理解しました」
「俺も、今のは油断していただけだ」
前に出ようとする二人の肩をニオスは引き留める。
「やめておきなさい。この男は、君たちでは勝てない」
「何故ですか? 私達は真祖をも超える真の吸血鬼です。それを一番理解しているのはお父様では……」
俺は会話する三人を前に、小声で魔術を紡いだ。
「『無限加速』」
「おっと、また魔術を使われてしまったか」
ニオスは目を細めて俺を見る。
「『冥死線』」
「言っておくが、ここは私の場所だ」
黒紫色の光線が、空中で散り果てた。
「『血の世界』」
赤色が広がり、白く凍えた世界を塗り替えていく。
「あぁ、ここ以上に私が有利な場所は無いだろうな。強いて言うなら、月の上くらいだろう」
「……魔術は使えないか」
とは言え、無限加速は既に発動できている。常に速度が上昇していく以上、ジリ貧にはならない筈だ。
「しかし、出てきて良かったのか? 何か小細工でもしているのかと思っていたが」
「ふふ、セプティーニとアストアニには死んで貰う訳にはいかないからね。私の可愛い子供で、私の大事な研究成果だ」
やっぱり、そういう奴か。お父様なんて呼び方は相当臭いと思ったが。
「という訳だ。二人とも、休眠槽で眠っていなさい。それに……根源との同化は、もう少しで完了するからね」
「……分かりました」
ニオスが指を鳴らすと、二人の姿が消え去った。完全に、一対一の構図になる。
「聞き捨てなら無い言葉があったな」
「根源との同化かな?」
俺は頷き、剣を向ける。
「ふふ、血の根源には凄まじい力がある。あの二人も、根源を利用して作ったんだ。生後数週間で真祖以上の強さだ。凄いだろう?」
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