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骸、もどき。
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ごとりと地面に落ちた落ち武者の頭。その兜の隙間から漏れだす光はまだ消えていない。
「シナヌ……シナヌゾ」
「そう、か」
鎧武者の首が浮き上がり、胴体の上に乗ると、その体がまた動き出し……紫の妖力を纏う刃に斬られた。
「三度目は、無い」
「ナン、ダト……」
鎧武者の体を両断した斬撃。その体を刃が通った跡からは紫のオーラが滲み出し、鎧武者は今度こそ倒れた。
「『霊冥砲』」
瞬間、青白い奔流が骸骨に迫る。
「『死屍誄々、起動』」
骸骨の体から妖力と霊力、そして魔力が溢れ、その体が素早く動き出す。
「『功徳刃』」
骸骨の刃が赤紫色に輝き、奔流を真っ二つに切り裂いた。
「ッ、これを斬るか!」
天明は驚きながらも印を結び、式符を放った。
「『我封力封、閉永之陣』」
式符は骸骨に近付くと光を強め、骸骨の足元に五芒星の陣を展開し、それを囲むように立った霊力の柱と合わさって骸骨をその陣の中に閉じ込めた。
「『無慮流焔』」
足を止める骸骨の頭上から大量のマグマが流れ落ち、結界の内側を完全に埋め尽くす。
「『霊魔粒体化』」
しかし、マグマを無効化し、結界を擦り抜けるようにして現れたのは体を紫色に光る霊体のように変化させた骸骨だ。
「『無量骸兵』」
「数を、揃えても……無駄、だ」
奇妙な空間を埋め尽くすように現れる大量の骸骨。全てが天明の支配下にある彼らだが、個々の性能は高いとは言えない。
「『解転昇華、紅楼龍』」
骸骨達が一斉に消え失せ、霊力となって還り、それらは一点に集まり……青い光が、真っ赤に染まる。
「ルォオオオオオオオオオオンッ!!」
現れたのは巨大な赤い龍だ。漆塗りをされたかのような独特の質感に黄金の装飾が混ざるそれは、まるで何かの建造物がそのまま龍に身を変えたかのようだ。
「儂を忘れたかッ、天明ッ!」
「ルォオオオオオオンッ!!」
空を舞う鵺が赤い龍に挑みかかり、巨大な紫の稲妻を落とす。頭にそれを食らった紅楼龍だが、怯む気配も無く鵺に向かって突き進む。
「なッ!? これで効かぬと――――」
「ルォオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」
逃れようとした鵺だが、天明の術によって空中で霊力の鎖に縛られ、紅楼龍にばくりと一口で呑み込まれてしまった。
「あとはお前だけだぞ、骸骨よ!」
「だから、何だ」
骸骨は鵺が食われたのを気にした様子も無く天明に向かって突き進み、邪魔する式神を切り伏せていく。
「『焼芯解』」
骸骨の内側から炎が溢れ、その身に広がろうとするが、炎は霊体のように変化した骸骨を焼き焦がすことは出来なかった。
「『縛霊鎖』」
続いて伸びるは無数の青い鎖。しかし、それも骸骨の体を擦り抜け、捉えることは無い。
「これでも効かぬとなると……やはり、単なる霊体ではないな」
眉を顰める天明。骸骨は遂にその目の前まで辿り着き、そのまま結界を擦り抜けた。
「死ね」
振り下ろされる赤紫の刃は、寸分違わず天明の体に吸い込まれていく。
「――――やはり、そう頭は使っていないな」
背後。振り向きながら骸骨は刀を振るい、そこに居た天明を切り裂く。しかし、それもまた幻影だ。
「馬鹿、な……本物にしか、見えない」
「当たり前だろう。本物に見えるように細工してあるからな」
骸骨はまた背後に現れた天明を切り裂くが、ただ無抵抗に消え失せるだけだ。
「それが、術と言うものだ」
「……そう、いえば」
背後から骸骨に突撃する紅楼龍。しかし、その巨大な体も無意味に骸骨を擦り抜けるだけだ。
「『査量眼』」
骸骨の眼窩に赤い光が宿る。
「こんな、ことも……出来た、な」
骸骨はその赤い眼によって自身の異能によって構成された世界を見渡し、そして透明化していた天明を見つけ出した。
「そこ、だな」
「『物象を捉ふ、神知の眼』」
走り出した骸骨。その瞬間に天明の体が消え失せ、別の場所に転移する。
「『在らざるは非ず、虚ろは現に』」
転移した場所に骸骨が刀を向けると紫の妖力が爆発的に溢れ、奔流となって天明に迫る。しかし、それを防ぐように現れた十二体の鎧を纏った式神が盾となり、天明を守った。
「『界絶隔理』」
「ッ!?」
天明の眼前まで距離を詰めた骸骨。紫の光と化していたその体から光が失われ、元の体に戻った。
「もう、逃さんぞッ!」
骸骨の足元が光り、陣が展開される。それが罠だと気付いた時には遅く、骸骨の身体中に細かく文字が走り、その身を埋め尽くした。
「骸骨。お前に足りなかったのは知識と、意気だ」
「……意気、か」
天明の術により動きを封じられ、式神達に囲まれた骸骨は虚ろに空を見上げる。異能によって作られた何もない空だ。
「そう、か……そうだな……そりゃ、当たり前だ」
骸骨に刻まれた文字がその身の術を封じていき、骸骨の眼から赤い光が消える。刃に纏われていた赤紫色の光も消え失せ、骸骨は力なく刀を取り落とす。
「あぁ、クソ……やられたな。いつから、俺は……」
「あ? 何だ、おいおい?」
天明が何をするまでもなく、骸骨の体は足先から粉々に崩れ去った。
「……完全に、死んだな」
天明が呟くと、紫色の気味が悪い世界が、耳障りな音を立てて崩れ始める。
「まぁ、何はともあれだ……」
天明はその世界の崩壊が自身の死に直結するものではないと判断しつつ、宙を舞う紅楼龍に飛び乗った。
「万事解決、事も無し。切り札も温存出来た」
崩壊する世界の中、天明は自信に満ちた笑みと共に呟いた。
「さて、ここからが本番だ! 行くぞ大嶽丸!」
現代最強の陰陽師、土御門天明は現世へと舞い戻った。
「シナヌ……シナヌゾ」
「そう、か」
鎧武者の首が浮き上がり、胴体の上に乗ると、その体がまた動き出し……紫の妖力を纏う刃に斬られた。
「三度目は、無い」
「ナン、ダト……」
鎧武者の体を両断した斬撃。その体を刃が通った跡からは紫のオーラが滲み出し、鎧武者は今度こそ倒れた。
「『霊冥砲』」
瞬間、青白い奔流が骸骨に迫る。
「『死屍誄々、起動』」
骸骨の体から妖力と霊力、そして魔力が溢れ、その体が素早く動き出す。
「『功徳刃』」
骸骨の刃が赤紫色に輝き、奔流を真っ二つに切り裂いた。
「ッ、これを斬るか!」
天明は驚きながらも印を結び、式符を放った。
「『我封力封、閉永之陣』」
式符は骸骨に近付くと光を強め、骸骨の足元に五芒星の陣を展開し、それを囲むように立った霊力の柱と合わさって骸骨をその陣の中に閉じ込めた。
「『無慮流焔』」
足を止める骸骨の頭上から大量のマグマが流れ落ち、結界の内側を完全に埋め尽くす。
「『霊魔粒体化』」
しかし、マグマを無効化し、結界を擦り抜けるようにして現れたのは体を紫色に光る霊体のように変化させた骸骨だ。
「『無量骸兵』」
「数を、揃えても……無駄、だ」
奇妙な空間を埋め尽くすように現れる大量の骸骨。全てが天明の支配下にある彼らだが、個々の性能は高いとは言えない。
「『解転昇華、紅楼龍』」
骸骨達が一斉に消え失せ、霊力となって還り、それらは一点に集まり……青い光が、真っ赤に染まる。
「ルォオオオオオオオオオオンッ!!」
現れたのは巨大な赤い龍だ。漆塗りをされたかのような独特の質感に黄金の装飾が混ざるそれは、まるで何かの建造物がそのまま龍に身を変えたかのようだ。
「儂を忘れたかッ、天明ッ!」
「ルォオオオオオオンッ!!」
空を舞う鵺が赤い龍に挑みかかり、巨大な紫の稲妻を落とす。頭にそれを食らった紅楼龍だが、怯む気配も無く鵺に向かって突き進む。
「なッ!? これで効かぬと――――」
「ルォオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」
逃れようとした鵺だが、天明の術によって空中で霊力の鎖に縛られ、紅楼龍にばくりと一口で呑み込まれてしまった。
「あとはお前だけだぞ、骸骨よ!」
「だから、何だ」
骸骨は鵺が食われたのを気にした様子も無く天明に向かって突き進み、邪魔する式神を切り伏せていく。
「『焼芯解』」
骸骨の内側から炎が溢れ、その身に広がろうとするが、炎は霊体のように変化した骸骨を焼き焦がすことは出来なかった。
「『縛霊鎖』」
続いて伸びるは無数の青い鎖。しかし、それも骸骨の体を擦り抜け、捉えることは無い。
「これでも効かぬとなると……やはり、単なる霊体ではないな」
眉を顰める天明。骸骨は遂にその目の前まで辿り着き、そのまま結界を擦り抜けた。
「死ね」
振り下ろされる赤紫の刃は、寸分違わず天明の体に吸い込まれていく。
「――――やはり、そう頭は使っていないな」
背後。振り向きながら骸骨は刀を振るい、そこに居た天明を切り裂く。しかし、それもまた幻影だ。
「馬鹿、な……本物にしか、見えない」
「当たり前だろう。本物に見えるように細工してあるからな」
骸骨はまた背後に現れた天明を切り裂くが、ただ無抵抗に消え失せるだけだ。
「それが、術と言うものだ」
「……そう、いえば」
背後から骸骨に突撃する紅楼龍。しかし、その巨大な体も無意味に骸骨を擦り抜けるだけだ。
「『査量眼』」
骸骨の眼窩に赤い光が宿る。
「こんな、ことも……出来た、な」
骸骨はその赤い眼によって自身の異能によって構成された世界を見渡し、そして透明化していた天明を見つけ出した。
「そこ、だな」
「『物象を捉ふ、神知の眼』」
走り出した骸骨。その瞬間に天明の体が消え失せ、別の場所に転移する。
「『在らざるは非ず、虚ろは現に』」
転移した場所に骸骨が刀を向けると紫の妖力が爆発的に溢れ、奔流となって天明に迫る。しかし、それを防ぐように現れた十二体の鎧を纏った式神が盾となり、天明を守った。
「『界絶隔理』」
「ッ!?」
天明の眼前まで距離を詰めた骸骨。紫の光と化していたその体から光が失われ、元の体に戻った。
「もう、逃さんぞッ!」
骸骨の足元が光り、陣が展開される。それが罠だと気付いた時には遅く、骸骨の身体中に細かく文字が走り、その身を埋め尽くした。
「骸骨。お前に足りなかったのは知識と、意気だ」
「……意気、か」
天明の術により動きを封じられ、式神達に囲まれた骸骨は虚ろに空を見上げる。異能によって作られた何もない空だ。
「そう、か……そうだな……そりゃ、当たり前だ」
骸骨に刻まれた文字がその身の術を封じていき、骸骨の眼から赤い光が消える。刃に纏われていた赤紫色の光も消え失せ、骸骨は力なく刀を取り落とす。
「あぁ、クソ……やられたな。いつから、俺は……」
「あ? 何だ、おいおい?」
天明が何をするまでもなく、骸骨の体は足先から粉々に崩れ去った。
「……完全に、死んだな」
天明が呟くと、紫色の気味が悪い世界が、耳障りな音を立てて崩れ始める。
「まぁ、何はともあれだ……」
天明はその世界の崩壊が自身の死に直結するものではないと判断しつつ、宙を舞う紅楼龍に飛び乗った。
「万事解決、事も無し。切り札も温存出来た」
崩壊する世界の中、天明は自信に満ちた笑みと共に呟いた。
「さて、ここからが本番だ! 行くぞ大嶽丸!」
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