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鬼を殺すのは
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巨大な鬼に向けて、蘆屋は式符を放り投げる。
「『転解氷呪』」
ゆらゆらと緩慢な動作で鬼に向かって行く紙の札。霊力の溢れるそれに当然鬼は気付き、切り裂いてやろうと風の刃を放つ。
「チチチッ!」
しかし、その札は風の刃が触れる前にそこから消え失せ、アオの能力によって転移され、鬼の額に直接貼り付けられた。
「つ、冷た、い……ッ」
「やっちゃって、シロ」
その札は一瞬にして鬼の頭を凍らせた。すると、額に付いた札が増殖し、全身に広がっていく。
「『狼煙の石、焼け落ちた木、酸の粉』」
いつの間にか全身を白い紙札に変化させていたシロは、その身から式符を一枚分離させる。
「『砕いて、挽いて、粉としろ』」
全身に札が張り付き、全身が凍り付いた鬼。だが、その身から溢れる妖力が少しずつ氷を溶かしていく。
「『爆ぜよ』」
鬼の体を覆う氷が砕けた瞬間、式符の文字が赤く燃えた。
「『燃灼焼灸』」
瞬間、凄まじい爆音と赤い光がその場に溢れた。
「ぬぉおおおおおおおおおおおおお――――ッ!」
深く広く抉れた地面。その範囲を埋め尽くすように燃え上がる炎。一面を火の海に変えたその術は、塵も残さずに巨大な鬼を消し飛ばした。
「良し、今度こそ一丁上がりかな。ナイス、皆」
「ッ、お褒めに預かれるとは……ありがたき幸せです。主様ッ!」
蘆屋はアオとは反対の肩に乗ったシロの頭を雑に撫で、次の獲物を探した。
♢
御日が相対していたのは、背丈が四メートルを超える大柄な鬼だった。
「なんだァ? 女のガキが俺に勝てると思ってんのかァ?」
虎のような輝く目、炎のように長く伸びた赤い髪と髭。
「天日流、暁光」
鬼の言葉への返答は無く、代わりに黄金の刀身が閃いた。
「ぬぉっとッ、危ねェなガキィ……ッ!」
しかし、鬼は油断していた状態からでも斬撃を見切り、刃を躱した。
「ぶっ殺してやるよォ! ぶっ殺されてェみてェだからなァ!」
「咲いて」
鬼の両拳が燃え上がり、赤い炎を纏う。それと同時に御日の刀から四枚の黒い花弁が飛び出し、宙を舞う。
「クソガキィ、名前なんだァ?」
「八研御日」
御日は短く告げると、花弁を鬼に向かわせ、刀を鞘に納めながら走った。
「そうかァ、俺は温羅だァッ!!」
返すように名を名乗った温羅に四枚の花弁が迫る。
「チィッ、なんだこの黒いのはよォッ!」
「天日流、日脚」
周囲をひらひらと舞いながら体を切り裂く花弁を温羅が掴もうとするが、花弁は温羅の手を擦り抜け、その間に足元を駆け抜けた御日が温羅の足を切り裂く。
「ッ、いってェなァ!?」
「天日流……ッ!」
足に付けられた傷を気にすることもなく、温羅は御日へと拳を振り下ろした。
「刀を振るう隙なんて与えねえよォッ!!」
「ッ!」
鬼の拳を避ける御日。幾度となく振るわれる拳に、御日は反撃する機を見出せない。ひらひらと舞う四枚の花弁は温羅の体を傷付けてはいるが、浅い傷しか付けられず、それも直ぐに再生してしまう。
「おォおおおらァァッ!!」
御日が回避すると、拳が地面に突き刺さり、爆炎が溢れる。一瞬にしてここら一帯の地面に亀裂が走り、その亀裂から炎が噴き出した。
「天日流、赤鴉の舞」
噴き出す炎の間を擦り抜けて、御日が現れる。即座に拳を振り下ろす温羅だが、御日は舞うような動きでひらりと回避し、懐に潜り込んだ。
「天日流、烈日」
「ぐぉッ!?」
強烈な勢いで横に振るわれる刃。それが温羅の腹を切り裂き、血を噴き出させる。
「ま、てェッ!」
「天日流、駕炎威光」
伸ばされる温羅の手を避け、空中を舞う花弁を足場にしながら温羅の頭上で一回転し、刃を振るう。
「くッ、テメェ……ッ!」
頭上を見上げた温羅は刃によって増幅された太陽の光に目を焼かれ、斬撃を防ぐことは出来なかった。
「ヒヒッ、ギャハハッ! 中々やるじゃねェかよ……おもしれェ」
頭を切り裂かれ、ぼたぼたと血を垂れ流す温羅。しかし、まだまだ倒れる気配は無い。
「本気で殺してやるよォ……ッ!」
燃え盛る両の拳をガチンと合わせ、打ち付ける。
「『炎烈暴鬼、虎眼爛々』」
温羅の体に亀裂が走り、そこから赤い炎が溢れる。橙色の眼は燃えるように輝き、妖力を漏れ出させる。
「さァ、来いよクソガキッ!!」
「……天日流」
御日は深く息を吐き出し、その身から闘気を溢れ出させる。
「奥義」
顔を上げる御日。吐き出される息から、鞘の隙間から、神力が溢れ出す。
「――――天陽閃」
赤く染まった黄金の刃が抜き放たれ、噴き出す紅蓮の炎と共に温羅を斬り付けた。
「ぐぉおおおおおおおおおおおおおッッ!!?」
腹部を切り裂かれた温羅。そこから神力と闘気の入り混じった炎が噴き出し、温羅は膝を突く。
「ふ、ぅ……ッ」
「ヒヒッ、何だよ……テメェもただじゃ済んでねェみてェだなァ?」
荒く息を吐く御日、温羅も大量の血を流しながら立ち上がる。
「あァ、傷が全然治りゃしねェ……だが、構わねェなァ」
地面を揺らしながら、その巨大な体が御日に迫る。
「どうしたァ、もう動けねェかァッ!?」
「すぅ……ふぅ」
温羅は御日の前に立つと、ゆらりと拳を振り上げた。
「だったら、ここで死んどけェッ!!」
「天日流、紅鏡」
振り下ろされた拳。御日はそれを待っていたかのように刃を振り上げ、垂直に合わせた。
「ッ、なァッ!?」
威力が反射され、後ろに仰け反る温羅。驚いて開いた口の中に黒い花弁が入り込む。
「ぐ、ぐぼァッ!? が、ガハッ、くッ」
体内を蹂躙される温羅は膝を突き、胸を抑える。そして、その隙を御日が見逃す筈もない。
「天日流、落陽」
振り落とされた刃が、差し出すように項垂れた首を斬り落とした。
「『転解氷呪』」
ゆらゆらと緩慢な動作で鬼に向かって行く紙の札。霊力の溢れるそれに当然鬼は気付き、切り裂いてやろうと風の刃を放つ。
「チチチッ!」
しかし、その札は風の刃が触れる前にそこから消え失せ、アオの能力によって転移され、鬼の額に直接貼り付けられた。
「つ、冷た、い……ッ」
「やっちゃって、シロ」
その札は一瞬にして鬼の頭を凍らせた。すると、額に付いた札が増殖し、全身に広がっていく。
「『狼煙の石、焼け落ちた木、酸の粉』」
いつの間にか全身を白い紙札に変化させていたシロは、その身から式符を一枚分離させる。
「『砕いて、挽いて、粉としろ』」
全身に札が張り付き、全身が凍り付いた鬼。だが、その身から溢れる妖力が少しずつ氷を溶かしていく。
「『爆ぜよ』」
鬼の体を覆う氷が砕けた瞬間、式符の文字が赤く燃えた。
「『燃灼焼灸』」
瞬間、凄まじい爆音と赤い光がその場に溢れた。
「ぬぉおおおおおおおおおおおおお――――ッ!」
深く広く抉れた地面。その範囲を埋め尽くすように燃え上がる炎。一面を火の海に変えたその術は、塵も残さずに巨大な鬼を消し飛ばした。
「良し、今度こそ一丁上がりかな。ナイス、皆」
「ッ、お褒めに預かれるとは……ありがたき幸せです。主様ッ!」
蘆屋はアオとは反対の肩に乗ったシロの頭を雑に撫で、次の獲物を探した。
♢
御日が相対していたのは、背丈が四メートルを超える大柄な鬼だった。
「なんだァ? 女のガキが俺に勝てると思ってんのかァ?」
虎のような輝く目、炎のように長く伸びた赤い髪と髭。
「天日流、暁光」
鬼の言葉への返答は無く、代わりに黄金の刀身が閃いた。
「ぬぉっとッ、危ねェなガキィ……ッ!」
しかし、鬼は油断していた状態からでも斬撃を見切り、刃を躱した。
「ぶっ殺してやるよォ! ぶっ殺されてェみてェだからなァ!」
「咲いて」
鬼の両拳が燃え上がり、赤い炎を纏う。それと同時に御日の刀から四枚の黒い花弁が飛び出し、宙を舞う。
「クソガキィ、名前なんだァ?」
「八研御日」
御日は短く告げると、花弁を鬼に向かわせ、刀を鞘に納めながら走った。
「そうかァ、俺は温羅だァッ!!」
返すように名を名乗った温羅に四枚の花弁が迫る。
「チィッ、なんだこの黒いのはよォッ!」
「天日流、日脚」
周囲をひらひらと舞いながら体を切り裂く花弁を温羅が掴もうとするが、花弁は温羅の手を擦り抜け、その間に足元を駆け抜けた御日が温羅の足を切り裂く。
「ッ、いってェなァ!?」
「天日流……ッ!」
足に付けられた傷を気にすることもなく、温羅は御日へと拳を振り下ろした。
「刀を振るう隙なんて与えねえよォッ!!」
「ッ!」
鬼の拳を避ける御日。幾度となく振るわれる拳に、御日は反撃する機を見出せない。ひらひらと舞う四枚の花弁は温羅の体を傷付けてはいるが、浅い傷しか付けられず、それも直ぐに再生してしまう。
「おォおおおらァァッ!!」
御日が回避すると、拳が地面に突き刺さり、爆炎が溢れる。一瞬にしてここら一帯の地面に亀裂が走り、その亀裂から炎が噴き出した。
「天日流、赤鴉の舞」
噴き出す炎の間を擦り抜けて、御日が現れる。即座に拳を振り下ろす温羅だが、御日は舞うような動きでひらりと回避し、懐に潜り込んだ。
「天日流、烈日」
「ぐぉッ!?」
強烈な勢いで横に振るわれる刃。それが温羅の腹を切り裂き、血を噴き出させる。
「ま、てェッ!」
「天日流、駕炎威光」
伸ばされる温羅の手を避け、空中を舞う花弁を足場にしながら温羅の頭上で一回転し、刃を振るう。
「くッ、テメェ……ッ!」
頭上を見上げた温羅は刃によって増幅された太陽の光に目を焼かれ、斬撃を防ぐことは出来なかった。
「ヒヒッ、ギャハハッ! 中々やるじゃねェかよ……おもしれェ」
頭を切り裂かれ、ぼたぼたと血を垂れ流す温羅。しかし、まだまだ倒れる気配は無い。
「本気で殺してやるよォ……ッ!」
燃え盛る両の拳をガチンと合わせ、打ち付ける。
「『炎烈暴鬼、虎眼爛々』」
温羅の体に亀裂が走り、そこから赤い炎が溢れる。橙色の眼は燃えるように輝き、妖力を漏れ出させる。
「さァ、来いよクソガキッ!!」
「……天日流」
御日は深く息を吐き出し、その身から闘気を溢れ出させる。
「奥義」
顔を上げる御日。吐き出される息から、鞘の隙間から、神力が溢れ出す。
「――――天陽閃」
赤く染まった黄金の刃が抜き放たれ、噴き出す紅蓮の炎と共に温羅を斬り付けた。
「ぐぉおおおおおおおおおおおおおッッ!!?」
腹部を切り裂かれた温羅。そこから神力と闘気の入り混じった炎が噴き出し、温羅は膝を突く。
「ふ、ぅ……ッ」
「ヒヒッ、何だよ……テメェもただじゃ済んでねェみてェだなァ?」
荒く息を吐く御日、温羅も大量の血を流しながら立ち上がる。
「あァ、傷が全然治りゃしねェ……だが、構わねェなァ」
地面を揺らしながら、その巨大な体が御日に迫る。
「どうしたァ、もう動けねェかァッ!?」
「すぅ……ふぅ」
温羅は御日の前に立つと、ゆらりと拳を振り上げた。
「だったら、ここで死んどけェッ!!」
「天日流、紅鏡」
振り下ろされた拳。御日はそれを待っていたかのように刃を振り上げ、垂直に合わせた。
「ッ、なァッ!?」
威力が反射され、後ろに仰け反る温羅。驚いて開いた口の中に黒い花弁が入り込む。
「ぐ、ぐぼァッ!? が、ガハッ、くッ」
体内を蹂躙される温羅は膝を突き、胸を抑える。そして、その隙を御日が見逃す筈もない。
「天日流、落陽」
振り落とされた刃が、差し出すように項垂れた首を斬り落とした。
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