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五行の光
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舞台の範囲内全てを焼き尽くす筈だった炎。それは鬼一の斬撃によって真っ二つに割られ、鬼一はその隙間を駆け抜ける。
「京八流、鬼裂き」
「ッ!」
一瞬で玉藻の目の前に現れた鬼一はその刀を振り抜いた。その刃は霊体と化して逃れようとした玉藻の体をも切り裂き、その腕を落とした。
「京八流、鬼砕き」
「『噴威炎』」
その場所を離れて元の姿に戻る玉藻だが、既にそこには鬼一が立っていた。凄まじい膂力で振り下ろされる刀をかち上げるように地面から噴き上がった紅蓮のマグマが鬼一を阻んだ。
「『蒼化、操溶炎』」
噴き上がるマグマが蒼く変色し、ミミズのように空中を動き鬼一に迫る。
「『塵殺・全遺針』」
続けて、玉藻が向けた扇子の先から四方八方に小さな針が射出された。それは地面に突き刺さるとその場所の地面を消し去り、針自身は灰色の塵となって消える。
「『飛身』」
「読み通りじゃな」
迫る蒼いマグマと、逃げ場を奪うように放たれた無数の針。それを回避しながら玉藻に距離を詰める手段として鬼一は転移を選んだが、玉藻は目の前に現れた鬼一に向けて既に扇子を向けていた。
「『妖炎狐縛』」
「ッ、不味い……!」
蒼い炎の狐が鬼一の足元から二匹現れ、その体に巻き付いた。
「ほれ、詰みじゃ」
動きを取れない鬼一の額に、扇子が付き付けられ、その先から蒼い炎が溢れる。
「『荼毘――――」
その瞬間、鬼一の体から凄まじい霊力が溢れた。
「『六韜三略・無身融解』」
鬼一の肉体が赤紫色に透き通る。半透明な霊体となった鬼一だが、完全な霊体ではない。恐らく、闘気によって仮初の肉体を形成し、それを霊体となった自身の体に乗り移らせて動かしているのだろう。
「ッ、それがお主の奥の手か!」
「然り」
肉体そのものを燃料に生み出されたエネルギーによって無数の術が同時に作動し、肉体の制限を無視した身体能力を発揮している。
だが、この状態は長くは持たないだろう。現に、鬼一の体は足元から溶け始めている。
「京八流、鬼一……参る」
距離を離していた玉藻に一瞬で迫る鬼一。
「『来たりて鬼門』」
「『呪耀腕』」
玉藻の背から無数に伸びる輝く紫の腕。鬼一はそれら全てをひらりひらりと潜り抜け、玉藻の懐まで入り込んだ。
「『五行・夜叉斬、鬼分ち』」
「ぐ、ぬ――――ッ」
俺ですら目で追うのがギリギリの速度で刀が鞘から振り抜かれ、五色の光と共に玉藻の体を切断した。
「『甘誓、洪範。五星の光』」
二つに分けられた体が直ぐにくっつこうとするのを、鬼一の刃が阻む。
「『木より入りて水の星、巡りて巡る』」
地面に倒れたままの玉藻の体。その足元に円に入った五芒星が描かれた。
「『五行・相乗封印』」
五芒星の先で五色の光が強まっていき、この地下空間に満ちる程にその輝きが増した瞬間、玉藻の体が消滅した。
「……封印か」
玉藻が消えると同時に、鬼一の体も消滅した。急いで舞台の上に駆け寄る白沢を見て、俺は呟いた。
「ただ殺しただけじゃ復活するが、確かに封印なら勝てるのか?」
俺は答えを聞くように瓢に視線を向けたが、瓢は微笑みながら舞台を指差した。
「……あぁ」
舞台の上に青白い炎が発生し、それは人の形に広がっていく。そこには、さっきまでと変わらぬ様子で玉藻が立っていた。
「封印も、無駄か」
「無駄って訳じゃないけどね。あれでも、復活権は使ってる筈だ」
しかし、再顕現タイプか。封印も効かないとなると、あと七回殺す必要があるのは確定だな。一応、復活不可能な殺し方を試しても良いが……それで白沢でも蘇生不可なんてことになったら大惨事だ。
「ほら、行っておいでよ」
「そうだったな」
そうか、もう俺の番か。結局、ここまで回って来たな。
「ご武運を祈ります、主様」
「ファイトです、マスター」
「どうせ勝つとは思うが……一応、応援しとくぜ?」
使い魔達に手を振り、俺は席を立った。
「まぁ……自重する必要も無いな」
俺は舞台に歩きながら、そう呟く。ここには人間なんて殆ど居ない上に、既に隠匿結界も張られている。遠慮なく、倒すことにしよう。
「お前は……老日勇か」
「あぁ、ナイスファイトだった」
擦れ違う鬼一に声をかけると、鬼一は首を傾げた。
「ない、す……? まぁ、良い」
鬼一はふっと笑い、俺の肩に手を置いた。
「あいつらの主だろう。期待はしているが……勝てるか?」
「あぁ、勝つ予定だ」
短く答え、俺は鬼一の横を通り過ぎた。
「待たせたな」
舞台に上がると、玉藻がふんぞり返ってそこに居た。
「あの鋼鉄娘の主か」
「あぁ、ステラのことか」
玉藻はその体から膨大な妖力を溢れさせながら、俺を睨みつけた。
「……ふん」
押し寄せていた凄まじい殺気が突然消え去り、玉藻は視線を緩めた。
「どうやら、お主もただの人間では無いらしいな」
「……どうだろうな」
俺は言葉を濁し、虚空から剣を引き抜いた。
「俺は霧生程の剣の達人でも無いし、妖や魔物の血が混ざっている訳でも無いただの純人だ」
「だが、お主は今……吾の目の前に立っておる」
玉藻の言葉に、俺は頷く。
「あぁ、そうだな」
俺は静かに剣を持ち上げる。
「始めるか」
「……良かろう」
玉藻の体が、ふわりと宙に浮いた。
「いつでも、来るが良いのじゃ」
「戦闘術式、展開」
跳ね上がる身体能力。俺は一瞬で玉藻まで接近し、その首を刎ね落とした。
「京八流、鬼裂き」
「ッ!」
一瞬で玉藻の目の前に現れた鬼一はその刀を振り抜いた。その刃は霊体と化して逃れようとした玉藻の体をも切り裂き、その腕を落とした。
「京八流、鬼砕き」
「『噴威炎』」
その場所を離れて元の姿に戻る玉藻だが、既にそこには鬼一が立っていた。凄まじい膂力で振り下ろされる刀をかち上げるように地面から噴き上がった紅蓮のマグマが鬼一を阻んだ。
「『蒼化、操溶炎』」
噴き上がるマグマが蒼く変色し、ミミズのように空中を動き鬼一に迫る。
「『塵殺・全遺針』」
続けて、玉藻が向けた扇子の先から四方八方に小さな針が射出された。それは地面に突き刺さるとその場所の地面を消し去り、針自身は灰色の塵となって消える。
「『飛身』」
「読み通りじゃな」
迫る蒼いマグマと、逃げ場を奪うように放たれた無数の針。それを回避しながら玉藻に距離を詰める手段として鬼一は転移を選んだが、玉藻は目の前に現れた鬼一に向けて既に扇子を向けていた。
「『妖炎狐縛』」
「ッ、不味い……!」
蒼い炎の狐が鬼一の足元から二匹現れ、その体に巻き付いた。
「ほれ、詰みじゃ」
動きを取れない鬼一の額に、扇子が付き付けられ、その先から蒼い炎が溢れる。
「『荼毘――――」
その瞬間、鬼一の体から凄まじい霊力が溢れた。
「『六韜三略・無身融解』」
鬼一の肉体が赤紫色に透き通る。半透明な霊体となった鬼一だが、完全な霊体ではない。恐らく、闘気によって仮初の肉体を形成し、それを霊体となった自身の体に乗り移らせて動かしているのだろう。
「ッ、それがお主の奥の手か!」
「然り」
肉体そのものを燃料に生み出されたエネルギーによって無数の術が同時に作動し、肉体の制限を無視した身体能力を発揮している。
だが、この状態は長くは持たないだろう。現に、鬼一の体は足元から溶け始めている。
「京八流、鬼一……参る」
距離を離していた玉藻に一瞬で迫る鬼一。
「『来たりて鬼門』」
「『呪耀腕』」
玉藻の背から無数に伸びる輝く紫の腕。鬼一はそれら全てをひらりひらりと潜り抜け、玉藻の懐まで入り込んだ。
「『五行・夜叉斬、鬼分ち』」
「ぐ、ぬ――――ッ」
俺ですら目で追うのがギリギリの速度で刀が鞘から振り抜かれ、五色の光と共に玉藻の体を切断した。
「『甘誓、洪範。五星の光』」
二つに分けられた体が直ぐにくっつこうとするのを、鬼一の刃が阻む。
「『木より入りて水の星、巡りて巡る』」
地面に倒れたままの玉藻の体。その足元に円に入った五芒星が描かれた。
「『五行・相乗封印』」
五芒星の先で五色の光が強まっていき、この地下空間に満ちる程にその輝きが増した瞬間、玉藻の体が消滅した。
「……封印か」
玉藻が消えると同時に、鬼一の体も消滅した。急いで舞台の上に駆け寄る白沢を見て、俺は呟いた。
「ただ殺しただけじゃ復活するが、確かに封印なら勝てるのか?」
俺は答えを聞くように瓢に視線を向けたが、瓢は微笑みながら舞台を指差した。
「……あぁ」
舞台の上に青白い炎が発生し、それは人の形に広がっていく。そこには、さっきまでと変わらぬ様子で玉藻が立っていた。
「封印も、無駄か」
「無駄って訳じゃないけどね。あれでも、復活権は使ってる筈だ」
しかし、再顕現タイプか。封印も効かないとなると、あと七回殺す必要があるのは確定だな。一応、復活不可能な殺し方を試しても良いが……それで白沢でも蘇生不可なんてことになったら大惨事だ。
「ほら、行っておいでよ」
「そうだったな」
そうか、もう俺の番か。結局、ここまで回って来たな。
「ご武運を祈ります、主様」
「ファイトです、マスター」
「どうせ勝つとは思うが……一応、応援しとくぜ?」
使い魔達に手を振り、俺は席を立った。
「まぁ……自重する必要も無いな」
俺は舞台に歩きながら、そう呟く。ここには人間なんて殆ど居ない上に、既に隠匿結界も張られている。遠慮なく、倒すことにしよう。
「お前は……老日勇か」
「あぁ、ナイスファイトだった」
擦れ違う鬼一に声をかけると、鬼一は首を傾げた。
「ない、す……? まぁ、良い」
鬼一はふっと笑い、俺の肩に手を置いた。
「あいつらの主だろう。期待はしているが……勝てるか?」
「あぁ、勝つ予定だ」
短く答え、俺は鬼一の横を通り過ぎた。
「待たせたな」
舞台に上がると、玉藻がふんぞり返ってそこに居た。
「あの鋼鉄娘の主か」
「あぁ、ステラのことか」
玉藻はその体から膨大な妖力を溢れさせながら、俺を睨みつけた。
「……ふん」
押し寄せていた凄まじい殺気が突然消え去り、玉藻は視線を緩めた。
「どうやら、お主もただの人間では無いらしいな」
「……どうだろうな」
俺は言葉を濁し、虚空から剣を引き抜いた。
「俺は霧生程の剣の達人でも無いし、妖や魔物の血が混ざっている訳でも無いただの純人だ」
「だが、お主は今……吾の目の前に立っておる」
玉藻の言葉に、俺は頷く。
「あぁ、そうだな」
俺は静かに剣を持ち上げる。
「始めるか」
「……良かろう」
玉藻の体が、ふわりと宙に浮いた。
「いつでも、来るが良いのじゃ」
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