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プライドバトル
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走る緊張。しかし、その場の全員が笑みを浮かべていた。
「『夜の衣』」
メイアの体から闇が溢れると、それは体にぴったりと纏わりついて染み込んでいく。滲み出す闇の衣はメイアの身体能力を大きく上昇させ、吸血鬼にとって万全の状態である夜の闇の中と同じだけの能力を発揮させる。
「『合金装甲』」
ステラの体が、皮膚が、変化する。人間のような肌色の皮膚は銀色に染まり、青い光沢を放っている。異世界の金属の合金であるこの肉体は非常に頑強で、生半可な攻撃であれば防御するまでも無く受け切れる。
「『魔力活性』」
竜を始めとした素材によって作られた疑似筋肉に魔力が駆け巡り、素材本来の力を発揮する為に活性化していく。
「『完全戦闘形態』」
条件が整い、魔力炉が起動する。異世界の金属と魔物の素材によって形作られたステラの肉体から、遂に100%の能力が引き出された。
「第一目標……メイア」
「あら、私?」
ステラは一瞬でメイアの前まで迫ると、銀色の腕を振り下ろした。しかし、ステラの拳は霧となったメイアの胸をすり抜ける。
「パワーは凄いけれど、私に捉えられる攻撃じゃ意味無いわ」
「では、攻撃方法を修正します」
ステラの背から、翼のように四本のアームが生え、それから枝分かれするように無数の武器が展開される。
「『形態変化・武装支腕展開』」
無数の武装。その殆どが砲状になっているもので、遠距離攻撃の手段であることが伺える。
「一斉掃射」
無数の武装から同時に攻撃が放たれる。それは弾丸、それは光線、それは刃。メイアに殺到する攻撃はどれもが高い威力を誇り、直撃すればタダでは済まないものばかりだ。
「だから、無意味よ」
「いいえ、有効な手段です」
メイアの体が霧となり、弾丸や刃をすり抜けて行く。しかし、ステラはそうなることを分かっていたかのように表情も変えず、片手を突き出し、その手首を反対の手で握った。
「『銀粒砲、出力最大』」
ステラの手から銀色に輝く魔力の奔流が放たれ……霧を呑み込んだ。
「対象の消滅を確認」
既に消え去った奔流は魔力の残滓を色濃く残し、直線状にあった木々を消滅させた。
「よぉ、オレを忘れちゃいねぇよな?」
「ッ!」
瞬間、背後から迫った闇の翼が叩き付けられ、ステラの体は吹き飛ばされた。
「おいおい、流石に硬すぎねぇか?」
「特注品のボディですので。物質的にはこの星のあらゆる物質よりも強固な可能性があります」
無傷で立ち上がったステラにカラスは思わず呆れたような顔をした。
「じゃあ、しょうがねえな」
カラスは飛び上がり、その巨大な翼を広げた。対するステラも背中から展開された武装を向ける。
「行け」
「一斉掃射」
闇の翼から無数の鴉が生み出されてステラに飛び、それを迎撃するように弾丸や光線が放たれる。ぶつかり合う鴉の群れと攻撃の雨、その押し合いを上回ったのはステラだ。更に……
「『銀粒砲』」
銀色に煌めく魔力砲が放たれ、鴉の群れを貫いて翼の中心のカラスを呑み込んだ。
「――――カァ、涼しいな」
魔力の奔流が消えた後、そこには傷一つも無いカラスが居た。
「……これは」
目を見開くステラ。それを見てカラスは笑う。
「もう一度、です」
「『影化』」
一斉に放たれる弾丸と光線。カラスの体が黒くぬらりと染まると、弾丸も光線もカラスの体をすり抜けて行った。
「……影ですか」
「新しい力だ。良いだろ?」
自身の身を影に変え、あらゆる攻撃をすり抜ける無敵の防御。弱点はあるが、それに気付けない限り突破は不可能だろう。
「……メイアの霧と言い、私の火力が意味を為さない相手しか居ませんね」
溜息を吐くステラ。その背後から紅い線が伸び、ステラの肩を貫いた。
「――――ふふ、ご機嫌よう」
背から生えた蝙蝠の翼をはためかせ、地面に降り立ったのは……メイアだ。
「……あの状況から生存するのは不可能に近いと思いますが」
完全に殺した筈のメイアが、目の前に立っている。生体反応の消滅まで確実に確認した筈だった。
「簡単よ。索敵用に飛ばしていた蝙蝠から蘇ったの」
「……ですか」
索敵で放っていた蝙蝠はメイアの血から生み出した彼女の分け身。距離もそう離れていないそれから蘇ることはそう難しくなかった。
「まぁ、そんなズルはもうしないから安心しなさい……正々堂々、行きましょう」
メイアが大地を蹴り、空中に飛び上がる。
「『揺れる月明かり、湖面に輝く』」
詠唱。それを見逃す筈もなく、弾丸と鴉の群れが宙を舞うメイアに殺到する。
「『黄金の光は貴方の為に、紅い罅は貴方の為に』」
霧となって逃れたメイアは木陰から現れ、また言葉を紡ぐ。
「『何でも、耐えて見せるから』」
魔力が溢れ、彼女の髪が黄金色の光を放つ。
「『――――月紅紋』」
黄金の髪が月明かりのように光り輝き、身体中に紅の紋様が走っていく。その効果は単純な身体能力の上昇に加え、月光による強化。
「さぁ、さっさと決着を付けましょうか」
メイアが手を広げると、その体から血の杭が無数に放たれた。
「『夜の衣』」
メイアの体から闇が溢れると、それは体にぴったりと纏わりついて染み込んでいく。滲み出す闇の衣はメイアの身体能力を大きく上昇させ、吸血鬼にとって万全の状態である夜の闇の中と同じだけの能力を発揮させる。
「『合金装甲』」
ステラの体が、皮膚が、変化する。人間のような肌色の皮膚は銀色に染まり、青い光沢を放っている。異世界の金属の合金であるこの肉体は非常に頑強で、生半可な攻撃であれば防御するまでも無く受け切れる。
「『魔力活性』」
竜を始めとした素材によって作られた疑似筋肉に魔力が駆け巡り、素材本来の力を発揮する為に活性化していく。
「『完全戦闘形態』」
条件が整い、魔力炉が起動する。異世界の金属と魔物の素材によって形作られたステラの肉体から、遂に100%の能力が引き出された。
「第一目標……メイア」
「あら、私?」
ステラは一瞬でメイアの前まで迫ると、銀色の腕を振り下ろした。しかし、ステラの拳は霧となったメイアの胸をすり抜ける。
「パワーは凄いけれど、私に捉えられる攻撃じゃ意味無いわ」
「では、攻撃方法を修正します」
ステラの背から、翼のように四本のアームが生え、それから枝分かれするように無数の武器が展開される。
「『形態変化・武装支腕展開』」
無数の武装。その殆どが砲状になっているもので、遠距離攻撃の手段であることが伺える。
「一斉掃射」
無数の武装から同時に攻撃が放たれる。それは弾丸、それは光線、それは刃。メイアに殺到する攻撃はどれもが高い威力を誇り、直撃すればタダでは済まないものばかりだ。
「だから、無意味よ」
「いいえ、有効な手段です」
メイアの体が霧となり、弾丸や刃をすり抜けて行く。しかし、ステラはそうなることを分かっていたかのように表情も変えず、片手を突き出し、その手首を反対の手で握った。
「『銀粒砲、出力最大』」
ステラの手から銀色に輝く魔力の奔流が放たれ……霧を呑み込んだ。
「対象の消滅を確認」
既に消え去った奔流は魔力の残滓を色濃く残し、直線状にあった木々を消滅させた。
「よぉ、オレを忘れちゃいねぇよな?」
「ッ!」
瞬間、背後から迫った闇の翼が叩き付けられ、ステラの体は吹き飛ばされた。
「おいおい、流石に硬すぎねぇか?」
「特注品のボディですので。物質的にはこの星のあらゆる物質よりも強固な可能性があります」
無傷で立ち上がったステラにカラスは思わず呆れたような顔をした。
「じゃあ、しょうがねえな」
カラスは飛び上がり、その巨大な翼を広げた。対するステラも背中から展開された武装を向ける。
「行け」
「一斉掃射」
闇の翼から無数の鴉が生み出されてステラに飛び、それを迎撃するように弾丸や光線が放たれる。ぶつかり合う鴉の群れと攻撃の雨、その押し合いを上回ったのはステラだ。更に……
「『銀粒砲』」
銀色に煌めく魔力砲が放たれ、鴉の群れを貫いて翼の中心のカラスを呑み込んだ。
「――――カァ、涼しいな」
魔力の奔流が消えた後、そこには傷一つも無いカラスが居た。
「……これは」
目を見開くステラ。それを見てカラスは笑う。
「もう一度、です」
「『影化』」
一斉に放たれる弾丸と光線。カラスの体が黒くぬらりと染まると、弾丸も光線もカラスの体をすり抜けて行った。
「……影ですか」
「新しい力だ。良いだろ?」
自身の身を影に変え、あらゆる攻撃をすり抜ける無敵の防御。弱点はあるが、それに気付けない限り突破は不可能だろう。
「……メイアの霧と言い、私の火力が意味を為さない相手しか居ませんね」
溜息を吐くステラ。その背後から紅い線が伸び、ステラの肩を貫いた。
「――――ふふ、ご機嫌よう」
背から生えた蝙蝠の翼をはためかせ、地面に降り立ったのは……メイアだ。
「……あの状況から生存するのは不可能に近いと思いますが」
完全に殺した筈のメイアが、目の前に立っている。生体反応の消滅まで確実に確認した筈だった。
「簡単よ。索敵用に飛ばしていた蝙蝠から蘇ったの」
「……ですか」
索敵で放っていた蝙蝠はメイアの血から生み出した彼女の分け身。距離もそう離れていないそれから蘇ることはそう難しくなかった。
「まぁ、そんなズルはもうしないから安心しなさい……正々堂々、行きましょう」
メイアが大地を蹴り、空中に飛び上がる。
「『揺れる月明かり、湖面に輝く』」
詠唱。それを見逃す筈もなく、弾丸と鴉の群れが宙を舞うメイアに殺到する。
「『黄金の光は貴方の為に、紅い罅は貴方の為に』」
霧となって逃れたメイアは木陰から現れ、また言葉を紡ぐ。
「『何でも、耐えて見せるから』」
魔力が溢れ、彼女の髪が黄金色の光を放つ。
「『――――月紅紋』」
黄金の髪が月明かりのように光り輝き、身体中に紅の紋様が走っていく。その効果は単純な身体能力の上昇に加え、月光による強化。
「さぁ、さっさと決着を付けましょうか」
メイアが手を広げると、その体から血の杭が無数に放たれた。
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