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使い魔
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カラスの時よりも時間がかかったな。まぁ、量が多い分当然だが。
「さて……作るか」
「何を作るのですか?」
こてんと首を傾げるメイア。綺麗な黄金色の髪に真紅の目。かなり美形だな。向こうの世界にも美形は多かったが、こっちに帰って来てからもやたら外見の良い奴が多い。これも、異界接触現象の影響なのかも知れない。
「使い魔だ。元々、ここにはその為に来たからな」
「……私は?」
「諜報用だ。元から諜報用の使い魔を作るつもりだったんだが、丁度良く来てくれたからな。お前を諜報用にして、今から作る使い魔は情報統制用にする」
他の使い魔が集めた情報を統括し、それらの情報を基に思考する。要するに俺の代わりに情報を纏めて考えてくれる使い魔ということだ。それに加えて、俺の苦手とする機械分野へのアプローチにもなれば良いと思っている。
「取り敢えず、お前は自由にしてて良い。必要な時はこっちから呼び出すからな。ただ、目立つようなことはするなよ」
「分かりました。それと……お前ではなく、メイアとお呼び下さい」
「あぁ、悪い」
了承するも、メイアはここを離れようとはしなかった。
「……どうした?」
「いえ、自由にしていいとのことなので観察させて頂こうと思いまして」
「まぁ、別に良いが」
面白いことなんて無いぞ、と偏屈な職人のようなセリフを付け加えて俺は視線を戻した。
「やるか」
俺は虚空から必要になりそうな素材を取り出し、地面に散らばらせた。
♢
宙に浮かぶ青い金属球。その周囲には銀色に輝く液状の金属が波打っていた。
「起動しろ、ステラ」
俺の言葉により、青い金属球が淡く光り始めた。
「ハロー、マスター」
……英語だと。
「機能に異常はあるか?」
「いいえ、マスター」
良かった。挨拶だけか。いや、冷静に考えれば俺の記憶から転写している以上、俺以上の英語の知識を持っている筈が無いか。少なくとも、今は。
「ステラ、既に理解しているとは思うが、お前は他の使い魔が集めた情報を統制する役割を持っている」
「理解しています、マスター」
「早速だが、他の使い魔との同期は出来ているか? 俺を通じないルートを形成したんだが、問題は無いか?」
「同期は完了しています。いつでも意思の疎通が可能で、情報が共有できる状態にあります」
それは良かった。
「お前は一旦持ち帰って、ネットに接続できるようにする。パソコンは帰りに買うとするか」
最近、スマホもちゃんと買い替えたからな。犀川から貰ったものは余り信用できないので、返しておいた。残念そうにしていたので、どうせ碌でもない仕掛けがされていたのだろう。
「いや、スマホから接続すれば良いか」
と言っても、ステラには俺の家を拠点にさせるつもりだからな。パソコンは買っておいた方が良いだろうが。
「回収するぞ、ステラ」
「了解です」
私用空間にステラを回収し、体を伸ばす。
「さて、これで終わりだが満足したか?」
チラリとメイアに視線を向けると、メイアはにっこりと笑って頷いた。
「えぇ、とても」
「……そうか」
何が面白かったのかは知らないが、満足したなら良かったな。
「帰るか」
「ご一緒致します」
サッと俺の少し後ろに回ったメイアに何か言おうかと思ったが、何も言わずに帰ることにした。
♦……side:???
ナニモンだか知らねえが、ウチに声をかけたのは正解だったな。生きたままのクズは幾らでも融通出来るし、邪魔な奴は好きにぶっ殺せる。
人間をそのまま欲しいってのは死ぬ程きなくせぇが、俺らが気にすることじゃねぇ。金も払えねぇクズを金に換えられるのはこっちとしてもありがたいことだからな。
「とはいえ、そろそろ詰んでるクズも尽きてきた頃だ」
金を払えねえ奴は殆ど金に換えちまった頃合いだからな。そろそろ適当な奴を攫っちまわねぇと数が足りねぇ。アイツとの取引はここで辞めるには惜しすぎるからな。
「さて、殺害対象は誰だったか……」
老日勇。居住地は恐らく東京、か。まぁ顔が割れてりゃ居場所は直ぐだな。
「おいッ!」
「はいッ、何でしょうかオヤジッ!」
扉の近くに立っていた奴を呼び、机の近くまで寄せて顔写真付きの書類を手渡す。
「ネズミに伝えろ。こいつを殺せ、義殺会を動かしても良い。それと……動かす奴らの内、一人は依頼主に直接会わせろ。」
義殺会。ウチの組でも殺しを専門にしてるグループだ。こいつらが任務に出て失敗したことは無い。たった一度も。
「はいッ、伝えておきますッ!」
若い組員が出て行くのを見届け、俺は煙草を取り出して火を付けた。
「……ふぅ」
着実に、近付いている。俺は裏社会の王になれる。全てを牛耳り、何もかもが思うがまま。金が集まり、力が集まり、支配者になれる。
「成功報酬は……くくッ」
余りにも相場を知らない価格だ。俺達にとっては良い意味でな。前金はたったの十分の一だが、これまでの取引もあって信頼関係は既に出来てるから問題無しってことだ。それに、一級のハンターでもないような奴を一人殺すくらいの依頼でバックレられても大したことはねぇからな。
「しくじるなよ、ネズミ……」
他人の命で金を稼ぐ。全く、最高の商売だぜ。
「さて……作るか」
「何を作るのですか?」
こてんと首を傾げるメイア。綺麗な黄金色の髪に真紅の目。かなり美形だな。向こうの世界にも美形は多かったが、こっちに帰って来てからもやたら外見の良い奴が多い。これも、異界接触現象の影響なのかも知れない。
「使い魔だ。元々、ここにはその為に来たからな」
「……私は?」
「諜報用だ。元から諜報用の使い魔を作るつもりだったんだが、丁度良く来てくれたからな。お前を諜報用にして、今から作る使い魔は情報統制用にする」
他の使い魔が集めた情報を統括し、それらの情報を基に思考する。要するに俺の代わりに情報を纏めて考えてくれる使い魔ということだ。それに加えて、俺の苦手とする機械分野へのアプローチにもなれば良いと思っている。
「取り敢えず、お前は自由にしてて良い。必要な時はこっちから呼び出すからな。ただ、目立つようなことはするなよ」
「分かりました。それと……お前ではなく、メイアとお呼び下さい」
「あぁ、悪い」
了承するも、メイアはここを離れようとはしなかった。
「……どうした?」
「いえ、自由にしていいとのことなので観察させて頂こうと思いまして」
「まぁ、別に良いが」
面白いことなんて無いぞ、と偏屈な職人のようなセリフを付け加えて俺は視線を戻した。
「やるか」
俺は虚空から必要になりそうな素材を取り出し、地面に散らばらせた。
♢
宙に浮かぶ青い金属球。その周囲には銀色に輝く液状の金属が波打っていた。
「起動しろ、ステラ」
俺の言葉により、青い金属球が淡く光り始めた。
「ハロー、マスター」
……英語だと。
「機能に異常はあるか?」
「いいえ、マスター」
良かった。挨拶だけか。いや、冷静に考えれば俺の記憶から転写している以上、俺以上の英語の知識を持っている筈が無いか。少なくとも、今は。
「ステラ、既に理解しているとは思うが、お前は他の使い魔が集めた情報を統制する役割を持っている」
「理解しています、マスター」
「早速だが、他の使い魔との同期は出来ているか? 俺を通じないルートを形成したんだが、問題は無いか?」
「同期は完了しています。いつでも意思の疎通が可能で、情報が共有できる状態にあります」
それは良かった。
「お前は一旦持ち帰って、ネットに接続できるようにする。パソコンは帰りに買うとするか」
最近、スマホもちゃんと買い替えたからな。犀川から貰ったものは余り信用できないので、返しておいた。残念そうにしていたので、どうせ碌でもない仕掛けがされていたのだろう。
「いや、スマホから接続すれば良いか」
と言っても、ステラには俺の家を拠点にさせるつもりだからな。パソコンは買っておいた方が良いだろうが。
「回収するぞ、ステラ」
「了解です」
私用空間にステラを回収し、体を伸ばす。
「さて、これで終わりだが満足したか?」
チラリとメイアに視線を向けると、メイアはにっこりと笑って頷いた。
「えぇ、とても」
「……そうか」
何が面白かったのかは知らないが、満足したなら良かったな。
「帰るか」
「ご一緒致します」
サッと俺の少し後ろに回ったメイアに何か言おうかと思ったが、何も言わずに帰ることにした。
♦……side:???
ナニモンだか知らねえが、ウチに声をかけたのは正解だったな。生きたままのクズは幾らでも融通出来るし、邪魔な奴は好きにぶっ殺せる。
人間をそのまま欲しいってのは死ぬ程きなくせぇが、俺らが気にすることじゃねぇ。金も払えねぇクズを金に換えられるのはこっちとしてもありがたいことだからな。
「とはいえ、そろそろ詰んでるクズも尽きてきた頃だ」
金を払えねえ奴は殆ど金に換えちまった頃合いだからな。そろそろ適当な奴を攫っちまわねぇと数が足りねぇ。アイツとの取引はここで辞めるには惜しすぎるからな。
「さて、殺害対象は誰だったか……」
老日勇。居住地は恐らく東京、か。まぁ顔が割れてりゃ居場所は直ぐだな。
「おいッ!」
「はいッ、何でしょうかオヤジッ!」
扉の近くに立っていた奴を呼び、机の近くまで寄せて顔写真付きの書類を手渡す。
「ネズミに伝えろ。こいつを殺せ、義殺会を動かしても良い。それと……動かす奴らの内、一人は依頼主に直接会わせろ。」
義殺会。ウチの組でも殺しを専門にしてるグループだ。こいつらが任務に出て失敗したことは無い。たった一度も。
「はいッ、伝えておきますッ!」
若い組員が出て行くのを見届け、俺は煙草を取り出して火を付けた。
「……ふぅ」
着実に、近付いている。俺は裏社会の王になれる。全てを牛耳り、何もかもが思うがまま。金が集まり、力が集まり、支配者になれる。
「成功報酬は……くくッ」
余りにも相場を知らない価格だ。俺達にとっては良い意味でな。前金はたったの十分の一だが、これまでの取引もあって信頼関係は既に出来てるから問題無しってことだ。それに、一級のハンターでもないような奴を一人殺すくらいの依頼でバックレられても大したことはねぇからな。
「しくじるなよ、ネズミ……」
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