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赤い男
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真っ赤なローブを覆った男が、狂気と混乱が包む東京の街を歩いている。
「んー、んー……」
男の近くに、飛び回っていたヘリが墜落し、大きな爆発を起こした。
「んー、良いんじゃねえの。絶好の実験日和って感じだろ~?」
燃え盛るヘリの中、男は悠然と歩き、そのまま突っ込んでいった。
「良いポジション見っけたなー、こりゃ」
炎の中に消えていく男。その表情には笑みだけが浮かんでいる。
「んじゃぁ、行くか~」
炎に包まれても全く堪える気配の無い男、その体が赤く変色していき、細い身体は盛り上がり、筋肉質のものに変わっていく。
「――――変身」
真紅の巨躯、上半身の筋肉が異常に発達したその様子はアンバランスという他なく、元は人間だったその顔もまるで怪物のように歪んでいる。
裂けた口は三日月のように開き、そこから見える歯も赤く、全てが犬歯のように尖っている。小さく萎み、皮膚と完全に癒着したような眼球が八つ、規則的に配置されている。鼻は極小の穴だけが残り、傍目からは分からない。外耳は無く、渦巻き状の小さな穴だけが耳の役割を果たしている。
「炎の中から現れる怪物ってのも、乙なモンだろ~?」
若干猫背のような姿勢となって炎の中から現れる男。身長三メートルに届くかという巨体は猫背であっても十分に大きく、威圧感を放っている。
「ッ、何だアイツ……魔物、か?」
「他の地方では悪魔が出てるらしい……見た目的に、こいつもそうだろ」
近くに居た数人のハンターが、男を見て警戒心を強める。
「さぁて、早速やっちまうかね~」
赤い怪物。その巨体がハンター達の方を向き、そして腕が伸ばされると……そこから糸状に伸びた細長い赤色の触手が、ハンターの内の一人の首を掴んだ。
「よし、記念すべき一人目だな~!」
筋肉に力を入れたかのように触手が膨れ上がり、掴まれた首はぐちゃりと呆気なく潰された。
「なッ、な……おッ、お前ッ!!」
「クソ……殺すッ!!」
残された二人のハンターはその表情を怒りで染め上げ、手にした武器を以って男に飛び掛かった。
「いやぁ、無理だろ~」
振り下ろされる剣、突き出される槍。その二つを回避することなく男は受け止めた。筋肉質の真っ赤な肉体に剣と槍がめり込んでいる。
「ッ、抜けねえッ!?」
「んだよ、こいつッ!!」
めり込んだ武器はどれだけ引っ張っても取れることは無く、赤い男はただにやにやと笑っている。
「んー、気分良いなぁこれ。無敵にでもなった感じで」
必死に武器を取り返そうとする二人のハンター。その様子を見て男は溜息を吐く。
「ま、でも飽きたな」
赤い肉体、その胸元の筋肉が変質し、ぐにゃりと二本の触手が伸びて、二人のハンターの心臓を貫いた。
「が、ハッ……」
「ク、ソ……」
倒れる二人。そこには三つのハンターの死体が転がっている。それを見た一般市民達は恐怖の表情を浮かべ、逃げ出していく。
「クソはお前らだろぉ? 負けて、死んだんだからなぁ」
全く、と溜息を吐き、やれやれと肩を竦めた。真っ赤な怪物が取る仕草としてはこの上なくシュールだが、それを見て笑えるような余裕のある者は居ない。
「おいおい、皆して逃げなくても良くねぇかぁ~?」
男は膝に手を乗せ、足を広げて少し折り曲げた。
「そうやって逃げんなら、こっちは跳んじゃうぜ~?」
赤い巨体が、跳躍した。その勢いは凄まじく、彼の居た地面には大きく凹みが残り、道路は罅割れていた。
「ほら、一人~」
「ぐはァッ!?」
宙を舞う怪物、その腕から伸びた触手が鋭く伸びて、逃げ惑う一般人の背中を貫いた。
「刺さったら終わり、中で菌糸みてぇに広がってぐっちゃぐちゃよ」
その言葉通り、突き刺さった触手は貫かれた男の体内で無数に枝分かれして広がり、臓器という臓器を貫き、ぐちゃぐちゃに潰していった。
「うーわ、グッロいなぁこれ……」
自分で為したことだが、男は引いたような目で死体を眺めた。
「ま、美味しく頂くからさ。食事ってことで許してくれよ?」
体のあちこちから触手の先端が飛び出している死体。それは急速に干からびて薄っぺらくなった。
「んー、うめうめ。これよ、これ~! 人間辞めた甲斐、あるなぁ~」
しみじみと言う男。その背後に、一人の男が現れ立った。
「人間辞めたって言ったよな?」
「んー? そうだな、多分言った。覚えてねぇけどなぁ」
二人の男はお互いの姿を認め、視線を交わす。
「じゃあ、人権はねえからぶっ殺して良いな」
駆ける男。その手に握られた手斧が赤い怪物に向けて振り上げられる。
「お~、ひっでぇこと言うなぁ。一応、戸籍とかあるんだけどな~?」
ぐちゃり。手斧は筋肉の体を潰しながら進み、赤い男の肩辺りを深く切り裂いた。だが、赤い男は怯んだ様子もない。
「……黙れ、怪物が」
振り下ろされる手斧。それを持つ手に赤い触手が絡まり、手斧を空中で止めた。その間に、手斧が付けた傷は完全に再生している。
「怪物って、失礼だな~? 俺にはしっかりと理性と知性があるんだわ。実際、俺のこの体も科学と魔術の賜物って訳よ」
「知ったこっちゃねぇ」
手に巻き付いた触手はぐにゃりと動き、手斧を絡め取った。しかし、男はそれに動じずにそのまま赤い男の懐へと潜り込み、いつの間にか手の中に戻っていた手斧を全力で振りかぶった。
「うぉッ、すんごい抉れちゃったなこれ」
手斧は赤い男の胸部から腹部を凄まじい勢いで抉り取り、大きな傷跡を付けた。まるで竜の爪で引っかかれたように抉れたそれを見ても、男は焦らない。
「んー、耐久性に問題ありか~? 流石に斬撃に対する耐性はもうちょっと無いとダメだろうなぁ」
「……頭か? 頭潰しゃぁ、死ぬか?」
うんうんと悩んでいる怪物。無防備なその頭に容赦の無い手斧が叩き付けられた。
「これで、どうだ……?」
そのまま胴体も切り裂き、何度も手斧を叩きつけ、赤い男の体はボロボロの見るも無残な姿に変わった。
「――――んー、無駄なんだよ。残念だけどさぁ」
再生。残骸と言っても良いほどになっていた男の体は一瞬にして再生し、怪物の姿へと巻き戻った。
「んー、んー……」
男の近くに、飛び回っていたヘリが墜落し、大きな爆発を起こした。
「んー、良いんじゃねえの。絶好の実験日和って感じだろ~?」
燃え盛るヘリの中、男は悠然と歩き、そのまま突っ込んでいった。
「良いポジション見っけたなー、こりゃ」
炎の中に消えていく男。その表情には笑みだけが浮かんでいる。
「んじゃぁ、行くか~」
炎に包まれても全く堪える気配の無い男、その体が赤く変色していき、細い身体は盛り上がり、筋肉質のものに変わっていく。
「――――変身」
真紅の巨躯、上半身の筋肉が異常に発達したその様子はアンバランスという他なく、元は人間だったその顔もまるで怪物のように歪んでいる。
裂けた口は三日月のように開き、そこから見える歯も赤く、全てが犬歯のように尖っている。小さく萎み、皮膚と完全に癒着したような眼球が八つ、規則的に配置されている。鼻は極小の穴だけが残り、傍目からは分からない。外耳は無く、渦巻き状の小さな穴だけが耳の役割を果たしている。
「炎の中から現れる怪物ってのも、乙なモンだろ~?」
若干猫背のような姿勢となって炎の中から現れる男。身長三メートルに届くかという巨体は猫背であっても十分に大きく、威圧感を放っている。
「ッ、何だアイツ……魔物、か?」
「他の地方では悪魔が出てるらしい……見た目的に、こいつもそうだろ」
近くに居た数人のハンターが、男を見て警戒心を強める。
「さぁて、早速やっちまうかね~」
赤い怪物。その巨体がハンター達の方を向き、そして腕が伸ばされると……そこから糸状に伸びた細長い赤色の触手が、ハンターの内の一人の首を掴んだ。
「よし、記念すべき一人目だな~!」
筋肉に力を入れたかのように触手が膨れ上がり、掴まれた首はぐちゃりと呆気なく潰された。
「なッ、な……おッ、お前ッ!!」
「クソ……殺すッ!!」
残された二人のハンターはその表情を怒りで染め上げ、手にした武器を以って男に飛び掛かった。
「いやぁ、無理だろ~」
振り下ろされる剣、突き出される槍。その二つを回避することなく男は受け止めた。筋肉質の真っ赤な肉体に剣と槍がめり込んでいる。
「ッ、抜けねえッ!?」
「んだよ、こいつッ!!」
めり込んだ武器はどれだけ引っ張っても取れることは無く、赤い男はただにやにやと笑っている。
「んー、気分良いなぁこれ。無敵にでもなった感じで」
必死に武器を取り返そうとする二人のハンター。その様子を見て男は溜息を吐く。
「ま、でも飽きたな」
赤い肉体、その胸元の筋肉が変質し、ぐにゃりと二本の触手が伸びて、二人のハンターの心臓を貫いた。
「が、ハッ……」
「ク、ソ……」
倒れる二人。そこには三つのハンターの死体が転がっている。それを見た一般市民達は恐怖の表情を浮かべ、逃げ出していく。
「クソはお前らだろぉ? 負けて、死んだんだからなぁ」
全く、と溜息を吐き、やれやれと肩を竦めた。真っ赤な怪物が取る仕草としてはこの上なくシュールだが、それを見て笑えるような余裕のある者は居ない。
「おいおい、皆して逃げなくても良くねぇかぁ~?」
男は膝に手を乗せ、足を広げて少し折り曲げた。
「そうやって逃げんなら、こっちは跳んじゃうぜ~?」
赤い巨体が、跳躍した。その勢いは凄まじく、彼の居た地面には大きく凹みが残り、道路は罅割れていた。
「ほら、一人~」
「ぐはァッ!?」
宙を舞う怪物、その腕から伸びた触手が鋭く伸びて、逃げ惑う一般人の背中を貫いた。
「刺さったら終わり、中で菌糸みてぇに広がってぐっちゃぐちゃよ」
その言葉通り、突き刺さった触手は貫かれた男の体内で無数に枝分かれして広がり、臓器という臓器を貫き、ぐちゃぐちゃに潰していった。
「うーわ、グッロいなぁこれ……」
自分で為したことだが、男は引いたような目で死体を眺めた。
「ま、美味しく頂くからさ。食事ってことで許してくれよ?」
体のあちこちから触手の先端が飛び出している死体。それは急速に干からびて薄っぺらくなった。
「んー、うめうめ。これよ、これ~! 人間辞めた甲斐、あるなぁ~」
しみじみと言う男。その背後に、一人の男が現れ立った。
「人間辞めたって言ったよな?」
「んー? そうだな、多分言った。覚えてねぇけどなぁ」
二人の男はお互いの姿を認め、視線を交わす。
「じゃあ、人権はねえからぶっ殺して良いな」
駆ける男。その手に握られた手斧が赤い怪物に向けて振り上げられる。
「お~、ひっでぇこと言うなぁ。一応、戸籍とかあるんだけどな~?」
ぐちゃり。手斧は筋肉の体を潰しながら進み、赤い男の肩辺りを深く切り裂いた。だが、赤い男は怯んだ様子もない。
「……黙れ、怪物が」
振り下ろされる手斧。それを持つ手に赤い触手が絡まり、手斧を空中で止めた。その間に、手斧が付けた傷は完全に再生している。
「怪物って、失礼だな~? 俺にはしっかりと理性と知性があるんだわ。実際、俺のこの体も科学と魔術の賜物って訳よ」
「知ったこっちゃねぇ」
手に巻き付いた触手はぐにゃりと動き、手斧を絡め取った。しかし、男はそれに動じずにそのまま赤い男の懐へと潜り込み、いつの間にか手の中に戻っていた手斧を全力で振りかぶった。
「うぉッ、すんごい抉れちゃったなこれ」
手斧は赤い男の胸部から腹部を凄まじい勢いで抉り取り、大きな傷跡を付けた。まるで竜の爪で引っかかれたように抉れたそれを見ても、男は焦らない。
「んー、耐久性に問題ありか~? 流石に斬撃に対する耐性はもうちょっと無いとダメだろうなぁ」
「……頭か? 頭潰しゃぁ、死ぬか?」
うんうんと悩んでいる怪物。無防備なその頭に容赦の無い手斧が叩き付けられた。
「これで、どうだ……?」
そのまま胴体も切り裂き、何度も手斧を叩きつけ、赤い男の体はボロボロの見るも無残な姿に変わった。
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