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第18話「感動したら感知スキル覚えてdisられた」

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 僕がむずかしそうな顔をしていると、モンブランが話しかけて来た……

『どうしたの?難しそうな顔して?悩むなら全部にしちゃえば?そんなに難しくないし!でも、魔法が覚えられるかは適性があればだったかな?あれ……今すぐ必要なんだっけ?だったら覚えるのはどれも無理か!』


「まぁそれもあるんだけどね。まぁこの先へ行く方法はそのうちでも良いんだ。何と無く奥があるんだって思ったら……行きたくなっただけだし」

 僕はこの先の事を気にしつつも、モンブランに簡潔に説明した。

 まぁ、難しい顔してたのは……なんというか……

 モンブランが居たところには精霊が居なかったって話だ……だが、さっきは何処にでも居るって言ってたから、僕は色々と考えてしまった。


「どう言う理由であそこには居なかったのかな?ってさ……」


『ああ~!!あの辺りは既に魔の森に浸食されて、多くの木が魔物になってしまっていたのよ。意識が混濁して話もできない状況だったの……周囲の木を私が護るには力がたらなくて……』


 何処となく自分の所為にしているが、多分そうでは無いと思う……

 あの場所を自分の目で見た僕はそう言える自信があった。


『雨が降れば水の精霊がはしゃいで、風が吹けば風の精霊が踊るけど、魔の森は魔の領域だから……精霊が現れても、穢れに飲まれてそのうち言葉も交わせなくなっちゃうの……』


「木を護るように精霊も守ることはできなかったのかい?」


『精霊はあるがままを受け入れる話をしたじゃない?だから私が行う護る結界を受け入れないの……相手が受け入れないと私の守護の効果は無いわ……』


「でも、周りの木々は護れたんだろ?」


『ええ……護ったわ。でもね、穢れは土も水も光も穢すのよ。私が結界で護っても限度はあるわ……私が届く範囲でしか護れないの。伸ばした根で……枝で……葉で……彼等は結界の外の土や水、光から穢れを吸い上げてしまうのよ……樹木だけに』

モンブランは哀しそうな表情をして、その時を思い出す様に語っている……

『中に入ってしまった穢れは、あるがままを受け入れる私達には、もうどうしようも出来ないわ……。あそこの周辺の木々は既に意識が混濁している木と、穢れに蝕まれている樹木だけよ。長い年月で穢れを吸い込みすぎたの』

 モンブランはそう言って、聖樹と精霊の説明を続ける……

 聖樹は世界の因果をあるがままを受け入れる……力の限り周囲に守護の加護を張るのが聖樹たる由縁なのだから。

 そして周りの侵食が進んでも、自身は自分の結界で護られる……

 聖樹は存在意義の為、生きる者を護る加護を張る……それが聖樹の役目だと言う。


『私達が、いずれ廻って再度逢えることを願って……。矛盾してると言えば矛盾してるわよね。だからこそ聖樹は(気まぐれ)なんじゃ無いかしら?』


「もし、今モンブランが言った『あるがままを受け入れない場合』は、聖樹や精霊はどうなるんだい?」


『聖樹で無くなるわ……円環に戻れなくなるの。聖樹として生まれて聖樹として死ぬ……そしてまた聖樹として生まれ変わる。記憶を引き継ぎながら苗木から聖樹となる輪から弾き出されて、しまう。そして……この世界を虚い歩く者になるわ』


 モンブランは僕を真っ直ぐ見ながら、その話をする……

 非常に哀しそうな目で、まるでその事を知っている様な口ぶりだ。


『精霊も同じよ、精霊として還れなくなる。そして同じように虚ろい歩くことになるわ……いつ迄かはわからないし、その後どうなるかも分からない』


 モンブランは、言葉を濁しながらも話を続ける……


『私は未だかつて見た事がないけど……遥かに遠い過去にそんな者がいた事は……聞いた事があるわ』


「何かごめん……嫌なこと聞いちゃったみたいで……答えてくれてありがとう。これもあるがままの受け入れだとしても、答えてくれたことに感謝してる」

 僕はモンブランへ咄嗟に謝っていた……

 精霊も人も同じだ……苦しみを与えるべきでは無い……そう思ったのだ。

『こんな話をする日が来るとは思わなかった!不思議ねヒロは……今まで誰にも聞かれもしないし、私自身聴かれるまで語ろうとも思わなかったわ』


 永遠と思われる時間トキを、穢れからひとりで護り、壊れていく樹々や精霊を『見守ってきた』のだと強く感じた。

 周りの木々は護られているが、成長の過程で守護範囲から出てしまい穢れで壊れて行く。

 自分自身で行う成長なのだ……彼女は責められないし、彼女達聖樹のあり方を変えることはできない。

 多分だが、自分自身で耐えられなくなると、気まぐれが起きるのだろう……

 聖樹のあり方を壊さない為にそうしなければ、彼女達はいつか世界の『あるがままを受け入れず』助けてしまうはずだ。

 助ける事が存在意義の長命種なのだから……助けない筈が無い。

 そしてそんな彼女と、精霊を強く感じようとしたとき不思議な事が起きた。

 頭の中にマークが浮かんだのだ……

 大きな真っ黒い空間に、白い◎が浮かび、近くには一回り小さい青⚪︎が無数に動いている。

 見た感じ◎が僕で青⚪︎がモンブランや精霊なのでは無いだろうか?……その事をモンブランに聴くと…

『うわー何か……インチキだわ!!アイスの魔法も1発成功だったし……魔法とかスキルの理解が異常に早いよね。今感知スキル取るとか……ひくわー。絶対頭がどうにかなってる!多分中身は大型魔石がいっぱい詰まってるんじゃ無い?』


『世界初の魔石人間の誕生だ~』


『マセ筋冒険者の誕生だ~』


『大きな魔石の無駄遣い~……持ってても人間じゃ勿体無い~』


『脳が魔石って実は人間じゃなかったんだ~早く人間になりたい!って願ってるの?』


 かなり引き気味で見られている。

 水の精霊はモンブランのマネをする始末で……仲が宜しくて何よりだ。

 これは探感知スキルだったらしい話に感動した事も伝えたはずだが、モンブランはあるがままのイジリを発動しているようだ……水の妖精複数を巻き込みながら。


 精霊組を放置して感知スキルを使ってみる……すると使い方は意外と簡単だった。

 周囲に何が居るか集中するだけで自分(白)、他(青)、敵(赤)が判別できるようなので、取り敢えず自分の周りの状況を調べてみると……

 目の前の壁に沿って三つの赤◉が壁に重なる様に動かず、その更に奥には小さい赤◉が微妙に蠢いている。

 水の精霊が言っていたように、探知するとここが最奥部では無いのが一目瞭然だった。

 壁スライムと水の精霊が言っていたのは、周辺の石を巻き込んだスライムが壁の隙間にまるで擬態している様に挟まった状態だった。

 岩に擬態したスライムのようなのが、3匹入り口を埋めて石壁のような状態になっている。

 ナイフで刺すにも、石のあわせ目からは核が分からない……そして隙間にも刃が通りそうに無い。

 取り敢えず探知でスライムがいる場所を蹴っ飛ばしてみるが、どういう風に周りにくっつき強度を出しているのか分からないが『ゴッ』と音を立てて気持ちたわむものの、ビクともしない。

 周りごと崩せるような状態でも無く、蹴っ飛ばされて襲ってくる訳でも無い様だ。

 水場に戻ると水の精霊と話してたモンブランが

『見つけたんだね!あのスライムは、門の様に入り口を塞いでるから奥に進めないんでしょう?』

 僕はおもむろに、リュックの中からチャームを取り出してスライムが通せんぼをしている壁の方に向かう。

 チャームの効果は中級までのモンスターを遠ざける効果だ。

 使い方は何も退ける為だけじゃない……上手く使えば、岩の様に擬態したスライムだって問題ない。

 このチャームは中級種までの魔物を退けるんだから!
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