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第9話「閑話 暗躍人マッコリー二」
しおりを挟むマッコリーニの買取査定に関しては、それが良いことか悪い事かは僕達では判断がつかない。
そもそも、ここは異世界なので、元の基準に金額換算したところで『その通りになど』行くはずがないからだ。
因みに生活費は、村や街で物価がそれなりに異なるので一概にどうとは言えないらしい。
鉄道もないし、輸送手段はマッコリーニを見ればわかる『馬車』だ。
LV1の僕らでは、魔物もろくに倒せないだろう。
だから当面の生活費も困る次第だったので、金貨の収入は大助かりだ。
1人4枚になる様に金貨を配り、余る2枚は結菜と美香に渡す。
だが、2人は凄い勢いで首を横に振っていた。
何かを手伝ったわけでもなく、5万円貰えれば確かに僕でもそうもなる。
僕は、女の人は男に比べて『色々と入りよう』だと思ったのだが……
断る彼女達にエクシアは……
「貰える物は貰っておきな、『討伐部位の儲け払い』って言葉がコッチにはあるんだよ!」
の一言に、2人は渋々受け取っていた。
そもそも、彼女達のスキルは『薬師』だ……寧ろこれから迷惑掛けるのは僕の方だから、先行投資と思ってくれればいい。
魔物除けのチャームの作り置きがなくなったので、念の為作って置こうとキャンプで作業を始めると金貨を貰ったお礼にお手伝いと言う事だったので、僕は3人に混ざってもらう。
試しに異世界組4人でハーバリウムを1つずつ作ってみたが、チャームに仕上がったのは僕が作った1つだけで、森の中でエクシアに言われた事は合っていた。
皆が作った場合は
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハーバリウム (異世界製)
異世界の花及びパラフィンで造られた鑑賞用の小物
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と言う普通の鑑賞用の小物になる。
出来栄えを3人に知らせると、手伝いさえ出来ない事にとてもガッカリしていた。
折角一生懸命作ったのに悪いが、そうまの作成した物をバラして再加工したらどうなるか試した所、ちゃんとしたチャームが出来上がった。
この世界ではスキル依存で造る事が重要らしい。
しかしそうまは、頑張っただけに複雑な表情だった。
女性陣が作ったのは、元の世界の思い出として、そのまま持っていて貰う事にした。
美香が特にそうまのハーバリウムをバラしてる時に哀しそうな顔をしてたので……
「折角自分で作った物だし、良ければ向こうの世界の思い出に持っていていいよ?」
と言ったら喜んでいたので、結菜にもそのままバラさずに持っていて貰った。
異世界最初の夜は、冒険者ではまだ無い僕等は武器も満足に扱えないので『居ても足を引っ張る』と言う事で、僕達はこの旅の間は見張り番はしない事になった。
そんなこんなで一時はどうなることかと思ったが、明日から本格的にこの世界で生き抜く修行が始まる…。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇し
閑話 「マッコリーニの封書」
パーム元気にやっていますか?今回は本当に焦る事が多い遠征です。
今は街の3つ手前の「ロックバード」の村でこの手紙を認めており、この手紙を読む頃には街にはあと数日と言った距離でしょうか。
今回の我が商団の旅は、私達のホーム「ジェムズマイン」から幾つかの村を経由し、農作物を買い付けつつ、最終的には港街の一つ「シェルビーチ」まで行く予定は話しました。
期間にして往復約26日の旅です。パームには何時も何時も心配をかけますね。
娘共々、今は笑い話が絶えない馬車の旅です。
そうそう、貴女の自慢の娘レイカはすごく元気になりましたよ!貴女に今すぐ見せてあげたいぐらいです。
体力的に厳しい旅になると思われたのですが、娘の最後の頼み『海が見たい』とあれば父として聴かずにはおれません。
ですが!喜んで下さい。
娘の体調は出る時より遥かに良くなり、血色も良くなりました!
これも全て旅の間に出会った不思議な4人『2人が男性2人が女性です』の旅人のお陰です。
とても不思議な格好をして珍しい物を持ち、凄く娘の体調を気遣ってくれるのです。
不思議な事に、中の1人の女性が娘の手を取り脈を見たかと思うと次は目玉を見たり、口を開けさせたり、背中に耳を付けてみたり…
その後何故か娘が食べるべき物を私達に言うのです。
魔法の類や呪いの類でもないので初めは半信半疑でしたが、2日を待たずして娘が元気になって話しかけてくるのです。
「お父様!なんか凄く体が軽く調子が良いのです。目眩もなくなり体の重い感じも無くなってしまいました。」
と……私は「平和と癒しの神 ポッポ様の使い」かと思う位に感謝してもしきれません。
おっと!ついつい娘の話になると仕事の報告から脱線してしまいます。
でも、それだけ嬉しいと言う事ですね。
娘は毎日外を走り回るぐらいに回復したのですから!
今回は、街で有名な個人ギルドのファイアフォックスに護衛依頼が通り、ジェムズマインの街営ギルドに「お願い」した甲斐がありました。
街営ギルドは国家ギルドの管轄で、ファイアフォックスの様な「許可申請」を出したギルドの街単位の元締めだと言うのは前も言いましたね。
あの街では銀級ギルドも人気が高く、最悪前回の遠征でお願いした「番犬」のギルドにお願いするしか無いかと思った位です。
只、あそこのギルドは銅級でメンバーの素行も悪く…前回の休憩する度の「勉強代」請求の件もあるので、現状に内心ほっとしています。
路程も長く、獰猛なフォレストウルフも多く何度も戦闘になるため、なんとか「お願い」でファイアフォックスの紅蓮のエクシアさんに同行をお願いしたかったのです。
流石、大店「氷華屋」さんの「技」は素晴らしいです。
大店のフランさんに言われた通り、冒険者ギルドに「お願い」でした寄付の金額より、ファイアフォックスの皆さんが狩る魔物の討伐部位の売却益だけで、寄付で費やした金額の元どころか倍以上の売り上げになっています。
その金額もあり、多くの商品をシェルビーチで買い付けることができました。
帰り道も、フォレストウルフの毛皮や牙だけで無く、ホーンラビットの角や毛皮など収穫は山盛りです。
ホーンラビットの毛皮などは、これから冬にかけて飛ぶように売れるでしょう。
これらを私たちの店で!大量の毛皮を販売できるのです。
ファイアフォックス様様ですね。
しかしながら良いことだけではなく、問題も有りました。
あの例の商団「黒落花生」の刺客に行きの旅程で襲われたのです。
娘を嫁に寄越せと言う用件を、突っぱねた腹いせでしょう。
刺客は全て、エクシアさんとその仲間が捕縛して衛兵に突き出しましたし、裏も取れたので近いうちにあの商団は取り潰しになるとの事です。
途中の村にある商人ギルドで確認を取ったので間違い無いでしょう。
これで娘を狙うあの醜い狸親父と馬鹿息子が居なくなると思うと……嬉しいあまり涙が出てきます。
それに娘に見合う伴侶が探せると思うと感無量です。
文頭で書きましたが、旅は順調なのでもう暫くで街に着くとは思うのですが着く前にパームにお願いが有るのです。
街一番の食事処「踊るホーンラビット亭」の宴会席の予約をお願いしたいのです。
到着した翌日に宴会をお願いしたいので、その旨を私の幼馴染の支配人「ビラッツさん」に伝えて欲しいのです。
一番上等な食事を「ファイアフォックス」の皆さんと、娘を健康にして助けてくれた「不思議な4人の冒険者」に振る舞いたいのです。
私の勘が正しければ多分ですが、今後「ファイアフォックス」のギルドは我が商団と手を結んで定期的な遠征と販路拡大を共にしてくれるはずです。
そして不思議な冒険者の4人は、あのファイアフォックスの紅蓮のエクシアさんが嬉々として大喜びするぐらい、とんでもない冒険者です。
その1人は永く失われた「錬金術」の使い手でしょう。(4人がファイアフォックスに冒険者登録する事を聴き耳を立てました。)
只、この事は「知っていてはならない」事です。
おくびにも出さず表情さえ変えてはいけません。
あくまで娘を健康にしてくれた「不思議な冒険者4人」と、今回娘の願いを助けてくれた「ギルド ファイアフォックス」の皆様と認識してください。
4名の冒険者様とエクシアさんの出会いが偶然である様に、私とエクシアさんのこの出会いは「偶然」なのです。
エクシアさんから「お話」があるまでは、私共が知っている事は「誰にも知られてはいけない」のです。
それでは、体調に充分気をつけて宴会の準備をよろしくお願い致します。
追伸、
今回の遠征では錬金術師様からとんでもない物を手に入れました。
我が商団きっての大商いでしたがコレは家宝とも言えるでしょう…この事は口が裂けても言わぬ様に。
そして読んだ後「必ずこの手紙は燃やして」下さい。
頼みましたよ。
尚、同封した長細い袋状のものはギザギザ部分から縦に裂けますので、それをエール用コップ7分目の冷えた水に溶かして呑んでください。
中身は粉状で、例の錬金術師様が娘の為に呑ませてくれた秘薬です。
妻の調子も娘と同じで、日差しに暫く当たるとフラつき倒れる旨を話したら頂けました。
私も飲みましたが、とてもさっぱりとして味わった事の無い程の美味です。
夏の暑い日、ふらついた時に飲むと効果的との事です。
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