つがいなんて冗談じゃない

ちか

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かつての神子 ギルフォードside

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 ある日突然ミオ様が倒れられた。最近、具合が悪そうなのだろうか?と思っていた矢先だった。

 ミオ様が倒れられてから数日後、お見舞いに部屋を訪れた。ミオ様はベッドに静かに横になっていた。顔が見たいと近づいたところ、なんとミオ様が透けているように見えた。

 なんだ?目の錯覚か?

 瞬きをし、目を擦って見たが、どう見てもミオ様は透けている。

 なんだこれは?どうしてこんなことに?

 慌ててミオ様に触れると、先ほどまで不安定だったミオ様の存在がはっきりとした。

 見間違いだと思いたかった。だが、事実は違う。

 私は急いで神官長に会いに行くことにした。神殿には一番、聖女に関する文献が残り、詳しいはずだ。

 神殿へと急ぎ訪れた私は、先触れも出さなかったことを詫び、すぐに神官長への面会を求めた。

 神子様に関することと伝えたためか、幸いすぐに面会することが出来た。

「ようこそお越しくださいました。王弟殿下に於かれましては……」

「すまない、神官長。そのような挨拶は省略させてもらう。突然の訪問、非礼は詫びるがすぐに本題に入らせてくれ。ことは急を要する。神子様のことについて聞きに来た。」

「神子様に関することで急用とはいかがされたのでしょうか?」

「神官長、神子様の体が透けて見えた」

「なっ?!」

「最近神子様は、体調を崩されていた。最初は、いきなり生活環境が変わったため疲れが出始めたのではと思っていたのだが、体が透けていたのだ」

「……っ!わかりました。ですが、私の方でもそのようなことは聞いたことがありません。少なくとも前回お越しいただいた神子様が透けたという話は聞いていません。ですので、過去の神子様に関する文献をもう一度調べてみます。」

「あぁ、悪いが出来るだけ早く頼む」

 そう言って私は神殿を後にした。

 数日後、神官長から連絡があった。神子様に関する大事な話なので直接会って話したいと言うのですぐに時間を取り合いに行った。

 すると神官長から衝撃的な話を聞かされた。

「前回の神子様の時は問題なかったので、すっかり忘れられていたある伝承があったのです」

「その伝承とは?」


 何百年もの昔、かつて不思議な力を持つ少女が突然ある村に現れたという。少女は今まで見たことない服装をしており、村人は訝しんだが、哀れにも思って村に置いてやることにした。村で暮らす少女は次第に村に馴染み、その年は豊作になったらしい。またある日、大怪我を負った村人がいたが、その少女が触れたら怪我が治ったとか。本当か嘘か分からないが様々な奇跡の話があったという。しかし、ある日突然少女の体が透けてふっと消えてしまったらしい。

 それから時が経ち、また不思議な少女が現れた。その時は、少女はそこの村人と恋仲になり、結婚し子供を産んだという。その少女は消えることなく、その地で生涯を終えた。

 またある時は、この話を信じた時の権力者により、不思議な力を持つ少女が現れたと聞くとすぐに伴侶として求めた。初夜まで無事に済み、少女が消えることはなかったが、凶作が続き次第に国は荒れ滅んだという。少女の行方は誰も知らず、魔女が国を滅ぼしたと人々は口にしたという。

 これら様々な伝承や記録から、この不思議な少女はいつしか神子様と呼ばれるようになり、神子様が幸せなら、国は潤い、不幸なら国は滅ぶ。神子様はどこから来るか未だ分からないが、神子様が現れた国の者との交わりがないといつか消えてしまうということがわかっているのだという。だからその二つは記録とともに口伝えでも残していたという。

 しかし、前回の神子様は交わりを好まれ、常に見目麗しい男性を側におき、多くの男性にご寵愛を授けていたとされていたという。そのため、神子様は交わりがないと消えてしまうという口伝が途絶えてしまったらしい。
 
 「つまり、一つだけ神子様にやっていただかなくてはいけないことがあります。それはこの国のものとの交わりです。神子様はこちらの異性と交わらなければ消えてしまいます。おそらく神子様の体にこちらの生体エネルギーを取り込まなければいけないのだと思います。そうしなければ、神子様は消えてしまうのです」

 その話を聞いて神子様が透けてしまった原因とそのための対策がわかったことに安堵を覚えると共に、このままでは神子様が消えてしまうということに血の気が引き、足元が崩れてしまうような感覚がした。

 早くなんとかしなければ私の番が消えてしまう。

 私は急ぎ神殿を出て、屋敷にいる神子様の元へと向かった。そして神子様へこのことをすぐ様伝えた。

 この話を聞けばすぐに神子様は番である私に交わって欲しいと願ってくださるそう思っていた。

 しかし、神子様の反応は私の想像したものと違っていた。
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