つがいなんて冗談じゃない

ちか

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決めるのは

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 こんな状況でお水どころではない。わたしは急いで自分の部屋に戻って頭から布団を被った。

 

 

 

 

 

 あの時聞いた言葉がどんどん頭を占めていく。


 あぁそうか。そうだ。わたしが悪いんだ。わたしが我儘なんだ。

 住むところも服も食事も困らないのに。生かさせてもらっているのに。なんて贅沢なんだろう。悲劇のヒロインぶって。バカみたい。

 この環境をありがたいと思わないと。生きてることに感謝しなきゃいけないのに。

 番として神子としてだけ、ただそこあればいいだけ。

 それ以外のなんて必要とされていない。

 みんなの言うことを聞いてみんなが望むように動けばいいだけ。





 その日の夕食

「今日、ヴァーノン公爵令嬢が訪問されたそうですね。何か嫌な事は言われませんでしたか?」

「いいえ、彼女にはとてもを教えていただいただけです」

「そうですか。彼女と仲良くなったんですね。良かった。彼女はかつて私の婚約者候補筆頭だったんです。彼女はとても優秀でいい人だったんですけれど、私が番を諦めきれなくて、結局婚約を結ばなかったんです。それでも彼女は恨み言一つ言わないで受け入れてくれたんです。彼女と仲良くなったくれてとても嬉しいです。何か困ったことがあったら彼女に頼るといいでしょう。きっと女性同士にしかわからない事もあるでしょうから。彼女はミオ様の力になってくださるでしょう」

「えぇ、わかりました」

「それと明日、観劇を観にいきましょう。今話題の人気の舞台のチケットが手に入ったので」

「えぇ、わかりました」

 翌日、約束通り観劇を見に行った。馬車の中では相変わらず腰に手を当てられ密着させられたがなんとか我慢した。

 話題の舞台というだけあって多くの人が来ていた。座席は特別仕様のボックス席のようだった。観劇中も肩に手を回されたりして内容はちっとも頭に入って来なかった。ただ観ていただけだった。けれど彼に「おもしろかったですね」と訊かれ「はい」と答えた。

 観劇の帰り道、馬車の窓からふととあるカップルが目に入った。
 あーあの人たちも番なのかな?すごく幸せそう。そう思って見ていたら急に男性の方が急に挙動不審になった。かと思えば今まで優しく肩を抱いていた女性を放置していきなり駆け出した。そして別の女性の前で跪き、キスをしていた。
 きっとあれが彼の番でそして求婚したのだ。取り残された女性はその様を呆然と見ていた。彼女のお腹は大きい。とても悲しいものを見てしまった。

 あの後、例の男性は求婚した女性とどこかに行ってしまった。取り残された彼女は近くにいた知り合いらしい女性に支えられながらその場を後にしていた。

 なんなの、あんなのが番なの?

 真実の愛なの?

 あんなに傷付けて、お腹に子供までいるのに今までの愛情全部なくしてしまえるものなの?

 怖い

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