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17話
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ルッツに手伝ってもらい、急いで身支度を整えて客間へと向かった。
客間の大きなベッドには彼が眠っていた。彼も身綺麗にしてもらったようだ。先ほどのボロボロの服とは違い、新しい服を着ており体も拭いてもらったようだ。そして医者に診てもらったところ、特に大した怪我はないが、栄養失調気味だと言われたようだ。起きたら何か食べさせて下さいとのことだ。
あとは彼が目覚めるだけだ。
早く目覚めないかな。彼と話がしてみたいな。
ベッドのそばに椅子を寄せ彼が目覚めるのを待っていたが、先ほどの疲れが出たらしく、ついうとうととしてしまった。するといつ目覚めるかわからないため、ルッツにもう部屋に戻ろうと言われてしまった。
半分眠っているような状態でルッツに支えられながら退出しようとしたら、ベッドからうめき声が聞こえた。俺は先ほどの眠気はどこへやら、急いでベッドへと駆け寄った。
ベッドをのぞきこむと、ゆるゆると彼のまぶたが開いた。ゆっくりと開かれたまぶたからは綺麗な金色の目が現れた。少しずつ焦点が合い、状況を把握しようと満月のような目がキョロキョロと辺りを見回す。そしてその目が俺を捉え、大きく見開いた。
彼は俺に気づくとすぐに俺から距離を取ろうと上半身を起こし、ベッドの上で後ずさった。しかし、急に起き上がったせいか、めまいを起こしたらしく頭を抱え、倒れそうになった上半身を片手をベッドについて支えた。
俺はその様子に慌てて声をかけた。
「大丈夫?驚かせてごめんなさい。えっと、お医者さん呼ぶからちょっと待ってて」
急いでルッツにまたお医者さんを呼んでもらおうとしたら
「いい、大丈夫だ。ただのめまいだ」
「でも……」
「大丈夫だ。急に動いたせいだから」
「……わかった」
「ふぅ……それでここはどこでしょうか?俺は一体どうしてここにいるのでしょうか?」
少し待つと目眩がおさまったのか、彼が質問してきた。
「えっと……」
「ここはヴァイツゼッカー公爵家です」
俺が答えようとすると先ほどから俺を庇うように前に立つルッツが答えた。
「ヴァイツゼッカー公爵家……」
「覚えておられませんか?先ほど、街でディートリヒ様が暴漢に襲われた際、あなたが体当たりをして助けて下ったのですが」
「……あぁ、そうだったな」
「あなたが助けてくれたお礼にとディートリヒ様がこのお屋敷に運んだのです。元気になられたのならもうお帰りになりますか」
そう言うルッツの表情は笑っているのになんだか黒い……
「ルッツ!まだ目覚めたばかりの彼にそんな……それにお礼だってまだ……」
「ですが、ディートリヒ様……」
「あのっ、助けてくれてありがとうございました」
俺はそう言って頭を下げた。
「ディートリヒ様!そのような振る舞いをしてはいけません!」
「いいんだよ。俺が助けられたんだから俺がお礼を言いたかったんだ」
プッ……
「あははは」
そんな俺たちのやり取りを見て彼は笑った。
客間の大きなベッドには彼が眠っていた。彼も身綺麗にしてもらったようだ。先ほどのボロボロの服とは違い、新しい服を着ており体も拭いてもらったようだ。そして医者に診てもらったところ、特に大した怪我はないが、栄養失調気味だと言われたようだ。起きたら何か食べさせて下さいとのことだ。
あとは彼が目覚めるだけだ。
早く目覚めないかな。彼と話がしてみたいな。
ベッドのそばに椅子を寄せ彼が目覚めるのを待っていたが、先ほどの疲れが出たらしく、ついうとうととしてしまった。するといつ目覚めるかわからないため、ルッツにもう部屋に戻ろうと言われてしまった。
半分眠っているような状態でルッツに支えられながら退出しようとしたら、ベッドからうめき声が聞こえた。俺は先ほどの眠気はどこへやら、急いでベッドへと駆け寄った。
ベッドをのぞきこむと、ゆるゆると彼のまぶたが開いた。ゆっくりと開かれたまぶたからは綺麗な金色の目が現れた。少しずつ焦点が合い、状況を把握しようと満月のような目がキョロキョロと辺りを見回す。そしてその目が俺を捉え、大きく見開いた。
彼は俺に気づくとすぐに俺から距離を取ろうと上半身を起こし、ベッドの上で後ずさった。しかし、急に起き上がったせいか、めまいを起こしたらしく頭を抱え、倒れそうになった上半身を片手をベッドについて支えた。
俺はその様子に慌てて声をかけた。
「大丈夫?驚かせてごめんなさい。えっと、お医者さん呼ぶからちょっと待ってて」
急いでルッツにまたお医者さんを呼んでもらおうとしたら
「いい、大丈夫だ。ただのめまいだ」
「でも……」
「大丈夫だ。急に動いたせいだから」
「……わかった」
「ふぅ……それでここはどこでしょうか?俺は一体どうしてここにいるのでしょうか?」
少し待つと目眩がおさまったのか、彼が質問してきた。
「えっと……」
「ここはヴァイツゼッカー公爵家です」
俺が答えようとすると先ほどから俺を庇うように前に立つルッツが答えた。
「ヴァイツゼッカー公爵家……」
「覚えておられませんか?先ほど、街でディートリヒ様が暴漢に襲われた際、あなたが体当たりをして助けて下ったのですが」
「……あぁ、そうだったな」
「あなたが助けてくれたお礼にとディートリヒ様がこのお屋敷に運んだのです。元気になられたのならもうお帰りになりますか」
そう言うルッツの表情は笑っているのになんだか黒い……
「ルッツ!まだ目覚めたばかりの彼にそんな……それにお礼だってまだ……」
「ですが、ディートリヒ様……」
「あのっ、助けてくれてありがとうございました」
俺はそう言って頭を下げた。
「ディートリヒ様!そのような振る舞いをしてはいけません!」
「いいんだよ。俺が助けられたんだから俺がお礼を言いたかったんだ」
プッ……
「あははは」
そんな俺たちのやり取りを見て彼は笑った。
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