当て馬悪役令息に転生したはずが何故か俺がヒロインに狙われています

ちか

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父side

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「……旦那様、報告は以上でございます」

 ゴランとオイゲンそれぞれが報告を終えた。

「そうか、わかった。それでマティス、お前は今の報告に関して何か補足はあるか?」

「この度はディートリヒ様をお守り出来ず申し訳ありませんでした。あのようなものが乱入せずとも私自らお救いするつもりでした」

「うむ、で他には?」

「他?いえ、特には事の経緯や犯人の特徴などは先程ゴラン殿が申し上げた事通りですし、あの者の対応については父が申し上げた通りですので他にはありません」

「そうか、ではマティスは下がってよい。ゴランとオイゲンはこれからの対策についての話があるから残ってくれ」

「承知いたしました。では失礼します」

 パタンッ……

「ふぅー」

「旦那様、この度は愚息が大変申し訳ありませんでした。申開きはございません。如何様な処分でも謹んでお受けします」

 そう言ってマティスが執務室を出て行った途端、頭を下げた。

「頭を上げよ、オイゲン。お前は悪くない」

「いえ、旦那様を始め、ヴァイツゼッカー家の皆様には合わせる顔がありません。特にディートリヒ様にはお詫びのしようもございません」

「お前のせいだけではない。厳しいことを言うようだが、おそらくああなってしまったのは元々の性質でもあるのだろう。それに今回は事前に把握していて手を出すなと命じたのは私だ。すまなかったな」

「いえ、旦那様に謝っていただくことなど何もございません。私の教育の至らなさがアレをあのようにしてしまったのでしょう。私如きの謝罪にお時間を割いてしまい申し訳ありませんでした」

「お前の気持ちはよくわかった。では、此度の件についての話をしようか。イライジャ、こちらへ」

 そう声をかけた途端、が姿を見せた。とは言ってもこの姿も本当の姿ではないのだろうが。

「はい。イライジャ罷り越しました」

「さて、イライジャよ、いくら計画のうちとはいえ、マリウスを殴り飛ばすのはやり過ぎではないか?そこまでの指示はしてなかったと思うが?」

「……」

「イライジャ」

「……ご心配には及びません。殴ったように見せかけて飛ばしただけです」

「本当か?」

「……怪しまれないように跡がつく程度です」

「はぁ、わかった。見た目は派手だったが対して怪我をしていないと言うことだな」

「……ディートリヒ様の腕を強く掴んで引きずったんだ」

「そうか…なら仕方ないか」

「それで、お前から見た他の二人はどうだった?」

「マティスは助けようとしてたが笑ってた。ルッツはまぁ何も出来てなかったが助けようとはしてた。」

「申し訳ございません!」

「オイゲンもういい。わかった。ではルッツは残しても問題ないか?」

「あぁ、小狡いところはあるが、臆病なだから視野が広い。裏切ることもないだろう」

「では、今回の従者はルッツで決まりだな。マリウスは候補であるとはいえ、従者にも関わらず、視野が狭く主人を危険に晒した。マティスは、今回外出先で主を危険に晒す計画を立て実行した。それがいかに拙く、成功しなかったとしても許されることではない」

「それに、普段の態度も酷かった」

「らしいな。報告は受けていたが……」

「重ね重ね……」

 オイゲンの度重なる謝罪を手で制す。

「それで、例の少年はどうだ?」

「あの後、軽く調べたけど大丈夫そうかな。あんな暮らしをしていても悪事に手を染めていないし、評判も悪くはない。ただ……」

「ただ?」

「出生までは掴めなかった」

「……そうか。ゴランは何か気づいたか?」

「いえ、特には」

「何か気になることがあったのではないか?どんな些細なことでも構わない。言ってみてくれ」

「いえ、はっきりしたことでなく強いて言うならばなのですが……あの者に対して人見知りのディートリヒ様があまり警戒していませんでした。今回の件は候補者を絞るための試験だったとはいえ、候補者はもちろんディートリヒ様にもそのことは知られていません。そのためディートリヒ様からしても暴漢に襲われたと言う恐怖、不安は本物でした。そこを助けられたのですから感謝して警戒心が緩むというのはあるでしょうが、初対面の人間にとても関心を寄せているようなそぶりが見受けられました」

「それは、ただ恩人への感謝といきなり倒れたから心配しているだけではないのか?」

「そうかもしれません。おかしなことを言って申し訳ありませんでした」

「いや、いい。先程のオイゲンの報告でも庇うように必死になって面倒を見るように頼んだようだしな。あの者に関しては様子見だな」





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