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8話

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 あの日以降、俺は少しずつ家族と交流するようになった。

 兄様達と遊んだり、勉強や剣の稽古を一緒にやったり、父様には褒められることも増えた。母様とは毎日手紙のやり取りをしている。

 そして改めて今世の家族は俺を愛して受け入れている事が分かり、心があったかくなった。

 今日は、最近一緒に遊ぶようになった妹のイリスと一緒だ。

 イリスももちろん性別は女性だが、まだ2歳なので、怖いとは感じない。けれど、イリスの乳母や使用人は女性だったので、今までは遠目からこっそり見守る程度だったのだ。それでもイリスはとってもかわいかった。

 先日の騒動からイリスとも少しずつ交流を持ちたいと様子を伺っていると、イリスは散歩の時間だったのか、庭に出ていた。声をかけるタイミングを見計らって後ろからついていくと乳母が目を離したすきに、イリスが転びそうになっていた。

 俺は乳母という苦手な女性が近くにいることも忘れ、無我夢中でイリスのそばに駆け寄った。それでもイリスの転倒を防ぐことが出来ず、イリスは痛みと驚きで号泣してしまった。イリスの泣き声に乳母は驚いて振り返り慌てていた。

 俺はそのままイリスを抱きしめて、頭をよしよししてあげた。エドガー兄様が俺にしてくれたように。

 イリスは突然現れ抱きしめた俺に驚いて一瞬涙が止まった。そしてそのまま暴れることなく、素直に俺に頭を撫でられて、涙は止まった。

 抱きしめ続けていて手を離すタイミングを見失った俺はどうしていいか分からず、少しの間そのままでいた。するとイリスは泣き疲れたのか、抱き合った温もりのせいか、うとうととし始め、力の抜けた体が俺に寄りかかって来た。

 俺はイリスを抱きしめたまま後ろに倒れてしまった。その時になってようやく乳母やそばにいた使用人が我にかえって、イリスに押し潰された俺を救出し、イリスもすりむいた膝の手当てのため屋敷へと連れて行かれた。

 結局ろくに会話も出来ないでこの日のイリスとの交流は終わってしまい、俺は残念に思いながら一日を終えた。

 次の日、今日はどうやってイリスと仲良くなろうかと考えていたら、ノック音が響いた。「どうぞ」と返事をすると、勢いよく扉から小さな影が突進してきた。

 その影を体全体で受け止めると、イリスだった。

 「でぃーにぃーしゃま、あしょぼ」

 かわいい。その一言だった。

 昨日の出来事で俺に興味を持ち、俺のことを聞き、こうして一緒に遊ぼうと誘いに来てくれたのだ。

 俺の答えは決まっていた。

 「もちろん」

 笑顔とともに。
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