18 / 39
8話
しおりを挟む
あの日以降、俺は少しずつ家族と交流するようになった。
兄様達と遊んだり、勉強や剣の稽古を一緒にやったり、父様には褒められることも増えた。母様とは毎日手紙のやり取りをしている。
そして改めて今世の家族は俺を愛して受け入れている事が分かり、心があったかくなった。
今日は、最近一緒に遊ぶようになった妹のイリスと一緒だ。
イリスももちろん性別は女性だが、まだ2歳なので、怖いとは感じない。けれど、イリスの乳母や使用人は女性だったので、今までは遠目からこっそり見守る程度だったのだ。それでもイリスはとってもかわいかった。
先日の騒動からイリスとも少しずつ交流を持ちたいと様子を伺っていると、イリスは散歩の時間だったのか、庭に出ていた。声をかけるタイミングを見計らって後ろからついていくと乳母が目を離したすきに、イリスが転びそうになっていた。
俺は乳母という苦手な女性が近くにいることも忘れ、無我夢中でイリスのそばに駆け寄った。それでもイリスの転倒を防ぐことが出来ず、イリスは痛みと驚きで号泣してしまった。イリスの泣き声に乳母は驚いて振り返り慌てていた。
俺はそのままイリスを抱きしめて、頭をよしよししてあげた。エドガー兄様が俺にしてくれたように。
イリスは突然現れ抱きしめた俺に驚いて一瞬涙が止まった。そしてそのまま暴れることなく、素直に俺に頭を撫でられて、涙は止まった。
抱きしめ続けていて手を離すタイミングを見失った俺はどうしていいか分からず、少しの間そのままでいた。するとイリスは泣き疲れたのか、抱き合った温もりのせいか、うとうととし始め、力の抜けた体が俺に寄りかかって来た。
俺はイリスを抱きしめたまま後ろに倒れてしまった。その時になってようやく乳母やそばにいた使用人が我にかえって、イリスに押し潰された俺を救出し、イリスもすりむいた膝の手当てのため屋敷へと連れて行かれた。
結局ろくに会話も出来ないでこの日のイリスとの交流は終わってしまい、俺は残念に思いながら一日を終えた。
次の日、今日はどうやってイリスと仲良くなろうかと考えていたら、ノック音が響いた。「どうぞ」と返事をすると、勢いよく扉から小さな影が突進してきた。
その影を体全体で受け止めると、イリスだった。
「でぃーにぃーしゃま、あしょぼ」
かわいい。その一言だった。
昨日の出来事で俺に興味を持ち、俺のことを聞き、こうして一緒に遊ぼうと誘いに来てくれたのだ。
俺の答えは決まっていた。
「もちろん」
笑顔とともに。
兄様達と遊んだり、勉強や剣の稽古を一緒にやったり、父様には褒められることも増えた。母様とは毎日手紙のやり取りをしている。
そして改めて今世の家族は俺を愛して受け入れている事が分かり、心があったかくなった。
今日は、最近一緒に遊ぶようになった妹のイリスと一緒だ。
イリスももちろん性別は女性だが、まだ2歳なので、怖いとは感じない。けれど、イリスの乳母や使用人は女性だったので、今までは遠目からこっそり見守る程度だったのだ。それでもイリスはとってもかわいかった。
先日の騒動からイリスとも少しずつ交流を持ちたいと様子を伺っていると、イリスは散歩の時間だったのか、庭に出ていた。声をかけるタイミングを見計らって後ろからついていくと乳母が目を離したすきに、イリスが転びそうになっていた。
俺は乳母という苦手な女性が近くにいることも忘れ、無我夢中でイリスのそばに駆け寄った。それでもイリスの転倒を防ぐことが出来ず、イリスは痛みと驚きで号泣してしまった。イリスの泣き声に乳母は驚いて振り返り慌てていた。
俺はそのままイリスを抱きしめて、頭をよしよししてあげた。エドガー兄様が俺にしてくれたように。
イリスは突然現れ抱きしめた俺に驚いて一瞬涙が止まった。そしてそのまま暴れることなく、素直に俺に頭を撫でられて、涙は止まった。
抱きしめ続けていて手を離すタイミングを見失った俺はどうしていいか分からず、少しの間そのままでいた。するとイリスは泣き疲れたのか、抱き合った温もりのせいか、うとうととし始め、力の抜けた体が俺に寄りかかって来た。
俺はイリスを抱きしめたまま後ろに倒れてしまった。その時になってようやく乳母やそばにいた使用人が我にかえって、イリスに押し潰された俺を救出し、イリスもすりむいた膝の手当てのため屋敷へと連れて行かれた。
結局ろくに会話も出来ないでこの日のイリスとの交流は終わってしまい、俺は残念に思いながら一日を終えた。
次の日、今日はどうやってイリスと仲良くなろうかと考えていたら、ノック音が響いた。「どうぞ」と返事をすると、勢いよく扉から小さな影が突進してきた。
その影を体全体で受け止めると、イリスだった。
「でぃーにぃーしゃま、あしょぼ」
かわいい。その一言だった。
昨日の出来事で俺に興味を持ち、俺のことを聞き、こうして一緒に遊ぼうと誘いに来てくれたのだ。
俺の答えは決まっていた。
「もちろん」
笑顔とともに。
51
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
ゲーム「3日間だけ生き延びろ!」の世界。~兄上お願いだからそんなに簡単に死なないで!~
野々宮なつの
BL
第二王子であるルーサーは、この世界が自分で作っていたゲーム「3日間だけ生き延びろ!」の世界だと気が付く。
兄が死ぬ度に繰り返す世界。脱出するためには、3日後にある立太子の儀式まで兄を守ること!それなのに何度も死ぬ兄。
ゲームを作ったのは自分だけど、ちょっと死に過ぎじゃないですかぁ⁉
腹違いの兄×弟
物語の設定上、何度も死にます。
※週1更新
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる