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そこで俺は母様に目を向けた。この中では母様に一番悲しい思いをさせた。いや、させ続けている。だから俺はこの勇気がなくなる前に少しでも前に進もうと思った。だから文字が書けるようになってから考えていたことを実行しようと思った。
震えを我慢しながら、母様に近づいた。
「かあさま、かなしいおもいさせてごめんなさい、かあさまのことすきなのにごめんなさい」
「!」
涙ぐみながら母上は言った。
「いいのよ。大丈夫」
「あのっ、おれ、さいきんじがかけるようになったのでおてがみかいていいですか?」
「えぇ、嬉しいわ。待ってる」
同じ屋敷に住んでいるが、俺のトラウマのせいで母様とはほぼ交流を持てなかった。
今日はどうにか頑張れたが、やっぱりまだ女性は怖い。だから母様と長い時間話すにはまだ俺には時間が必要だった。でも手紙でなら母様と交流が持てるのではと考えた。自分勝手かもしれないが、優しい母様にこれ以上悲しい思いをさせたくなかったから。
たくさん辛い思いをさせてしまっただろうに母様は俺を拒絶しなかった。俺の原因もわからない症状に対して理解しようと努め、俺の生活環境を整え、直接会わずとも俺のために色々してくれていることを成長するにつれ知った。
そんな母様に感謝を伝えるためにも必死で文字を覚えた。いつか「ありがとう」と手紙を書くために。
そうしてようやく実行に移せる日が来た。
手渡しが出来ればなおいいのだが、トラウマのせいでまだ出来ず、使用人に頼み母様に渡してもらった。
母様からの返事をドキドキそわそわしながら待っていたら、さっき出て行ったはずの使用人がかなり分厚い手紙を持って帰って来た。
「奥様からです」と渡されたそれの重量にびっくりしながら受け取って早速中身を見ると、手紙をもらって嬉しかったこと、何か困ってないか、悩みがあったら遠慮しないで相談すること、生まれた時とっても嬉しかったことなどたくさんの愛情に溢れた言葉がつづられていた。
あんなに分厚い手紙だったのあっという間に俺は読み終えてしまった。手紙には濡れた跡があった。
震えを我慢しながら、母様に近づいた。
「かあさま、かなしいおもいさせてごめんなさい、かあさまのことすきなのにごめんなさい」
「!」
涙ぐみながら母上は言った。
「いいのよ。大丈夫」
「あのっ、おれ、さいきんじがかけるようになったのでおてがみかいていいですか?」
「えぇ、嬉しいわ。待ってる」
同じ屋敷に住んでいるが、俺のトラウマのせいで母様とはほぼ交流を持てなかった。
今日はどうにか頑張れたが、やっぱりまだ女性は怖い。だから母様と長い時間話すにはまだ俺には時間が必要だった。でも手紙でなら母様と交流が持てるのではと考えた。自分勝手かもしれないが、優しい母様にこれ以上悲しい思いをさせたくなかったから。
たくさん辛い思いをさせてしまっただろうに母様は俺を拒絶しなかった。俺の原因もわからない症状に対して理解しようと努め、俺の生活環境を整え、直接会わずとも俺のために色々してくれていることを成長するにつれ知った。
そんな母様に感謝を伝えるためにも必死で文字を覚えた。いつか「ありがとう」と手紙を書くために。
そうしてようやく実行に移せる日が来た。
手渡しが出来ればなおいいのだが、トラウマのせいでまだ出来ず、使用人に頼み母様に渡してもらった。
母様からの返事をドキドキそわそわしながら待っていたら、さっき出て行ったはずの使用人がかなり分厚い手紙を持って帰って来た。
「奥様からです」と渡されたそれの重量にびっくりしながら受け取って早速中身を見ると、手紙をもらって嬉しかったこと、何か困ってないか、悩みがあったら遠慮しないで相談すること、生まれた時とっても嬉しかったことなどたくさんの愛情に溢れた言葉がつづられていた。
あんなに分厚い手紙だったのあっという間に俺は読み終えてしまった。手紙には濡れた跡があった。
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