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5話
しおりを挟むなぜあんなに泣いてしまったんだろうか。
生まれ変わってからもほとんど感情が動くことなんてなかったのに。
兄には悪いことしてしまった……俺のせいで怒られてしまった。しかも冤罪で。
冤罪の辛さは俺が一番知ってるのに。兄は何も悪くないのに。俺だってこんな子供がいたら君が悪いと思う。兄だってそう思っただろうし、だからあんなことしようとしたんだろう。なのに、咄嗟に俺を守って心配して怒ってくれるなんて……
なのに、俺が泣いてしまったせいで……
兄に謝らないと……
泣いてしまったせいか、申し訳ないと頭では考えつつも、この体のせいか、眠気には逆らえなかった。俺はそのまま眠ってしまった。
目が覚めるといつのまにか寝間着になっていた。いつのまにか着替えさせてくれたんだろう?それにカーテンまで閉めてくれるなんて。たくさん眠れた気がしたが、まだ外は明るかった。一、二時間の寝ただけだったのだろうかと思っていたら、ノック音が響き「ディートリヒ様、お目覚めでしょうか?」と声がかけられた。
使用人は声をかけた後、俺の返事を待たずに入って来る。基本俺はしゃべらないのでそれは最早暗黙の了解となっている。俺も余程のことがない限り入って来てもらって構わない。
「お目覚めですか?おはようございます。昨日はぐっすりとお眠りになられていましたからお腹がお空きでしょう?すぐにご用意いたしますね」
そう言いながら、部屋のカーテンを開けて俺の身支度を整え出す。
おはようございます?
えっ?もしかして俺はあれから夕飯も食べずに朝まで寝てしまったのか?道理でたくさん寝た気がするわけだ。
泣いてたくさん寝たせいか、なんだか頭がスッキリしている気がした。そのせいか何でもできるような気がむくむくと湧いて来た。まずさっそく兄に謝らないと思った。それからもう一つ……
この時間なら食堂にいるはずだと思い、食堂へと急いだ。俺は食堂でみんなで食べるのが緊張して出来なくていつも部屋で食事をとっていた。だからこの時間に食堂になんてほとんど行ったことはなかった。
俺が珍しく、突発的な行動をしたせいで、使用人は俺を止めることが出来なかった。「ディートリヒ様?!」と言う声が遠くから聞こえて来た気がしたが、気にせず食堂へと向かった。
食堂への扉を勢いよく開けると、扉の側にいた女性の使用人と目があった。それは俺が苦手な年齢層の女性だった。普段俺が行く場所はほとんど決まっていて、それらの場所には女性の使用人は配置されないようにされていた。けれど今日は俺が突発的な行動を取ってしまった為、人避けがされていなかった。俺は兄に謝ることで頭がいっぱいでそんな当たり前のことがすっかり抜け落ちていた。
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