僕に翼があったなら

まりの

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全てを一つに

完成したパズル

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 湿った感触が首筋を伝う。舐められてる……それと同時に胸を弄る指。
 ジンジンしてゾクゾクする。
 熱く体が火照っていくのと、頭が冷めて少しづつ記憶が蘇るのと……どっちも怖い。
 耳朶を食まれ、息が止まってぴくっと体が揺れる。そこ、だめっ。
「ふふ、ここ弱いんだ。可愛い」
 耳元で囁かれる声にまで反応してしまう。
「やっ!」
「嫌じゃ無いでしょう? ほら」
 するっと服の上から股を撫でられた。まだほんの少しだけど固さを持ち始めたのがわかる。怖くて震えてるのに、何で、何でこんな状態で元気になっちゃうとかありえないよ? ほんの少し触れただけでびりびりって電気が走るみたいになっちゃうの? 僕の体っておかしい?
 僕はこの手の感触を知ってる。魔法で嫌な事した見えない手。
 じゃあ、この人が……。
 魔法は冗談って言ってたけど、本当に使えるんだ。いやだ、怖い。いきなり痛い事しようとしたもの。
「震えてるね。何か思い出した?」
「……魔法で僕を動けなくしたり、触ったりした?」
「うん。覚えててくれたんだ。君をどうしても欲しかったから、お人形で我慢してたんだよ」
 全然悪びれた様子も無く言う。お人形……?
「でも全然違う。この蕩ける様な柔らかい肌……ずっと触ってたい」
 唇は胸を離れて少しづつ下に。くすぐったいとは違う甘く痺れるこのカンジ。せっかく冷めた頭にピンクの霞がかかっていくみたい。
「ん、や……あっ……」
 逃げたい。怖い。もっとして。気持ち良くして。駄目、この人じゃない。もういい、このまま身を任せてしまえば。
 鬩ぎ合う心の中で、一つの顔が鮮明に浮かんだ。
 赤い髪、青と金の瞳。羽根も嘴も全部全部大好き。
 ユシュアさん……ううん、匠君。
 大好きなのに。約束したのに、今まで思い出せなくてごめんなさい。
 駄目だよね、あなたでないと駄目なのに。
 逃げようと身を捩っても、両足はがっちり膝で押さえられてる。
「お願い、やめて……いや……」
「今更イヤっていっても無駄。もうやめてあげないって言ったよ」
 両手を持ち上げられてバンザイさせられると、どこからかあの足を縛ってた紐が現れた。生き物みたいに紐は僕の手首に巻きついて一絡げに拘束した。
「この紐には魔法がかかってるって言ったでしょ?」
「……なんで縛るの?」
「逃げないようにね」
 酷い! 気がつくと履いてたズボンも引き下げられて、下半身も丸出しになってる。恥ずかしいとかよりも、何かくやしい。
「前みたいに、いきなりなんてしないから。ゆっくり大事に可愛がってあげるから怖がらないで」
 手首を逃げられない様に縛ったり、押さえつけてるけど、手つきはとても優しくて、微かに見える顔も怖くない。でも……触れた下半身に布越しに猛ったものを感じる。僕を見て、僕を触って感じてるの?
 足をぐいっと広げられて、晒された恥ずかしい所。ひんやりした夜の風を感じたのも束の間、顔が近づいて来てびくっとした。
「まず気持ち良くしてあげるね」
 ふわりと微笑まれて、次の瞬間にはぱくっと咥えられてしまった。
「ひゃっ!?」
「ひっひゃくてはわひひ」
 えええ? あのっ、口に入れたまま喋らないで! えーん、小さくてごめんなさい。い、いやっ、そうじゃなくてっ! フィランさんのクールなイメージが……じゃなくって!
 舐めあげられて腰の奥がずくんってした。
「う、はっ……!」
 温かくて湿った柔らかい所に包まれて、出し入れされて段々と張りつめていくのがわかる。
 どうしよう、気持ちいい……。
「や……ああ…あんっ」
 イヤだと思っていても、裏返った声がねだるように出る。
 目を逸らすと外から月の光の差し込むバルコニー。
 あそこから逃げられたらいいのに。
 ああ、こんな僕でもまだ許してくれるかな?
 ユシュアさん。
 僕に翼があったなら、今すぐあなたの元に飛んで行けるのに。
 その胸に飛び込めるのに。どうして僕は本当の鳥じゃないんだろう、飛べないんだろう……。
 ベッドに縫い止められて、口で咥えられて善がってるなんて。こんな姿を見せられない。知られたくない。
 ぴちゃぴちゃってとてもいやらしい音が聞える。その音にすら、脇を撫でる手の感触にすら昂ぶっていく身体。
 執拗にいいところを攻められて、熱い塊が一箇所に集まっていく。
「あ、あ、あっ……で、ちゃ……うっ」
 もう閉じられない口からは情け無い声しか出ない。涙が頬を伝う。
「我慢しないでイって」
 でもこのままじゃ、口の中に! その綺麗な口を汚しちゃう。
 ああ、でももう駄目……!
「ん、あああっ!」
 絶頂の瞬間、ふわりと体が浮いたと同時に真っ白な光に包まれた。
 イっちゃうっていうけど、ホントに行っちゃったかも……そうぼんやり情け無いことを考えてたら、真っ白な世界に落とされた。

 ここはどこ? ――――僕の頭の中。
 あれはなに? ――――僕が生きてきた全ての思い出。
 あの人達は? ――――僕の一番大事な人達。
 君達はなに? ――――全部『僕』だよ。

 真っ白のここには、ハイハイしてる赤ちゃんと、短い黒い髪に瞳の制服を着た小柄な少年、そして鏡に映ってた天使モドキがいた。
 みんな白い空に流れ続ける映像を見上げてる。
 何人もの人、景色、鳥……いろんなものが映し出される映像。
「いりゃえりゅ」 赤ちゃんの僕。
「晶」 制服の僕。
「シス」 金髪の天使モドキ。
 みんなみんな僕。僕の記憶。僕の生きてきた証。
「楽しい事も、いい事も、悲しい事も、辛い事も全部受け止めて。それが『僕』だから。もう蓋をして閉じ込めないでおこうよ。そして大事な人達と大事な約束、守ろうよ」
 晶が言って手を差し出す。
 事故で死んで、でも大好きな人への思いを残したままの魂を、大聖者様に拾われた。イラエルとして生まれ変わり、捨てられて鳥のお母さんに拾われて、シスと名づけられてルイドと一緒に育てられた僕。
 本当に死んだ時だけじゃなく、荒野に捨てられた時も、巣から落ちたときも、何度も死ぬ目にあったから、その度に優しい大好きな人達と別れる悲しみを忘れるために、心に蓋をしてきた。でももう止める。
 全部全部受け止める。
 すうっと三人は一つになって『僕』と一緒になった。僕という土台にはまったばらばらになったピース。
 壊れてしまったパズルは完成した。これが僕。本当の僕。
 匠君……ユシュアさんと世界を超えて一緒になるために、僕は生まれ変わったのだから。彼も生まれ変わったのだから。沢山の人に導かれて巡り合って、もうすぐって所まで来たのだから。
 フィラン王子も僕の大事な人。大好きだった人。今も嫌いじゃないよ。怖い事も嫌な事もしたけど、心の底から憎いと思えないのは、きっと今も好きだから。でもそれは恋人としてでなく、イラエルの優しいお兄ちゃんだから。
 大好きだけど、お兄ちゃんとはこんな事しちゃいけないんだよ。

 ごくっという音で意識が引き戻された。
 ああっ、僕そういえば口の中に!
「……のん……じゃった? ぺってしてっ!」
「イヤ。君のだもの。溢したら勿体無い」
 月の光で妖しく光る濡れた唇が笑みの形をつくる。とろんと蕩けるみたいな目は熱っぽくて……綺麗。
「……僕もこんなになったけど……鎮めてくれる?」
 膝立ちで身を起こして、いつの間にか下を脱いでたフィランさんのものが目の前に見えた。
 ……ご立派です。王様みたいじゃないけど、でも大きいです。大変に元気になって上を向いておいでです!
「ぼ、僕も口でする?」
 いけない事だとは思うけど、とりあえず何とかしてあげないと辛いのは知ってるし……。
 返事もせずに、バンザイのままぎゅっと抱きしめられて、背中にまわった手がお尻の方に移動した。う、嫌な予感がする。
「こっちで……」
 つぷ、と後孔に何かが入ってきた。何かつけたのかぬるってして痛くは無かったけど、すごい違和感に身もだえする。細くて綺麗なあの指が……!
「狭いね。初めて?」
「やっ……!」
 抵抗するも虚しく足を更に広げられてひっくりかえったカエルさんの様な格好にされてしまった。のしかかられて重い。
「ふふ、すごく可愛い」
 そう言いながら、キスされたけどっ! 何かヤな味がするっ! 自分のを咥えてた口にキスされるってすっごいイヤっ……じゃなくて、そう思ってる間に更に指が奥にっ!
「い、やぁっ……」
「すぐに良くなるからね」
 ならないよ! 気持ち悪いよぉ。掻き回さないでよ……。
 何とかこれ以上の事をされないようにどうすればと意識を逃していたけど、曲げたり掻き回したりしてる指が一点に触れたとき、電気を通されたみたいにびりっと来た。
「うぁ!」
「ここだね。いいところ」
 執拗にそこを擦られて、頭の芯まで痺れるみたいなどうしようも無い感覚が何度も襲ってきて、おかしくなりそう。
「い、やあぁ……おにい、ちゃん、もっ、やめ、て……」
「お兄ちゃん?」
 中で蠢いてた指が止まった。
「ダメ……これい……じょう、は、い……け、ない、コト……」
 ぼうっとしてて、息が上がっててちゃんと喋れない。
「他に好きな人がいるから? その人にしかさせないの? やっぱりあいつ殺しておけば良かったな」
 そんな怖い事言わないで。
「ちがっ……!」
 指が増えてもう一方の手が前を荒く掴んで扱く。やだ、また出ちゃうっ。
 後ろと前の刺激で、耐え切れないほどの快感が理性を蝕む。
 完全に頭が快感だけに支配される前に……。
「……お……もい、出したの。むか、し……なま……え」
「名前?」
「イラ……エル……」
 再び手が止まって、今度はすごい勢いで指を抜かれたから、その動きでさえも感じてしまって仰け反った。なんだか広がっちゃってぱくぱくしてる気がする。
 助かったという思いとは別に、体が物足りないと不満を漏らして、焦げるほど疼いてる。どうしてなの、嫌、こんな自分。
「今何て?」
「僕、イラエル、だよ……お兄ちゃんが、つけて、くれ……た」
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