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聖母の記録編
5:夜の生き物と待ち伏せるもの
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都会の夜に完全な闇は無い。
ここオオサカもかなりの都会であるため、空の陽が沈んでも今度は地上の光が闇を払拭し、明るく照らし出す。街灯、家々の窓の灯りだけでなく、車のライト、ネオン看板、稼働しているのかも怪しい旧世紀の自動販売機など、光は夜に住まう生き物の棲家を奪う。
さて。ともかくあちこち明るいが夜は夜だ。
仕切り直して作戦を立て、京と共に再び『猛獣の寝床』へやって来たわけだが、最奥へ乗り込む前にちょっとした下準備。何事も出来得る限りの対策は取っておきたい。
「君は完全な暗闇でも動けるな?」
訊くまでも無いが一応確認だ。
「一番得意よ」
京は得意げに答えた。
「よし。まずはこの猛獣の寝床へ電力の供給をしている箇所を破壊してしまいたい。君に任せたいが、一人で出来るか?」
「出来るけど……いいの? 貴方は暗くても大丈夫?」
「私を何のA・Hだと思っている」
「あ、フクロウだったわね。なるほど」
正直夜目が特別利くわけではないが、他の鳥類のA・Hよりは良いかもしれない。そして視覚に神経を割かず、立体的に音を拾える聴覚に集中できる分、暗闇は自分にも有利だ。
コウモリとフクロウ。共に夜の空に舞う生き物。案外いい組み合わせかもしれない。
まあこちらが有利な暗闇も、そう長い時間保てるとは思ってはいない。あのような場所でも、おそらく緊急時の予備発電設備くらいはあるだろう。とはいえ、あっても旧式の化石燃料を使うような発電機レベルだろう。すぐに稼働は無理だ。
数分、いや数十秒でもいいのだ。とにかく暗闇の時間さえ確保できれば。
視覚に頼らない嗅覚特化のA・Hも数多くいるだろうし、猫科や夜行性の獣をルーツに持つA・殊聴覚強化系がやや有利なのだ。すなわち、嗅覚特化も雑多な臭いから的確に方向まで探るのには時間を要するし、幾ら夜目が利こうと瞳孔を調節して明るさに慣れるには僅かながらタイムラグが生じる。その隙を突けば奥まで行きつくことは可能だ。
「そろそろ準備をしましょう」
そう言って、京がポケットから髪留めを出した。
長い黒髪を両手で後ろに束ねた瞬間。ばっ、と広がったのは巨大な耳。その形状は間違いなくコウモリのもの。薄く、内部に溝が行く本も走ったそれは、自らが発した超音波を拾うアンテナ。
こちらも髪をかき上げて耳を出す。音響測定は出来ないが、フクロウ特有の位置の違う耳は両方出してこそ真価を発揮できる。
「では、私は手筈通り正面から行く。京は奥で合流ということで」
「了解。途中でやられないでね。幸運を」
ほう、言ってくれるな。
「その言葉、そのまま返しておくぞ。幸運を」
京の情報によると、お祈りの時間と称した集会が行われていたのは、かつて地下鉄の駅に隣接していた商業施設の地下広場。地上部分は遠の昔に壊されて無いものの、先の戦争の折にはシェルターとして利用されていた場所らしい。別の古い私鉄の高架下を改造した猛獣の寝床からは通路で直に結ばれている。途中から両の壁が分厚くなり、空気が違うと感じたのはいつの間にか地下に潜ったからだったのか。
地下ということは、左右に逃げ道は無い。そしてフィールドが狭すぎる。途中での戦闘は避けたいところだ。
あのヒゲワシのサムライだか司祭だかわからん男の力量がいか程かわからない今、極力他で労力を使いたくないというのが一番の理由だがな。
猛獣の寝床に電力を供給している電線ケーブルは一本。現在の他の都市部のように無線式でも埋設された形でも無く、旧世紀よろしく線を引きこんでいるのは確認済み。恐らく無断で他所から拝借しているのだろう。線の先を辿れば配電装置に辿り着ける。京は上手くやってくれるだろうか。
アーケードの入り口近くで身を隠して待つこと数分。薄いトタンの隙間から洩れていた光がぷつりと消えた。京は成功したみたいだな。
よし、今だ。
昼間下見をしたおかげで、通路脇の店の配置や大体どの辺りにどんなA・Hがいたのかはわかっている。目を閉じて音だけを頼りに最速で奥を目指す。
入り口付近からもうすでに、あの香のニオイが充満していた。おそらく薄い笑気ガスに似たような効果があるのだろう。こちらも長時間嗅いでいたらマズイだろうが、京の指摘によりマスクで対策済みだ。途中何人ものA・Hがいたが、皆、香のおかげで大人しくしていてくれたので、何の障害も無くアーケード最奥の扉へ辿り着けた。ここまで八秒。
この先はあのお祈りの間。音楽も無い今、扉の向こうの様子が聞こえてくる。
空気の流れる音、遠い水の音。そして、微かに規則正しい呼吸音と鼓動。『人の音』が一つ。誰かいる。
一人か? いや、更に遠くには複数の音もある。
誰か待ち構えているのだろうか。こちらの動向が読まれていた?
これはちょっと予想外だが、ここで引き返すわけにもいかない。そもそも手ぶらで引き返す気などさらさら無いがな。
まだ停電は復旧しない。予備発電も動いていないな。
十五秒。そろそろ背後のA・H達が動き始めた。夜目の利くタイプと嗅覚特化が突然の停電を訝りだしたのだろう。
暗闇の中、ドアのノブに手を掛ける。
鍵はかかっていない。昼間通った時はすでに開いていたから何とも思わなかったが、このドア重いな。この先のホールは戦争の折はシェルターに使われていたそうだから、分厚い金属製なのも当然だと納得して思い切って引く。
ぎいぃ、とかなり大きな音を立てたものの、扉はスムーズに開いた。ただ極限まで澄ませていた聴覚にはかなり耳障りだったし、このアーケードの猛獣達にも届いただろう。慌てて扉を潜った。
その時……。
入った瞬間、背筋を逆さに撫で上げられるような不快な感覚が走った。これは危険を察知した時の警告。
待ち構えているのは重々承知だった。そしてやはり、待っている者はいた。それでも相手はすぐに襲っては来なかった。
ホール内は外のアーケードよりも明るい。電源の系統が違ったのか、それとももう復旧したのかとも考えたが、そうではないと瞬時にわかった。小さな非常灯が照らしているだけだ。真っ暗の中から入ると、それだけでも明るく思える。
薄暗い中、ホール中央に立っている一人の男。こいつがさっきの警告の正体。
「ほう、お前か。ただ者では無いと思っていたが、やはり戻って来たか」
はぁ―――用心棒の戦闘用A・Hとかじゃなく、いきなりかよ!
「……まさか司祭様直々に待ち構えておいでとはね」
ヒゲワシのサムライで司祭な男本人がいるとはな。
こうなると嫌な推察を立ててしまう。再突入する情報が漏れていた? だとすれば怪しいのは京ということになるが―――同じ研究所生まれの妹分を信じたいし、ころっと騙されたのなら嫌だなと言うのが正直なところだ。
だが、男の言葉でその推測もすぐに覆される。
「別に待ち構えてなどおらん。何か嫌な予感がして来てみれば、丁度侵入者とはな。これも始まりの女神のお導きかな」
あれ? こいつがここにいたのは偶然なのか? すまん、京。一瞬でも疑って。
「お前は何者だ? 警察機構の犬か?」
「あー、警察の犬じゃなくて何でも屋のフクロウです」
答えると、司祭の男は眉を顰めた。シャープで少しキツめの印象を受ける顔は、いかにも冗談の通じない感じだな。
「何でも屋? どこの依頼で来た? どうせ聖戦を止めにでも来たのだろう。そういう輩が出入りしていると報告は受けていたがな」
自分はともかく……京、バレてるぞ。
「この稼業、依頼主は明かさないのが鉄則でね。だが警察とは全く関係ない。正直、あんたらが聖戦だの何だのをやろうが私の知った事ではない。私は連れを返してもらいに来た」
「ほう、女を取り戻しに来たのか。見捨てて逃げるような薄情な男ではなかったというわけだな。それでも残念だが返せんな。なかなかあれほどの娘は見つからないだろう。巫女にこそふさわしい」
確かにシンディはあと数年もしたらいい女になる。激しく頷きたい気分だが、あれは巫女なんてものには向いていない。女王のような女狐になってこそふさわしいのだ。
「まあどっちかと言うと、あんたが聖典と言ってた、博物館から盗まれたステラの遺伝子情報のファイル、あれをとり返しに来たのが本題なんだけど」
「返せんな。それに今、ここには無い」
ですよね。お約束の返事をありがとう。
さて、お喋りはここまでにしたい。いい加減相手の力量を見たいのだが。
いつでも打って出られる構えを取っているのに、男は一向に戦う構えを見せないのがもどかしい。警察の非合法A・H狩りの特殊部隊にいたという事は、この男はかなりの手だれなはず。
突然男が挙手の形で手を翳したので身構えたが、それは攻撃を仕掛けて来るのではなく合図だったらしい。
ざっ、と高速で男の背後から走り出て来た三つの人影。
入れ替わるように、男が数メートル飛んで下がった。その動きはまさに鷲そのものといった身軽さ。
「ファイルと女を返して欲しくば、巫女を倒してから来い。私は奥で待っている」
そう来たか!
「待て!」
奥に消えて行く男を追おうとした時、行く手を阻んだのはポヨンと弾力のある壁だった。
……胸だな。うん、おっぱいで止められてしまった。しかも三方向から。
不覚にも怯んだ隙に、男はもう見えない所まで消えていた。
「残念ね。司祭様の所へはそう簡単に辿り着けなくてよ。」
リーダーらしき虎柄の女が赤い唇に牙を覗かせて妖艶に笑う。
この巫女達、いや猛獣娘ちゃん達を何とかしないとヒゲワシのサムライにはたどり着けないってわけか。
おじさんは女の子を傷つけるのは正直趣味じゃないんだが……仕方無いかな。
ここオオサカもかなりの都会であるため、空の陽が沈んでも今度は地上の光が闇を払拭し、明るく照らし出す。街灯、家々の窓の灯りだけでなく、車のライト、ネオン看板、稼働しているのかも怪しい旧世紀の自動販売機など、光は夜に住まう生き物の棲家を奪う。
さて。ともかくあちこち明るいが夜は夜だ。
仕切り直して作戦を立て、京と共に再び『猛獣の寝床』へやって来たわけだが、最奥へ乗り込む前にちょっとした下準備。何事も出来得る限りの対策は取っておきたい。
「君は完全な暗闇でも動けるな?」
訊くまでも無いが一応確認だ。
「一番得意よ」
京は得意げに答えた。
「よし。まずはこの猛獣の寝床へ電力の供給をしている箇所を破壊してしまいたい。君に任せたいが、一人で出来るか?」
「出来るけど……いいの? 貴方は暗くても大丈夫?」
「私を何のA・Hだと思っている」
「あ、フクロウだったわね。なるほど」
正直夜目が特別利くわけではないが、他の鳥類のA・Hよりは良いかもしれない。そして視覚に神経を割かず、立体的に音を拾える聴覚に集中できる分、暗闇は自分にも有利だ。
コウモリとフクロウ。共に夜の空に舞う生き物。案外いい組み合わせかもしれない。
まあこちらが有利な暗闇も、そう長い時間保てるとは思ってはいない。あのような場所でも、おそらく緊急時の予備発電設備くらいはあるだろう。とはいえ、あっても旧式の化石燃料を使うような発電機レベルだろう。すぐに稼働は無理だ。
数分、いや数十秒でもいいのだ。とにかく暗闇の時間さえ確保できれば。
視覚に頼らない嗅覚特化のA・Hも数多くいるだろうし、猫科や夜行性の獣をルーツに持つA・殊聴覚強化系がやや有利なのだ。すなわち、嗅覚特化も雑多な臭いから的確に方向まで探るのには時間を要するし、幾ら夜目が利こうと瞳孔を調節して明るさに慣れるには僅かながらタイムラグが生じる。その隙を突けば奥まで行きつくことは可能だ。
「そろそろ準備をしましょう」
そう言って、京がポケットから髪留めを出した。
長い黒髪を両手で後ろに束ねた瞬間。ばっ、と広がったのは巨大な耳。その形状は間違いなくコウモリのもの。薄く、内部に溝が行く本も走ったそれは、自らが発した超音波を拾うアンテナ。
こちらも髪をかき上げて耳を出す。音響測定は出来ないが、フクロウ特有の位置の違う耳は両方出してこそ真価を発揮できる。
「では、私は手筈通り正面から行く。京は奥で合流ということで」
「了解。途中でやられないでね。幸運を」
ほう、言ってくれるな。
「その言葉、そのまま返しておくぞ。幸運を」
京の情報によると、お祈りの時間と称した集会が行われていたのは、かつて地下鉄の駅に隣接していた商業施設の地下広場。地上部分は遠の昔に壊されて無いものの、先の戦争の折にはシェルターとして利用されていた場所らしい。別の古い私鉄の高架下を改造した猛獣の寝床からは通路で直に結ばれている。途中から両の壁が分厚くなり、空気が違うと感じたのはいつの間にか地下に潜ったからだったのか。
地下ということは、左右に逃げ道は無い。そしてフィールドが狭すぎる。途中での戦闘は避けたいところだ。
あのヒゲワシのサムライだか司祭だかわからん男の力量がいか程かわからない今、極力他で労力を使いたくないというのが一番の理由だがな。
猛獣の寝床に電力を供給している電線ケーブルは一本。現在の他の都市部のように無線式でも埋設された形でも無く、旧世紀よろしく線を引きこんでいるのは確認済み。恐らく無断で他所から拝借しているのだろう。線の先を辿れば配電装置に辿り着ける。京は上手くやってくれるだろうか。
アーケードの入り口近くで身を隠して待つこと数分。薄いトタンの隙間から洩れていた光がぷつりと消えた。京は成功したみたいだな。
よし、今だ。
昼間下見をしたおかげで、通路脇の店の配置や大体どの辺りにどんなA・Hがいたのかはわかっている。目を閉じて音だけを頼りに最速で奥を目指す。
入り口付近からもうすでに、あの香のニオイが充満していた。おそらく薄い笑気ガスに似たような効果があるのだろう。こちらも長時間嗅いでいたらマズイだろうが、京の指摘によりマスクで対策済みだ。途中何人ものA・Hがいたが、皆、香のおかげで大人しくしていてくれたので、何の障害も無くアーケード最奥の扉へ辿り着けた。ここまで八秒。
この先はあのお祈りの間。音楽も無い今、扉の向こうの様子が聞こえてくる。
空気の流れる音、遠い水の音。そして、微かに規則正しい呼吸音と鼓動。『人の音』が一つ。誰かいる。
一人か? いや、更に遠くには複数の音もある。
誰か待ち構えているのだろうか。こちらの動向が読まれていた?
これはちょっと予想外だが、ここで引き返すわけにもいかない。そもそも手ぶらで引き返す気などさらさら無いがな。
まだ停電は復旧しない。予備発電も動いていないな。
十五秒。そろそろ背後のA・H達が動き始めた。夜目の利くタイプと嗅覚特化が突然の停電を訝りだしたのだろう。
暗闇の中、ドアのノブに手を掛ける。
鍵はかかっていない。昼間通った時はすでに開いていたから何とも思わなかったが、このドア重いな。この先のホールは戦争の折はシェルターに使われていたそうだから、分厚い金属製なのも当然だと納得して思い切って引く。
ぎいぃ、とかなり大きな音を立てたものの、扉はスムーズに開いた。ただ極限まで澄ませていた聴覚にはかなり耳障りだったし、このアーケードの猛獣達にも届いただろう。慌てて扉を潜った。
その時……。
入った瞬間、背筋を逆さに撫で上げられるような不快な感覚が走った。これは危険を察知した時の警告。
待ち構えているのは重々承知だった。そしてやはり、待っている者はいた。それでも相手はすぐに襲っては来なかった。
ホール内は外のアーケードよりも明るい。電源の系統が違ったのか、それとももう復旧したのかとも考えたが、そうではないと瞬時にわかった。小さな非常灯が照らしているだけだ。真っ暗の中から入ると、それだけでも明るく思える。
薄暗い中、ホール中央に立っている一人の男。こいつがさっきの警告の正体。
「ほう、お前か。ただ者では無いと思っていたが、やはり戻って来たか」
はぁ―――用心棒の戦闘用A・Hとかじゃなく、いきなりかよ!
「……まさか司祭様直々に待ち構えておいでとはね」
ヒゲワシのサムライで司祭な男本人がいるとはな。
こうなると嫌な推察を立ててしまう。再突入する情報が漏れていた? だとすれば怪しいのは京ということになるが―――同じ研究所生まれの妹分を信じたいし、ころっと騙されたのなら嫌だなと言うのが正直なところだ。
だが、男の言葉でその推測もすぐに覆される。
「別に待ち構えてなどおらん。何か嫌な予感がして来てみれば、丁度侵入者とはな。これも始まりの女神のお導きかな」
あれ? こいつがここにいたのは偶然なのか? すまん、京。一瞬でも疑って。
「お前は何者だ? 警察機構の犬か?」
「あー、警察の犬じゃなくて何でも屋のフクロウです」
答えると、司祭の男は眉を顰めた。シャープで少しキツめの印象を受ける顔は、いかにも冗談の通じない感じだな。
「何でも屋? どこの依頼で来た? どうせ聖戦を止めにでも来たのだろう。そういう輩が出入りしていると報告は受けていたがな」
自分はともかく……京、バレてるぞ。
「この稼業、依頼主は明かさないのが鉄則でね。だが警察とは全く関係ない。正直、あんたらが聖戦だの何だのをやろうが私の知った事ではない。私は連れを返してもらいに来た」
「ほう、女を取り戻しに来たのか。見捨てて逃げるような薄情な男ではなかったというわけだな。それでも残念だが返せんな。なかなかあれほどの娘は見つからないだろう。巫女にこそふさわしい」
確かにシンディはあと数年もしたらいい女になる。激しく頷きたい気分だが、あれは巫女なんてものには向いていない。女王のような女狐になってこそふさわしいのだ。
「まあどっちかと言うと、あんたが聖典と言ってた、博物館から盗まれたステラの遺伝子情報のファイル、あれをとり返しに来たのが本題なんだけど」
「返せんな。それに今、ここには無い」
ですよね。お約束の返事をありがとう。
さて、お喋りはここまでにしたい。いい加減相手の力量を見たいのだが。
いつでも打って出られる構えを取っているのに、男は一向に戦う構えを見せないのがもどかしい。警察の非合法A・H狩りの特殊部隊にいたという事は、この男はかなりの手だれなはず。
突然男が挙手の形で手を翳したので身構えたが、それは攻撃を仕掛けて来るのではなく合図だったらしい。
ざっ、と高速で男の背後から走り出て来た三つの人影。
入れ替わるように、男が数メートル飛んで下がった。その動きはまさに鷲そのものといった身軽さ。
「ファイルと女を返して欲しくば、巫女を倒してから来い。私は奥で待っている」
そう来たか!
「待て!」
奥に消えて行く男を追おうとした時、行く手を阻んだのはポヨンと弾力のある壁だった。
……胸だな。うん、おっぱいで止められてしまった。しかも三方向から。
不覚にも怯んだ隙に、男はもう見えない所まで消えていた。
「残念ね。司祭様の所へはそう簡単に辿り着けなくてよ。」
リーダーらしき虎柄の女が赤い唇に牙を覗かせて妖艶に笑う。
この巫女達、いや猛獣娘ちゃん達を何とかしないとヒゲワシのサムライにはたどり着けないってわけか。
おじさんは女の子を傷つけるのは正直趣味じゃないんだが……仕方無いかな。
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