私、田舎の古民家(もののけつき)に移住します。

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10、素敵な日曜と暗転の月曜

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「……日曜まで良かったんですか?」
 昨日は買い物に連れて行ってくれた悠斗さんは、日曜日も朝からやって来た。
 迷惑どころか、実は嬉しかったりするのだけど、せっかくのお休みはいいのだろうか。
「だって、菫ちゃんの初めての畑仕事だよ。僕も立ち合いたいじゃないか」
「……個人的に?」
「もちろん個人的に」
 恥ずかしげも無く言っちゃうこの性格も、ちょっぴり慣れてクセになって来た。
 日曜なのに朝から来てくれたのは、悠斗さんだけではない。私が勝手に農業の師匠と仰いでいる畠さんも、手押しの一輪車に肥料の入った袋や鍬を乗せて来てくれた。
「どれどれ。おお、良さそうな苗を選んで来たなぁ」
 買って来た苗を見て、畠さんがニヤリと笑ってお墨付きをくれた。ほぼホームセンターの園芸コーナーの人達のお見立てなんだけどね。
 では早速苗を土に……とはいかない。まず下準備が必要なんだって。これが結構長かった。
 畠さんが土にそれぞれの作物に合う肥料を入れて、畝を作るのを手伝ってくれた。中には穴の開いたシートを敷いて支柱を立ててくれた箇所もある。これはトマト用なのだとか。ただそのまま植えればいいと思っていた私は本当に素人だった。
「それでは、植えてみようか」
 農業師匠の掛け声のもと、野菜の子供達を植え付け開始。
 私の手つきが危なっかしく見えたのか、悠斗さんが手を添えて一緒にやってくれる。
「初めての共同作業だね」
 ……悠斗さん、そんな結婚式のケーキカットみたいなことを、土だらけの軍手でカボチャの苗を持って言いますか。
 そんなこんなで、悠斗さんと師匠の助けもあってあっという間に植え付けは完了。
 ホームセンターで買って来た苗は、トマト、ナス、ししとう、オクラ、カボチャの五種類。最初だから五株ずつ。私的にはこれでも多いかなと思っていたのだが―――。
「うわぁ……スッカスカ」
 思ったより畑は広かった。余裕を持って間隔を開けて植えたこともあって、滅茶苦茶殺風景な畑の出来上がりだ。何も無い畝もある。
 でも、師匠畠さんは満足気。
「最初からあまり数を増やすと、世話が大変で途中で嫌になってる。それに順調に大きくなったら、これでも結構な収穫がある畑になるぞ。特にカボチャは弦が伸びて這い始めたらとんでもなく広がるから覚悟しておけよ」
 そうだよね。いきなり素人が沢山は世話出来ない。
「まず植えつけは完了だが、これからが大変だぞ。脇芽かきに、病気の予防、水やり、摘花……受粉の必要なものもある。無農薬にこだわるなら、虫取りやら草取りやらも忙しいぞ」
 師匠のありがたーいお言葉に、先を考えたらちょっぴり不安になる。でもここは私の畑だ。枯らさないように気合をいれていかないと。
 それにしても空きスペースがなぁ。このまま放っておいたらまた雑草だらけになっちゃう。
 そこで、悠斗さんが素敵な提言をくれる。
「空きが気になるようなら、花でも植えてみたら? 華やかでいいかも」
 あっ! それいいじゃない。食べられる野菜もいいけど、綺麗な花の咲くのも楽しそう。
「おお、それもいい。金盞花や百日草だったら簡単で仏壇にも供えられるぞ」
 畠さんもノリノリで推してはくれたのだが……。
「あー、まだ仏壇は無いので」
 確かに花は綺麗で嫌いじゃない。仏間スペースはあるものの、私にはまだ偲ばなきゃいけない人はいないので空だ。両親ピンピンしてるしね。そうか、近所の人がよく畑に百日草を植えてるのって仏壇用だったのか……。
「じゃあ、ジャンボひまわりの種でも蒔く?」
 と、悠斗さんがポケットから小さな紙袋を出した。
「用意してたんですか?」
「これ、市役所の窓口で無料配布してるやつだから。職員はみんな持ってるんだ」
 ……ホントだ。『みんなで明るいまちづくり』のスローガンと、市のユルいキャラクターの描かれた袋にバッチリ市役所の文字が。
「私がもらってもいいんですか?」
「もちろん。だって菫ちゃんも市民だからね」
 なんか地味にじーんってきた。まだ住民票は正式に移していなくても、住んでるんだという実感が湧いたというか。ここにいていいんだという安心感に包まれた瞬間だった。
 無料配布だけあって、僅か三粒だけだから、空きスペースを埋めるほどでもない。でも随分と大きな種だ。ジャンボひまわりというからには立派な花が咲くのだろうか。
「上手く育てたら、屋根くらいになるかもしれないよ」
 悠斗さんが笑いながら言うのを、そんなご大層なと思っていたら、畠さんがうんうん言って肯定している。え? 本当にそんなになるものなの?
 なんでも、夏になるとこの地区ではひまわりの背比べの記録会が催され、市の計測員が正式に記録をとりに来て、シーズンで一番高いひまわりを育てた人には豪華景品が授与されるのだそうだ。
「へえ。そんなイベントがあるんですね。楽しそう!」
「ちなみに、前年度の優勝者は畠さんで、高級黒毛和牛の肉をゲットしたんですよね」
 悠斗さんの言葉に、ややどや顔で畠さんが答える。
「おう。あの肉は美味かったぞぉ。その前の年は、林商店の澄江さんに四センチ負けて温泉の回数券は逃したがな」
 さすがは師匠。そして林商店のおばちゃんも恐るべしだね。それにしても、結構な商品がもらえるのね。よーし、私も頑張って育てよう! お肉に温泉!
 すべての作業が終わったのは、朝というには遅く、お昼にも少し早いという時間。
 お手伝いしていただいたお礼に、実家から持って来ていた、某有名店のとっておきの紅茶とクッキーのセットを開けてみた。少しずつちまちまと荷ほどきしていた中、昨夜やっとティーポットとカップを発見したからというのもある。
「やっぱり都会のお茶やお菓子はあか抜けてますね」
「そうだな。美味いなぁ」
 悠斗さんも畠さんも気に入ってくれたようで何よりだ。あか抜けてるというのはよくわからないけど、一仕事した後だと、私もいつもより紅茶が美味しく感じる気はする。水がいいからというのもあるだろう。
 縁側でまったりお茶をしていると、畠さんが何か思い出したように、少し待ってろと言い残して家に帰ってしまった。
 しばらくすると、既に何かの苗を植えてあるプランターを二つ持って来てくれた。
「これはニガウリ。ゴーヤと言った方がわかりやすいかな。ネットを張って這わせたら、夏にはこの縁側にいい緑のカーテンが出来る。勿論実も食べられるぞ」
 緑のカーテン! 素敵な響きじゃない。涼しそうで実も採れるって最高じゃない。
「もらってもいいんですか?」
「実は出荷用の苗を作る時に間引いたやつなんだ。勿体ないから育ててやってくれ」
 そういうことなら喜んで。こんなに元気そうな苗、捨てられたら可哀相。
 わあ、また一つ楽しみが増えたな。緑のカーテンかぁ。
 ただでさえ、ここからの眺めはいい。緑の葉越しに見る景色はもっと素敵かもしれない。
 忙しそうな畠さんはともかく、悠斗さんもさすがに明日から仕事だし、家の用事もあるそうで、ものすごく名残惜しそうな感じではあったものの、昼には帰ってしまった。
 私も何となく昼ご飯を済ませた後は、リフォームの計画でも練りながらのんびりまったり過ごした。
「スミレ、畑に野菜を植えたんじゃな。ワシも忙しくなるのぅ」
 夕方恒例の晩酌で、シロさんがそう言った。
「なんでシロさんが忙しくなるの? まさか苗のお世話までしてくれるの?」
「世話はお前がせい。ワシは猿やら鳥を敷地に入らんよう追い払うだけじゃ」
 へぇ。主さんはそんな仕事もしてくれるのか。心強いな。でもどうやって?
「人と違って獣にはワシが見えるものも多いでの」
「そうなんだ。じゃあ頑張って追っ払ってね」
「ワシを見ても逃げん奴はどうしようも無いが」
 ……頼りになるのかならないのか。かかしでも立てるか……。
 でも、もののけさんとこうやって、普通に話しながら晩酌するのもすっかり慣れて楽しい。
 ああ、こんなに充実してゆったりした素敵な日曜日、初めてかも。

 そんなこんなでご機嫌だった日曜も明け、移住生活も順調に来て六日目。思わぬ障害が立ちはだかるなどと朝起きた時には思いもしなかった。
 月曜日。本日は燃えるゴミを出す日である。こちらでは月曜が燃えるゴミ、第二・第四の金曜日が埋め立てゴミの日と決まっている。
 新居に来て最初の収集日だった木曜は、一人だとそうゴミも出ないのでスルーした。ということで、初めてのゴミを出しに行ったわけだが……。
 都会にいた頃は、マンションの前に市販のゴミ袋に入れて置いておくだけで良かったのに、こちらは市の指定のゴミ袋に入れて、尚且つ名前を書かなければならない。それを町内に二箇所ある集積所に持って行く。集落の自治会が四組に分かれているということは、二組ずつが共用する集積所なのでちょっと遠い。
 更に驚いたのが、集積所が妙にごつーんとした丈夫そうな金属製の箱であった事だ。
「このくらい頑丈じゃないと、動物に荒らされるでねぇ」
 ……とは、一緒にゴミを出しに行った森川のおばあちゃんのお言葉だ。
「カラスとか猫ですか?」
 そういえば都会でもカラスや猫が袋を破ってしまうので、網をかけてあったなぁと思い返していると、更にヘビィな答えがさらりと返って来た。
「狸や熊や猪がねぇ」
 狸はともかく、熊とか猪って! そりゃ頑丈なわけだ。
 そっか、熊もいるのか。当たり前とはいえ、ちょっと怖い。シロさん、熊も追っ払ってくれるんだろうか。
 手押し車を押してゆっくりゆっくり歩く森川のおばあちゃんと、話をしながら帰り、洗濯を干してから畑の様子を見に行こうと玄関を出た時だった。
 石段の下に何か置いてあるのが目に入って、駆け寄ってみると……。
「え?」
 これ、さっき出しに行ったゴミ袋じゃない。名前が書いてあるから私のだ。
 どうして? 何か入れてはいけない物でも入ってたから収集の人に返された? 
 いや、でも収集車はここまで来ていないし、普通は貼り紙をして集積所に置き去りにする。それに幾ら思い返してみても、入れてはいけない物を入れた覚えも無い。最初だから特に気を付けて入れたもの。
 もう一度出しに行く? 温度も高いこの時期、次の収集日まで置いておくのもなんだか。でももう時間的に遅いだろうし――。
「おう、どうした菫ちゃん。困った顔をして」
 石段のところで途方にくれていた私に、声を掛けてくれたのは、おなじみの畠さんだった。農作業に行く途中なのかな。
 畠さんに、出したはずのゴミの袋が返って来た話をしてみる。
「ちゃんと名前も書いたし、市のルールに従って分類して出したと思うんですけど」
 途端に畠さんの顔が険しくなった。思い当たることがあるみたい。
「……またか。今度は大丈夫かと思っていたのに。こりゃ、絶対に博さんの仕業だよ」
「博さんというと、大工さんじゃない方の林さんですね」
 あっ! そういえば挨拶回りの時にあそこだけ留守で、その後ちょくちょく伺っても、土日も仕事なうえ、深夜にしか帰宅されないから会えなくて、まだ挨拶も出来ていないままだった。
 その事で怒ってらっしゃるのだろうか……そう言ってみたら、畠さんは難しい顔で首を振る。
「いや、あの人のは今に始まった事じゃない。実は――――」
 聞くと、博さんは新しく他所から来た人には、必ず嫌がらせをする人なのだそうだ。違う土地からお嫁に来た人や、違う町から越して来た人に、何度か同じような事をしているらしい。
 村の他の人も困っていても、小さな集落ゆえ、親の代から顔なじみだと文句を言うにも言えないという事情もある。
 この家でも、私の前に移住を希望してお試し生活をした人もいたのに、荷物の搬入も途中で、わずか数日でやめたのだとか。その原因が、博さんが今みたいにゴミを突き返したり、音が煩いなどと苦情を言って来たからだという。
「そんなことがあったんですか……」
「黙っとって悪かったが、先に言ってしまうと、そもそも誰もこの村に来てくれん。村の他の者は皆、人が減る一方の田舎に他所から移住して来てくれるのを大歓迎してるんだ」
 村の人の事情もわかるけど……現実を知ると結構凹むな。
 昨日、ここにいていいんだと舞い上がったすぐ後だから、突然突き落とされたみたいな気さえする。
「役場の林君にも相談してみたほうがいい。こういうのが続くようなら、定住課の仕事にも関わってくるんじゃないか?」
「……それもそうですね」
 その後、畠さんの進言に従い、悠斗さんに電話を掛けると深刻そうな声が返って来た。
「それはちょっと捨て置けない事態だね」
 すぐに来るとのことだ。結局、月曜も会うことになるんだね、悠斗さん。

 悠斗さんを待つ間、私は穏便な解決策が無いかと少しネットで調べてみた。すると出るわ出るわ。
 全国でも、移住者の何割かは同じようにゴミを出させてもらえない、自治会に受け入れてもらえない、余所者を嫌う近隣の人の嫌がらせに遭うなどの目に遭っているという。移住を諦めた人の多くの原因がこれらしい。
「はぁ……わりと多いんだね、この事案……」
 私が居間で溜息をついていると、ふらっとシロさんが現れた。
「博か。憎ったらしい男じゃのう。そうか、あの男のせいじゃったのか。前に来た人間がすぐに出て行ったのは」
「あら、シロさん聞いてたの?」
 まだ夕刻でも無いのに、卓袱台の前でどかっと座って腕組みのシロさんは、すでに私に対する遠慮も何もない。
「まあ、前の奴はワシが見えんし声も聞こえなんだでな。おかげでスミレが来てくれたんじゃが」
 それはいいのか悪いのかどっちなんだろうね。
 更に、シロさんが物騒な解決策を切りだす。
「博の家に主がおったら、ちょっと脅してやれと頼みも出来るが、あの家にはおらんでな」
「新しいものね、あの家。ってか、脅すって……!」
 もののけの脅し! 一体どのような恐ろしい目に遭わされるんだと思い、恐る恐る具体的にどんなと聞くと、シロさんは得意げに答える。
「なあに、せいぜい夜中に物音をたてるとか、勝手に水を出すとか、額縁を傾ける程度じゃが」
 ……家の主の脅しって地味だな。やっぱ基本的に人畜無害なのね。でもちょっぴり陰湿で嫌かな。まあ、ゴミ袋を返してくるって言うのも、陰湿だけどさ。
「とにかく悠斗さんに相談して、博さんと話し合ってみるわ。何か理由があって余所者が嫌いなのかもしれないし」
 私がそう言うと、シロさんは立ち上がってくるりと背を向けた。そして――――。
「スミレ、どこにも行くなよ。ここに居れよ」
 そう、ぽつりといい残してシロさんは消えてしまった。
「……うん」
 私はどこにも行かない。ここに居るよ。せっかく畑にも苗を植えた。夢の形も見えて来た。だからここに住むんだもの。悠斗さんも市民だっていってくれたもの。
 シロさん、寂しい寂しいって言ってたものね。私もあなたがいるこの家は寂しくないから。
 だから、嫌がらせなんかに負けないんだから。





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