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続・魔界王立幼稚園ひまわり組
23:飛竜とお姫様
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「まぁ、竜たんかあいしょぉにぃ~!」
黒騎士から逃れた竜が倒れていると、お姫様がやってきました。トップバッターはルナちゃんお姫様です。スケルトンなので随分とスリムですが、一応三人デザインは統一されております。
「どうなされたのじゃ?」
吸血鬼ジュン君の謎のおじいさん登場。飼い犬の毛で作った髭が素敵。
「この竜たん、お怪我イタイイタイです」
「ではこの葉っぱをどーぞ」
おじいさんが薬草らしき葉っぱを渡すと、竜に飲ませるのですが……ルナちゃん、本気でカンちゃんのお口に突っ込まなくていいんですよ!
「もふもふぉ」
涙目で色紙の葉っぱを咥えたカンちゃん竜は、がうがうと言えなくてもふもふ言いながら立ち上がり、手をパタパタさせながら退場。怪我は治ったようです。
「にゃおってよかったれす」
「よかったのぉ」
「よかった~よかった~」
姫様、おじいさん、森の木達が口々に良かったを繰り返してますが……良くないよ! カンちゃん、ちょっとホントに食べちゃったみたいだよ。
「美味しくにゃい」
「ぺってしようね。絵の具が塗ってあったから」
「ごっくんしちゃった~」
サテュロスのカンちゃんは紙を本当に飲み込んでしまったみたいです。山羊だけに。ま、大丈夫でしょう。
ぱっと舞台が暗くなって、お姫様退場。森の木さん達は奥で相変わらずうねうねしてます。二番手の竜いく君が登場です。
「お姫様にありがとうを言いたいです。でも竜の格好では怖がられるかもしれません」
最初の見せ場なので、言葉のしっかりしたイクサル君で正解でしたね。
「では魔法で一日だけ王子様にしてあげるのじゃ」
「お手伝いれす!」
ジュン君おじいさんが杖をぶんぶん振り回すと、コウモリさんその一のジル君が自前の羽根に黒い紙を貼り付けてぱたぱたしながら出てきて、いく君の周りを回ります。ちゃっかり回りながら角や竜の羽を毟るという難しい技です。ジル君は鳥獣人なので、本物の羽根があって空いてる手もあるからこそ出来る事。いい配役だった。
さり気に黒子に扮したエイジ君が背景画の後ろからいく君の頭に王冠を載せて完成。
「どこから見てもカッコイイ王子様じゃ」
「ありがとうございます。おじいさん!」
「おしめたまのとこに案内しまーしゅ」
……コウモリさん、お姫様がおしめ様になってるよ……まあほんの少し前までみんなオシメ様だったけどさ。
ここで全員一旦退場。背景の絵が捲られ、舞台はお城。明るくなった舞台にお姫様二番手のラミアのえりちゃんが登場し、えりちゃん一家から小さく拍手が上がります。足はありませんが、とってもお上品な感じのお姫様です。
「何か良い事がないかしら~」
そこへ、ジル君コウモリさんが登場です。
「おしめたま、こんちは」
ジル君がぺこりと頭を下げると、客席からくすくすと笑い声が聞えた。
「コウモリさん何かご用?」
「おーじたまを連れてきたれす」
「王子様?」
両手に花束を抱えた、いく君竜王子が颯爽と登場……とは行かなかった。派手に花をぶちまけて王子様が転んでしまったのだ。
おおぅ、これは予想外の展開! 泣くかな、泣いちゃうかな?
「……」
ざわざわとお客さん達から心配そうな声が上がった。ちょっとしたパニックを起してるのか、起き上がらないままのいく君に、思わず飛び出そうとした私を止めたのは、控えていた子供達だった。
「もってちぇ」
リノちゃんはお姫様のティアラを私に渡すと、まだ出番じゃないのに舞台に走って行った。最後のコウモリさんのペルちゃんも。それに続いてもう出番の済んだきぃちゃん、ルナちゃん、カンちゃんも。
「きれーなおあにゃれすね~」
花を拾うリノちゃん達女の子に、カンちゃん、ペルちゃんがいく君に声を掛けて皆で抱き起こし、飛んでしまった王冠を被せています。
「大丈夫? どこか痛い?」
「泣いちゃだめらぉ」
「がんばって」
……どうしよう、私が泣きそう。鼻がつーんてなって、胸が熱い。
みんななんていい子なんだろう。幼稚園でお友達になってまだ数ヶ月のひまわり組さん達。三歳か四歳になったばかりの小さな子達なのに……。
すっかり王子様に戻ったいく君に、かき集めた花を渡して、みんながわーっと舞台袖に帰って来て、お客さん達から割れんばかりの拍手が起こった。
本当に私が感動して泣きそうになったけど、泣かなかったのは先を越されたからです。横で背景係りのエイジ君と娘の姿を見たウリちゃんが抱き合って泣いてるし。あ、向こうでも魔王様が口を手で覆ってる。
「みんなありがとう!」
「えへへ」
さて、舞台再開みたいです。
「……んっ!」
いく君は舞台の上では泣かなかったけど、台詞は出てこなかったみたいです。えりちゃん姫に花束を突き出すと、受け取ってもらえた瞬間にくるりと向きを変えて走って帰って来た。
「まあ、なんて綺麗なお花! あの王子様はどなたかしら?」
舞台に残されたえりちゃんは、それでも演技を続けました。
「いく君、がんばったね」
「うわああああん!」
結局舞台袖にひっこんでから私に縋りついて大泣きしたいく君でした。
それでも舞台は続きます。また真っ暗になって背景チェンジ。森の木さん、石さん達がスタンバイ。
『王子様にもう一度会いたいお姫様は、探しに行きました』
さて。スポットライトに照らされたのは我が家のリノ姫様です。
「おーじしゃまー」
……相変わらずの舌っ足らずですね。
まず答えるのは石その一のトメさんです。トメキチ君は三歳ですが、なぜかトメさんというおじいさんっぽい呼び名で呼ばれている、いるのを忘れるほど大人しい子です。猫獣人というより、妖怪の猫叉だそうで、ご先祖様はその昔日本に居たそうです。
「森一番の知恵ものコウモリなら知ってるかもしれないにゃ」
トメさん、上手に台詞が言えました。
石その二はモコちゃんです。はい、本物の石です。岩魔族ですから。
「コウモリたんは~この~しゃき~に~」
ゆっくりですがちゃんと言えましたね、モコちゃん。
石その三は沼魔族のポメちゃんです。自由に形を変えられるので、ちょっと石っぽく擬態しているなんて芸細ですね。
「真っ直ぐ行くといいよー」
「石たん達、ありあと」
その場で足踏みしているだけのリノ姫様の前に、ペルちゃんコウモリさんが現れました。一番難しい台詞があるのがこの役です。今日はジル君と同じく、自前の羽根に黒いコウモリの羽根をくっつけてます。
「お姫様、何かご用ですか?」
「おあにゃをくりぇた、王子たま、しゃがちてましゅ。ちりましぇんか?」
……リノちゃん、間違えてはいないけど、聞き取り辛いこと甚だしいよ。
「ご案内してもいいですよ。王子様もあなたに会いたいと思っておられます。でも一つだけ約束をしてください。何を見ても驚かない事。そうでないと魔法が切れてしまいます」
おお! ペルちゃんカンペキ。よくそんな長い台詞を覚えたね!
「まほー? やくしょくちましゅ」
「ではついて来て下さい」
羽根をパタパタさせるコウモリさんと、お姫様は再びその場で足踏み。歩いてるつもりなんだけどね。森の木さん達が地味に登場し、うねうねをはじめます。その陰に、三番手飛竜のさんちゃんとジュン君おじいさんが隠れています。
「見ないでー」
「こないれー」
「食うじょー」
森の木さん達が、蠢きながら邪魔をします。
「王子しゃまはどこー?」
『どうしても突然消えてしまった王子様に会いたかったお姫様は、コウモリの案内で喋る森を進んでいきました。そしてとうとう見つけたのです』
ナレーションと共に、少し身を引く森の木さん達。さんちゃん竜を見た瞬間のリノ姫様の両手をバンザイして口を大きく開ける迫真の演技。そして横で俯いて首を振るペルちゃんコウモリとジル君おじいさんの妙に大人っぽい仕草。
「何を見ても驚かないと約束しましたね、お姫様」
「あでぇー! 竜れすぉ!」
「おちめしゃま」
『お姫様が約束を忘れて驚いてしまったので、もう魔法は効かなくなってしまいました』
「あにゃたは、あにょ時の竜たんだったのれすね」
「もう会えましぇん。たしゅけていたらき、うれちかった……」
『そして、竜は悲しげに一声鳴くと羽根を羽ばたかせて飛んでいきました』
「がうー!」
さんちゃん竜が雄たけびをあげて、ぱたぱたと退場。
お姫様、コウモリさん、おじいさんは何故か手を振って見送ります。
そしていきなりしゃーっと幕が閉まります。うん、なんか、オチあったのか? という話ですけども……無事終わった。
しーん。
あれ? 拍手が無い。なんかすごく心配になってきたよ?
「おもちろくにゃかった?」
「駄目だったかな?」
子供達も心配そうな顔になってきました。
しばらくして、ぱち、ぱち、と疎らに拍手が聞え始め、次にわーっと声が上がったと思うと、お客さんが立ち上がって拍手を始めた。
「素晴らしい!」
「なんて感動的なんだ!」
慌ててひまわり組さん達を並べて、もう一度幕を開けます。
「れい!」
ぺこりとみんなでお辞儀をすると、また拍手。なんか保護者の方々も貴族の方々も泣いてませんか? マファル王キール様も号泣です。
……そ、そんなに感動出来る話だったのでしょうか?
そして、感涙しているのは見えるお客様達だけではありませんでした。
ぎいいいぃ、と音を立てて貴賓室のドアが開き、眩い光が会場を照らす。
また出てきちゃいました、ザラキエルノ様。だばだばと血の涙を滴らせて。
黒騎士から逃れた竜が倒れていると、お姫様がやってきました。トップバッターはルナちゃんお姫様です。スケルトンなので随分とスリムですが、一応三人デザインは統一されております。
「どうなされたのじゃ?」
吸血鬼ジュン君の謎のおじいさん登場。飼い犬の毛で作った髭が素敵。
「この竜たん、お怪我イタイイタイです」
「ではこの葉っぱをどーぞ」
おじいさんが薬草らしき葉っぱを渡すと、竜に飲ませるのですが……ルナちゃん、本気でカンちゃんのお口に突っ込まなくていいんですよ!
「もふもふぉ」
涙目で色紙の葉っぱを咥えたカンちゃん竜は、がうがうと言えなくてもふもふ言いながら立ち上がり、手をパタパタさせながら退場。怪我は治ったようです。
「にゃおってよかったれす」
「よかったのぉ」
「よかった~よかった~」
姫様、おじいさん、森の木達が口々に良かったを繰り返してますが……良くないよ! カンちゃん、ちょっとホントに食べちゃったみたいだよ。
「美味しくにゃい」
「ぺってしようね。絵の具が塗ってあったから」
「ごっくんしちゃった~」
サテュロスのカンちゃんは紙を本当に飲み込んでしまったみたいです。山羊だけに。ま、大丈夫でしょう。
ぱっと舞台が暗くなって、お姫様退場。森の木さん達は奥で相変わらずうねうねしてます。二番手の竜いく君が登場です。
「お姫様にありがとうを言いたいです。でも竜の格好では怖がられるかもしれません」
最初の見せ場なので、言葉のしっかりしたイクサル君で正解でしたね。
「では魔法で一日だけ王子様にしてあげるのじゃ」
「お手伝いれす!」
ジュン君おじいさんが杖をぶんぶん振り回すと、コウモリさんその一のジル君が自前の羽根に黒い紙を貼り付けてぱたぱたしながら出てきて、いく君の周りを回ります。ちゃっかり回りながら角や竜の羽を毟るという難しい技です。ジル君は鳥獣人なので、本物の羽根があって空いてる手もあるからこそ出来る事。いい配役だった。
さり気に黒子に扮したエイジ君が背景画の後ろからいく君の頭に王冠を載せて完成。
「どこから見てもカッコイイ王子様じゃ」
「ありがとうございます。おじいさん!」
「おしめたまのとこに案内しまーしゅ」
……コウモリさん、お姫様がおしめ様になってるよ……まあほんの少し前までみんなオシメ様だったけどさ。
ここで全員一旦退場。背景の絵が捲られ、舞台はお城。明るくなった舞台にお姫様二番手のラミアのえりちゃんが登場し、えりちゃん一家から小さく拍手が上がります。足はありませんが、とってもお上品な感じのお姫様です。
「何か良い事がないかしら~」
そこへ、ジル君コウモリさんが登場です。
「おしめたま、こんちは」
ジル君がぺこりと頭を下げると、客席からくすくすと笑い声が聞えた。
「コウモリさん何かご用?」
「おーじたまを連れてきたれす」
「王子様?」
両手に花束を抱えた、いく君竜王子が颯爽と登場……とは行かなかった。派手に花をぶちまけて王子様が転んでしまったのだ。
おおぅ、これは予想外の展開! 泣くかな、泣いちゃうかな?
「……」
ざわざわとお客さん達から心配そうな声が上がった。ちょっとしたパニックを起してるのか、起き上がらないままのいく君に、思わず飛び出そうとした私を止めたのは、控えていた子供達だった。
「もってちぇ」
リノちゃんはお姫様のティアラを私に渡すと、まだ出番じゃないのに舞台に走って行った。最後のコウモリさんのペルちゃんも。それに続いてもう出番の済んだきぃちゃん、ルナちゃん、カンちゃんも。
「きれーなおあにゃれすね~」
花を拾うリノちゃん達女の子に、カンちゃん、ペルちゃんがいく君に声を掛けて皆で抱き起こし、飛んでしまった王冠を被せています。
「大丈夫? どこか痛い?」
「泣いちゃだめらぉ」
「がんばって」
……どうしよう、私が泣きそう。鼻がつーんてなって、胸が熱い。
みんななんていい子なんだろう。幼稚園でお友達になってまだ数ヶ月のひまわり組さん達。三歳か四歳になったばかりの小さな子達なのに……。
すっかり王子様に戻ったいく君に、かき集めた花を渡して、みんながわーっと舞台袖に帰って来て、お客さん達から割れんばかりの拍手が起こった。
本当に私が感動して泣きそうになったけど、泣かなかったのは先を越されたからです。横で背景係りのエイジ君と娘の姿を見たウリちゃんが抱き合って泣いてるし。あ、向こうでも魔王様が口を手で覆ってる。
「みんなありがとう!」
「えへへ」
さて、舞台再開みたいです。
「……んっ!」
いく君は舞台の上では泣かなかったけど、台詞は出てこなかったみたいです。えりちゃん姫に花束を突き出すと、受け取ってもらえた瞬間にくるりと向きを変えて走って帰って来た。
「まあ、なんて綺麗なお花! あの王子様はどなたかしら?」
舞台に残されたえりちゃんは、それでも演技を続けました。
「いく君、がんばったね」
「うわああああん!」
結局舞台袖にひっこんでから私に縋りついて大泣きしたいく君でした。
それでも舞台は続きます。また真っ暗になって背景チェンジ。森の木さん、石さん達がスタンバイ。
『王子様にもう一度会いたいお姫様は、探しに行きました』
さて。スポットライトに照らされたのは我が家のリノ姫様です。
「おーじしゃまー」
……相変わらずの舌っ足らずですね。
まず答えるのは石その一のトメさんです。トメキチ君は三歳ですが、なぜかトメさんというおじいさんっぽい呼び名で呼ばれている、いるのを忘れるほど大人しい子です。猫獣人というより、妖怪の猫叉だそうで、ご先祖様はその昔日本に居たそうです。
「森一番の知恵ものコウモリなら知ってるかもしれないにゃ」
トメさん、上手に台詞が言えました。
石その二はモコちゃんです。はい、本物の石です。岩魔族ですから。
「コウモリたんは~この~しゃき~に~」
ゆっくりですがちゃんと言えましたね、モコちゃん。
石その三は沼魔族のポメちゃんです。自由に形を変えられるので、ちょっと石っぽく擬態しているなんて芸細ですね。
「真っ直ぐ行くといいよー」
「石たん達、ありあと」
その場で足踏みしているだけのリノ姫様の前に、ペルちゃんコウモリさんが現れました。一番難しい台詞があるのがこの役です。今日はジル君と同じく、自前の羽根に黒いコウモリの羽根をくっつけてます。
「お姫様、何かご用ですか?」
「おあにゃをくりぇた、王子たま、しゃがちてましゅ。ちりましぇんか?」
……リノちゃん、間違えてはいないけど、聞き取り辛いこと甚だしいよ。
「ご案内してもいいですよ。王子様もあなたに会いたいと思っておられます。でも一つだけ約束をしてください。何を見ても驚かない事。そうでないと魔法が切れてしまいます」
おお! ペルちゃんカンペキ。よくそんな長い台詞を覚えたね!
「まほー? やくしょくちましゅ」
「ではついて来て下さい」
羽根をパタパタさせるコウモリさんと、お姫様は再びその場で足踏み。歩いてるつもりなんだけどね。森の木さん達が地味に登場し、うねうねをはじめます。その陰に、三番手飛竜のさんちゃんとジュン君おじいさんが隠れています。
「見ないでー」
「こないれー」
「食うじょー」
森の木さん達が、蠢きながら邪魔をします。
「王子しゃまはどこー?」
『どうしても突然消えてしまった王子様に会いたかったお姫様は、コウモリの案内で喋る森を進んでいきました。そしてとうとう見つけたのです』
ナレーションと共に、少し身を引く森の木さん達。さんちゃん竜を見た瞬間のリノ姫様の両手をバンザイして口を大きく開ける迫真の演技。そして横で俯いて首を振るペルちゃんコウモリとジル君おじいさんの妙に大人っぽい仕草。
「何を見ても驚かないと約束しましたね、お姫様」
「あでぇー! 竜れすぉ!」
「おちめしゃま」
『お姫様が約束を忘れて驚いてしまったので、もう魔法は効かなくなってしまいました』
「あにゃたは、あにょ時の竜たんだったのれすね」
「もう会えましぇん。たしゅけていたらき、うれちかった……」
『そして、竜は悲しげに一声鳴くと羽根を羽ばたかせて飛んでいきました』
「がうー!」
さんちゃん竜が雄たけびをあげて、ぱたぱたと退場。
お姫様、コウモリさん、おじいさんは何故か手を振って見送ります。
そしていきなりしゃーっと幕が閉まります。うん、なんか、オチあったのか? という話ですけども……無事終わった。
しーん。
あれ? 拍手が無い。なんかすごく心配になってきたよ?
「おもちろくにゃかった?」
「駄目だったかな?」
子供達も心配そうな顔になってきました。
しばらくして、ぱち、ぱち、と疎らに拍手が聞え始め、次にわーっと声が上がったと思うと、お客さんが立ち上がって拍手を始めた。
「素晴らしい!」
「なんて感動的なんだ!」
慌ててひまわり組さん達を並べて、もう一度幕を開けます。
「れい!」
ぺこりとみんなでお辞儀をすると、また拍手。なんか保護者の方々も貴族の方々も泣いてませんか? マファル王キール様も号泣です。
……そ、そんなに感動出来る話だったのでしょうか?
そして、感涙しているのは見えるお客様達だけではありませんでした。
ぎいいいぃ、と音を立てて貴賓室のドアが開き、眩い光が会場を照らす。
また出てきちゃいました、ザラキエルノ様。だばだばと血の涙を滴らせて。
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