41 / 96
続・魔界王立幼稚園ひまわり組
6:夏祭り①
しおりを挟む
今日はホントは休園日。職員は何となく一週間の疲れが溜まった顔をしているけど、子供達は元気いっぱい張り切ってます。先生達、明日は代休なんで頑張りましょう!
夕方。魔王城前の広場はとても賑やか。大きな太鼓の置かれた高い櫓(やぐら)が組まれ、四方に張り巡らされた蔦には虹色明かりが点々と下がってる。よく見るとすずらんの花を何百倍かにしたような形のお花が光ってるのだけど、遠目には提灯に見える。まさに盆踊り会場といった趣。
「はじける綿飴だよ~!」
「可愛いワームすくいはどうだい?」
「カキ氷もあるよ!」
今日は街から屋台も来てて、お父さんお母さんに手を引かれてやってきた子供達の目はキラキラしている。
今日は年に一度の夏祭。魔神の月が見えなくなる新月の日。毎年この日にはドドイル国のあちこちでこうやってやぐらを組んで、その周りで踊るお祭りが開かれる。下の街でもやっているし、去年まではこちらから出かけていたが、今年は魔王様主催で幼稚園の子供達と保護者や関係者を招いてこのお城でもお祭りをやることにしたのだ。
魔王様は基本お祭り好きだもんね。
「日が沈んで、太鼓がなったら皆で奉納の踊りをやるから、それまでは自由にしててもいいよ」
幼稚園の子供達を集め、一応お約束ごとを聞かせる。
「放送であつまれーって言ったら、ここに集まりますよ」
「あいっ」
「はしゃぎすぎて迷子になりませんね」
「はーい」
「知らない人にはついていきませんよ」
「あいっ!」
「いっぱい食べすぎしませんよ」
「あーい!」
皆とてもよい返事をしているが、半分くらいしか聞いてないと思う。目はもう私の方で無く、風船や綿飴の方に釘付けだ。まあ、お父さんお母さんも一緒だし、お城の衛兵さん達が各所で見張っているので大丈夫だろう。
「じゃあ、お祭り楽しんでね!」
「わーい!」
保護者の方々と散った園児達。揃いの衣装を着ているので目立つといえば目立つ。はい、作ってもらいました浴衣! 子供用なんで帯もリボンみたいな兵児帯を結ぶだけなので簡単。前合わせで自由がきくので手が沢山ある子や人型の体をしていない子も、ちゃんとそれっぽく着こなせてます。
「では先生方も時間まで見回りをかねて楽しんで来て下さい」
さて。私もさっきから服の裾を引っ張って催促しているリノちゃんのお相手をしないとね。
「勇者様、一緒にあちらを見てきましょう!」
てんちゃんはエイジ君の腕をとり、半ば引き摺るように連れて行った。おお、若いね~熱いね~。歳は倍だが、どう見てもてんちゃんの方がリードしているように思う。
マーム先生は家族と、メイア先生はレーさんピコさんと行くみたい。
「ママ! わたがち、買うおやくしょく」
「そうね。パパは?」
「まおーしゃまとご用事。えらいちと、来てう」
そういえば国賓級も何人かおいでだったな。
国の宰相閣下に幼稚園の先生、我が家のパパと何足もの草鞋を履いているウリエノイルさんは死ぬほど忙しい。リノちゃんと屋台を見て回るんだと張り切っていたけど、残念だね。
何だかこういうの懐かしい。子供の頃近くの神社であった夏祭りや、盆踊りを思い出す。もうすっかりこちらに馴染んで、家族もいる今でも思い出すと胸が痛くなる。
花火に見惚れてて迷子になった時、泣きそうな顔をしたお父さんの大きな手、浴衣を着せてくれたお母さん。皆まだ元気なんだろうか。
進藤心菜は死んじゃったけど、あなた達の孫がここにもいるんですよ。とっても可愛い女の子ですよ。でもきっとお兄ちゃんが孫を見せてあげてるよね。
賑やかで楽しい夏祭りなのに、妙にしんみりしてしまった。
「よーし、リノちゃん。まずは綿飴買って、次はカキ氷だよ」
「うれちー!」
……食べすぎはしませんと言ったのはこの口だったんだけどね。
はじける綿飴は実は私のお気に入りなのだ。ものすごく刺激的な食べ物。
「二つください」
銅貨を渡すと、手が何本もあるちょっとカマキリみたいな顔のおじさんがニッコリ笑って渡してくれた。
「ほい。そろそろ当たりが出る頃だよ。お嬢ちゃんが当たりだといいねぇ」
一見ちょっと色のついた普通の綿飴。私は水色、リノちゃんがピンク。
「じゃあ食べてみようか?」
「きんちょ、ちましゅ」
ふわふわの飴をぱくん。口の中に爽やかな甘い味が広がる。
ぱん、ぱん。軽やかな音をたてて綿飴が弾け始めた。
「急げ~!」
慌てて食べないと無くなっちゃうのが難点ですけど、美味しいの。
ぱあん! もう一息、というところで、リノちゃんの綿飴が大きな音をたててはじけた。
「わー! 当たりだぉ! パパにほーこくちないと!」
弾けた中から可愛い小さな角ウサギが現れ、リノちゃんの周りをくるくるぴょんぴょんした後すうっと消えた。
そう、このはじける綿飴は当たりだと何かが出てくるの。勿論幻だからすぐに消えてしまうけど、とっても面白い。ちょっとだけハッピーになれる。
「ママはハズレだったわ」
喜ぶ娘と手を繋いで、次に行こうとした時、
「ココナ先生!」
声に振り返ると、何人かの若い男の子達がユーリちゃんと一緒に立っていた。赤い髪の背の高い男の子、緑の蠢く髪に大人しそうな可愛い顔……随分見た目は変わってるけど、一瞬で小さい時の彼等の顔にすり替わった。
「くーちゃん、かーくん!」
「お元気そうですね。他のみんなも来てますよ」
猫耳の綺麗な女の子はゆきちゃん、スケルトンのまー君は背が伸びただけでそんなに変わってないね。後ろに壁みたいに立ってるのはよっ君。ちょっと露出高めのアマゾネスみたいなスタイルのいい女の子はみぃちゃん。
みんな立派になって。そっか、魔王さまは卒園生にも招待状を出したと言っておられた。これって何て嬉しいんだろう。
小さな手型足型を押した日のことを思い出して思わず涙がこぼれた。ユーリちゃんやてんちゃんが大きくなったんだもの、皆だって大きくなってるのは当たり前なんだけど……昔少し勤めてた園の園長先生が仰っていた。
「大変だけど保育士は幸せな仕事だ」って。本当にそう思う瞬間。
「先生、泣いちゃってるの?」
「だって、皆こんなに大きくなって」
「先生だってお母さんになってるじゃないですか」
そうだよね。うん。中身も見た目もちっとも変わってないけど、やっぱり皆前に向かって進んでるんだよね。
ユーリちゃんは昔のお友達達とお祭り会場へ消えた。
「ママ、カキ氷~」
リノちゃんがぐいぐい引っ張るので、雪男のカキ氷やさんに行く。
「何味がいいかな」
えっと、グリグリ味にポタポタ味、ビリビリ味、ヒーハー味……微妙。
とりあえず無難に一見イチゴ味っぽい赤いグリグリ味を一つ頼んで、ふと横を見ると、ぽつんと一人立ってる子が。
「ペルちゃん?」
「あ、先生、リノちゃん」
「お母さんは? 迷子になっちゃった?」
「ううん、お母さん忙しくて後から来るから、僕一人で来たの」
……ルウラの送迎があったからまあわからなくも無いけど。今まで一人でいたんだ。なんだか可哀想。
それよりもだ。そっか、サリエノーアさんはまだ来ておいででないのか。きっと魔王様はやきもきして探しておいでだろうな。
「じゃあ、お母さんが来るまで、一緒に遊んでようか。そうだ、ペルちゃんもカキ氷食べる?」
「え……でも……」
「遠慮しない。ほら」
もう一つ黄色いビリビリ味をもらって、少し喧騒から離れた方で三人で座った。
「ちべたーい」
「美味しい!」
チビ天使さん達はご機嫌です。
「一口ちょうだい」
同時に差し出されたスプーンをぱくん。冷た~い。
うん、美味しいけどグリグリビリビリしました……こんなの食べて子供達は大丈夫なんだろうかと思わなくも無い。
その時、合図の放送が響いた。
「わははははは! もうすぐ踊りを始めるぞ! 幼稚園の皆はやぐらの近くにあつまれよ~ははっ」
司会、やっぱりジラソレのようです。
夕方。魔王城前の広場はとても賑やか。大きな太鼓の置かれた高い櫓(やぐら)が組まれ、四方に張り巡らされた蔦には虹色明かりが点々と下がってる。よく見るとすずらんの花を何百倍かにしたような形のお花が光ってるのだけど、遠目には提灯に見える。まさに盆踊り会場といった趣。
「はじける綿飴だよ~!」
「可愛いワームすくいはどうだい?」
「カキ氷もあるよ!」
今日は街から屋台も来てて、お父さんお母さんに手を引かれてやってきた子供達の目はキラキラしている。
今日は年に一度の夏祭。魔神の月が見えなくなる新月の日。毎年この日にはドドイル国のあちこちでこうやってやぐらを組んで、その周りで踊るお祭りが開かれる。下の街でもやっているし、去年まではこちらから出かけていたが、今年は魔王様主催で幼稚園の子供達と保護者や関係者を招いてこのお城でもお祭りをやることにしたのだ。
魔王様は基本お祭り好きだもんね。
「日が沈んで、太鼓がなったら皆で奉納の踊りをやるから、それまでは自由にしててもいいよ」
幼稚園の子供達を集め、一応お約束ごとを聞かせる。
「放送であつまれーって言ったら、ここに集まりますよ」
「あいっ」
「はしゃぎすぎて迷子になりませんね」
「はーい」
「知らない人にはついていきませんよ」
「あいっ!」
「いっぱい食べすぎしませんよ」
「あーい!」
皆とてもよい返事をしているが、半分くらいしか聞いてないと思う。目はもう私の方で無く、風船や綿飴の方に釘付けだ。まあ、お父さんお母さんも一緒だし、お城の衛兵さん達が各所で見張っているので大丈夫だろう。
「じゃあ、お祭り楽しんでね!」
「わーい!」
保護者の方々と散った園児達。揃いの衣装を着ているので目立つといえば目立つ。はい、作ってもらいました浴衣! 子供用なんで帯もリボンみたいな兵児帯を結ぶだけなので簡単。前合わせで自由がきくので手が沢山ある子や人型の体をしていない子も、ちゃんとそれっぽく着こなせてます。
「では先生方も時間まで見回りをかねて楽しんで来て下さい」
さて。私もさっきから服の裾を引っ張って催促しているリノちゃんのお相手をしないとね。
「勇者様、一緒にあちらを見てきましょう!」
てんちゃんはエイジ君の腕をとり、半ば引き摺るように連れて行った。おお、若いね~熱いね~。歳は倍だが、どう見てもてんちゃんの方がリードしているように思う。
マーム先生は家族と、メイア先生はレーさんピコさんと行くみたい。
「ママ! わたがち、買うおやくしょく」
「そうね。パパは?」
「まおーしゃまとご用事。えらいちと、来てう」
そういえば国賓級も何人かおいでだったな。
国の宰相閣下に幼稚園の先生、我が家のパパと何足もの草鞋を履いているウリエノイルさんは死ぬほど忙しい。リノちゃんと屋台を見て回るんだと張り切っていたけど、残念だね。
何だかこういうの懐かしい。子供の頃近くの神社であった夏祭りや、盆踊りを思い出す。もうすっかりこちらに馴染んで、家族もいる今でも思い出すと胸が痛くなる。
花火に見惚れてて迷子になった時、泣きそうな顔をしたお父さんの大きな手、浴衣を着せてくれたお母さん。皆まだ元気なんだろうか。
進藤心菜は死んじゃったけど、あなた達の孫がここにもいるんですよ。とっても可愛い女の子ですよ。でもきっとお兄ちゃんが孫を見せてあげてるよね。
賑やかで楽しい夏祭りなのに、妙にしんみりしてしまった。
「よーし、リノちゃん。まずは綿飴買って、次はカキ氷だよ」
「うれちー!」
……食べすぎはしませんと言ったのはこの口だったんだけどね。
はじける綿飴は実は私のお気に入りなのだ。ものすごく刺激的な食べ物。
「二つください」
銅貨を渡すと、手が何本もあるちょっとカマキリみたいな顔のおじさんがニッコリ笑って渡してくれた。
「ほい。そろそろ当たりが出る頃だよ。お嬢ちゃんが当たりだといいねぇ」
一見ちょっと色のついた普通の綿飴。私は水色、リノちゃんがピンク。
「じゃあ食べてみようか?」
「きんちょ、ちましゅ」
ふわふわの飴をぱくん。口の中に爽やかな甘い味が広がる。
ぱん、ぱん。軽やかな音をたてて綿飴が弾け始めた。
「急げ~!」
慌てて食べないと無くなっちゃうのが難点ですけど、美味しいの。
ぱあん! もう一息、というところで、リノちゃんの綿飴が大きな音をたててはじけた。
「わー! 当たりだぉ! パパにほーこくちないと!」
弾けた中から可愛い小さな角ウサギが現れ、リノちゃんの周りをくるくるぴょんぴょんした後すうっと消えた。
そう、このはじける綿飴は当たりだと何かが出てくるの。勿論幻だからすぐに消えてしまうけど、とっても面白い。ちょっとだけハッピーになれる。
「ママはハズレだったわ」
喜ぶ娘と手を繋いで、次に行こうとした時、
「ココナ先生!」
声に振り返ると、何人かの若い男の子達がユーリちゃんと一緒に立っていた。赤い髪の背の高い男の子、緑の蠢く髪に大人しそうな可愛い顔……随分見た目は変わってるけど、一瞬で小さい時の彼等の顔にすり替わった。
「くーちゃん、かーくん!」
「お元気そうですね。他のみんなも来てますよ」
猫耳の綺麗な女の子はゆきちゃん、スケルトンのまー君は背が伸びただけでそんなに変わってないね。後ろに壁みたいに立ってるのはよっ君。ちょっと露出高めのアマゾネスみたいなスタイルのいい女の子はみぃちゃん。
みんな立派になって。そっか、魔王さまは卒園生にも招待状を出したと言っておられた。これって何て嬉しいんだろう。
小さな手型足型を押した日のことを思い出して思わず涙がこぼれた。ユーリちゃんやてんちゃんが大きくなったんだもの、皆だって大きくなってるのは当たり前なんだけど……昔少し勤めてた園の園長先生が仰っていた。
「大変だけど保育士は幸せな仕事だ」って。本当にそう思う瞬間。
「先生、泣いちゃってるの?」
「だって、皆こんなに大きくなって」
「先生だってお母さんになってるじゃないですか」
そうだよね。うん。中身も見た目もちっとも変わってないけど、やっぱり皆前に向かって進んでるんだよね。
ユーリちゃんは昔のお友達達とお祭り会場へ消えた。
「ママ、カキ氷~」
リノちゃんがぐいぐい引っ張るので、雪男のカキ氷やさんに行く。
「何味がいいかな」
えっと、グリグリ味にポタポタ味、ビリビリ味、ヒーハー味……微妙。
とりあえず無難に一見イチゴ味っぽい赤いグリグリ味を一つ頼んで、ふと横を見ると、ぽつんと一人立ってる子が。
「ペルちゃん?」
「あ、先生、リノちゃん」
「お母さんは? 迷子になっちゃった?」
「ううん、お母さん忙しくて後から来るから、僕一人で来たの」
……ルウラの送迎があったからまあわからなくも無いけど。今まで一人でいたんだ。なんだか可哀想。
それよりもだ。そっか、サリエノーアさんはまだ来ておいででないのか。きっと魔王様はやきもきして探しておいでだろうな。
「じゃあ、お母さんが来るまで、一緒に遊んでようか。そうだ、ペルちゃんもカキ氷食べる?」
「え……でも……」
「遠慮しない。ほら」
もう一つ黄色いビリビリ味をもらって、少し喧騒から離れた方で三人で座った。
「ちべたーい」
「美味しい!」
チビ天使さん達はご機嫌です。
「一口ちょうだい」
同時に差し出されたスプーンをぱくん。冷た~い。
うん、美味しいけどグリグリビリビリしました……こんなの食べて子供達は大丈夫なんだろうかと思わなくも無い。
その時、合図の放送が響いた。
「わははははは! もうすぐ踊りを始めるぞ! 幼稚園の皆はやぐらの近くにあつまれよ~ははっ」
司会、やっぱりジラソレのようです。
0
お気に入りに追加
552
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。