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アナザールート その111 再会
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「ぁ・・・あ゛・・・ゃあ・・・、嫌ぁ・・・・・・」
僕は目眩を起こし、その場に崩れ落ち
「もう・・・止め・・・て・・・、もう許し・・・て・・・」
全裸のまま、女の子座りで床にへたり込み、両手で顔を覆い、医者に弱々しく懇願する。
「大丈夫ですか、時雨君?」
医者がデジカメを置いて駆け寄って、僕の両肩に手を置いて軽く僕を揺すり、そして僕の顔を覗き込む。
「ぅ・・・ぁ・・・・・・えっ?」
僕は肩を揺すられて“あの夜”の白昼夢から目覚め、そして、すぐ目の前に医者の顔があることに気づいて一瞬だけ医者と視線を合わせて、すぐにその視線を外した。
「ぁ・・・そのぉ・・・」
医者になんて説明すればいいのだろう。
僕は目を泳がせながら、しどろもどろに言葉を探したけれど、上手く言葉が出てこない。
医者は、そんな僕に笑いかけると、ゆっくりと僕を抱き起こしながら言った。
「無理に説明しなくてもいいですよ、まずは椅子に座って休みましょうか。」
そう言って僕の肩を抱き、ふらつく僕を支えながら、診察室の奥に僕を誘導しながら歩き出した。
本当はこの医者に肩を抱かれることも、触れられることさえ嫌だった。
だけど、さっきの白昼夢の影響で頭に霧がかかったみたいにぼぉっとしていて、医者の手を振り払うことさえ忘れて、誘われるままに足を進めていった。
ふらつく身体を医者に支えられながら、診察室の奥、白いカーテンで仕切られて小部屋のようになっているスペースまで歩く。
そして医者が、カーテンを開くとそこにあったのは、薄い青色の合皮張りの大きな1人掛けのソファーだった。
合皮と金属とプラスチックで作られたその椅子は、一見すると普通の椅子のように見えたが、どこか病院らしい無機質な雰囲気をまとっている。
その椅子のパッと見の印象は、強いて言うならリクライニングチェアーに近いだろうか。
よく見れば、座面の下に・・・ちょうどふくらはぎが収まるような、ちくわを半分に切っって並べたような、そんな半円形の支えが二つ並んでいることに違和感を覚えたはずだ。
だけど、この時の僕は意識が朦朧としていて、その違和感に気付くことが出来なかった。
「ほら、そこの椅子に座って楽にして・・・」
僕は、医者がそう言いながら勧める消毒液の匂いのする椅子に、何の疑問も持たずに座面に腰掛けると、椅子の背もたれが倒れ、座面下の半円形の窪みも僕のふくらはぎを下から持ち上げるように迫り上がって、ベッドに横になっているような楽な姿勢になった。
僕はその椅子に身体を預けて、力の入らない身体を一刻も早く回復させたくて、目をつぶって深呼吸を繰り返す。
その時だった、僕の左脚に、何か柔らかいもので圧迫され、固定される・・・そんな感触を感じた。
「えっ・・・何を・・・!?」
何をされたのか分からず、医者を問いただそうとした次の瞬間には、右脚も同じように固定されていた。
あっと思う間もなかった。
上半身を起こし何も身につけていない下半身を覗き込むと、下から半円形の支えに持ち上げられた僕のふくらはぎは、両脚とも半円形の支えと対になるような半円形のクッションを被せられ、その上からナイロンのベルトが巻き付けられ、固定されているのが見えた。
「何するっ!?・・・や、やぁ、ああ!!」
更に、医者は僕の両手首にも、ふくらはぎと同じような薄いクッションを被せ、椅子の肘掛けに押し付けると、手際よくナイロンのベルトを締め付けて両手首を拘束してゆく。
その時には、僕も自分がこの椅子に拘束されて、自由を奪われてようとしていることに気づいて、逃げようとした。
けれど、元々チビで痩せっぽちの僕が、ましてや、女性ホルモンのせいで筋肉も落ちてきている僕は悲しい程に非力で・・・
僕は大人の男の人の力にやすやすと押さえ込まれ、両脚に続いて両手首も椅子に縛りつけられてしまう。
不自由な手足にどんなに力を込めても、柔らかいクッションの、それでいてしっかりとしたよ拘束は弛まない・・・その現実を思い知らされると、僕は医者を睨みつけて、1オクターブ低い声を絞り出した。
「これ、何のつもり・・・なんですか?」
「そう怖い声を出さないでくれよ、“時雨ちゃん”」
医者の僕の呼び方が“時雨くん”から“時雨ちゃん”に変わっていた。
互いに相手を一個人として尊重しを合う関係から、僕をひとつ下の存在として見下す・・・医者がそんな本性を現した、そんな気がして怒りが込み上げてくる。
医者は、僕の怒気を涼しい顔で受け流して、診察室の机、さっき僕を出迎えた時に座っていた机に戻った。
そして、引き出しから何かを取り出すと、それを後ろ手に持って僕から見えないように隠しながら戻ってきて、言った
「ところで、まだ私が誰だか気づいてくれないのかな?」
その顔には、さっきまでの人の良さそうな表情はかき消え、獲物を前に舌舐めずりをする捕食者の酷薄な笑みで歪んで見えた。
「あなたなんか知りません!、今すぐにこの拘束を離して下さい。大声出しますよ!!」
「悲しいな、じゃあこれでどうだい?」
そう言って医者はいったん僕に背を向け、そして直ぐに振り返った。
「ひっ・・・!!!!!」
僕は、その顔を見て恐怖で凍りつく。
「や・・・やぁ・・・・・・」
目に恐怖で目に涙が浮かび、医者の輪郭が得体の知れない化け物のように歪んで見えた。
奥歯が合わずにカチカチと音を立てていた。
「そん・・・な・・・、やだよ・・・助け・・・て・・・よ・・・」
ふるふると首を振り、ゆっくりと近づいて来る医者から離れたくて震える身体をよじる。
医者の表情は口角を残酷な愉悦で吊り上げた口元以外見えなかった。
何故ならその顔は口元以外、仮面に覆われていたから。
その仮面は・・・あの夜、僕と夕立が大勢の大人に拷問同然に弄ばれ、壊された“あの夜”。僕を徹底的にいたぶり抜いた男がつけていたピエロの仮面だった。
僕は目眩を起こし、その場に崩れ落ち
「もう・・・止め・・・て・・・、もう許し・・・て・・・」
全裸のまま、女の子座りで床にへたり込み、両手で顔を覆い、医者に弱々しく懇願する。
「大丈夫ですか、時雨君?」
医者がデジカメを置いて駆け寄って、僕の両肩に手を置いて軽く僕を揺すり、そして僕の顔を覗き込む。
「ぅ・・・ぁ・・・・・・えっ?」
僕は肩を揺すられて“あの夜”の白昼夢から目覚め、そして、すぐ目の前に医者の顔があることに気づいて一瞬だけ医者と視線を合わせて、すぐにその視線を外した。
「ぁ・・・そのぉ・・・」
医者になんて説明すればいいのだろう。
僕は目を泳がせながら、しどろもどろに言葉を探したけれど、上手く言葉が出てこない。
医者は、そんな僕に笑いかけると、ゆっくりと僕を抱き起こしながら言った。
「無理に説明しなくてもいいですよ、まずは椅子に座って休みましょうか。」
そう言って僕の肩を抱き、ふらつく僕を支えながら、診察室の奥に僕を誘導しながら歩き出した。
本当はこの医者に肩を抱かれることも、触れられることさえ嫌だった。
だけど、さっきの白昼夢の影響で頭に霧がかかったみたいにぼぉっとしていて、医者の手を振り払うことさえ忘れて、誘われるままに足を進めていった。
ふらつく身体を医者に支えられながら、診察室の奥、白いカーテンで仕切られて小部屋のようになっているスペースまで歩く。
そして医者が、カーテンを開くとそこにあったのは、薄い青色の合皮張りの大きな1人掛けのソファーだった。
合皮と金属とプラスチックで作られたその椅子は、一見すると普通の椅子のように見えたが、どこか病院らしい無機質な雰囲気をまとっている。
その椅子のパッと見の印象は、強いて言うならリクライニングチェアーに近いだろうか。
よく見れば、座面の下に・・・ちょうどふくらはぎが収まるような、ちくわを半分に切っって並べたような、そんな半円形の支えが二つ並んでいることに違和感を覚えたはずだ。
だけど、この時の僕は意識が朦朧としていて、その違和感に気付くことが出来なかった。
「ほら、そこの椅子に座って楽にして・・・」
僕は、医者がそう言いながら勧める消毒液の匂いのする椅子に、何の疑問も持たずに座面に腰掛けると、椅子の背もたれが倒れ、座面下の半円形の窪みも僕のふくらはぎを下から持ち上げるように迫り上がって、ベッドに横になっているような楽な姿勢になった。
僕はその椅子に身体を預けて、力の入らない身体を一刻も早く回復させたくて、目をつぶって深呼吸を繰り返す。
その時だった、僕の左脚に、何か柔らかいもので圧迫され、固定される・・・そんな感触を感じた。
「えっ・・・何を・・・!?」
何をされたのか分からず、医者を問いただそうとした次の瞬間には、右脚も同じように固定されていた。
あっと思う間もなかった。
上半身を起こし何も身につけていない下半身を覗き込むと、下から半円形の支えに持ち上げられた僕のふくらはぎは、両脚とも半円形の支えと対になるような半円形のクッションを被せられ、その上からナイロンのベルトが巻き付けられ、固定されているのが見えた。
「何するっ!?・・・や、やぁ、ああ!!」
更に、医者は僕の両手首にも、ふくらはぎと同じような薄いクッションを被せ、椅子の肘掛けに押し付けると、手際よくナイロンのベルトを締め付けて両手首を拘束してゆく。
その時には、僕も自分がこの椅子に拘束されて、自由を奪われてようとしていることに気づいて、逃げようとした。
けれど、元々チビで痩せっぽちの僕が、ましてや、女性ホルモンのせいで筋肉も落ちてきている僕は悲しい程に非力で・・・
僕は大人の男の人の力にやすやすと押さえ込まれ、両脚に続いて両手首も椅子に縛りつけられてしまう。
不自由な手足にどんなに力を込めても、柔らかいクッションの、それでいてしっかりとしたよ拘束は弛まない・・・その現実を思い知らされると、僕は医者を睨みつけて、1オクターブ低い声を絞り出した。
「これ、何のつもり・・・なんですか?」
「そう怖い声を出さないでくれよ、“時雨ちゃん”」
医者の僕の呼び方が“時雨くん”から“時雨ちゃん”に変わっていた。
互いに相手を一個人として尊重しを合う関係から、僕をひとつ下の存在として見下す・・・医者がそんな本性を現した、そんな気がして怒りが込み上げてくる。
医者は、僕の怒気を涼しい顔で受け流して、診察室の机、さっき僕を出迎えた時に座っていた机に戻った。
そして、引き出しから何かを取り出すと、それを後ろ手に持って僕から見えないように隠しながら戻ってきて、言った
「ところで、まだ私が誰だか気づいてくれないのかな?」
その顔には、さっきまでの人の良さそうな表情はかき消え、獲物を前に舌舐めずりをする捕食者の酷薄な笑みで歪んで見えた。
「あなたなんか知りません!、今すぐにこの拘束を離して下さい。大声出しますよ!!」
「悲しいな、じゃあこれでどうだい?」
そう言って医者はいったん僕に背を向け、そして直ぐに振り返った。
「ひっ・・・!!!!!」
僕は、その顔を見て恐怖で凍りつく。
「や・・・やぁ・・・・・・」
目に恐怖で目に涙が浮かび、医者の輪郭が得体の知れない化け物のように歪んで見えた。
奥歯が合わずにカチカチと音を立てていた。
「そん・・・な・・・、やだよ・・・助け・・・て・・・よ・・・」
ふるふると首を振り、ゆっくりと近づいて来る医者から離れたくて震える身体をよじる。
医者の表情は口角を残酷な愉悦で吊り上げた口元以外見えなかった。
何故ならその顔は口元以外、仮面に覆われていたから。
その仮面は・・・あの夜、僕と夕立が大勢の大人に拷問同然に弄ばれ、壊された“あの夜”。僕を徹底的にいたぶり抜いた男がつけていたピエロの仮面だった。
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