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アナザールート その104 [挿絵あり]優しい凌辱-その5-
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「なあ・・・時雨、お前もう正気に戻ってるんだろう?」
優しくて、ちょっと力のない声だった。
だけどその言葉は僕を恐怖で凍りつかせるには十分な内容だった。
僕のマインドコントロールが解けたのが、バレている。
また、地下室に閉じ込められて“躾”をされるかもしれない。
あの時の絶望感と孤独感・・・そのトラウマがフラッシュバックし、僕は一瞬でパニックに陥った。
「ち、違・・・う、正気って・・・何の、こと・・・です・・・」
真っ白になった頭で、何度もつっかえながら、切れ切れの言い訳を紡ぐ。
全身に冷や汗が浮かび、ご主人様と合わせられない視線が宙を泳ぐ。
それこそが、僕がマインドコントロールから抜け出した何よりの証拠なのに、自分でそれに気づけないほどに僕は動揺していた。
「いや・・・だ。“躾”は・・・いや・・・」
僕はふるふると頭を振り、震える声を絞り出した。
自分自身で無意識のうちに、口にした“躾”という言葉。
その言葉の僅かな重みが加わった瞬間、僕の心の中でかろうじて押し留めていた恐怖が臨界点を超えた。
「いや・・・嫌、いやぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
何も考えられなかった。
僕は、ご主人様の顔を両手で押し退けるように突っ張り、無茶苦茶に両脚をバタつかせ、身体をよじって、ご主人様に組み敷かれた体勢から抜け出して、素裸のまま走り出す。
僕にあてがわれた狭い私室のドアを開け、長い廊下を逃げ出す。
全力で走っているつもり・・・だった。
だけど、さっきまで身体を弄ばれ、もう勃起もできないほどクリイキを強要され、息も出来ないほどのメスイキを体験させられた。
そんな消耗しきった体力、萎えきった手足で進む廊下は、まるで水の中でもがきながら進むようで、気ばかり焦って少しも進むことができない、それが現実だった。
だいたい、ここから逃げ出して何処へ行こうというのだろう。
あの義父と母のいる家に戻るのか?
それとも、警察に駆け込むのか?
そんな考えなんて何もなかった。
ただ、ここではない何処かへ逃げ出したかった。
ただ、恐怖から逃げ出したかった。
あえぎ、あえぎ、進む。
直ぐに走れなくなり、壁に身体をもたれかけるようにしながら進む。
その時だった。
背後からご主人様の声が響く。
「時雨・・・何処にいくつもりなんだ?
何処へも行けないぞ。」
静かな声だった。
怒号でもなく、嘲笑するでもない、淡々と現実を告げる声だ。
びくっとして、後ろを振り返ると、すぐ後ろにご主人様が迫っていた。
僕同様に素裸で、少し大股で歩いていて、息も切らしていない。
厚い胸板も、6つに割れた腹筋も、その身体を支える太い足も、素裸のまま晒したその姿に、僕の全力などこの人の前では、何の意味もい・・・僕なんてひ弱なメスの子供だ、そんな圧倒的な力の差を見せつけられた気がした。
「ひっ・・・!!!!!」
恐怖と絶望感で手足から力が抜け、僕は床にへたり込んだ。
「許し・・・て・・・」
両目から涙が溢れ、ガクガクと震えながら、それでも僕は犬みたいな四つん這いで惨めに逃げた。
あの地下室で味わった、あらゆる尊厳を踏み躙られ、愛するものを奪われ、摩耗した心を砕かれる絶望感・・・もう一度あれをされるくらいなら死んだ方がマシだ、そう思った。
「部屋に戻るぞ・・・」
「ぁあっ!・・・織田さん、・・・オダさ・・・んっ!!!」
パニックを起こした僕は、無意識のうちに、
愛する人の名を呼び、その人が目の前にいるかのように地面を這いながら右手を伸ばして助けを求める。
「そんなに、あいつが・・・織田ってやつがいいのか?
あんな・・・ヤツが好きなのか?」
背後から聞こえたご主人様の声。
底冷えのするような声だった。
憤怒と嫉妬と・・・僅かな痛みが内包された、低く、静かな声だった。
その声にぞっとして、恐る恐る振り向いて主人様の顔を見上げる。
鬼のような形相を想像し、ガクガクと震えながら、壊れた機械みたいに振り向くと、目に入るのは、意外にも静かな・・・いや、寂しげなご主人様の顔。
「なあ、お前も・・・時雨も・・・、俺を好きになってはくれないのか?」
「あ・・・」
そんな顔を見せられて、僕の頭が急速に冷え、恐怖心も薄れてゆき、ご主人様の望みを理解する。
ご主人様は・・・この人は、愛されたいのか。
そして、自分を愛してくれる人を愛したいのか。
なんて勝手な言い分だろう。
思い出せば僕とこの人は最悪の出会いだった。
初めて会ったあの夜、僕は浣腸され、泣き叫びながら汚物を垂れ流す姿を舞台の上で見せ物にされていた。
そしてこの人は、媚薬漬けの僕を鞭で嬲り、痛みだけで絶頂するマゾイキを無理矢理教え込んだ。
そして次に会った時は僕をお金で買って狭い地下室に閉じ込め、僕の心をすり潰して自分に都合のいい心に作り変えた。
よくもそれで・・・愛してくれなんていえたものだ。
だけど、僕がマインドコントロールでこの人への偽り好意で突き動かされていた時のことも思い出す。
広い食堂でのたった1人での寒々とした食事風景。
この人が帰宅した時、澄まし顔で出迎えて挨拶する僕を見つめながら、僕の頭を撫でた時の嬉しげな顔。
それは・・・酷いことされたけれども、その後はちゃんと優しくして・・・僕を休ませて・・・心配もしてくれていた・・・
心底この人が嫌いなのか・・・自分自身に問いかけると、決してそんな事はないのだ。
多分、僕とこの人は裏表の存在なのだと思う。
この人は、他人を虐め、支配する事でしか人を愛せないサディストだ。
僕はといえば・・・虐められ、圧倒的な力で支配されることで、人を愛するマゾヒストなのだ。
もう少しだけ違った出会いができていたら、僕はこの人のモノになって、身体も、心も、命まで捧げて被虐の愛情に溺れていったのかもしれない。
でも・・・僕の心の中にはもう好きな人がいる。
加虐と被虐の間で育まれる歪んだ愛情抜きで、ただ僕に優しくしてくれて、愛してくれた人がいる。
その人のためになら、何でもしてあげたい人がいる。
だけど・・・だけど・・・
僕の頭の中でこの人への想いと、織田さんへの愛しさがぐるぐると空回って、堂々巡りを繰り返し、逃げることも、目の前のこの人に手を差し伸べることもできず、身動きがも止まった。
そんな僕に、この人は手を伸ばし・・・そっと僕を立ち上がらせて、僕を背中から抱き締めた。
「時雨・・・、“躾”なんてしないから、俺を・・・怖がらないでくれ。」
いつでも自信に溢れ、傲慢な態度を崩さなかったこの人のそんな表情を、弱気な声を聞かされると、心が揺らぐ。
同時に暖かな体温が背中から伝わり、僕の身体を抱きしめる両腕が僕を包み込んだ。
そして、お尻の辺りに押し付けられた、僕を求める雄の象徴のなんという熱さ、硬さ、逞しさ。
「・・・んっ!」
僕のお腹の中の雌の部分が疼き、小さな喘ぎ声が漏れた。
お尻に押し付けられた熱さに、心まで焼かれた気がした。
そして、僕はこの人にいざなわれ、廊下の壁に身体を預けるようにそっと押しつけられ、されるがままに腰を後ろに突き出すポーズを取らされて・・・そして
「っ・・・んぁあああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
僕は後ろから貫かれた。
身体も、心までも。
優しくて、ちょっと力のない声だった。
だけどその言葉は僕を恐怖で凍りつかせるには十分な内容だった。
僕のマインドコントロールが解けたのが、バレている。
また、地下室に閉じ込められて“躾”をされるかもしれない。
あの時の絶望感と孤独感・・・そのトラウマがフラッシュバックし、僕は一瞬でパニックに陥った。
「ち、違・・・う、正気って・・・何の、こと・・・です・・・」
真っ白になった頭で、何度もつっかえながら、切れ切れの言い訳を紡ぐ。
全身に冷や汗が浮かび、ご主人様と合わせられない視線が宙を泳ぐ。
それこそが、僕がマインドコントロールから抜け出した何よりの証拠なのに、自分でそれに気づけないほどに僕は動揺していた。
「いや・・・だ。“躾”は・・・いや・・・」
僕はふるふると頭を振り、震える声を絞り出した。
自分自身で無意識のうちに、口にした“躾”という言葉。
その言葉の僅かな重みが加わった瞬間、僕の心の中でかろうじて押し留めていた恐怖が臨界点を超えた。
「いや・・・嫌、いやぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
何も考えられなかった。
僕は、ご主人様の顔を両手で押し退けるように突っ張り、無茶苦茶に両脚をバタつかせ、身体をよじって、ご主人様に組み敷かれた体勢から抜け出して、素裸のまま走り出す。
僕にあてがわれた狭い私室のドアを開け、長い廊下を逃げ出す。
全力で走っているつもり・・・だった。
だけど、さっきまで身体を弄ばれ、もう勃起もできないほどクリイキを強要され、息も出来ないほどのメスイキを体験させられた。
そんな消耗しきった体力、萎えきった手足で進む廊下は、まるで水の中でもがきながら進むようで、気ばかり焦って少しも進むことができない、それが現実だった。
だいたい、ここから逃げ出して何処へ行こうというのだろう。
あの義父と母のいる家に戻るのか?
それとも、警察に駆け込むのか?
そんな考えなんて何もなかった。
ただ、ここではない何処かへ逃げ出したかった。
ただ、恐怖から逃げ出したかった。
あえぎ、あえぎ、進む。
直ぐに走れなくなり、壁に身体をもたれかけるようにしながら進む。
その時だった。
背後からご主人様の声が響く。
「時雨・・・何処にいくつもりなんだ?
何処へも行けないぞ。」
静かな声だった。
怒号でもなく、嘲笑するでもない、淡々と現実を告げる声だ。
びくっとして、後ろを振り返ると、すぐ後ろにご主人様が迫っていた。
僕同様に素裸で、少し大股で歩いていて、息も切らしていない。
厚い胸板も、6つに割れた腹筋も、その身体を支える太い足も、素裸のまま晒したその姿に、僕の全力などこの人の前では、何の意味もい・・・僕なんてひ弱なメスの子供だ、そんな圧倒的な力の差を見せつけられた気がした。
「ひっ・・・!!!!!」
恐怖と絶望感で手足から力が抜け、僕は床にへたり込んだ。
「許し・・・て・・・」
両目から涙が溢れ、ガクガクと震えながら、それでも僕は犬みたいな四つん這いで惨めに逃げた。
あの地下室で味わった、あらゆる尊厳を踏み躙られ、愛するものを奪われ、摩耗した心を砕かれる絶望感・・・もう一度あれをされるくらいなら死んだ方がマシだ、そう思った。
「部屋に戻るぞ・・・」
「ぁあっ!・・・織田さん、・・・オダさ・・・んっ!!!」
パニックを起こした僕は、無意識のうちに、
愛する人の名を呼び、その人が目の前にいるかのように地面を這いながら右手を伸ばして助けを求める。
「そんなに、あいつが・・・織田ってやつがいいのか?
あんな・・・ヤツが好きなのか?」
背後から聞こえたご主人様の声。
底冷えのするような声だった。
憤怒と嫉妬と・・・僅かな痛みが内包された、低く、静かな声だった。
その声にぞっとして、恐る恐る振り向いて主人様の顔を見上げる。
鬼のような形相を想像し、ガクガクと震えながら、壊れた機械みたいに振り向くと、目に入るのは、意外にも静かな・・・いや、寂しげなご主人様の顔。
「なあ、お前も・・・時雨も・・・、俺を好きになってはくれないのか?」
「あ・・・」
そんな顔を見せられて、僕の頭が急速に冷え、恐怖心も薄れてゆき、ご主人様の望みを理解する。
ご主人様は・・・この人は、愛されたいのか。
そして、自分を愛してくれる人を愛したいのか。
なんて勝手な言い分だろう。
思い出せば僕とこの人は最悪の出会いだった。
初めて会ったあの夜、僕は浣腸され、泣き叫びながら汚物を垂れ流す姿を舞台の上で見せ物にされていた。
そしてこの人は、媚薬漬けの僕を鞭で嬲り、痛みだけで絶頂するマゾイキを無理矢理教え込んだ。
そして次に会った時は僕をお金で買って狭い地下室に閉じ込め、僕の心をすり潰して自分に都合のいい心に作り変えた。
よくもそれで・・・愛してくれなんていえたものだ。
だけど、僕がマインドコントロールでこの人への偽り好意で突き動かされていた時のことも思い出す。
広い食堂でのたった1人での寒々とした食事風景。
この人が帰宅した時、澄まし顔で出迎えて挨拶する僕を見つめながら、僕の頭を撫でた時の嬉しげな顔。
それは・・・酷いことされたけれども、その後はちゃんと優しくして・・・僕を休ませて・・・心配もしてくれていた・・・
心底この人が嫌いなのか・・・自分自身に問いかけると、決してそんな事はないのだ。
多分、僕とこの人は裏表の存在なのだと思う。
この人は、他人を虐め、支配する事でしか人を愛せないサディストだ。
僕はといえば・・・虐められ、圧倒的な力で支配されることで、人を愛するマゾヒストなのだ。
もう少しだけ違った出会いができていたら、僕はこの人のモノになって、身体も、心も、命まで捧げて被虐の愛情に溺れていったのかもしれない。
でも・・・僕の心の中にはもう好きな人がいる。
加虐と被虐の間で育まれる歪んだ愛情抜きで、ただ僕に優しくしてくれて、愛してくれた人がいる。
その人のためになら、何でもしてあげたい人がいる。
だけど・・・だけど・・・
僕の頭の中でこの人への想いと、織田さんへの愛しさがぐるぐると空回って、堂々巡りを繰り返し、逃げることも、目の前のこの人に手を差し伸べることもできず、身動きがも止まった。
そんな僕に、この人は手を伸ばし・・・そっと僕を立ち上がらせて、僕を背中から抱き締めた。
「時雨・・・、“躾”なんてしないから、俺を・・・怖がらないでくれ。」
いつでも自信に溢れ、傲慢な態度を崩さなかったこの人のそんな表情を、弱気な声を聞かされると、心が揺らぐ。
同時に暖かな体温が背中から伝わり、僕の身体を抱きしめる両腕が僕を包み込んだ。
そして、お尻の辺りに押し付けられた、僕を求める雄の象徴のなんという熱さ、硬さ、逞しさ。
「・・・んっ!」
僕のお腹の中の雌の部分が疼き、小さな喘ぎ声が漏れた。
お尻に押し付けられた熱さに、心まで焼かれた気がした。
そして、僕はこの人にいざなわれ、廊下の壁に身体を預けるようにそっと押しつけられ、されるがままに腰を後ろに突き出すポーズを取らされて・・・そして
「っ・・・んぁあああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
僕は後ろから貫かれた。
身体も、心までも。
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