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アナザールート その95 片付け

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今回もエロはございません・・・

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僕はベッドの中で子猫みたいに丸くなって眠った。

少しして、メイド長さんが仕事を休んだ僕を気遣って、部屋まで朝食を持って来てくれた。

その後、メイド長さんが、僕の首元の首に残った首絞めの痕を発見し、卒倒しかけた挙句にその場で泣き崩れるのを必死で宥めるという一幕も挟みながらも、僕はこんこんと眠った。

そうして、お昼を過ぎた頃に目覚めると、僕はベッドから起き上がれるようになり、部屋にあるシャワーを浴びてスッキリし、ゆったりしたTシャツとハーフパンツに着替えて、僕はベッドにちょこんと腰かけ寛いでいた。

さて、今日は暇になってしまったなぁ・・・どうしようか?

こういう時は、ちょっと前ならスマホをいじって暇を潰していたものだけれど、そのスマホも取り上げられたままだ。

手持ち無沙汰のあまり狭い部屋を見回すと、部屋の隅っこに積まれた二箱の段ボールが目に入る。

あれは・・・荷造りも許されず、体ひとつでこの屋敷に連れて来られて、後から送られてきた僕の私物のはずだ。

僕はそれを醒めた目で眺める。

今の僕には、ご主人様とこの屋敷での仕事が全てだ。

ご主人様に愛されて、生活に必要なものは全て与えられ・・・昔の私物も、かつてのお店での生活にも、正直興味を無くしてしまってついつい放置してしまっていた荷物だった。

とはいえ、いつまで放置していても邪魔だな・・・
この機会にあれを整理してしまおうか。

「やろうか!」

と自分に気合を入れて、ベッドから立ち上がり、段ボール箱に手を伸ばして、箱を閉じているガムテープをビリビリと剥がし、ガムテープを剥がした跡を良く見ると、この箱は一度開けられたっぽい跡がある事に気づく。

中身を一度検査されているのかな?
中身も何となく掻き回されたような乱れかたをしているように見える。

多分スマホとかナイフとかこっそりと紛れ込ませると没収されるんだろうな。

そんな事を思いながら、中に入っている雑多な荷物を床に広げてゆく。

私服と、僕の唯一男の子っぽい趣味で集めた、少しばかりのサバイバルグッズ、そして何冊かの本。

ミニマリスト志向の強い僕は、本はスマホで電子書籍を読む派だったのだけれど、料理しながらスマホをいじるのはちょっと・・・という理由でレシピ本だけは紙の本を愛用していた。

料理しながらページをめくったりしたせいで、あちこちに小さなシミがついてしまったレシピ本。

ちょっと懐かしくなって、それを手に取ってパラパラと捲ってゆくと、かつて作った料理や、夕立・・・ハルカと二人でバカな話しをしながら賑やかに食べた食事の光景がだんだんと脳裏に浮かび始める。

ああ、この料理はハルカが好きだったな。

逆にこっちはあんまり食べてくれなくて・・・それに、玄米ご飯も好きじゃなかったな。

そういえば、自炊の節約&低糖質メニューばっかりではストレスが溜まるから、月に1回は2人で安い焼肉の食べ放題に行ったっけ。

あの時のハルカは、この身体の何処に入るんだ?と思うくらい、ご飯も肉もてんこ盛りでもりもり食べてたっけ。
まあ、僕もハルカのことは言えなかったけれど。
2人とも育ち盛りの男の子だしね・・・

「ハルカ、ちゃんとしたご飯食べてるかい?
コンビニ弁当やジャンクフードばっかりじゃ肌が荒れるよ・・・」

僕は自然に独り言を呟きながら本をめくっていた。

やがて、本にぽたり・・・と水滴が落ちた。

それはいつの間にか両眼から溢れていた涙だった。

ぽたり・・・ぽたり・・・

次々と涙が溢れて頬をつたい、料理の写真を濡らす。
僕はそれに気付いて無意識に目を擦り、涙を拭う。

あれ、おかしいな。
もう・・・昔の事は忘れた筈なのに・・・

僕にはご主人様だけ居てくれればいいのに・・・

なんで・・・こんなに涙が溢れて止まらないんだろう?・・・
なんで・・・こんなに胸の奥が苦しくて、切なくて、寂しいんだろう?

その時だった。
ページの間から、はらり、と一枚の紙が滑り落ちた。

何かメモでも挟んでおいたっけ?
その紙を摘み上げて、その上に視線を落とすと・・・

A5用紙くらいの紙にびっしりと手書きの文字が並んでいる。

これは、ハルカからの僕への手紙だ。
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