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アナザールート その85 幸せ
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今回、エロはありません・・・
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「僕を愛して、虐めて・・・そして、僕に飽きる前に虐め殺して下さいね。
僕の・・・ご主人様。」
僕は、目の前に差し出された甘美な毒杯を飲み干して・・・ご主人様の本当の奴隷に、いや、愛奴に堕ちた。
そして、調教で追い詰められるプレッシャーから解放された直後、僕は気絶するように眠りに落ちた。
まだ大人になりきっていない僕には、苛烈な不眠不休の調教は体力的にも、精神的にもとっく限界を超えていたのだ。
目覚めた時、僕はあの地下室ではなく、病院のような小部屋の中で、そこに置いてあるベッドに素裸で横たわっていた。
ふと、人の気配を感じて視線を動かすと、ベット横のスツールに腰掛けた白髪混じりの初老の女の人と目が合った。
確かこの人は、僕がこの屋敷に連れてこられた時に、顔を合わせたメイド長さん・・・5人いたメイドというか家政婦というか、そんな感じの女の人の中で一番年長者っぽい人だったと思う。
「やっと起きたのね、時雨くん・・・」
そのメイド長さんが僕の名を読んだ。
この人は自分を村松さんと名乗った。
この屋敷で働く5人の使用人・・・今後はわかりやすくメイドさんと呼ぼう。
そのメイドさんのメイド長を務めている女性だそうだ。
気絶するように眠ってしまい、目覚めない僕にずっと付き添ってくれていたらしい。
気付けば、自分自身やご主人様の精液、僕が垂れ流した汗や涙・・・涎といった体液が綺麗に拭き取られている。
このメイド長さんが、やってくれたのだろう。
「酷い目にあったわね、大丈夫?」
僕の手をそっと握り、痛ましいものを見るような目つきで僕を見つめて、優しい声でそう呼びかけてくれる。
僕はベッドの上で身体を起こし、頭を下げて言った。
「色々とご迷惑をおかけしてごめんなさい。僕は・・・」
と、自己紹介や、なぜ僕がこんな目に合っているか・・・そんな事情を説明しようとしたのだけれど・・・
「言わなくていいわよ。
あなたのことは、旦那様から全部聞いたいるから。
今はゆっくりお休みなさい。」
と、止められる。
そして、メイド長さんが僕に立ち上がると・・・僕をそっと抱き締める。
「辛かったわよね、旦那様に買われて・・・あんな酷い痕が残るほどぶたれて・・・身体まで弄ばれて・・・
本当なら私達大人が、警察を呼んででも時雨くんみたいな子供を守ってあげなくちゃいけないのに・・・
時雨くんを助けてあげられない、情け無い大人でごめんなさい。
私達を許してね・・・」
そんなふうに謝罪された。
僕を抱き締める腕が震え、触れ合った頬が僕のものではない温かい涙で濡れてゆく。
ああ、この人は僕を本気で心配してくれたんだな。
少なくとも新入りを取り囲んで、“殺す”“埋める”なんて凄むようなあのお店に比べれば・・・この屋敷で働く人達はきっと良い人達に違いない。
ご主人様はちょっとアレな人だけど。
僕を抱き締めて、“ごめんね”、“許してね”と謝罪の言葉を繰り返す白髪混じりのメイド長さん。
その背中に手を回すと、その背中は痩せていて、小さく感じた。
きっと苦労の多い人生を送ってきた人の背中なんだろう。
ふと、もう亡くなってしまった、祖母を思い出した。
遊びに行くと、笑顔で顔を綻ばせて頭を撫でてくれて、お菓子を沢山食べさせてくれたっけ。
メイド長さんは、この屋敷で働く人達の事情を話してくれた。
ここでメイドとして働いている女の人達は、メイド長さんを含めて5人。
皆、それぞれの家庭の事情を抱えている人達だそうだ。
例えばメイド長さんは、僕とそう歳の変わらない難病の孫がいて、充分な治療を受けさせるには大金が必要だとか。
ご主人様はそういった人達を集めて、相場よりかなり高額なお給料で雇っている。
だから・・・ご主人様が未成年者を屋敷に監禁し、強姦しようが、暴行しようが、警察に連絡はできない。
ご主人様が警察に捕まってしまえば、高給の仕事を失って、皆の生活が、それぞれが抱える事情が破綻するのだ。
要するに、皆んな僕と同じだ。
お金の力で縛りつけられ、ご主人様には絶対服従を強いられている、そういう事だそうだ。
ただ、メイド長さんが言うには、ご主人様はそう悪い人では無いらしい。
意外にも一度自分の身内と認めた人には優しくて、面倒見も良いとか。
例えば、ご主人様は、メイド長さんのお孫さんの治療の為に奔走し、方々手を尽くして良い専門医を探し、そして、ベッドの空きの無かった病院への入院を捩じ込む為に骨を折り、お給料以外にも高額な入院費の一部を補助してくれているらしい。
「お金だけでは、あの旦那様にはお仕えできないわ。」
とメイド長さんが言って、少しだけ笑ってくれた。
とはいえ、僕の境遇を知ってそれを見過ごすのは、さすがに心を傷めたのだろう。
「だから、私達は可哀想な時雨くんを助けてあげられない・・・
こんな事を言えた義理ではないけれど、無力な私達を許してください。」
そう言って僕に深々と頭を下げて謝罪する。
わかっている。
仕方のないことなんだ。
メイド長さんも、僕も、ハルカも、織田さんも・・・
皆この残酷な世界でもがいて、苦しんで、それでも必死に生きている。
メイド長さんを責めたってしょうがないことなんだ。
出来ることと出来ないことでは、出来ないことの方が圧倒的に多いんだ。
ただ、誤解だけは解いておかなくちゃ。
このままではご主人様だけが悪者みたいだ。
だから・・・僕は涙ぐみ頭を下げ続けるメイド長さんの手を取って言った。
「気にしてませんから、頭を上げて下さい。
それに、僕は可哀想なんかじゃありません。
僕はご主人様を愛しています。」
後から冷静に考えれば・・・この時の僕は狂っていた。
“躾”と称した不眠不休の快感拷問。
精神的に追い詰めて自尊心を徹底的に破壊した挙句の、ご主人様への依存の誘導。
そして、苦痛と・・・それを上回る快感で、僕がひた隠しにしていた被虐願望を剥き出しにされて支配された。
そうして、僕は心を壊され、ご主人様への偽りの愛情を植えつけられたのだ。
だけど、それには自分自身では気付けない、この時の僕の心の中には愛し、愛される人と出会えた喜びが確かにあった。
この時は、あれほど慕っていた織田さんへの思いさえ霧散していた。
だから、僕は歌うように、譫言のように・・・
きっとガラス玉のような澄み切った目で、心からの言葉を紡ぐ。
「ご主人様に愛していただくことが、虐めていただくことが・・・僕の幸せなんです。
支配されるのも、傷つけられるのも、僕の悦びなんです。
だから、だから・・・僕は望んでご主人様の奴隷になったんですよ。」
これは僕とご主人様の愛の形なんだ・・・僕を哀れまなくいい、安心して欲しい。
そう伝えたかった。
「しぐ・・・れ・・・くん・・・」
だけど、メイド長さんは安心するどころか、その顔からみるみる血の気が引いてゆき、僅かに掠れた声で僕の名を呼ぶ。
そして、優しい目から大粒の涙を溢れさせ、再び僕を抱き締めた。
「ああっ、時雨くん・・・。
あんなに泣いていたのに、あんなに嫌がっていたのに・・・
ごめんね、ごめんね。助けてあげられなくてごめんなさい。
ゆっくりでいいから・・・少しずつでいいから・・・
心も、身体も・・・癒やしていこうね。」
そうして僕を力いっぱい抱き締めて号泣する。
力いっぱいと言っても、ご主人様の身体が溶け合うような、熱くて甘い抱擁に比べれば、羽毛のように軽く、優しい抱擁だ。
だけど、僕の為に心を砕いて、涙も流してくれるメイド長さんのその温もりは本物だ。
だから僕もそっとメイド長さんの背中に手を回して、その痩せた身体を抱き締め、そして思う。
やっぱり、他人に僕達の愛は、交わした“情“は理解されないんだな・・・。
これ以上何を言っても優しいメイド長さんを悲しませるだけなのだな・・・と。
だから、僕はメイド長さんこと、村松さんに微笑んでみせて、そして穏やかに語りかける。
「バカな事を言いました・・・忘れて下さい。
でも僕は、ご主人様を嫌ってはいません、ホントですよ。
それに村松さんが思うほど可哀想でもありません。
だから、僕の為に悲しまないで下さい。泣かないで下さい。
お願いしますから・・・」
こんな状況で微笑み、穏やかに語ることこそが異常なのだということに気づけぬままに。
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僕の・・・ご主人様。」
僕は、目の前に差し出された甘美な毒杯を飲み干して・・・ご主人様の本当の奴隷に、いや、愛奴に堕ちた。
そして、調教で追い詰められるプレッシャーから解放された直後、僕は気絶するように眠りに落ちた。
まだ大人になりきっていない僕には、苛烈な不眠不休の調教は体力的にも、精神的にもとっく限界を超えていたのだ。
目覚めた時、僕はあの地下室ではなく、病院のような小部屋の中で、そこに置いてあるベッドに素裸で横たわっていた。
ふと、人の気配を感じて視線を動かすと、ベット横のスツールに腰掛けた白髪混じりの初老の女の人と目が合った。
確かこの人は、僕がこの屋敷に連れてこられた時に、顔を合わせたメイド長さん・・・5人いたメイドというか家政婦というか、そんな感じの女の人の中で一番年長者っぽい人だったと思う。
「やっと起きたのね、時雨くん・・・」
そのメイド長さんが僕の名を読んだ。
この人は自分を村松さんと名乗った。
この屋敷で働く5人の使用人・・・今後はわかりやすくメイドさんと呼ぼう。
そのメイドさんのメイド長を務めている女性だそうだ。
気絶するように眠ってしまい、目覚めない僕にずっと付き添ってくれていたらしい。
気付けば、自分自身やご主人様の精液、僕が垂れ流した汗や涙・・・涎といった体液が綺麗に拭き取られている。
このメイド長さんが、やってくれたのだろう。
「酷い目にあったわね、大丈夫?」
僕の手をそっと握り、痛ましいものを見るような目つきで僕を見つめて、優しい声でそう呼びかけてくれる。
僕はベッドの上で身体を起こし、頭を下げて言った。
「色々とご迷惑をおかけしてごめんなさい。僕は・・・」
と、自己紹介や、なぜ僕がこんな目に合っているか・・・そんな事情を説明しようとしたのだけれど・・・
「言わなくていいわよ。
あなたのことは、旦那様から全部聞いたいるから。
今はゆっくりお休みなさい。」
と、止められる。
そして、メイド長さんが僕に立ち上がると・・・僕をそっと抱き締める。
「辛かったわよね、旦那様に買われて・・・あんな酷い痕が残るほどぶたれて・・・身体まで弄ばれて・・・
本当なら私達大人が、警察を呼んででも時雨くんみたいな子供を守ってあげなくちゃいけないのに・・・
時雨くんを助けてあげられない、情け無い大人でごめんなさい。
私達を許してね・・・」
そんなふうに謝罪された。
僕を抱き締める腕が震え、触れ合った頬が僕のものではない温かい涙で濡れてゆく。
ああ、この人は僕を本気で心配してくれたんだな。
少なくとも新入りを取り囲んで、“殺す”“埋める”なんて凄むようなあのお店に比べれば・・・この屋敷で働く人達はきっと良い人達に違いない。
ご主人様はちょっとアレな人だけど。
僕を抱き締めて、“ごめんね”、“許してね”と謝罪の言葉を繰り返す白髪混じりのメイド長さん。
その背中に手を回すと、その背中は痩せていて、小さく感じた。
きっと苦労の多い人生を送ってきた人の背中なんだろう。
ふと、もう亡くなってしまった、祖母を思い出した。
遊びに行くと、笑顔で顔を綻ばせて頭を撫でてくれて、お菓子を沢山食べさせてくれたっけ。
メイド長さんは、この屋敷で働く人達の事情を話してくれた。
ここでメイドとして働いている女の人達は、メイド長さんを含めて5人。
皆、それぞれの家庭の事情を抱えている人達だそうだ。
例えばメイド長さんは、僕とそう歳の変わらない難病の孫がいて、充分な治療を受けさせるには大金が必要だとか。
ご主人様はそういった人達を集めて、相場よりかなり高額なお給料で雇っている。
だから・・・ご主人様が未成年者を屋敷に監禁し、強姦しようが、暴行しようが、警察に連絡はできない。
ご主人様が警察に捕まってしまえば、高給の仕事を失って、皆の生活が、それぞれが抱える事情が破綻するのだ。
要するに、皆んな僕と同じだ。
お金の力で縛りつけられ、ご主人様には絶対服従を強いられている、そういう事だそうだ。
ただ、メイド長さんが言うには、ご主人様はそう悪い人では無いらしい。
意外にも一度自分の身内と認めた人には優しくて、面倒見も良いとか。
例えば、ご主人様は、メイド長さんのお孫さんの治療の為に奔走し、方々手を尽くして良い専門医を探し、そして、ベッドの空きの無かった病院への入院を捩じ込む為に骨を折り、お給料以外にも高額な入院費の一部を補助してくれているらしい。
「お金だけでは、あの旦那様にはお仕えできないわ。」
とメイド長さんが言って、少しだけ笑ってくれた。
とはいえ、僕の境遇を知ってそれを見過ごすのは、さすがに心を傷めたのだろう。
「だから、私達は可哀想な時雨くんを助けてあげられない・・・
こんな事を言えた義理ではないけれど、無力な私達を許してください。」
そう言って僕に深々と頭を下げて謝罪する。
わかっている。
仕方のないことなんだ。
メイド長さんも、僕も、ハルカも、織田さんも・・・
皆この残酷な世界でもがいて、苦しんで、それでも必死に生きている。
メイド長さんを責めたってしょうがないことなんだ。
出来ることと出来ないことでは、出来ないことの方が圧倒的に多いんだ。
ただ、誤解だけは解いておかなくちゃ。
このままではご主人様だけが悪者みたいだ。
だから・・・僕は涙ぐみ頭を下げ続けるメイド長さんの手を取って言った。
「気にしてませんから、頭を上げて下さい。
それに、僕は可哀想なんかじゃありません。
僕はご主人様を愛しています。」
後から冷静に考えれば・・・この時の僕は狂っていた。
“躾”と称した不眠不休の快感拷問。
精神的に追い詰めて自尊心を徹底的に破壊した挙句の、ご主人様への依存の誘導。
そして、苦痛と・・・それを上回る快感で、僕がひた隠しにしていた被虐願望を剥き出しにされて支配された。
そうして、僕は心を壊され、ご主人様への偽りの愛情を植えつけられたのだ。
だけど、それには自分自身では気付けない、この時の僕の心の中には愛し、愛される人と出会えた喜びが確かにあった。
この時は、あれほど慕っていた織田さんへの思いさえ霧散していた。
だから、僕は歌うように、譫言のように・・・
きっとガラス玉のような澄み切った目で、心からの言葉を紡ぐ。
「ご主人様に愛していただくことが、虐めていただくことが・・・僕の幸せなんです。
支配されるのも、傷つけられるのも、僕の悦びなんです。
だから、だから・・・僕は望んでご主人様の奴隷になったんですよ。」
これは僕とご主人様の愛の形なんだ・・・僕を哀れまなくいい、安心して欲しい。
そう伝えたかった。
「しぐ・・・れ・・・くん・・・」
だけど、メイド長さんは安心するどころか、その顔からみるみる血の気が引いてゆき、僅かに掠れた声で僕の名を呼ぶ。
そして、優しい目から大粒の涙を溢れさせ、再び僕を抱き締めた。
「ああっ、時雨くん・・・。
あんなに泣いていたのに、あんなに嫌がっていたのに・・・
ごめんね、ごめんね。助けてあげられなくてごめんなさい。
ゆっくりでいいから・・・少しずつでいいから・・・
心も、身体も・・・癒やしていこうね。」
そうして僕を力いっぱい抱き締めて号泣する。
力いっぱいと言っても、ご主人様の身体が溶け合うような、熱くて甘い抱擁に比べれば、羽毛のように軽く、優しい抱擁だ。
だけど、僕の為に心を砕いて、涙も流してくれるメイド長さんのその温もりは本物だ。
だから僕もそっとメイド長さんの背中に手を回して、その痩せた身体を抱き締め、そして思う。
やっぱり、他人に僕達の愛は、交わした“情“は理解されないんだな・・・。
これ以上何を言っても優しいメイド長さんを悲しませるだけなのだな・・・と。
だから、僕はメイド長さんこと、村松さんに微笑んでみせて、そして穏やかに語りかける。
「バカな事を言いました・・・忘れて下さい。
でも僕は、ご主人様を嫌ってはいません、ホントですよ。
それに村松さんが思うほど可哀想でもありません。
だから、僕の為に悲しまないで下さい。泣かないで下さい。
お願いしますから・・・」
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