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アナザールート その62 さようなら
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今回もエロはございません・・・
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ピンポーン
その時、チャイムがなって部屋のドアが開いた。
ドアを開けたのは、お店の運転手兼用心棒のヤンキー風のお兄さん。
「時雨・・・店長から電話で話は聞いているな?
一緒に来てくれ。」
ああ、もうハルカともお別れなのか。
せめて、今晩くらいは2人で過ごしたかったな。
だけど、これが現実なんだ・・・過酷でも地獄でも、受け入れるしかない僕の運命。
僕は、ハルカと抱き締めあった両腕を離して、お兄さんに向き直る。
「はい、荷物をまとめますから、少しだけ時間を貰えませんか?」
「いや、身体1つでいい・・・直ぐ行くぞ。荷物は後でまとめて送ってやるから。」
そして、お兄さんが気まずそうな表情を浮かべて続ける。
「下手に時間を与えると、逃げられたり、自殺されたりすることもあるんでな・・・すまない。」
お兄さんは店長から僕に電話があった時には寮の近くで待機していたのだろう。
電話の後、直ぐに僕を連れて行かなかったのは、おそらく僕とハルカの別れの挨拶の時間を作ってくれていたのだと思う。
「・・・わかりました。直ぐ行きましょうか。」
僕は、観念してお兄さんの方に歩き出そうとしたその時だった。
「お兄さん!!」
ハルカが叫んでお兄さんの胸に飛び込み、縋りつく。
「お願い!カオル君を・・・時雨ちゃんを助けてあげて。
今度こそ本当に殺されちゃうよ・・・お願い、助けてよぉ!!!」
小さな両手を握って、お兄さんの分厚い胸板をポカポカと叩き、大粒の涙をポロポロと溢れさせながら懇願する。
大柄で筋肉質のお兄さんは、ハルカの倍くらいは体重がありそうに見える。
ハルカが思い切り叩いてもマッサージにもなっていないんだろう、お兄さんは痛がりもせず、ちょっと困ったような顔でハルカを見下ろしている。
「お兄さんのバカぁああああ!!!!」
やがて、ハルカの方が息切れして、お兄さんを叩くのをやめて、その胸板に顔を埋めて叫んた。
「夕立、俺もただの雇われ運転手兼用心棒に過ぎないんだ・・・すまん。
俺にもできることと出来ないことがあるんだよ。」
お兄さんが、優しく、そしてちょっと悔しそうな顔でハルカに声をかけながら、ハルカの頭を撫でる。。
誰かが1人が大きく取り乱すと、周囲はかえって冷静になれるものだ。
ハルカが子供みたいに大泣きし、駄々をこねてくれたお陰で、
“あれ、2人の距離感がなんか近い?”
なんて思えるほどには、僕は頭が冷えて冷静になった。
お兄さんが、その大きな両手をハルカの肩に置いて、そっと押しのけると僕に向き直り、ポケットから何かを取り出して言った。
「時雨・・・これを着けるから後ろを向け。」
それは、黒い皮製のチョーカー・・・いやそれは首輪だった。
本当に奴隷扱いされるんだな。
逃げたって、抵抗したって、僕なんかじゃお兄さんに敵うわけが無い。
そんな諦めに支配され、僕は小さくうなづいて、お兄さんに背中を向ける。
格闘技でもやって鍛えている感じの節くれだった太い指が、僕の三つ編みのサイドポニーを持ち上げ、うなじを露出させたと思うと、ヒヤリとした皮の感触が僕の首を一周し、カチャリと鍵を締る音がした。
「一応教えておくが・・・この首輪にはGPSか仕込まれているから、逃げたって直ぐに見つかるぞ。
それに、細いワイヤーが編み込まれているから、そこら辺のハサミなんかじゃ切れないし、このカギがないと外せない。
だから、逃げようなんて馬鹿なことは考えるな。」
「逃げませんよ、逃げたって行くところなんてありません。」
哀れな奴隷の証を身に着けさせられた僕を見て、ハルカはへなへなと床に座り込む。
だけど、そのまま床を這いずって、行かせないとでも言うように僕の右脚に抱きつく。
「カオル君カオル・・・、やだよ、連れて行かないで・・・
お兄さんお願い。」
僕は腰を屈め、ハルカの瞳を覗き込む。
ハルカの瞳からは大粒の涙がボロボロと溢れ、宝石のようにきらめきながら零れ落ちている。
泣かないでハルカ。
この奴隷首輪を着けるのが、優しい君でなくて良かった、本当だよ。
「ハルカ・・・さようなら。
18歳になれば、僕らは自由になれるんだ。
僕も頑張って生きるから、ハルカも頑張って。
自由になれたら弟に会うんでしょう?
泣き虫のお兄ちゃんじゃ格好がつかないよ。
だから泣かないで、頑張って生きてね。
生きてさえいれば勝ちなんだよ。」
そして、僕は腰を伸ばして立ち上がり、お兄さんと目線を合わせる。
「さあ、行きましょう。
これ以上長引かせても辛いだけです・・・」
「そうだな」
お兄さんがそっとハルカの両腕をとって、僕の右脚からハルカを引き離す。
「嫌だぁ!!カオル君!、カオル君!!」
床に崩れ落ちたままハルカが僕に手を伸ばす。
だけどもうその手は僕には届かない。
そして僕はハルカの血を吐くような慟哭を背中で受け止めながら歩き出す・・・地獄に向かって。
さようなら、ハルカ。
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その時、チャイムがなって部屋のドアが開いた。
ドアを開けたのは、お店の運転手兼用心棒のヤンキー風のお兄さん。
「時雨・・・店長から電話で話は聞いているな?
一緒に来てくれ。」
ああ、もうハルカともお別れなのか。
せめて、今晩くらいは2人で過ごしたかったな。
だけど、これが現実なんだ・・・過酷でも地獄でも、受け入れるしかない僕の運命。
僕は、ハルカと抱き締めあった両腕を離して、お兄さんに向き直る。
「はい、荷物をまとめますから、少しだけ時間を貰えませんか?」
「いや、身体1つでいい・・・直ぐ行くぞ。荷物は後でまとめて送ってやるから。」
そして、お兄さんが気まずそうな表情を浮かべて続ける。
「下手に時間を与えると、逃げられたり、自殺されたりすることもあるんでな・・・すまない。」
お兄さんは店長から僕に電話があった時には寮の近くで待機していたのだろう。
電話の後、直ぐに僕を連れて行かなかったのは、おそらく僕とハルカの別れの挨拶の時間を作ってくれていたのだと思う。
「・・・わかりました。直ぐ行きましょうか。」
僕は、観念してお兄さんの方に歩き出そうとしたその時だった。
「お兄さん!!」
ハルカが叫んでお兄さんの胸に飛び込み、縋りつく。
「お願い!カオル君を・・・時雨ちゃんを助けてあげて。
今度こそ本当に殺されちゃうよ・・・お願い、助けてよぉ!!!」
小さな両手を握って、お兄さんの分厚い胸板をポカポカと叩き、大粒の涙をポロポロと溢れさせながら懇願する。
大柄で筋肉質のお兄さんは、ハルカの倍くらいは体重がありそうに見える。
ハルカが思い切り叩いてもマッサージにもなっていないんだろう、お兄さんは痛がりもせず、ちょっと困ったような顔でハルカを見下ろしている。
「お兄さんのバカぁああああ!!!!」
やがて、ハルカの方が息切れして、お兄さんを叩くのをやめて、その胸板に顔を埋めて叫んた。
「夕立、俺もただの雇われ運転手兼用心棒に過ぎないんだ・・・すまん。
俺にもできることと出来ないことがあるんだよ。」
お兄さんが、優しく、そしてちょっと悔しそうな顔でハルカに声をかけながら、ハルカの頭を撫でる。。
誰かが1人が大きく取り乱すと、周囲はかえって冷静になれるものだ。
ハルカが子供みたいに大泣きし、駄々をこねてくれたお陰で、
“あれ、2人の距離感がなんか近い?”
なんて思えるほどには、僕は頭が冷えて冷静になった。
お兄さんが、その大きな両手をハルカの肩に置いて、そっと押しのけると僕に向き直り、ポケットから何かを取り出して言った。
「時雨・・・これを着けるから後ろを向け。」
それは、黒い皮製のチョーカー・・・いやそれは首輪だった。
本当に奴隷扱いされるんだな。
逃げたって、抵抗したって、僕なんかじゃお兄さんに敵うわけが無い。
そんな諦めに支配され、僕は小さくうなづいて、お兄さんに背中を向ける。
格闘技でもやって鍛えている感じの節くれだった太い指が、僕の三つ編みのサイドポニーを持ち上げ、うなじを露出させたと思うと、ヒヤリとした皮の感触が僕の首を一周し、カチャリと鍵を締る音がした。
「一応教えておくが・・・この首輪にはGPSか仕込まれているから、逃げたって直ぐに見つかるぞ。
それに、細いワイヤーが編み込まれているから、そこら辺のハサミなんかじゃ切れないし、このカギがないと外せない。
だから、逃げようなんて馬鹿なことは考えるな。」
「逃げませんよ、逃げたって行くところなんてありません。」
哀れな奴隷の証を身に着けさせられた僕を見て、ハルカはへなへなと床に座り込む。
だけど、そのまま床を這いずって、行かせないとでも言うように僕の右脚に抱きつく。
「カオル君カオル・・・、やだよ、連れて行かないで・・・
お兄さんお願い。」
僕は腰を屈め、ハルカの瞳を覗き込む。
ハルカの瞳からは大粒の涙がボロボロと溢れ、宝石のようにきらめきながら零れ落ちている。
泣かないでハルカ。
この奴隷首輪を着けるのが、優しい君でなくて良かった、本当だよ。
「ハルカ・・・さようなら。
18歳になれば、僕らは自由になれるんだ。
僕も頑張って生きるから、ハルカも頑張って。
自由になれたら弟に会うんでしょう?
泣き虫のお兄ちゃんじゃ格好がつかないよ。
だから泣かないで、頑張って生きてね。
生きてさえいれば勝ちなんだよ。」
そして、僕は腰を伸ばして立ち上がり、お兄さんと目線を合わせる。
「さあ、行きましょう。
これ以上長引かせても辛いだけです・・・」
「そうだな」
お兄さんがそっとハルカの両腕をとって、僕の右脚からハルカを引き離す。
「嫌だぁ!!カオル君!、カオル君!!」
床に崩れ落ちたままハルカが僕に手を伸ばす。
だけどもうその手は僕には届かない。
そして僕はハルカの血を吐くような慟哭を背中で受け止めながら歩き出す・・・地獄に向かって。
さようなら、ハルカ。
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