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アナザールート その58 二人だけの朝食風景

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今回も、エロはございません…

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僕は、織田さんがユニク◯で買ってくれたノースリーブの白いワンピースを着て、キッチンの隅に置いてあった小さな折りたたみ式のスツールにちょこんと腰掛けていた。

そして、グレーのジャージ姿の織田さんに指示を出す。

「あ、お米は2合で、研ぐのは軽くでいいですよ。
精米技術は進歩してますから、昔ほど研がなくていいんです。」

僕が朝ごはんを作ろうとしていた。
織田さんは、それを知ると。

「では、拙者が作りますから、時雨殿は作り方の指示だけ出して下され。」

と言って僕に服を着せてキッチンまで運んでくれ、今に至る。

織田さんをアゴで使うようで、いたたまれないのだけれど頑として譲ってくれなくて、恐縮しながら作業をお願いする。

計量カップでお米を計っても、お米を研いでも、その手つきが辿々しくて、立ち上がって代わろうとしたくなる。

「研いだお米はフライパンに・・・、あとちょっとだけお酢と、お塩と、サラダ油、あと白ダシを入れましょう。
こうすると艶のある美味しいご飯が炊けますよ。」

「時雨殿は何処からそんな知識を?」

「ん~、料理に興味を持ってスマホとかいじっていると自然にですかね・・・
あ、ご飯はしばらくそのまま水を30分くらい水を吸わせます。
でないと芯が残っちゃったりしますから。
その間に手抜き味噌汁の用意を・・・」

「おお!、お任せください」

ああ、織田さんとのこんな何気ない会話が、なんてことのない日常が楽しくて、幸せで。
ずっと続いて欲しい。

「じゃあ、そろそろご飯を炊きしょうか。
フライパンに蓋をして、火にかけて貰えますか?」

自炊なんか興味のない織田さんは炊飯器を持っていない。
でも、蓋付きのお鍋やフライパンがあればご飯は炊けるのだ。

「最初は強火で、中が沸騰したら弱火にします。
で、その間に電気ケトルでお味噌汁用のお湯を沸かして起きましょうか。」

あとは、フライパンの火加減を見ているだけだと告げると、織田さんは僕の後ろに回りこんでから、僕を抱き締め首筋にキスしてくれた。

「んっ・・・・・・」

ただ、それだけで優しくて幸せな感触が背筋を駆け抜けて、びくんと首が反り小さく声が漏れる。

そのまま身体の力を抜いて、織田さんに身体を預けながら、後ろから僕を抱き締める両腕に手を重ねる。

でも・・・
僕、臭くないかな?
少しだけ不安がよぎる。

昨夜は鼻水や涎やら・・・いろんな体液を垂れ流して昏倒するまで虐められた。

その間に織田さんが身体を拭いていてくれていたみたいだったけれど、意識のない人体を完璧に綺麗にするのは多分難しかっただろう。
だとしたら、ちょっと匂いが残っちゃっているかも・・・

後で何としてもシャワーだけは浴びさせて貰おう。

「あ、そろそろフライパンが沸騰してますよ!弱火にしてもらっていいですか?」

フライパンにかこつけて、いったん離れてもらった。

「おおっと、せっかくのご飯が焦げてしまいますな。」

織田さんは、気を悪くした風もなく、気安くコンロの火力を絞ってくれた。

ごめんなさい。シャワー浴びた後なら僕に何をしてもいいですから・・・
心の中で手を合わせる。

その後はご飯が炊けるまでの少しの間、テレビのニュースを観ながら2人で他愛もない話をして過ごした。

「さて・・・、そろそろご飯が炊ける頃ですね。それじゃあ、おにぎりを握ってもらっていいですか?
あ、確か塩昆布がありましたね。あれをご飯に混ぜ込みましょうか」

「拙者おにぎりなど握ったことないですが・・・」

「簡単ですよ、まずボウルに水を張って両手を濡らしてください。いきなりご飯を触るとお米が手にくっついて大変ことになりますよ。」

おにぎり初挑戦の織田さんには、ご飯を三角形に握るのはちょっとハードルが高そうだから、丸く握ってもらう。

「おお、結構難しい・・・」

ご飯を握るたび指の間からご飯かポロポロ溢れるのはみて見ぬふりををさせてもらった。
まあ初心者だしね。

2合のご飯が不揃いな大きさのおにぎり5個に変わる。

そして、味噌と鰹節、味の◯、に乾燥ワカメと冷凍のネギを放り込んだお椀にお湯を注げば手抜き味噌汁の完成だ。

織田さんがそれをキッチンのテーブルに運んだ後に、僕を抱き上げてそこまで運んでくれた。

僕の前には小さめなおにぎりを2個分けたお皿、その対面には、残り3個が乗ったお皿が置かれ、それぞれのお皿の横で熱々の味噌汁が湯気を立てて、味噌の良い香りがした。

そして、二人で席に着いたら

「「いただきます」ぞ!」

 と食卓に手を合せて朝ごはんに感謝する。

まずはお味噌汁に手を伸ばして温かい汁を一口、うん、手抜きのわりにちゃんとお出汁の効いた味噌汁の味になっている。

心の中ではガッツポーズをしながらも、澄ました顔でお味噌汁を啜る。

織田さんはといえば、

「うまっ!おにぎりめっちゃ美味いですぞ!!」

と、満面の笑みを浮かべておにぎりを頬張っていた。

どれどれ・・・
僕もおにぎりに手を伸ばして、あまり大口を開けないように注意しながらかぶりつくと、

あ、美味しい!!

キッチンの片隅に放置されていた賞味期限も怪しい塩昆布を思いつきで混ぜ込んだだけのおにぎりだけど、潮の香りが鼻に抜けて、その塩気と旨みが口一杯に広がる。

冷静に味わえば、ちょっと塩が強過ぎたり、ぎゅうぎゅうに握り過ぎたのか口の中でのご飯のほぐれ具合がイマイチ・・・とか欠点もなくはないけれど。

だけど、織田さんが僕のために作ってくれたこのおにぎりは世界一美味しい。

こんな美味しい朝ごはんを、僕はあと何回食べられるのかな。

少し塩気の強いおにぎりをゆっくりと噛み締めて、大切に飲み込む。

思わず目が潤み、涙が浮かびそうになる・・・
だけど、これ以上織田さんに心配も、負担もかけたくなかった。

だから、織田さんと視線を合わせると、にっこりと微笑んで見せて言った。

「美味しい・・・おいしい・・・おいしいね・・・」

僕はちゃんと笑えていたかな?


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