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アナザールート その39 side 夕立 救い
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今回もエロはございません…
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気絶するように眠っていた。
その眠りを覚ましたのは、玄関から聞こえるインターホンの音。
中途半端に眠ったせいか、全身に疲労感が広がり、立ち上がるのも辛い。
壁に身体を預けるようにして立ち上がり、そのまま壁を這うようにして玄関に向かう。
玄関の扉を開け、少し不安そうな顔をして立っていた織田さんを招き入れる。
「時雨殿•••」
覚悟はしていたのだろうけれど、実際に時雨ちゃんの様子を見て言葉も出ない様子だった。
時雨ちゃんは、虚な視線を虚空に彷徨わせている。
織田さんの声を聞いても、手を握ってもらっても何の反応も返さず、ただベッドに横になっているだけだった。
「時雨殿は、ずっとこんな様子なのですか?」
「今は落ち着いてますけど•••時々昨夜の事を思い出して•••暴れます。」
「左様ですか•••」
織田さんは時雨ちゃんの手を握り、涙ぐみ、じっと何か考えているように黙り込んでいた。
そして、大きく息を吐くと、僕の目を見て口を開いた。
「夕立殿、このまま時雨殿を拙者の家に連れて帰って看病したいと思うのですが、いかがでしょう?」
「え•••?」
「見れば、夕立殿もだいぶお疲れで、体調も悪そうなご様子ですし。時雨殿のことは拙者にお任せください•••、
夕立殿はまず自分が休む事に専念されたらいかがでしょう?」
正直、僕自身も時雨ちゃん程では無いにせよ、心身共にボロボロで•••どこまで時雨ちゃんの看護が出来るのだろうか・・・だけど、
「冗談じゃありません!」
僕は、キッパリと言い切った。
「確かに織田さんに助けて欲しいとお願いしましたけれど、そこまで甘えるつもりはありません。時雨ちゃんの面倒は私が見ます。」
本当は、織田さんの心遣いを、申し出を受けるべきなのはわかっていた。
けれど僕にも意地があった。
「昨夜は時雨ちゃんに沢山助けてもらったのに•••、それなのに私は時雨ちゃんを裏切って•••」
なのに、どんどん声が弱くなる。
本当は心細いから。
「時雨ちゃんに償わなくちゃ•••、ここで時雨ちゃんに恩返ししなくちゃ•••、私は時雨ちゃんの友達でいられない•••」
誰かに助けて欲しい。
本当はそう大声で叫びたい。
「そんな•••織田さんに面倒なことばかり押し付けるようなこと•••出来ないよ•••」
何時の間にか、泣き声になっていた。
涙をボロボロこぼして、手の甲でそれを拭いながら、駄々っ子のように泣きじゃくっていた。
その時だった。
織田さんが、僕をふわり、と優しく抱きしめた。
「拙者のようなキモオタに抱きしめられるのは嫌かもしれませんが•••」
そんなことはないと思う。
少し太った大きな身体で抱きしめられると、温かくて、包まれるようで、安心できた。
「夕立殿、鏡でご自分の顔を見てご覧なされ、顔色が真っ青ですよ。
目の下には隈が浮いてますぞ。可愛い顔が台無しです。
それにさっきからふらふらして、立っているのもやっとではござらぬか」
そして僕を抱き締めたまま、ぽんぽんと優しく背中を叩く。
その手の温かみを感じると、僕の中の張り詰めたものが溶かされてゆくようだった。
「夕立殿もまだ高校生くらいでしょう?。
こういう時は、大人に頼っていいのです。もっと甘えてくだされ。
時雨殿は拙者が責任を持って面倒を見ますから。お願いですから拙者に愛する時雨殿を助けさせて下さらんか•••」
頼っていい、甘えていい
その優しくて、安心できる言葉。
そして僕を包み込むような温かい胸、両腕。
昨夜僕達を、縛り上げ、辱め、踏みにじり、獣欲の捌け口にした大人達となんという違いだろう。
「時雨殿に償うのも、恩返しするのも。先ずはお二人が健勝であってこそです。
どちらかが倒れてしまっては元も子もござらん。」
張り詰めた気負いが抜けて、立っていられない。
僕は身体を織田さんに預け、織田さんの背中に両手を回し、縋るように抱き締める。
「うう゛•••あ•••ぁ・・・うあああああ!!!」
そして、顔を織田さんの胸に埋めて泣いた。
僕達の味方なんて、この世界にはいないと思っていた。
大人は僕らの敵だと思っていた。
たけど、お兄さんが僕らを助けてくれた、織田さんが救いの手を差し伸べてくれた。
少しだけこの世界には救いがあったのだ。
それが嬉しくて、僕は織田さんに縋りつき、号泣していた。
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気に入って頂けましたら幸いです。
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気絶するように眠っていた。
その眠りを覚ましたのは、玄関から聞こえるインターホンの音。
中途半端に眠ったせいか、全身に疲労感が広がり、立ち上がるのも辛い。
壁に身体を預けるようにして立ち上がり、そのまま壁を這うようにして玄関に向かう。
玄関の扉を開け、少し不安そうな顔をして立っていた織田さんを招き入れる。
「時雨殿•••」
覚悟はしていたのだろうけれど、実際に時雨ちゃんの様子を見て言葉も出ない様子だった。
時雨ちゃんは、虚な視線を虚空に彷徨わせている。
織田さんの声を聞いても、手を握ってもらっても何の反応も返さず、ただベッドに横になっているだけだった。
「時雨殿は、ずっとこんな様子なのですか?」
「今は落ち着いてますけど•••時々昨夜の事を思い出して•••暴れます。」
「左様ですか•••」
織田さんは時雨ちゃんの手を握り、涙ぐみ、じっと何か考えているように黙り込んでいた。
そして、大きく息を吐くと、僕の目を見て口を開いた。
「夕立殿、このまま時雨殿を拙者の家に連れて帰って看病したいと思うのですが、いかがでしょう?」
「え•••?」
「見れば、夕立殿もだいぶお疲れで、体調も悪そうなご様子ですし。時雨殿のことは拙者にお任せください•••、
夕立殿はまず自分が休む事に専念されたらいかがでしょう?」
正直、僕自身も時雨ちゃん程では無いにせよ、心身共にボロボロで•••どこまで時雨ちゃんの看護が出来るのだろうか・・・だけど、
「冗談じゃありません!」
僕は、キッパリと言い切った。
「確かに織田さんに助けて欲しいとお願いしましたけれど、そこまで甘えるつもりはありません。時雨ちゃんの面倒は私が見ます。」
本当は、織田さんの心遣いを、申し出を受けるべきなのはわかっていた。
けれど僕にも意地があった。
「昨夜は時雨ちゃんに沢山助けてもらったのに•••、それなのに私は時雨ちゃんを裏切って•••」
なのに、どんどん声が弱くなる。
本当は心細いから。
「時雨ちゃんに償わなくちゃ•••、ここで時雨ちゃんに恩返ししなくちゃ•••、私は時雨ちゃんの友達でいられない•••」
誰かに助けて欲しい。
本当はそう大声で叫びたい。
「そんな•••織田さんに面倒なことばかり押し付けるようなこと•••出来ないよ•••」
何時の間にか、泣き声になっていた。
涙をボロボロこぼして、手の甲でそれを拭いながら、駄々っ子のように泣きじゃくっていた。
その時だった。
織田さんが、僕をふわり、と優しく抱きしめた。
「拙者のようなキモオタに抱きしめられるのは嫌かもしれませんが•••」
そんなことはないと思う。
少し太った大きな身体で抱きしめられると、温かくて、包まれるようで、安心できた。
「夕立殿、鏡でご自分の顔を見てご覧なされ、顔色が真っ青ですよ。
目の下には隈が浮いてますぞ。可愛い顔が台無しです。
それにさっきからふらふらして、立っているのもやっとではござらぬか」
そして僕を抱き締めたまま、ぽんぽんと優しく背中を叩く。
その手の温かみを感じると、僕の中の張り詰めたものが溶かされてゆくようだった。
「夕立殿もまだ高校生くらいでしょう?。
こういう時は、大人に頼っていいのです。もっと甘えてくだされ。
時雨殿は拙者が責任を持って面倒を見ますから。お願いですから拙者に愛する時雨殿を助けさせて下さらんか•••」
頼っていい、甘えていい
その優しくて、安心できる言葉。
そして僕を包み込むような温かい胸、両腕。
昨夜僕達を、縛り上げ、辱め、踏みにじり、獣欲の捌け口にした大人達となんという違いだろう。
「時雨殿に償うのも、恩返しするのも。先ずはお二人が健勝であってこそです。
どちらかが倒れてしまっては元も子もござらん。」
張り詰めた気負いが抜けて、立っていられない。
僕は身体を織田さんに預け、織田さんの背中に両手を回し、縋るように抱き締める。
「うう゛•••あ•••ぁ・・・うあああああ!!!」
そして、顔を織田さんの胸に埋めて泣いた。
僕達の味方なんて、この世界にはいないと思っていた。
大人は僕らの敵だと思っていた。
たけど、お兄さんが僕らを助けてくれた、織田さんが救いの手を差し伸べてくれた。
少しだけこの世界には救いがあったのだ。
それが嬉しくて、僕は織田さんに縋りつき、号泣していた。
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