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アナザールート その35 side 夕立 ハグ
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今回もエロはございません…
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車が寮につくと、僕は店長に支えられ、時雨ちゃんはヤンキーのお兄さんに背負われて部屋に戻り、時雨ちゃんを2段ベッドの下段に寝かせてもらった。
「じゃあな、1週間休みをやるからしっかり休めよ。」
店長はそう言って、先に車に戻ってゆく。
ヤンキーのお兄さんは部屋に残ると、僕に何か入ったビニール袋を渡してきた。
「ほらよ、多分必要になるだろうから買ってみた。」
中を見ると、ゼリー食品とかレトルトのお粥、傷の手当に使えそうな消毒薬や抗生物質入りの軟膏などが詰まっていた。
買い物に行く体力も気力も残っていない僕に取っては正直ありがたかった。
「あ…ありがとうございます…」
意外なお兄さんの親切に面食らいながら頭を下げる。
「あっ、お金を・・・」
ポケットから1万円札を取り出してわたそうとすると、
「そんなの要らねえよ。その分時雨に美味いものでも食わせてやれよ。」
と突き返された。
そして、腰をかがめて僕の顔を覗き込んでくる。
「なんだよ?俺の親切がそんなに意外かよ?」
「はい・・・ぶっちゃけ意外・・・です・・・」
「あのな~、こんな仕事だからそう思われても仕方ないけど、俺だって鬼じゃないんだぞ。お前らみたいなガキンチョが酷い目にあっていれば、可哀想に思うさ。」
そう言って僕の頭を撫でる。
その手の暖かさも、目も優しかった。
顔は厳つくて怖いけれど・・・
「必要な物が有れば連絡しな。仕事帰りで良いなら買って来てやるよ。
ま、次からは実費くらいは貰うけどな。」
「あ・・・ありがとうございます。・・・助かります。」
お礼を言って、貰ったビニール袋を抱き締めて頭を下げると、自然と涙が溢れてくる。
昨夜、大人達の悪意と欲望に晒されて、身体も心もズタズタにされた僕には、今はお兄さんの手の暖かさと、ほんの小さな優しさが、ただ嬉しかった。
「ばーか。泣くんじゃねえよ。男だろう。」
お兄さんがちょっと照れ臭そうに笑って僕の頭を拳骨で軽く叩く。
でもすぐに真面目な顔になり。僕と目線の高さ合わせたまま言葉を続ける。
「あのな・・・もしヤバい薬を打たれたとしたら、そろそろ禁断症状が出る頃だ。
物凄く不安になったり、もしかしたら幻覚とか見るかも知れない。
今日一日我慢すれば収まるから・・・その・・・なんだ・・・頑張れとしか言えないんだが・・・」
と言って僕を抱き締める。
それは、昨夜の大人達のように肉欲に塗れた行為じゃなく、男同士が信頼と友情を確かめ合うハグだ。
僕はその温もりが嬉しくて、お兄さんの背中に手を回す。
「お前もしんどいとは思うけど、時雨の面倒を見てやってくれ。」
「はい・・・頑張りますから・・・」
「じゃあな。また様子を観にくるから・・・。」
お兄さんは、僕から離れると、玄関に向かって歩き出して背中を向けたまま手を振る。
僕は、その背中がドアの向こうに消えるまで、頭を下げ続けた。
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気に入って頂けましたら幸いです。
感想、ブクマ登録、などしていただけますと、励みになります(^^
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「じゃあな、1週間休みをやるからしっかり休めよ。」
店長はそう言って、先に車に戻ってゆく。
ヤンキーのお兄さんは部屋に残ると、僕に何か入ったビニール袋を渡してきた。
「ほらよ、多分必要になるだろうから買ってみた。」
中を見ると、ゼリー食品とかレトルトのお粥、傷の手当に使えそうな消毒薬や抗生物質入りの軟膏などが詰まっていた。
買い物に行く体力も気力も残っていない僕に取っては正直ありがたかった。
「あ…ありがとうございます…」
意外なお兄さんの親切に面食らいながら頭を下げる。
「あっ、お金を・・・」
ポケットから1万円札を取り出してわたそうとすると、
「そんなの要らねえよ。その分時雨に美味いものでも食わせてやれよ。」
と突き返された。
そして、腰をかがめて僕の顔を覗き込んでくる。
「なんだよ?俺の親切がそんなに意外かよ?」
「はい・・・ぶっちゃけ意外・・・です・・・」
「あのな~、こんな仕事だからそう思われても仕方ないけど、俺だって鬼じゃないんだぞ。お前らみたいなガキンチョが酷い目にあっていれば、可哀想に思うさ。」
そう言って僕の頭を撫でる。
その手の暖かさも、目も優しかった。
顔は厳つくて怖いけれど・・・
「必要な物が有れば連絡しな。仕事帰りで良いなら買って来てやるよ。
ま、次からは実費くらいは貰うけどな。」
「あ・・・ありがとうございます。・・・助かります。」
お礼を言って、貰ったビニール袋を抱き締めて頭を下げると、自然と涙が溢れてくる。
昨夜、大人達の悪意と欲望に晒されて、身体も心もズタズタにされた僕には、今はお兄さんの手の暖かさと、ほんの小さな優しさが、ただ嬉しかった。
「ばーか。泣くんじゃねえよ。男だろう。」
お兄さんがちょっと照れ臭そうに笑って僕の頭を拳骨で軽く叩く。
でもすぐに真面目な顔になり。僕と目線の高さ合わせたまま言葉を続ける。
「あのな・・・もしヤバい薬を打たれたとしたら、そろそろ禁断症状が出る頃だ。
物凄く不安になったり、もしかしたら幻覚とか見るかも知れない。
今日一日我慢すれば収まるから・・・その・・・なんだ・・・頑張れとしか言えないんだが・・・」
と言って僕を抱き締める。
それは、昨夜の大人達のように肉欲に塗れた行為じゃなく、男同士が信頼と友情を確かめ合うハグだ。
僕はその温もりが嬉しくて、お兄さんの背中に手を回す。
「お前もしんどいとは思うけど、時雨の面倒を見てやってくれ。」
「はい・・・頑張りますから・・・」
「じゃあな。また様子を観にくるから・・・。」
お兄さんは、僕から離れると、玄関に向かって歩き出して背中を向けたまま手を振る。
僕は、その背中がドアの向こうに消えるまで、頭を下げ続けた。
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