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アナザールート その34 side 夕立 対価
しおりを挟む今回エロはございません…
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僕達を、店長と用心棒兼送迎係のヤンキー風のお兄さんが迎えに来たのは、それから暫く経ってからだった。
身動きの取れない僕ら2人は、部屋に備え付けのホースのお湯で家畜でも洗う様にして乱暴に汚れを落とされる。
そして、ドンキあたりで買ってきたっぽい安物のジャージを着せられると、迎えの車の後部座席に押し込められた。
時雨ちゃんを後部座席に僕の膝枕で寝かせて顔を覗き込む。
目は開いているけれど焦点が合わず、話しかけても、頬を軽く叩いてみても、何の反応も示してくれない…
「店長…、時雨ちゃんが…時雨ちゃんが…」
店長が時雨ちゃんの顔を覗き込む。
「相当クスリを使われたな、これは。寝かせておいてやれ。」
「大丈夫なんですか?」
「致死量を超えていたらとっくに死んでいるよ。2~3日したら回復するだろう。ただし…」
店長の声色が低くなり、目つきが鋭くなった。
「分かっていると思うが、もし死んじまったら、警察なんかに届けるなよ。
死体はこっちで始末する。」
「…そんな…」
店長は時雨ちゃんの心配なんかしてくれていない。
その余りにも酷薄な物言いに絶句し、裏社会の現実に背筋が凍りつくような思いだった。
「万一だ、時雨も若いんだし、そうそう死んだりしないさ。」
「時雨ちゃん…目を覚まして…死なないで…」
僕は時雨ちゃんの名を呼び、頭を撫でる。
そんなことしかしてあげられない自分が情けなくて涙が出た。
「それから、ほら、これを渡しておく。」
そう言って、店長が財布からお金を取り出して僕に渡す。
「一晩頑張ったからな、2人に特別ボーナスだ。」
もらったお金を数えて見るとたったの10万円。
僕は、大人達は”このパーティに参加するのに、高級外車が買えるほどのお金を払った”と言っているのを聞いていた。
正直お金なんてどうでも良かった.
けれど、あの地獄のような一夜の対価の殆どを眼の前の大人に搾取されている事実を目の前に突きつけられる。
本当なら"ふざけるな"と言ってそのお金を店長の顔に叩きつけたかった。
だけど、このお金は時雨ちゃんの傷を手当する医薬品を買ったり、ボロボロになった身体を回復させるための食事を与えるのに絶対に必要になる。
僕は、唇を噛み、黙ってそのお金をポケットにねじ込んだ。
「時雨ちゃん…時雨…。お願いだから目を覚まして…頑張って…」
僕は帰りの車のなかで、ずっと時雨ちゃんの頭をお抱きしめて、声をかけ続けていた。
だけど時雨ちゃんからの返事はない。
時雨ちゃんはただ、ガラス玉のような焦点の合わない視線を虚空に漂わせていた。
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