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アナザールート その28 壊れた心

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ステージ上には、黒い仮面の男と交代して、ピエロの仮面の男が夕立を連れて立っていた。

さんざんに写真を撮られ、泣き叫び続けていた夕立は、真っ赤な目を腫らして、俯いて男後ろに控えていた。

「さて、待たせたね時雨ちゃん。今度は君の番だよ。」

ピエロの仮面の男はそう言って僕を吊るしていた鎖を外した。

「ううっ…ぁ…」

もう自分の足で立つ体力もない僕は、そのまま床に叩きつけられて小さな悲鳴を上げ、床に横たわったまま男を見上げた。

ピエロの仮面の男は僕の両手を取ると、革製の手鎖で僕の両手首を拘束する。
もう僕に抵抗する力なんてないというのに。

そのまま、ピエロの仮面の男に両手を押さえられたままで、僕は四つん這いの犬のような姿勢を取らされた。

そして、夕立が俯いたまま僕の後ろに回り込み、硬直したままの男の子の部分を、僕のお尻にあてがう。

「夕立…!う…そ…」

ゾクリ…と後頭部が冷たくなってゆく。
それは、僕の心の一番深くて弱い部分を切り裂く刃だった。

両親から逃げ出し、好きな人に裏切られ裏社会に売られた。
怖くて、不安で泣いている時手を差し伸べて助けてくれた一番大切な友達。
なんとしても守りたかった友達

夕立とだけは、肉欲とか、レイプとか、調教だとかそんなドロドロしたモノとは無縁の親友でいたかった。

大人達はそんな僕の想いまで踏み躙るのか…

「夕立…や…だ、やめてよ…、それだけは…ぁ…」

僕は、革手錠の金具を鳴らし、ふるふると首を振って哀願する。

ピエロの仮面の男はそんな僕の抵抗を、哀願を、いとも容易く押さえつけて嘲笑する。

「今までさんざん身体を売っておいて、今日だって何人にされたんだい?夕立ちゃんだけ除け者かい?」

「違う!!それは違うぅ!…そんなんじゃ…」

このピエロの仮面を被った悪魔は、絶対に僕の気持ちを分かった上で、それを壊そうとしている。

その時、夕立が、ふわり…と僕を背中から抱きしめ、僕の耳元で囁いた。

「時雨ちゃん、わかってるよ。私も同じ気持ちだった。」

「夕立…」

振り返ると、ガラス玉みたいな目をした夕立がうつろに微笑んでいた。

「だけど…私、負けちゃった、大人達に逆らえない雌犬奴隷にされちゃった…。だから…ごめんね…時雨ちゃん、一緒に堕ちよう。」

「そんな…夕立…」

僕は夕立の何の感情も映さないガラス玉みたいな目を見て、理解した。
夕立は経験豊富なようで、大人達の本気の悪意に、暴力に、調教に晒される、そんな経験はなかった。

全てが初めてなのに…大人達になぶりものにされ、僕が泣き叫ぶ様をみせつけられ、薬で意思を奪われて…壊れたのは夕立の方だったんだ。

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次回は久々に長いですよ~

気に入って頂けましたら幸いです。

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