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アナザールート その13 生贄の羊達1
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今回もエロなしです…
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「♪…♬…♪…♬…………………」
スマホのアラームに起こされた。
「ふぁ~あ…」
両手を伸ばし、軽くあくびをしながら上半身を起こす、今日は7時間くらいは寝れたかなぁ。
目を擦りながら2段ベッドの上から床に降りると、身についた習慣としてそのままキッチンに向かった。
料理を始める前にスマホアプリでラジオを再生し、手のひらサイズのBluetoothスピーカーとスマホを接続した。
家事をするなら、テレビより耳だけで聞けるラジオがいい、スピーカーにつなげば音質も悪くないしね。
冷蔵庫から取り出した玉子を割って小皿に乗せ、レンジで加熱して目玉焼きにする。
おっと、箸の先で黄身に穴を開けるのを忘れると黄身が爆発しちゃう。
その間に、塩漬けして冷凍しておいた豚の脂身を極々薄切りにして、ライ麦のトーストの上に敷き詰めてオーブントースターで焼く。
この豚の脂身の塩漬けは”サーロ”と言われるウクライナの食材で、たまにスーパーの精肉コーナーで激安で売っている豚の背油の塊で簡単に作れて結構美味しいので、バター代わりに使っている。
トーストに乗ったサーロがオーブントースターの熱でとろけたころ合いで、いったんトーストを取り出して、レンジで作った半熟目玉焼きとスライスチーズをのせて再び焼く。
トーストが焼ける間に、作り置きしておいたブロッコリースープを温めて完成っと。
そろそろいいかな?
「ハルカ~そろそろご飯できるよ、起きられる?」
「う~ぅ、大丈夫だぉ…」
ハルカがノロノロとテーブルに着くと同時トーストとスープを並べて
「「いただきま~す!!」」
ブロッコリーのスープを一口飲んでからトーストに噛り付くと、まず半熟卵の黄身が口の中に流れ込み、ワンテンポ遅れて柔らかくなったチーズの味が広がる、そのまま咀嚼するとサーロの溶けた脂と塩味が浮かび上がってくる。
うん、今日も良い出来だ。
ハルカも半分寝ぼけながらも、黙々と食べている。反応を見る限りお気に召したかな・・・
「今日も美味しいよ~、カオル君料理上手いよね。」
「まあ半分趣味だしね」
「上手くなるのに、コツとかあるの?」
「う~ん、最初のうちはバカの一つ覚えみたいに同じ料理を作るのがコツって言えば、コツかなぁ?」
「え~何それ」
「そんなものだって。最初からアレもコレも手を出しても基本が覚えられないよ。」
「あれ、電話だ・・・うわぁ!、店長からだ、ちょっとごめんね。」
ハルカが眉間にシワを寄せてスマホを耳に当てる。
すっぴんでそんな表情をしていてもかわいいなんて反則だよなあぁ。
「はい、夕立で~す。おはようございます。」
一瞬前まで「うわぁ」とか言って、いたのが嘘のような切り替えの速さだった。
「え・・・!、ちょっと店長・・・そんな!!ウソですよね・・・・・・」
ハルカの声のトーンが急変した、口調も会話の内容も明らかに何かトラブルがあったようだった。
はっとしてハルカの表情を窺って、会話の耳を傾ける。
「どうして!?・・・・・・私も時雨ちゃんも十分お店に貢献してますよね?・・・嘘・・・店長、勘弁して下さい!!・・・お願いします。」
ハルカは涙目で会話しながら頭を下げている。一体何が?
「・・・店長・・・そんな・・・・・・ぁ・・・」
ハルカがスマホをテーブルに置いて、俯いた。一方的に電話を切られたみたいだった。
「ハルカ・・・何があったの?」
ハルカは俯いたままで、答えてくれない。
そして、手を組むと自分で自分を抱き締めるようにして少し震えていた。
「ハルカ!、ちゃんと言ってくれないとわからないよ。」
僕がちょっと強い声をかけた。
「え・・・!、ああ・・・ごめんね。」
ハルカが自分を抱き締めていた両手を放して膝に置いた。
そして、僕の目を正面から見つめる、何か思い詰めたような顔だった。
「カオル君、今日のお仕事の話なんだけれど、大事な話だからよく聞いてね・・・」
ハルカが説明してくれた事を要約するとこんな感じだった。
僕ら2人は、今夜お金持ちが集まる秘密のパーティーに呼ばれて一晩中おもちゃにされる。
普段ならお店のルールとして、縛りやキメセク・・・危ないクスリを使う事などは禁止されている。商品である男の娘達を壊されない為だ。
だけど今夜の仕事にはそんな制約が全く無いという。
後遺症が残ったり、骨折させたりしなければ、殴る事さえ許される。
そして、この仕事が終わったら1週間のお休みが貰える。
だけどそれは、お店の厚意なんかじゃ無い。下手をすれば1週間働けなくなる程酷い事をされるからだ。
お店側は僕ら2人を1週間休ませても、なお釣りが来る程の高額の報酬を受け取っているのだ。
「ハルカ・・・、それホント?・・・ここ日本だよね、そんなことが・・・」
口に出すだけ愚問だった、今でさえ僕らは未成年の売春、人身売買、といった裏社会に絡め取られて、その底辺で好き放題に搾取されている。今更驚くような事じゃないのかもしれない。
「年にね・・・1回くらいこんな事があるんだ。前の時には僕は選ばれなかったけど、先輩に聞いたんだ。」
ハルカは俯いて、ポツポツと言葉を紡ぐ。
「仕事を休んでいる先輩がいて、差し入れを持ってお見舞いに行ったんだ・・・、そしたら酷かったよ。身体中に縛られた跡やアザがいっぱいあって1人じゃ歩けない状態だった。」
ハルカの目に涙が浮かび、膝の上で握り締めた手が震えている。
「一番辛かったのは、僕を僕と認識してくれなかったことだったな•••、“許して下さい、お願いします”って、泣きながら僕に縋りついてくるんだ。とても放っておけなかったから、仕事に行く以外の時間はずっと泊まり混んで面倒を見たよ。」
ハルカは血の気が引いた顔で話し続ける。
「次の日には何とか正気に戻ってくれて•••お店には口止めされていたらしいけど、何をされたのかちょっとだけ話してくれたよ。」
「その先輩は1週間経っても立ち直れなかった。いつの間にかいなくなって•••寮の部屋ももぬけの殻だったよ•••店長に聞いても何にも教えてくれなくて、“お前もああなりたくなかったらしっかり働け”だって」
「ははっ、お店にいっぱい貢献できればあんな仕事させられなくてすむかなと思ってうんと頑張ったのになぁ、全部無駄だったんだな•••」
虚ろな目で話すハルカを見ていられなくて、ハルカの手を取って言った。
「もういいよハルカ、二人で逃げよう!少しだけならお客さんから貰ったチップの貯金があるから暫くはなんとかなるって。後のことはまた考えようよ!」
だけど、ハルカは弱々しく首を振った。
「カオル君、窓から外を見てみて。」
「え?•••ぁ!!」
言われるまま、窓から外を見ると白いミニバンが目に入った。
あの車は、時々お客さんの所への送迎に使われるお店の車だった。
「僕らに逃げられないように見張ってるんだ。時間になった迎えに来るってさ•••」
「もうわかったよ。こうなったら警察に電話しよう!」
「それはダメ!!、お願いだからやめてよ•••」
ハルカが僕の腕に縋りついて、スマホを奪い取った。
「警察に連絡すれば僕らは助かるかもしれない•••でもその後で家族に仕返しされるよ。僕にはまだ小学生の弟がいるんだ!女の子みたいに可愛い子なんだ。あの子が怖い目にあわされるなんて耐えられない、もしかしたら僕の代わりに働かされるかもしれない。そんなの絶対にダメ!!」
僕から奪ったスマホを抱き締めるようにしてうずくまり、身体を震わせながらハルカが慟哭する。
暫くそうした後に、不意に立ち上がった
「はは•••もう首でも吊ろうかな•••、僕が死んだら警察でもなんでも電話してくれていいよ」
ふらふらと歩き出す。顔色は真っ青で目はどこか遠くを見ているように焦点が合っていなかった…
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「♪…♬…♪…♬…………………」
スマホのアラームに起こされた。
「ふぁ~あ…」
両手を伸ばし、軽くあくびをしながら上半身を起こす、今日は7時間くらいは寝れたかなぁ。
目を擦りながら2段ベッドの上から床に降りると、身についた習慣としてそのままキッチンに向かった。
料理を始める前にスマホアプリでラジオを再生し、手のひらサイズのBluetoothスピーカーとスマホを接続した。
家事をするなら、テレビより耳だけで聞けるラジオがいい、スピーカーにつなげば音質も悪くないしね。
冷蔵庫から取り出した玉子を割って小皿に乗せ、レンジで加熱して目玉焼きにする。
おっと、箸の先で黄身に穴を開けるのを忘れると黄身が爆発しちゃう。
その間に、塩漬けして冷凍しておいた豚の脂身を極々薄切りにして、ライ麦のトーストの上に敷き詰めてオーブントースターで焼く。
この豚の脂身の塩漬けは”サーロ”と言われるウクライナの食材で、たまにスーパーの精肉コーナーで激安で売っている豚の背油の塊で簡単に作れて結構美味しいので、バター代わりに使っている。
トーストに乗ったサーロがオーブントースターの熱でとろけたころ合いで、いったんトーストを取り出して、レンジで作った半熟目玉焼きとスライスチーズをのせて再び焼く。
トーストが焼ける間に、作り置きしておいたブロッコリースープを温めて完成っと。
そろそろいいかな?
「ハルカ~そろそろご飯できるよ、起きられる?」
「う~ぅ、大丈夫だぉ…」
ハルカがノロノロとテーブルに着くと同時トーストとスープを並べて
「「いただきま~す!!」」
ブロッコリーのスープを一口飲んでからトーストに噛り付くと、まず半熟卵の黄身が口の中に流れ込み、ワンテンポ遅れて柔らかくなったチーズの味が広がる、そのまま咀嚼するとサーロの溶けた脂と塩味が浮かび上がってくる。
うん、今日も良い出来だ。
ハルカも半分寝ぼけながらも、黙々と食べている。反応を見る限りお気に召したかな・・・
「今日も美味しいよ~、カオル君料理上手いよね。」
「まあ半分趣味だしね」
「上手くなるのに、コツとかあるの?」
「う~ん、最初のうちはバカの一つ覚えみたいに同じ料理を作るのがコツって言えば、コツかなぁ?」
「え~何それ」
「そんなものだって。最初からアレもコレも手を出しても基本が覚えられないよ。」
「あれ、電話だ・・・うわぁ!、店長からだ、ちょっとごめんね。」
ハルカが眉間にシワを寄せてスマホを耳に当てる。
すっぴんでそんな表情をしていてもかわいいなんて反則だよなあぁ。
「はい、夕立で~す。おはようございます。」
一瞬前まで「うわぁ」とか言って、いたのが嘘のような切り替えの速さだった。
「え・・・!、ちょっと店長・・・そんな!!ウソですよね・・・・・・」
ハルカの声のトーンが急変した、口調も会話の内容も明らかに何かトラブルがあったようだった。
はっとしてハルカの表情を窺って、会話の耳を傾ける。
「どうして!?・・・・・・私も時雨ちゃんも十分お店に貢献してますよね?・・・嘘・・・店長、勘弁して下さい!!・・・お願いします。」
ハルカは涙目で会話しながら頭を下げている。一体何が?
「・・・店長・・・そんな・・・・・・ぁ・・・」
ハルカがスマホをテーブルに置いて、俯いた。一方的に電話を切られたみたいだった。
「ハルカ・・・何があったの?」
ハルカは俯いたままで、答えてくれない。
そして、手を組むと自分で自分を抱き締めるようにして少し震えていた。
「ハルカ!、ちゃんと言ってくれないとわからないよ。」
僕がちょっと強い声をかけた。
「え・・・!、ああ・・・ごめんね。」
ハルカが自分を抱き締めていた両手を放して膝に置いた。
そして、僕の目を正面から見つめる、何か思い詰めたような顔だった。
「カオル君、今日のお仕事の話なんだけれど、大事な話だからよく聞いてね・・・」
ハルカが説明してくれた事を要約するとこんな感じだった。
僕ら2人は、今夜お金持ちが集まる秘密のパーティーに呼ばれて一晩中おもちゃにされる。
普段ならお店のルールとして、縛りやキメセク・・・危ないクスリを使う事などは禁止されている。商品である男の娘達を壊されない為だ。
だけど今夜の仕事にはそんな制約が全く無いという。
後遺症が残ったり、骨折させたりしなければ、殴る事さえ許される。
そして、この仕事が終わったら1週間のお休みが貰える。
だけどそれは、お店の厚意なんかじゃ無い。下手をすれば1週間働けなくなる程酷い事をされるからだ。
お店側は僕ら2人を1週間休ませても、なお釣りが来る程の高額の報酬を受け取っているのだ。
「ハルカ・・・、それホント?・・・ここ日本だよね、そんなことが・・・」
口に出すだけ愚問だった、今でさえ僕らは未成年の売春、人身売買、といった裏社会に絡め取られて、その底辺で好き放題に搾取されている。今更驚くような事じゃないのかもしれない。
「年にね・・・1回くらいこんな事があるんだ。前の時には僕は選ばれなかったけど、先輩に聞いたんだ。」
ハルカは俯いて、ポツポツと言葉を紡ぐ。
「仕事を休んでいる先輩がいて、差し入れを持ってお見舞いに行ったんだ・・・、そしたら酷かったよ。身体中に縛られた跡やアザがいっぱいあって1人じゃ歩けない状態だった。」
ハルカの目に涙が浮かび、膝の上で握り締めた手が震えている。
「一番辛かったのは、僕を僕と認識してくれなかったことだったな•••、“許して下さい、お願いします”って、泣きながら僕に縋りついてくるんだ。とても放っておけなかったから、仕事に行く以外の時間はずっと泊まり混んで面倒を見たよ。」
ハルカは血の気が引いた顔で話し続ける。
「次の日には何とか正気に戻ってくれて•••お店には口止めされていたらしいけど、何をされたのかちょっとだけ話してくれたよ。」
「その先輩は1週間経っても立ち直れなかった。いつの間にかいなくなって•••寮の部屋ももぬけの殻だったよ•••店長に聞いても何にも教えてくれなくて、“お前もああなりたくなかったらしっかり働け”だって」
「ははっ、お店にいっぱい貢献できればあんな仕事させられなくてすむかなと思ってうんと頑張ったのになぁ、全部無駄だったんだな•••」
虚ろな目で話すハルカを見ていられなくて、ハルカの手を取って言った。
「もういいよハルカ、二人で逃げよう!少しだけならお客さんから貰ったチップの貯金があるから暫くはなんとかなるって。後のことはまた考えようよ!」
だけど、ハルカは弱々しく首を振った。
「カオル君、窓から外を見てみて。」
「え?•••ぁ!!」
言われるまま、窓から外を見ると白いミニバンが目に入った。
あの車は、時々お客さんの所への送迎に使われるお店の車だった。
「僕らに逃げられないように見張ってるんだ。時間になった迎えに来るってさ•••」
「もうわかったよ。こうなったら警察に電話しよう!」
「それはダメ!!、お願いだからやめてよ•••」
ハルカが僕の腕に縋りついて、スマホを奪い取った。
「警察に連絡すれば僕らは助かるかもしれない•••でもその後で家族に仕返しされるよ。僕にはまだ小学生の弟がいるんだ!女の子みたいに可愛い子なんだ。あの子が怖い目にあわされるなんて耐えられない、もしかしたら僕の代わりに働かされるかもしれない。そんなの絶対にダメ!!」
僕から奪ったスマホを抱き締めるようにしてうずくまり、身体を震わせながらハルカが慟哭する。
暫くそうした後に、不意に立ち上がった
「はは•••もう首でも吊ろうかな•••、僕が死んだら警察でもなんでも電話してくれていいよ」
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