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3章:エントの森
東のエルフ
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暗い中、ドンナトールが淡く照らす杖の光を頼りに進む。時折、ドワーフが木の根や飛び出す石に足を取られる。一番後ろをいくベレヌスはその都度、手を貸し起き上がらせるが名前を呼ぶことも声をかけることもしない。沈黙の道中が続く。
薄っすらと水の流れる軽やかな音をエルフの耳は拾った。
「もうすぐみたいだよ」
カムロスの声に下ばかり見ていたアルロとダグザとドルドナが顔を上げた。それににこやかに笑うが3人の目には暗い中の輪郭しか見えない。
「さすが、エルフだ」
感心したようなドルドナの声にカムロスは照れ臭さを感じた。当たり前のことを褒められるがどうにも慣れない。
「当然じゃないか」
「それはそうだが」
「そんなことを言ったらドワーフは手先が器用で芸術に長けているだろう」
「当然だ」
なんとも生産性のない会話にほかの者の張りつめていた気持ちが少し緩んだ。振り向きドルドナとカムロスをみていたアルロは一番後ろにいるベレヌスと目が合った。目が合った瞬間、アルロは眉をひそめていた。暗い闇の中でまともに見えないはずだ。
しかしアルロはベレヌスの顔色が優れないことに気が付いた。
突然、後ろに歩いてくるアルロにベレヌスは首を傾げておく。本当はなぜ来たのかわかっていた。ベレヌスは自分の情けなさと、迷惑な力に辟易し呆れていた。
目の前に立ったアルロを見つめる。ベレヌスは笑顔でどうしたのか尋ねる。
「大丈夫か」
「何がだ」
あくまで知らぬふりを決め込もうとするベレヌスにアルロはひそめた眉を更にひそめ、溝を深くさせる。
「顔色が悪いぞ」
「大丈夫だ。何ともないぞ」
「嘘をつくな。予知を見たのか」
「見ていない」
ベレヌスも負けじとアルロを見つめ返した。その目は力強いが、顔色は今にも倒れそうな、いや死人のように白い。アルロは頑ななベレヌスに怒りがわく。横を通り過ぎようとするベレヌスの手首を掴む。
「待て」
「離せ」
ベレヌスは掴まれた腕をねじるが全くアルロの手は離そうとしない。それどころかアルロの反対の手がベレヌスの首筋に伸びた。
「何のつもりだ」
「それはこっちの台詞だ。こんなに冷えていれば顔色も悪くなるはずだ」
「そんなにひどいのか」
様子を伺っていたダグザが近寄りベレヌスの手首をつかみ、目を見開いた。
「これはいかんだろ」
「いつものことだ。気にするな。こんなことで足を止める必要はない」
目をそらし冷たく冷静な声でベレヌスは淡々と告げた。
「いつものことでも、心配なんだ」
「・・・・・・そのうち治る。早く森から出なくてはならないだろう」
アルロとダグザ、ドルドナは後ろに立つ双子と魔法使いに目をやった。3人とも首を横に振った。
「ベレヌスの言う通りじゃ。早く抜けねばならん」
「まずは川まで行こう」
「ベレヌス、無理はしないように」
それぞれの言葉にアルロたちは納得していないながらも頷き、ベレヌスをみた。ベレヌスは目を一度伏せると小さくつぶやいた。
「無理はしない。その・・・・・・心配してくれてありがとう」
「私も強く言い過ぎた。ベレン、無理はするなよ」
再び前に戻っていくアルロたちは気が付いていない。伏せられた目が再び前を向くときに、その目は銀を帯びていたことに
「やっと着いたわい」
「喉が渇いて死にそうだ」
きれいな流水にドワーフが駆け出した。
「止まって!」
ミーミルが静止の声を発し、カムロスは弓に矢をつがえ構えた。
「なんじゃ!?」
気が付いた時には囲まれていた。獲物を構えた時には遅かった。
—暗闇にも輝く銀の髪をなびかせ
—細身の体で矢を構え
—尖った耳を持つものたちに
「東のエルフじゃな。わしらは怪しいもんじゃない」
「ドナトール様、お久しぶりにございます。怪しくなかろうと王の命によりあなた方を捉えなくてはなりません」
渋い顔つきのエルフが前にでて、静かに告げる。そして、双子のほうへ視線を向けた。
「例え、南のエルフクヴァシル卿のご子息であられても」
双子が何か言う前に後ろで大きく鈍い音がした。ドルドナが暴れ近くにいたエルフに取り押さえられていた。ドルドナは短い手足を動かし、逃れようとするが微動ことすらない。
「暴れるな、ドワーフ」
綺麗な声が取り押さえるエルフから聞こえた。その声は女だった。フードを被っているため、わからない。
「女か!?」
「女で悪いか」
「・・・・・・」
「ついていくから。離してはもらえんかな」
ドンナトールが女のエルフに願った。女はドンナトールの横にいる渋いエルフに判断を仰ぐ。頷く姿に女エルフは舌打ちするとドルドナから手を離した。ドルドナは抑えられていた場所をさすりながら、立ち上がり女エルフを睨み上げる。
女はすでにドルドナを見ていない。ドルドナの中でめきめきと何かが沸き立ち、今にも爆発しそうだった。
「では、こちらに」
ドルドナが行動する前に渋いエルフの声を促した。
薄っすらと水の流れる軽やかな音をエルフの耳は拾った。
「もうすぐみたいだよ」
カムロスの声に下ばかり見ていたアルロとダグザとドルドナが顔を上げた。それににこやかに笑うが3人の目には暗い中の輪郭しか見えない。
「さすが、エルフだ」
感心したようなドルドナの声にカムロスは照れ臭さを感じた。当たり前のことを褒められるがどうにも慣れない。
「当然じゃないか」
「それはそうだが」
「そんなことを言ったらドワーフは手先が器用で芸術に長けているだろう」
「当然だ」
なんとも生産性のない会話にほかの者の張りつめていた気持ちが少し緩んだ。振り向きドルドナとカムロスをみていたアルロは一番後ろにいるベレヌスと目が合った。目が合った瞬間、アルロは眉をひそめていた。暗い闇の中でまともに見えないはずだ。
しかしアルロはベレヌスの顔色が優れないことに気が付いた。
突然、後ろに歩いてくるアルロにベレヌスは首を傾げておく。本当はなぜ来たのかわかっていた。ベレヌスは自分の情けなさと、迷惑な力に辟易し呆れていた。
目の前に立ったアルロを見つめる。ベレヌスは笑顔でどうしたのか尋ねる。
「大丈夫か」
「何がだ」
あくまで知らぬふりを決め込もうとするベレヌスにアルロはひそめた眉を更にひそめ、溝を深くさせる。
「顔色が悪いぞ」
「大丈夫だ。何ともないぞ」
「嘘をつくな。予知を見たのか」
「見ていない」
ベレヌスも負けじとアルロを見つめ返した。その目は力強いが、顔色は今にも倒れそうな、いや死人のように白い。アルロは頑ななベレヌスに怒りがわく。横を通り過ぎようとするベレヌスの手首を掴む。
「待て」
「離せ」
ベレヌスは掴まれた腕をねじるが全くアルロの手は離そうとしない。それどころかアルロの反対の手がベレヌスの首筋に伸びた。
「何のつもりだ」
「それはこっちの台詞だ。こんなに冷えていれば顔色も悪くなるはずだ」
「そんなにひどいのか」
様子を伺っていたダグザが近寄りベレヌスの手首をつかみ、目を見開いた。
「これはいかんだろ」
「いつものことだ。気にするな。こんなことで足を止める必要はない」
目をそらし冷たく冷静な声でベレヌスは淡々と告げた。
「いつものことでも、心配なんだ」
「・・・・・・そのうち治る。早く森から出なくてはならないだろう」
アルロとダグザ、ドルドナは後ろに立つ双子と魔法使いに目をやった。3人とも首を横に振った。
「ベレヌスの言う通りじゃ。早く抜けねばならん」
「まずは川まで行こう」
「ベレヌス、無理はしないように」
それぞれの言葉にアルロたちは納得していないながらも頷き、ベレヌスをみた。ベレヌスは目を一度伏せると小さくつぶやいた。
「無理はしない。その・・・・・・心配してくれてありがとう」
「私も強く言い過ぎた。ベレン、無理はするなよ」
再び前に戻っていくアルロたちは気が付いていない。伏せられた目が再び前を向くときに、その目は銀を帯びていたことに
「やっと着いたわい」
「喉が渇いて死にそうだ」
きれいな流水にドワーフが駆け出した。
「止まって!」
ミーミルが静止の声を発し、カムロスは弓に矢をつがえ構えた。
「なんじゃ!?」
気が付いた時には囲まれていた。獲物を構えた時には遅かった。
—暗闇にも輝く銀の髪をなびかせ
—細身の体で矢を構え
—尖った耳を持つものたちに
「東のエルフじゃな。わしらは怪しいもんじゃない」
「ドナトール様、お久しぶりにございます。怪しくなかろうと王の命によりあなた方を捉えなくてはなりません」
渋い顔つきのエルフが前にでて、静かに告げる。そして、双子のほうへ視線を向けた。
「例え、南のエルフクヴァシル卿のご子息であられても」
双子が何か言う前に後ろで大きく鈍い音がした。ドルドナが暴れ近くにいたエルフに取り押さえられていた。ドルドナは短い手足を動かし、逃れようとするが微動ことすらない。
「暴れるな、ドワーフ」
綺麗な声が取り押さえるエルフから聞こえた。その声は女だった。フードを被っているため、わからない。
「女か!?」
「女で悪いか」
「・・・・・・」
「ついていくから。離してはもらえんかな」
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