4 / 49
芸能界
菊池組の終わり
しおりを挟む
牛丼屋から出てくる男は黒木に声をかけ問答無用で車に押し込められた。突然の乱暴に男は暴れるが、目の前に座る男をみて身を固くした。
「か・・・・・・ かん、神林尊」
「呼び捨てにしてんじゃねぇよ! くそ野郎」
つい名前を言ってしまった男は黒木に殴られた。痛む頬を押さえ必死に謝る男は座席の下に座り込んだ。
「汚れるから車の中で殴らないでよ」
「すいません、つい」
黒木に尊は苦言を一つ言うと携帯電話を操作するだけで男のことを放置する。
男は車がどこに向かうのか自分はどうなるのか恐怖におぼれながらも、なんとか打開しようと後ろに手を回す・・・・・・が
「変に動くと黒木が撃つからやめろよ。車、汚したくないんだ」
尊の言葉に男は動きを封じられる。男はばれていたかと尊を見れば変わらず視線は携帯電話に注がれていた。黒木のごつい手につかまれ銃を奪われた男はうずくまることしかできなかった。
尊は携帯電話をしまうとため息をつく。うずくまる男に汚物よりも汚いものだといわんばかりの軽蔑した目を向ける。
「子が子なら親も親だな」
本居からの報告資料に目を通し、菊池組を消そうと尊は即決した。
「なんだ! てめぇ」
菊池組の事務所に入るとチンピラ風の男2人は尊を挟み込みに高圧的に睨み付けたがなんの反応も示さないことにイラつき、肩をつかもうとした。しかしその前に男の手を黒木がひねりあげ、チンピラはたまらず叫び声を上げる。
尊は
「(邪魔くさいし、うるさい)」
と眉間に皺を寄せる。
事務所に響いた叫び声に組員たちが駆け寄ってくるが、その群れに黒木はつかんでいた男を突き飛ばし組員たちを牽制した。投げられた仲間をなんとか支えた組員たちは黒木を見上げる。
「俺は神林組の黒木だ」
黒木は言葉と共に手帳を取り出した。神林の代紋を背負う黒い手帳にかけ寄ってきた組員は低姿勢になり、黒木という名にさらに身体を小さくする。神林組の黒木といえばこの界隈で知らないものはいない名前だ。
「銃撃の・・・・・・黒木」
菊地組の組員はどうしていいかわからず立ち尽くした。神林ということは親分の親である聖組長の親である。その神林組総長の側近はどう考えても菊池組員がどうこうしてよい相手ではなかった。
「総長、こいつらどうしますか」
「ほっておけ」
黒木の言葉に目を丸くし尊を見る組員たちの間に尊を黒木は体を滑り込ませ、不躾な目から尊を守る。当の尊は騒ぎなどそもそも存在しないという風に、周りのことなど気にせず組長室のドアノブを握った。
「今は! あっ! えっと・・・・・・ く、組長はおりません」
無謀にも声をかけたことを組員は後悔した。サングラスで男には見えないはずなのに振り返った尊に睨まれたと感じ、なにか鋭いもので刺されたような感覚に、思わず胸に手を当てる。
「待たせてもらう」
尊が組長室に消えると、黒木は連れてきた男を引きずり尊の後に続いて呆然の組員の視界から消えた。閉まる扉の向こうで、すがるように見てくる男のために動くものは1人も存在していない。見慣れた扉の奥で何が起こるのか菊池組組員は考えたくなかった。
組員からの連絡を受け、息を切らせながら菊池が事務所に駆け込んできた。菊池は息を整えていつもなら普通に回すドアノブを組員に見守られながら汗で濡れる手でまわす。回して開けた扉の向こうの世界は菊池を悪い方向で歓迎した。
ところどころ血に濡れる床、壁そして転がる組員が菊池を出迎え、菊池の後ろから覗き込んだ組員がひきつった声を上げてしまう。静かに立つ、黒木の横の組長室の椅子が回転し入口のほうを向いた。どちらの目も冷静に菊池を捉えた。
「扉を閉めてくれるかな」
「っ! はい!」
言われた通りに菊池は後ろ手に扉を閉めたが、それ以上は打ち付けられたかのように動けなかった。優雅に椅子に座る尊は笑顔で床に転がる男を人差し指で示す。
「その男が柏木未来を撃ったことを知っているかな」
「ひえ!」
「ひえってなに? しっているかな?」
あまりの答えに尊がばかにしているのかと睨みつけるのに、菊池は緊張と恐怖で回らない舌を一生懸命、回して否定を返した。返事を返すだけでもいっぱいいっぱいの情けない菊池は先日同じ人物なのかと冷や汗を流し続ける。
若いのにしっかりした人物くらいにしか思っていなかった。そして、噂の通り、優しい慈悲深い天使のような尊にすぐに聖が7代目に納まるとまで考えていた。
しかしその尊に菊池は恐怖を感じている。例え、血濡れた組員がいなくても恐怖を感じていたはずだと思える怖さが目の前に存在していた。
「柏木未来をストーカーして、恋人がいるからと殺そうとしたようだ。あぁそうだ。その男、死んではいないから安心してくれ」
尊の何ということはないだろうと口角をあげる表情に菊地の心臓が不自然に脈うった。菊地は倒れ込むように土下座をして尊に必死に詫び床に水たまりを作るのではないかと思えるほどの勢いで汗を流す。
菊池は誰が目の前の男を慈愛あふれる天使だと言い出したのかと知らない人物に怒る。しかし、今は目の前の状況から逃げ出さなくてはならないと、菊池は体裁を気にする前に全力で詫びを入れるが尊は見向きもしない。
なぜか引き出しを開ける音が菊池の耳に届き、本をめくる音と菊地の荒い息遣いが部屋に流れた。
菊池は何を見ているのだろうかと体を震わせ、自分の引き出しに何が入っているかを懸命に思い出すが馬鹿に輪をかけて馬鹿になっている菊池の頭は思い出せない。
「なかなか良い趣味をお持ちのようだ」
「えっ」
本を見せるように掲げ、尊が声をかければ菊池はすぐに顔を上げた。悲惨な汗と顔色にそのうち死にそうだなと尊は哀れに思った。
「とて・・・・・・も、とてもいいでしょう」
にこやかに本を見ながら言う尊に少し安心したのか菊池が震える声で同意した瞬間、菊池の頭に本がぶち当たる。
あまりのことによけることができなかった菊池から鈍い音とうめき声がいい具合に聞こえた。尊は容赦することなく、頭を抑え込む菊池に次の本を投げつけた。
「ゲスが」
一言付け加えて吐き捨てるように尊は3冊目を投げつける尊の声には軽蔑の色が濃く出ていた。
尊が手を差し出せば、黒木はすかさずアルコールティッシュを取り出し一枚渡した。黒木もそんな汚いものを尊がふれたことは容認できていなかった。
何枚か使用し手を綺麗に拭いていれば、どたばたというあわただしい足音が聞こえた。どんどんと近づく走る音が、最後にどんという音を盛大に立て、入口が跳ね返る勢いで開いた。
尊が手をふきつづけ入口を見ればネクタイを乱した聖が肩で息して立っていた。
ーーー
「総長!」
連絡を受け聖は大慌てで駆けつけた。30分前にめったにならない携帯電話がなりだし見れば『6代目』という表示に聖はすぐにスワイプした。
「菊池組消すから」
という尊の声のあとに聞こえる切断音が聖の耳に入る。
聖は10秒ほど切断を聞きながら固まっていたが理解した瞬間、事務所を飛び出した。聖は尊の散歩してくるくらいのノリの声を思い出し体を震わせる。
うずくまる菊池のそばに膝をつき、開いた本を聖は手に取った。息で揺れていた肩を怒りでもっと震えさせると本を菊地の頭にたたきつける。
「聖、お前は知っていたのか」
「いえ! こんなやつだとは」
聖の手の本には子供といっていいような女の子や若いアイドルたちが食い物にされている写真が閉じられていた。聖の言葉に頷くと尊は椅子から立ち上がり、黒木が椅子に触れていたところを軽く払った。
尊は足元に転がる組員を踏みつけ聖を見る。
「これは俺が連れていく。そいつの処分はお前に任せる」
尊の言葉に聖はひきつった顔で頭を深く下げて了承した。黒木が入口を開けると組員がしりもちをついて尊を見た。情けない組員に尊は親指で後ろを示し命令する。
「あれをもってこい。行くぞ、黒木」
這う態で転がっている仲間に近寄れば鼻は折れ、指もあり得ない方向に曲がり血濡れた姿があった。その姿に誰もがぞっとした。
「何をしている! その屑を持っていけ」
聖の怒声に震えながら仲間を組長室から運び出して行く。聖はそれを見送るとうずくまる菊池を殴りつけた。
「お前がそんな屑だとみぬけんだ俺がばかだった!」
半年前に傘下に収めたことを後悔した。尊の中で聖の株が下がったことは明白である。八つ当たりも含め菊池を力の限り踏みつければ、あばらのおれる音が小さく部屋に響いた。
ーーーー
「お手数をおかけしました」
「・・・・・・あぁ」
「総長自ら動いてくれたとは」
尊の目の前には副総監の山戸、警務部長の源田が座っていた。神林組本邸の応接間に警察がいるのはおかしいように見えるがお互いのために取引をする案件は多くある。今回の件も一般人を巻き込んだ事件で犯人はできる限り表で捌かなければならない。
「今回はご迷惑をおかけし申し訳ありません。菊池組についてはうちで始末をつけました。柏木さんの容態は」
「大丈夫ですが今後はこういうことがないようにきちんと管理してくれないとこまりますよ」
もみ消すことが面白くないのか尊にあう源田はいつも渋い顔でにらむような眼で尊を見る。そして・・・・・・
その源田が気に入らないのか黒木が源田をにらみつけてしまう。これもいつものことではあるが源田の発言を山戸が
「源田部長、総長は悪くない。言いすぎだぞ」
とたしなめた。
「すいません」
納得いかない顔で源田はお茶を飲んでから事情聴取を始め、尊は質問に答えながら思った。
「早く帰れ」
尊は心の中でそういった。何度でもいうが本邸は尊のテリトリー、部外者にあまり長いをされたくないというよりは入られたくない場所だ。
「では我々はこれで失礼します」
「ありがとうございました。黒木、お送りして」
山戸と源田を見送り、部屋に戻ってきた黒木はソファでぐだる尊に小さく笑ってしまう。菊池組で見せた鋭い刃物のような雰囲気、のらりくらりと人を交わす先ほどまでの雰囲気とは違いありのままの尊の姿に笑みがこぼれる。
「今日の夜ごはん何?」
「さぁ? なんでしょう」
「か・・・・・・ かん、神林尊」
「呼び捨てにしてんじゃねぇよ! くそ野郎」
つい名前を言ってしまった男は黒木に殴られた。痛む頬を押さえ必死に謝る男は座席の下に座り込んだ。
「汚れるから車の中で殴らないでよ」
「すいません、つい」
黒木に尊は苦言を一つ言うと携帯電話を操作するだけで男のことを放置する。
男は車がどこに向かうのか自分はどうなるのか恐怖におぼれながらも、なんとか打開しようと後ろに手を回す・・・・・・が
「変に動くと黒木が撃つからやめろよ。車、汚したくないんだ」
尊の言葉に男は動きを封じられる。男はばれていたかと尊を見れば変わらず視線は携帯電話に注がれていた。黒木のごつい手につかまれ銃を奪われた男はうずくまることしかできなかった。
尊は携帯電話をしまうとため息をつく。うずくまる男に汚物よりも汚いものだといわんばかりの軽蔑した目を向ける。
「子が子なら親も親だな」
本居からの報告資料に目を通し、菊池組を消そうと尊は即決した。
「なんだ! てめぇ」
菊池組の事務所に入るとチンピラ風の男2人は尊を挟み込みに高圧的に睨み付けたがなんの反応も示さないことにイラつき、肩をつかもうとした。しかしその前に男の手を黒木がひねりあげ、チンピラはたまらず叫び声を上げる。
尊は
「(邪魔くさいし、うるさい)」
と眉間に皺を寄せる。
事務所に響いた叫び声に組員たちが駆け寄ってくるが、その群れに黒木はつかんでいた男を突き飛ばし組員たちを牽制した。投げられた仲間をなんとか支えた組員たちは黒木を見上げる。
「俺は神林組の黒木だ」
黒木は言葉と共に手帳を取り出した。神林の代紋を背負う黒い手帳にかけ寄ってきた組員は低姿勢になり、黒木という名にさらに身体を小さくする。神林組の黒木といえばこの界隈で知らないものはいない名前だ。
「銃撃の・・・・・・黒木」
菊地組の組員はどうしていいかわからず立ち尽くした。神林ということは親分の親である聖組長の親である。その神林組総長の側近はどう考えても菊池組員がどうこうしてよい相手ではなかった。
「総長、こいつらどうしますか」
「ほっておけ」
黒木の言葉に目を丸くし尊を見る組員たちの間に尊を黒木は体を滑り込ませ、不躾な目から尊を守る。当の尊は騒ぎなどそもそも存在しないという風に、周りのことなど気にせず組長室のドアノブを握った。
「今は! あっ! えっと・・・・・・ く、組長はおりません」
無謀にも声をかけたことを組員は後悔した。サングラスで男には見えないはずなのに振り返った尊に睨まれたと感じ、なにか鋭いもので刺されたような感覚に、思わず胸に手を当てる。
「待たせてもらう」
尊が組長室に消えると、黒木は連れてきた男を引きずり尊の後に続いて呆然の組員の視界から消えた。閉まる扉の向こうで、すがるように見てくる男のために動くものは1人も存在していない。見慣れた扉の奥で何が起こるのか菊池組組員は考えたくなかった。
組員からの連絡を受け、息を切らせながら菊池が事務所に駆け込んできた。菊池は息を整えていつもなら普通に回すドアノブを組員に見守られながら汗で濡れる手でまわす。回して開けた扉の向こうの世界は菊池を悪い方向で歓迎した。
ところどころ血に濡れる床、壁そして転がる組員が菊池を出迎え、菊池の後ろから覗き込んだ組員がひきつった声を上げてしまう。静かに立つ、黒木の横の組長室の椅子が回転し入口のほうを向いた。どちらの目も冷静に菊池を捉えた。
「扉を閉めてくれるかな」
「っ! はい!」
言われた通りに菊池は後ろ手に扉を閉めたが、それ以上は打ち付けられたかのように動けなかった。優雅に椅子に座る尊は笑顔で床に転がる男を人差し指で示す。
「その男が柏木未来を撃ったことを知っているかな」
「ひえ!」
「ひえってなに? しっているかな?」
あまりの答えに尊がばかにしているのかと睨みつけるのに、菊池は緊張と恐怖で回らない舌を一生懸命、回して否定を返した。返事を返すだけでもいっぱいいっぱいの情けない菊池は先日同じ人物なのかと冷や汗を流し続ける。
若いのにしっかりした人物くらいにしか思っていなかった。そして、噂の通り、優しい慈悲深い天使のような尊にすぐに聖が7代目に納まるとまで考えていた。
しかしその尊に菊池は恐怖を感じている。例え、血濡れた組員がいなくても恐怖を感じていたはずだと思える怖さが目の前に存在していた。
「柏木未来をストーカーして、恋人がいるからと殺そうとしたようだ。あぁそうだ。その男、死んではいないから安心してくれ」
尊の何ということはないだろうと口角をあげる表情に菊地の心臓が不自然に脈うった。菊地は倒れ込むように土下座をして尊に必死に詫び床に水たまりを作るのではないかと思えるほどの勢いで汗を流す。
菊池は誰が目の前の男を慈愛あふれる天使だと言い出したのかと知らない人物に怒る。しかし、今は目の前の状況から逃げ出さなくてはならないと、菊池は体裁を気にする前に全力で詫びを入れるが尊は見向きもしない。
なぜか引き出しを開ける音が菊池の耳に届き、本をめくる音と菊地の荒い息遣いが部屋に流れた。
菊池は何を見ているのだろうかと体を震わせ、自分の引き出しに何が入っているかを懸命に思い出すが馬鹿に輪をかけて馬鹿になっている菊池の頭は思い出せない。
「なかなか良い趣味をお持ちのようだ」
「えっ」
本を見せるように掲げ、尊が声をかければ菊池はすぐに顔を上げた。悲惨な汗と顔色にそのうち死にそうだなと尊は哀れに思った。
「とて・・・・・・も、とてもいいでしょう」
にこやかに本を見ながら言う尊に少し安心したのか菊池が震える声で同意した瞬間、菊池の頭に本がぶち当たる。
あまりのことによけることができなかった菊池から鈍い音とうめき声がいい具合に聞こえた。尊は容赦することなく、頭を抑え込む菊池に次の本を投げつけた。
「ゲスが」
一言付け加えて吐き捨てるように尊は3冊目を投げつける尊の声には軽蔑の色が濃く出ていた。
尊が手を差し出せば、黒木はすかさずアルコールティッシュを取り出し一枚渡した。黒木もそんな汚いものを尊がふれたことは容認できていなかった。
何枚か使用し手を綺麗に拭いていれば、どたばたというあわただしい足音が聞こえた。どんどんと近づく走る音が、最後にどんという音を盛大に立て、入口が跳ね返る勢いで開いた。
尊が手をふきつづけ入口を見ればネクタイを乱した聖が肩で息して立っていた。
ーーー
「総長!」
連絡を受け聖は大慌てで駆けつけた。30分前にめったにならない携帯電話がなりだし見れば『6代目』という表示に聖はすぐにスワイプした。
「菊池組消すから」
という尊の声のあとに聞こえる切断音が聖の耳に入る。
聖は10秒ほど切断を聞きながら固まっていたが理解した瞬間、事務所を飛び出した。聖は尊の散歩してくるくらいのノリの声を思い出し体を震わせる。
うずくまる菊池のそばに膝をつき、開いた本を聖は手に取った。息で揺れていた肩を怒りでもっと震えさせると本を菊地の頭にたたきつける。
「聖、お前は知っていたのか」
「いえ! こんなやつだとは」
聖の手の本には子供といっていいような女の子や若いアイドルたちが食い物にされている写真が閉じられていた。聖の言葉に頷くと尊は椅子から立ち上がり、黒木が椅子に触れていたところを軽く払った。
尊は足元に転がる組員を踏みつけ聖を見る。
「これは俺が連れていく。そいつの処分はお前に任せる」
尊の言葉に聖はひきつった顔で頭を深く下げて了承した。黒木が入口を開けると組員がしりもちをついて尊を見た。情けない組員に尊は親指で後ろを示し命令する。
「あれをもってこい。行くぞ、黒木」
這う態で転がっている仲間に近寄れば鼻は折れ、指もあり得ない方向に曲がり血濡れた姿があった。その姿に誰もがぞっとした。
「何をしている! その屑を持っていけ」
聖の怒声に震えながら仲間を組長室から運び出して行く。聖はそれを見送るとうずくまる菊池を殴りつけた。
「お前がそんな屑だとみぬけんだ俺がばかだった!」
半年前に傘下に収めたことを後悔した。尊の中で聖の株が下がったことは明白である。八つ当たりも含め菊池を力の限り踏みつければ、あばらのおれる音が小さく部屋に響いた。
ーーーー
「お手数をおかけしました」
「・・・・・・あぁ」
「総長自ら動いてくれたとは」
尊の目の前には副総監の山戸、警務部長の源田が座っていた。神林組本邸の応接間に警察がいるのはおかしいように見えるがお互いのために取引をする案件は多くある。今回の件も一般人を巻き込んだ事件で犯人はできる限り表で捌かなければならない。
「今回はご迷惑をおかけし申し訳ありません。菊池組についてはうちで始末をつけました。柏木さんの容態は」
「大丈夫ですが今後はこういうことがないようにきちんと管理してくれないとこまりますよ」
もみ消すことが面白くないのか尊にあう源田はいつも渋い顔でにらむような眼で尊を見る。そして・・・・・・
その源田が気に入らないのか黒木が源田をにらみつけてしまう。これもいつものことではあるが源田の発言を山戸が
「源田部長、総長は悪くない。言いすぎだぞ」
とたしなめた。
「すいません」
納得いかない顔で源田はお茶を飲んでから事情聴取を始め、尊は質問に答えながら思った。
「早く帰れ」
尊は心の中でそういった。何度でもいうが本邸は尊のテリトリー、部外者にあまり長いをされたくないというよりは入られたくない場所だ。
「では我々はこれで失礼します」
「ありがとうございました。黒木、お送りして」
山戸と源田を見送り、部屋に戻ってきた黒木はソファでぐだる尊に小さく笑ってしまう。菊池組で見せた鋭い刃物のような雰囲気、のらりくらりと人を交わす先ほどまでの雰囲気とは違いありのままの尊の姿に笑みがこぼれる。
「今日の夜ごはん何?」
「さぁ? なんでしょう」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる