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番外編③
最終話・竹葉と盃
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盃の記憶が戻って数日が経ち、職場復帰も無事に出来たようだ。
「初めから恋人って言えばよかったのに」
「いやぁ、初対面でそれは言えないって……それに、記憶無いならもう一回恋できるじゃんって」
「俺の記憶喪失をエンジョイしやがって! 好き!」
記憶が戻ったと知り、花蓮さんと天道寺社長が菓子折りを持って家に来た時は驚いた。
逃走していた残りの誘拐犯達は無事御用になったと聞かされた。
指定口座に入金した瞬間、振り込んだ額が何県にも渡り分割送金されるプログラムが入れ込まれていた。各地で待機していた仲間が振り込まれた金を下ろし、合流して海に出る予定だったらしい。
計画的で警察も手が回らない大規模な手口を使っていたが、合流場所を一人が吐いた為一網打尽になったと言う。
盃まで誘拐してなけりゃ、成功してたかもしれない誘拐事件は、知らず知らずの間に幕引きとなっていた。
話し合いでお世話になった人達にも感謝を伝える為に、倫さんや広田さん、那月さん、みんな揃って飲みに行った時は奢らせてもらった。
盃は那月さんに何やら相談してたらしく、肘で突かれ、揶揄われていた。
記憶も俺達の日常も戻ってきたとある休日。
ソファーでコーヒーを飲む盃の隣に腰かける。
「盃」
「ん?」
「そろそろ、旅行の計画立てるか」
「あ、そうだね。有耶無耶になっちゃったし」
次の三連休に向けて遠出の相談をする。
記憶が有っても無くても、盃はかっこいいし可愛い。
しかし、今の盃の側に居られるこの奇跡を満喫しない手はない。今回それをしみじみ実感した。
落ち着きのない精神的年下の盃も良かったけど万が一、盃が惚れ直してくれてなければ、この日常は戻ってこなかった。
「どこ行きたい?」
「んー温泉! あと海!」
「お、良いね」
これからの話を沢山あれこれと立てていく。この先もずっと共に居る未来を約束する。
「ああ、そういえば。秋に大会があるから、また我慢してよ」
「ええ……マジか……なんか、最近ハメ撮りで上手くヌけなくて困ってるのに」
「え!? あ、ふーん! そうなんだ~!」
「……めちゃくちゃ嬉しそうだな。こちとら死活問題なんだぞ。俺のハメ撮り生命線が……」
「ハメ撮り生命線って……まぁ、また新しく撮っていいよ」
上機嫌に動画撮影を承諾する盃に感謝しながら、旅行の話題へ話を戻した。
「温泉に、真夏の海か~……盃、ナンパされるだろうなぁ」
「いやいや、竹葉だって顔可愛いし身体も引き締まってるから、モテると思うよ」
「俺がモテても平気?」
「全然!!」
「俺も盃がナンパされてたら嫌!!」
イーーッと分かりやすく嫉妬心を剥き出しにする俺を笑う盃。
バカップルの自意識過剰な会話だが、俺は少し背筋を正して盃の手を握り締めた。
「だから、ちゃんと俺がしっかりケジメを付ける」
「ケジメ?」
俺はポケットから掌サイズの箱を取り出して、盃の目の前で慎重に開ける。
中には銀色に輝く指輪が収まっていた。
「…………ゆ、ゆび、わ?」
「安心しろ。ちゃんと結婚指輪だ」
「ちゃんとって、あ、あの、ちょっと待って……今、頭真っ白で……」
そりゃそうだ。俺達は日本住みの同性カップルだ。結婚はできない。
けれど、誓いは立てられる。
俺とでしか得られない幸福があると言ってくれた盃に、誓いの言葉を告げる。
「……健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も」
「!」
「富める時も、貧しい時も」
『スル……』
盃の左手を持ち上げて、薬指へリングを通す。
「愛し、敬い、慰め、助け」
「…………」
「この命ある限り、死が二人を別つまで……共にある事を、誓います」
シンプルなデザインの指輪を見つめ、震えている盃に自分の左手を差し出した。
「誓ってくれますか?」
「っ……はい」
もう一つの指輪を手に取り、同じように俺の左薬指へ通す。
盃を見つめると笑っているのに、漫画みたいな量の涙が溢れ落ちていた。
「ふ、ふふ……もう、なんで、今なんだよ……」
「今しかないと思って。それに、ちゃんとプロポーズするって言っただろ?」
「ぐす……うん。覚えてる。ありがとう。来週の休みに実家来てよ。今度こそ紹介するから」
「……お兄さんとの約束もあるもんな」
「あ、忘れてた!」
結婚とは異なった、俺達だけの大事な儀式を終えた。
これから二人で、色んな場所に行って、色々な思い出を作っていこう。
そして、共に生きて行こう。
長生きしよう。
「盃と出会って……俺、初めて、自分がゲイで良かったって思えたよ」
「俺だって、竹葉と出会えて人生変わったよ。三六〇度」
「…………ん? 一回転してね?」
「え? ……あ、本当だ! 景色変わってない!」
「実質無回転じゃねえか!」
思わず吹き出して、声を上げて笑い合う。
ああ、笑いの溢れる日々を作っていこう。
END
「初めから恋人って言えばよかったのに」
「いやぁ、初対面でそれは言えないって……それに、記憶無いならもう一回恋できるじゃんって」
「俺の記憶喪失をエンジョイしやがって! 好き!」
記憶が戻ったと知り、花蓮さんと天道寺社長が菓子折りを持って家に来た時は驚いた。
逃走していた残りの誘拐犯達は無事御用になったと聞かされた。
指定口座に入金した瞬間、振り込んだ額が何県にも渡り分割送金されるプログラムが入れ込まれていた。各地で待機していた仲間が振り込まれた金を下ろし、合流して海に出る予定だったらしい。
計画的で警察も手が回らない大規模な手口を使っていたが、合流場所を一人が吐いた為一網打尽になったと言う。
盃まで誘拐してなけりゃ、成功してたかもしれない誘拐事件は、知らず知らずの間に幕引きとなっていた。
話し合いでお世話になった人達にも感謝を伝える為に、倫さんや広田さん、那月さん、みんな揃って飲みに行った時は奢らせてもらった。
盃は那月さんに何やら相談してたらしく、肘で突かれ、揶揄われていた。
記憶も俺達の日常も戻ってきたとある休日。
ソファーでコーヒーを飲む盃の隣に腰かける。
「盃」
「ん?」
「そろそろ、旅行の計画立てるか」
「あ、そうだね。有耶無耶になっちゃったし」
次の三連休に向けて遠出の相談をする。
記憶が有っても無くても、盃はかっこいいし可愛い。
しかし、今の盃の側に居られるこの奇跡を満喫しない手はない。今回それをしみじみ実感した。
落ち着きのない精神的年下の盃も良かったけど万が一、盃が惚れ直してくれてなければ、この日常は戻ってこなかった。
「どこ行きたい?」
「んー温泉! あと海!」
「お、良いね」
これからの話を沢山あれこれと立てていく。この先もずっと共に居る未来を約束する。
「ああ、そういえば。秋に大会があるから、また我慢してよ」
「ええ……マジか……なんか、最近ハメ撮りで上手くヌけなくて困ってるのに」
「え!? あ、ふーん! そうなんだ~!」
「……めちゃくちゃ嬉しそうだな。こちとら死活問題なんだぞ。俺のハメ撮り生命線が……」
「ハメ撮り生命線って……まぁ、また新しく撮っていいよ」
上機嫌に動画撮影を承諾する盃に感謝しながら、旅行の話題へ話を戻した。
「温泉に、真夏の海か~……盃、ナンパされるだろうなぁ」
「いやいや、竹葉だって顔可愛いし身体も引き締まってるから、モテると思うよ」
「俺がモテても平気?」
「全然!!」
「俺も盃がナンパされてたら嫌!!」
イーーッと分かりやすく嫉妬心を剥き出しにする俺を笑う盃。
バカップルの自意識過剰な会話だが、俺は少し背筋を正して盃の手を握り締めた。
「だから、ちゃんと俺がしっかりケジメを付ける」
「ケジメ?」
俺はポケットから掌サイズの箱を取り出して、盃の目の前で慎重に開ける。
中には銀色に輝く指輪が収まっていた。
「…………ゆ、ゆび、わ?」
「安心しろ。ちゃんと結婚指輪だ」
「ちゃんとって、あ、あの、ちょっと待って……今、頭真っ白で……」
そりゃそうだ。俺達は日本住みの同性カップルだ。結婚はできない。
けれど、誓いは立てられる。
俺とでしか得られない幸福があると言ってくれた盃に、誓いの言葉を告げる。
「……健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も」
「!」
「富める時も、貧しい時も」
『スル……』
盃の左手を持ち上げて、薬指へリングを通す。
「愛し、敬い、慰め、助け」
「…………」
「この命ある限り、死が二人を別つまで……共にある事を、誓います」
シンプルなデザインの指輪を見つめ、震えている盃に自分の左手を差し出した。
「誓ってくれますか?」
「っ……はい」
もう一つの指輪を手に取り、同じように俺の左薬指へ通す。
盃を見つめると笑っているのに、漫画みたいな量の涙が溢れ落ちていた。
「ふ、ふふ……もう、なんで、今なんだよ……」
「今しかないと思って。それに、ちゃんとプロポーズするって言っただろ?」
「ぐす……うん。覚えてる。ありがとう。来週の休みに実家来てよ。今度こそ紹介するから」
「……お兄さんとの約束もあるもんな」
「あ、忘れてた!」
結婚とは異なった、俺達だけの大事な儀式を終えた。
これから二人で、色んな場所に行って、色々な思い出を作っていこう。
そして、共に生きて行こう。
長生きしよう。
「盃と出会って……俺、初めて、自分がゲイで良かったって思えたよ」
「俺だって、竹葉と出会えて人生変わったよ。三六〇度」
「…………ん? 一回転してね?」
「え? ……あ、本当だ! 景色変わってない!」
「実質無回転じゃねえか!」
思わず吹き出して、声を上げて笑い合う。
ああ、笑いの溢れる日々を作っていこう。
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大賞の方も、ポチっとさせていただきました。
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楽しい時間をありがとうございました。
すずしろ様
丁寧な感想、本当にありがとうございます!!
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楽しんでくださり、ありがとうございました!